自動運転向けチップ、自社開発の潮流 テスラにApple、VWも

トヨタも新会社が半導体研究を推進



自動運転開発に必須となる高性能チップ。米NVIDIAに代表される専門企業が躍進し存在感を大きなものに変えているが、ここに新たな潮流が生まれつつあるようだ。米テスラやアップルといった新規参入勢に加え、独フォルクスワーゲングループ(以下VW)にもチップを自社開発する計画が持ち上がっているのだ。







水平分業が進む自動車業界において逆行するかのような流れだが、主導権を握る自動車メーカーとしては王道の取り組みとも言える。この記事では、自動運転向けチップの自社開発をめぐる動向を掘り下げていく。

■自社開発が加速する自動運転向けチップ
フォルクスワーゲングループの動き

報道によると、VWはドイツの経済紙Handelsblattの取材に対し、自動運転車をはじめとした将来の自動車開発においてはハードウェアとソフトウェア両方の開発が必要との認識を示し、先端ソフトウェア開発を手掛ける100%子会社のCARIADの事業を強化し、関連特許の取得などに向けた体制を整備していく方針のようだ。

VWは2019年、ソフトウェアを開発する専門部門Car.Softwareを社内で組織し、自社開発力の強化に向け翌年本格始動させている。開発はコネクテッドカー&デバイスプラットフォーム、インテリジェントボディ&コクピット、自動運転、車両制御&エネルギー、デジタルビジネス&モビリティサービスの5分野に分割して研究開発を進めている。この組織がCARIADに発展したものと思われる。

報道はこうしたソフトウェアの独自開発に続き、車載チップをはじめとしたハードウェアの独自開発も進めるという内容だ。製造は外部に委託するものと思われる。

テスラの動き

同様の動きは、高い開発能力を有する新規参入組が先行している。米EV大手のテスラはその代表例で、高度なADASや自動運転の実用化に向け自動運転用チップの自社開発を推し進めている。

もともとテスラはイスラエルのモービルアイと提携し、ADAS「AutoPilot」向けにモービルアイのSoC(System on Chip)「EyeQ」の供給を受けていたが、2016年に提携が解消された。その後はNVIDIAに乗り換えたが、2019年に完全自動運転向けのAIチップを自社開発していることを正式発表し、自社モデルへの搭載を進めていく方針を打ち出している。

【参考】テスラの取り組みについては「ロボットタクシーとは?自動運転技術で無人化、テスラなど参入」も参照。

アップルの動き

アップルカーの実用化に向けた一挙手一投足が注目を集めている米アップルも、独自開発を進めている。

主力のパソコン領域でもインテルとの協業を解消し、自社設計した半導体に切り替える動きを見せているが、アップルカーにおいても同様で、自社設計品をもとに台湾の半導体受託製造大手TSMCと協業に向けた検討を進めていることが一部メディアに報じられている。

報道によると、両社は自動運転チップの開発を進めており、生産に向け米国内に工場を建設する計画も持ち上がっているようだ。

Waymoの取り組み

自動運転タクシーで先行する米Waymoも、独自開発製品がベースとなりつつあるようだ。

自動運転システム用のプロセッサーは米インテル製を採用しているが、実質的な親会社となるグーグルがAIの機械学習に強い「TPU(Tensor Processing Unit)」を開発するなど研究開発は熱心に進められている。

2021年3月には韓国のサムスン電子がWaymoの半導体設計を受注したことが報じられており、脱インテルを進めている印象を受ける。

【参考】Waymoの取り組みについては「Waymo向け半導体設計を受注!サムスン×自動運転、最新情報」も参照。

■独自開発を進める理由は?

フォルクスワーゲンに話を戻す。同社は自主開発にシフトする動きをみせているが、独立独歩の道を歩むわけでもなさそうだ。NVIDIAとのパートナーシップは依然続いているほか、次世代EV「ID.3」にルネサスエレクトロニクスのSoC(System on Chip)「R-Car M3」を採用するなど、半導体大手の協業や取引は継続している。

テスラやアップル、ウェイモなどのように、テクノロジー分野で強みを発揮できる自動車メーカーは少ない。IT分野で実績のある企業やNVIDIAのような専門企業に立ち向かう半導体技術を手にするのは一朝一夕でなし得るものではない。それでも自社開発に力を注ぐ根底には、開発競争力の堅持と開発スピードの加速があるようだ。

NVIDIAなどの専門企業との協業は、特に開発初期段階において高い効果を発揮する。初期の開発コストを大きく抑えつつ、自社が得意とする開発領域と結び付けることで自動運転技術の完成に近づけるからだ。いわば比較優位を生かした分業だ。

しかし、これを別の角度から見た場合、専門企業と協業した多くの企業は、同一の技術を活用しているため基本的に横並びの状態となる。また、カスタマイズ性によっては応用範囲が限られるため、最新の独自技術と融合させられないケースが出てくる恐れもある。

さらに、専門企業の開発スピードに依存しなければならない点にも留意する必要がある。専門企業の技術がコア技術であればあるほど依存度合いは強くなり、自社独自で開発を加速させる際に制限を生じさせる可能性があるのだ。

このため、フォルクスワーゲンは各社との協業を進めつつも独自開発の手を休めないものと考えられる。

トヨタとデンソーも半導体開発に注力

日本国内では、トヨタとデンソーも半導体開発に力を入れている。両社は自動車業界において早くから車載半導体の開発を進めてきた歴史を持つが、2020年4月に新会社「ミライズテクノロジーズ」を設立し、CASE時代に向け革新的な半導体研究を推進している。

■【まとめ】依然高い自動車メーカーの開発意欲

CASE時代に向け水平分業が進む自動車業界だが、未来を見据えた自動車メーカーの開発意欲は依然高い。各社との協業による技術習得や独自研究の手を緩めることはないようだ。

テクノロジー系企業やスタートアップが次々と台頭し、自動車業界における影響力を増している大変革の時代だが、自動車メーカーが最先端のテクノロジー技術を開発し、分野を超えさらなる飛躍を遂げる可能性もありそうだ。

【参考】関連記事としては「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事