2018年のタクシー業界10大ニュース!配車アプリ続々、進むキャッシュレス化

UberやDiDiも日本で本格参入



DeNAの0円タクシー=撮影:自動運転ラボ

大変革を迎えている自動運転業界同様、タクシー業界も変革の時を迎えている。都市圏を中心に配車アプリやキャッシュレス決済が浸透し、従来のアナログな乗車方法から大きく変わり始めている。その背景には、プラットフォーマーなどの異業種参入が大きく関係していそうだ。

また、需給に合わせて料金が変動するダイナミックプライシングやタクシーシェア、事前確定運賃など柔軟な運営に向けた実証実験なども進められており、業界を挙げて改革を目指す取り組みも増えてきている。


大きな動きを見せ始めたタクシー業界。2018年10大ニュースを振り返ってみよう。

■ソニー、東京のタクシー5社とAI需要予測や配車サービス みんなのタクシー社(2018年9月10日付)

ソニーグループと都内のタクシー会社5社は2018年9月、人工知能(AI)技術を活用したタクシー関連サービスを提供する「みんなのタクシー株式会社」を事業会社化したことを発表した。ソニーのAI技術やイメージング・センシング技術を活用して新たな配車サービスや需給予測サービス、決済代行サービス、後部座席広告事業を展開し、乗客の利便性向上を目指す。

サービスの提供主体は、2018年5月に準備会社として設立されたみんなのタクシー株式会社。9月9日までに事業会社に移行したことを発表しており、本格的な事業展開に向けて舵を切った形だ。

このプロジェクトはソニーペイメントサービスを含むソニーグループが主導し、都内に本社を構える株式会社グリーンキャブ、国際自動車株式会社、寿交通株式会社、大和自動車交通株式会社、株式会社チェッカーキャブのタクシー会社5社が参画している。5社が所有する車両数の合計は1万台に上る。


AI技術のほか、イメージング・センシング技術を活用し、タクシーの配車サービスや決済代行サービス、後部座席広告事業などのサービスを2018年度中に提供開始予定で、今後、参画を希望する全国のタクシー事業者にも拡大していく方針。サービスプラットフォームでは、個別サービスからフルパッケージのワンストップソリューションまで、各事業者に即した複数の選択肢を提供できるよう開発を進めている。

また、タクシーの動態データや走行データなど膨大な情報をAIやIT技術を活用して分析することで、需要予測サービスの展開や事故の未然防止、新たな広告事業などにつなげていく構えだ。まずは東京とその近郊をカバーし、サービスの認知度や安定性を高めてから広域拡大を進め、「ダイナミックプライシング」(事前需要状況に応じて価格変動させること)や「事前確定運賃」など、新たなサービスの研究・創出を図っていくこととしている。

タクシー業界では現在配車プラットフォーム競争が過熱しており、米ウーバーや中国のDiDiなど海外勢も日本に事業参入している。こういった状況を踏まえた主導権争いが背景にあり、既存のプラットフォームやDeNAが提供するプラットフォームなどを交えた勢力拡大競争は今後いっそう激化し、利便性や機能性を進化させながらさまざまなサービスを生み出しそうだ。

【参考】みんなのタクシーについては「【インタビュー】東京で1万台を巻き込むタクシーAI革命が始動する みんなのタクシー・西浦賢治社長(ソニー)」も参照。


■DeNA、「タクベル」タクシーに後部座席タブレット(2018年10月27日付)

株式会社ディー・エヌ・エー=DeNA=は2018年10月25日までに、自社が提供する次世代タクシー配車アプリ「タクベル」(※12月5日から名称をMOVに変更)で配車する関東圏の約1万5000台(2018年度内目標)のタクシーの後部座席に、良質なコンテンツを提供するタブレットを導入すると発表した。導入は2019年2月からとなる。

高精細な動画配信が可能なタブレットで、デジタルサイネージだけでなく乗車中の体験をより快適で便利に過ごせるようなサービスを提供することとしており、タクシーメーターと連動した車内案内や料金表示のほか、共同通信社提供のニュースや交通情報などを提供する。インバウンド対応が可能な多言語仕様となっていることも特徴だ。

