Google、トヨタに「自動運転技術」を提供か?

ウォール街から予測と期待



ロボタクシーで自動運転市場を開拓してきたグーグル系Waymo。日本国内でのローンチ目標も正式に2027年と発表され、ますます勢いづいている印象だ。


しかし、そのコスト構造に疑念を抱くアナリストも少なくないようだ。事実、これだけの事業規模に育ったにもかかわらず、赤字は解消されていない。そこで注目されるのが、自動車メーカーへの技術提供だ。

タクシーとは比べものにならない膨大な市場を形成する自家用車市場に手を伸ばすことで、さらなる成長を遂げる――。そんな未来にウォール街のアナリストは期待しているようだ。

Waymoも、こうした選択肢を模索する取り組みを進めている様子で、将来、トヨタに自動運転システムをライセンス供与する展開も否定できない。

Waymoのロボタクシービジネスの動向とともに、その先に待ち受ける自動車メーカー×自動運転開発事業者の本格的なパートナーシップの行方について考察してみよう。


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■Waymoのロボタクシー事業の現状

ウォール街はWaymoの自家用車市場進出を期待?

米国の投資系メディアInvestor’s Business Dailyによると、Waymoがロボタクシーの収益性向上を示す兆候とともに新たな市場へ急速に事業拡大していることを受け、ウォール街ではグーグルやWaymoを傘下に収める持ち株会社アルファベットの株価上昇の可能性について話題になっているという。

同メディアの所見では、Waymoの自動運転技術の進化は、将来的に一般消費者向けの自動車市場への本格的な進出の足がかりとなり、グーグル(アルファベット)株の上昇につながる可能性がある――としている。

自動運転車であっても、その運用においては多くの作業が人間の手に依存する状況が続いており、今後10年間事業規模を拡大したとしても、ロボタクシーのみではWaymoの事業は伸び悩むのでは……とする見方もあるようだ。

それゆえ、ロボタクシー事業の経済性が厳しいことが判明した場合、Waymoは資本集約型の車両運用に加え、より利益率の高いライセンス事業モデルで補完する可能性があると指摘している。


既存の自動車メーカーに技術ライセンスを供与し、自動車メーカーはその技術を活用して高性能な自動車を販売したり、消費者にサブスクリプションサービスを提供したりする――としている。

例えば、Waymoはトヨタとパートナーシップを結んでおり、乗用車向けの自動運転技術の開発に取り組んでいるが、トヨタは今のところWaymoの技術を自家用車に持ち込んでいない。

過去、グーグルの自動運転チームに所属していたブラッド・テンプルトン氏は「配車サービスは、自動運転技術がもたらす主要な経済的機会の一つに過ぎない。Waymoは、労働力を必要としないUberを目指しているわけではない。Waymoは他の市場に非常に強い関心を持っている。一番の関心は自動車所有の代替であり、トヨタ、フォード、GMといった世界の自動車メーカーと協力し、彼らの車に技術を提供することだ」と語ったという。

Waymoの第6世代ロボタクシーは5万5000ドルから?

Ioniq 5ベースのロボタクシー=出典:Waymoプレスリリース

収益・採算面では、Waymoの第6世代センサーとコンピューティングシステムを含め、フル装備のIoniq 5ベースのロボタクシーの価格は5万5000ドルから6万5000ドル程度になるという。

Zeekr社と共同開発したOjaiに至って、フル装備で約12万5000ドル、ジャガーの I-Paceは15万ドルから20万ドル程度になるという。

Ojai=出典:Waymoプレスリリース

しかし、こうした車両製造コストは、Waymoが10万台の車両を生産する規模に拡大しても、総コストのわずか3分の1に過ぎないという。研究開発費や車両基地の建設費、充電費、車両清掃費、保険料、さらには人間による遠隔監視もコストとなるためだ。

モルガン・スタンレーによると、Waymoの収益面は、2026年に有料乗車で約5億7500万ドルの収益を上げると予測している。Waymoの乗車料金は、UberやLyftより高めに設定されている。

付帯費用をすべて除外すれば、純粋な乗車料金の観点からWaymoが黒字化するにはおそらく14~18カ月かかるという試算もあるようだ。

▼Waymo Is Scaling Robotaxis. But Consumer Cars Could Be The Real Prize.|Investor’s Business Daily
https://www.investors.com/news/technology/google-stock-waymo-robotaxi-auto-makers-licensing/

■Waymoの自動運転戦略

ロボタクシーの年間売り上げはまもなく10億ドル規模に?