後部座席タブレットは今後、タクベルを利用せずタブレット搭載車両に乗車した全ての客がスムーズな決済ができるQRコード決済機能や、最適なコンテンツ配信をおこなうための性別・年代推定機能、提供コンテンツ拡充などを実施予定という。

■ジーニー社、タクシー配車サービス向けに広告配信プラットフォームを開発(2018年11月16日付)

マーケティング支援システム事業などを手掛ける株式会社ジーニーは2018年11月14日、タクシー配車サービス向けに広告配信プラットフォームを開発したと発表した。今後の市場拡大を見越した動きと言える。

タクシー配車サービスを提供する企業と協力し、後部座席に設置するデジタルサイネージ端末に広告を配信できるプラットフォームとなっているようだ。発表によれば、ジーニー社は開発したプラットフォームのテスト運用を2019年1月に実施する。本格運用は2月からになる見込みだという。

広告事業に関しては、最近ではみんなのタクシー株式会社の後部座席広告事業において、総合PR会社大手の株式会社ベクトルがパートナーになることが発表されている。車内にキャッシュレス決済用のタブレット端末を備えるタクシーも増加傾向にあり、いっそうの利便性向上に向けさまざまな活用方法が求められている。

従来から存在するラッピング広告など含め、タクシー業界の新たな収入源としてこのような広告配信事業への参入は今後も相次ぎそうだ。

■早く来たTaxiだけに乗車 配車アプリ複数使う”裏技”に業者悲鳴(2018年11月17日付)

複数の配車アプリを使ってタクシーを呼び、一番早く到着したタクシーに乗って他はキャンセル——。日本国内でタクシー配車アプリの数が増える中、こうした使い方をするユーザーが目立つようになり、タクシー業者が悲鳴をあげている。

現地に向かう途中でキャンセルされたタクシーは、無駄に走らされるだけでなく、その間他の予約を受けることができず売上低下を招く一因となっている。

こうした状況下、名古屋タクシー協会は自社のホームページで注意と協力を呼び掛けている。「配車申し込み・ご利用方法についてのお願い」の中でキャンセルする事象が数多く発生していることに触れ、他の客の配車申し込みに応じられなくなる原因になると指摘。理解と協力を求める一方、こういった配車申し込みに対し、各タクシー会社の判断により配車を控える場合もあるとしている。

日本国内では現在、各タクシー会社のほか、米ライドシェア大手ウーバー・テクノロジーズやソフトバンクと中国配車大手DiDiの合弁会社、DeNAなどプラットフォーマーの新規参入が続いており、多数の配車アプリが乱立ししのぎを削る状態となっている。

利便性や機能性の優劣によりそのうち自然淘汰が始まるものと思われるが、それにはまだまだ時間がかかりそうだ。キャンセル行為はタクシー会社だけでなく、配車の遅延など他の利用者にも迷惑が掛かり、ひいては自身にも同様のことが降りかかることになる。良識ある利用を心掛けよう。

■DiDiモビリティジャパン、毎週金土はタクシー初乗り無料に 大阪で期間限定実施(2018年11月19日付)

中国ライドシェア最大手・滴滴出行(Didi Chuxing)の合弁会社で、大阪でタクシー配車プラットフォームの提供を9月に開始したDiDiモビリティジャパンは2018年11月9日から約1カ月間、タクシーの初乗り料金を無料にするキャンペーンを実施した。

同社は、2018年6月にDiDiとソフトバンクとの合弁で設立された日本法人。9月に大阪地方のタクシー事業者12社と提携し、独自のプラットフォームでAI(人工知能)分析・予測を活用した効率的なタクシー配車を実現し、乗客と運転手の両方にメリットを提供していくこととしている。

日本国内における知名度アップに向け、初乗り無料のほかハロウィーンに合わせた乗車料金の半額キャンペーンや、指定した場所にスーパーカーが迎えに来る「DiDi × TOKYO SUPERCARSクリスマスプレゼント企画」(諸事情により中止)など、さまざまな企画で認知度向上を図っている。

世界のライドシェア業界において最大のライバルである米ウーバーも同時期に名古屋市でサービスを開始しており、2019年には大阪進出も予定している。日本のタクシー業界を舞台にした両社の激突は来年本格化するものと思われ、新たな局面を迎えることになりそうだ。

■遂に!タクシー車内でLINE Pay決済可能に…JapanTaxiが発表(2018年11月27日付)

日本最大級のタクシー配車アプリを展開するJapanTaxi株式会社は2018年11月27日、タクシー車内のタブレット端末において新たな決済手段としてLINEのスマホ決済「LINE Pay」への対応を開始すると発表した。

同社は2017年から、タクシーのキャッシュレス化の一環として後部座席設置タブレットの導入を進めてきた。タブレットは「広告タブレット」と「決済機付きダブレット」の2種類で、2018年7月から全国展開している。東京都内では既に5500台に導入されており、2020年には全国で計5万台に導入する計画を立てている。

これらのタブレットを使ってQRコード決済やクレジットカード決済、交通系ICなどの決済をすることができるが、これらの決済手段に新たに「LINE Pay」が追加された形だ。タブレット搭載タクシーに乗車したとき、LINEアプリの「ウォレット」タブから「コード支払い」を選び、タブレット搭載のカメラで読み取らせることで支払いができるという。

タクシー業界では配車アプリの浸透とともにキャッシュレス決済の多様化が進んでおり、今後もさまざまな決済サービスが採用される可能性は高そうだ。

■タクシー業界、進むキャッシュレス化 PayPay、第一交通が導入開始(2018年11月30日付)

福岡県に本社を構える第一交通産業は、PayPay株式会社が提供するスマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」を2018年11月29日から福岡市内と北九州市内において導入開始した。タクシー業界ではキャッシュレス化が進んでおり、配車アプリの浸透ともに決済サービスの動向にも注目が寄せられている。

タクシー業界では従来の現金支払いのほか、クレジットカードをはじめ「Suica(スイカ)」などの電子マネーや「Apple Pay」や「Google Pay」といったスマホ決済などが浸透しており、2018年11月にはQRコード決済機能を持った「LINE Pay」や「PayPay」を新たに導入する動きも相次いでいる。

「PayPay」を導入した第一交通産業は、当初はタクシー約1000台へ導入し、順次全国のグループタクシー約8200台に拡大していく方針だ。一方、約7万台のタクシーが呼べるアプリ「JapanTaxi」を展開するJapanTaxiは2018年12月から、タブレットを搭載した全国のタクシーにおいて「LINE Pay」のスマートフォン支払いを導入している。

日本政府は「日本再興戦略」の中でキャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上を掲げており、経済産業省は2018年4月にキャッシュレス化促進に向け「キャッシュレス・ビジョン」を発表している。国を挙げてのキャッシュレス化促進策により今後もさまざまな決済サービスが誕生するものと思われ、タクシー業界をはじめさまざまな業界を巻き込んだ決済サービス競争は激化していく見込みだ。

■ウーバー、タクシー配車サービスで大阪進出 名古屋に続き日本2カ所目(2018年12月3日付)

米ライドシェア大手ウーバー・テクノロジーズは2018年12月3日、大阪のタクシー会社である株式会社未来都と協業し、2019年1月ごろから大阪でタクシー配車サービスをウーバーのアプリを通じて展開すると発表した。同社は9月にもフジタクシーグループとの提携のもと名古屋市でサービスを開始しており、国内タクシー事業者との連携拡大を図っている。

ウーバーは早くから日本に進出し、本家本丸のライドシェア事業の展開を模索していたが、道路運送法上白タク行為に当たるとしてライドシェア事業の中止を余儀なくされていた。その後、料理をデリバリーするウーバーイーツなどの事業を手掛け、2018年初旬にタクシー会社との連携・協業を重視する戦略を打ち出し、プラットフォーマーとしての事業展開に本格着手した形だ。

11月には、ソフトバンクグループのリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社が手掛けるタクシー配車管理システム「SMART」とステータス情報連携をスタートさせた。リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ社のSMARTは車載メーターからタクシーの営業状態を常時取得する機能を有しており、今回のシステム連携で取得した営業状態がウーバー側にも提供されることになる。

ウーバーのタクシー配車サービスは今後他都市でも展開予定で、同様に勢力拡大を目指す中国のDiDiなどとのシェア争いはますます熱気を帯びそうだ。

■大和自動車交通、台湾のタクシー最大手「台湾大車隊」と業務提携(2018年12月5日付)

東京でタクシー事業を展開する大和自動車交通株式会社は2018年12月5日、台湾のタクシー事業者最大手「台湾大車隊」と業務提携の本契約を締結し、相互配車アプリサービスを開始したと発表した。タクシー事業者間における国際的なシステム連携について同社は「実用化は日本初」としており、今後注目が集まりそうだ。

両社は8月に業務提携を結んでおり、日本人と台湾人が両国相互にタクシーや空港送迎サービスを利用しやすいようにすることを目指すこととしていた。

相互配車アプリサービスでは、日本ユーザーは大和自動車交通のホームページからの事前予約により、台湾大車隊タクシーの台湾観光タクシーと桃園空港送迎サービスを利用できるほか、同社のタクシー配車アプリからの事前予約により台湾大車隊タクシーの桃園空港送迎サービスを利用できる。アプリは現地でも利用可能で、台湾大車隊タクシーを即時配車注文できる。台湾ユーザーも同様に台湾大車隊のアプリを日本で使用することができるようになった。国をまたいだ同業者による国際間MaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)と言えそうだ。

同社はこのほかにも、需給状況に合わせて料金を変動するダイナミックプライシングや事前料金確定、AI需給予測などの実証実験にも取り組んでおり、次世代に向けたタクシー業界改革の急先鋒として今後の取り組みにも要注目の存在だ。

■【速報】DeNA、東京で「0円タクシー」の運行開始 広告宣伝費活用して乗車料金無料に(2018年12月5日付)

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は2018年12月5日、タクシー配車アプリ「MOV(モブ)」のサービスを同日から東京都内で開始し、プロモーション活動の一環として乗客の利用料金が無料となる「0円タクシー」の走行もスタートさせることを発表した。

0円タクシーは、新たな移動体験をさまざまな形で実現する取り組みとして進める「PROJECT MOV」の第1弾。発表によれば、契約スポンサーとMOVの広告宣伝費から乗客の乗車料金を支払うことで、乗車料金が無料になる。期間は12月31日まで。

タクシー運賃は本来公定幅運賃に収める必要があるが、今回のケースはDeNAがタクシー会社と運送契約を結び、DeNAが時間貸しでタクシー会社に運賃を支払っている形のため適法なプロモーションとなっている。

この0円タクシーにより、乗客と交通事業者をマッチングする2者間モデルから企業などを巻き込んだ多者間マッチングモデルへと進化させる狙いがあり、今後、好みの車種やユーザー評価の高い乗務員を選択できる仕組みなどの付加価値の提供なども予定するなど、技術革新・ビジネスモデル革新の観点から新たなモビリティーサービスモデルを創出していくこととしている。

■プラットフォーマーの新規参入加速 MaaSの試金石に

MaaSの一翼を担うタクシー業界における配車アプリやキャッシュレス決済の浸透は、今後のMaaS分野にとって大きな試金石となる。コネクテッドカーなど今後普及が進む自動運転分野でもアプリやキャッシュレス化の動きは加速するものと思われ、タクシー業界などで実績を重ねたプラットフォーマーが有利な展開を見せる可能性は高い。

近い将来、自動運転車の実現によってライドシェアの是非も含めタクシー業界の様相は大きく変貌することが予想される。変革に向けた試行錯誤と新規参入の動きはまだまだ加速する見込みで、プラットフォーマーを軸に一定のグループ化が進む可能性なども考えられる。2019年の動向にも要注目だ。


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