Waymoはアルファベットの一事業に位置付けられているため、単体の収益などは公表されていないが、米メディアによると、2025年のWaymoの売り上げは3億ドル(約441億円)超に達する見通しだったことが報じられている。

Waymoは同年、テキサス州オースティンとジョージア州アトランタにサービスを拡大し、アリゾナ州フェニックス、カリフォルニア州サンフランシスコ・ロサンゼルスと合わせ一週間あたり30万回の有料配車を提供していた。

2026年には、ダラス、デンバー、ヒューストン、マイアミ、ラスベガス、ナッシュビル、オーランド、サンアントニオ、サンディエゴ、タンパまでサービスを拡張している。一部はセーフティドライバーが同乗しているが、近く無人化を果たす予定という。

有料配車回数は週50万回に達しており、2026年末までに100万回を目指しているという。週100万回の配車を実現すれば、年間売り上げはおそらく10億ドル(約1,560億円)規模となる。

Waymo共同CEOのテケドラ・マワカナ氏は、週100万回というKPIがWaymoにとって重要なマイルストーンになる旨述べている。損益分岐点に達するのかは不明だが、開発とサービス拡大局面はまだまだ続いているため、先行投資を踏まえればまだ赤字かもしれない。

従来のルールベース技術は一定水準に達しており、開発も一段落している可能性があるが、代わってエンドツーエンド(E2E)開発が加速しているものと思われる。こうした開発がどのタイミングで落ち着くのかが収益上大きな転換点になるものと思われる。

ロボタクシー市場には限界が訪れる?

今後、Waymo単体の黒字化やIPOなどに注目が集まることは間違いないが、気になるのは自動車メーカーを対象にしたライセンス事業モデルの存在だ。

ロボタクシー事業はまだまだ拡大の余地があり、他社と競合しながら世界を一通り網羅するまで伸び続けることが想定されるが、パイは限られている。現在のWaymoのロボタクシーは4,000台を超えており、2030年代前半には10万台規模に達すると予測されているが、グローバル路線を歩んでもなお10万台なのだ。

一方、自家用車市場に目を向けると、その市場規模はタクシーと比べ物にならないほど大きい。世界の新車販売台数は年間1億台に迫る規模だ。この自家用車市場にアプローチすれば、数十兆円規模まで売り上げを高められる可能性が出てくる。

そもそも、グーグル時代の自動運転開発プロジェクトは、自家用車の高度運転支援システム開発から始まっている。プロジェクト初期においては、ドライバーレスではなく、ドライバーの存在を前提としたレベル2~レベル3相当の技術開発・実装を目指すものだった。

ただ、社員で実証を重ねたところ、システム使用時の運転中、携帯電話を操作するなどのモラルハザードが多く確認されたため、ドライバーが介することなく自律走行可能な技術開発にシフトしたと言われている。

当時のグーグルは車両そのものの自社開発も進めていたため、自動車メーカーへの技術提供ビジネスを視野に収めていたかどうかは不明だが、選択肢の一つにはなっていたはずだ。

ドライバーレス開発にシフトし、ロボタクシー事業に向けWaymoを組織してからは、表向き商用車ビジネスが主体となっているが、水面下ではいろいろと模索し続けている可能性は高い。

ロボタクシー事業で世界の自動運転市場で覇権を握り、満を持して自家用車の自動運転化に向けライセンスビジネスを展開する――といった戦略を採用しても、不思議ではないだろう。

2025年にトヨタとパートナーシップ

事実として、Waymoはトヨタと市販車両の自動運転技術向上に向け議論を進めている。両社は2025年4月、自動運転の開発と普及に向けた戦略的パートナーシップに基本合意したと発表した。

▼トヨタとWaymo、自動運転の普及を加速する戦略的パートナーシップの枠組みに合意
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/42703314.html

ソフトウェアや先端技術開発を担うウーブン・バイ・トヨタも加え、新たな自動運転の車両プラットフォーム開発における協業を目指す方針で、Waymoの技術とトヨタのクルマづくりの知見を生かし、トヨタの将来の市販車両の自動運転技術の向上を共に模索していく。協業範囲、詳細については引き続き議論を進めていくとしている。

Waymoは、さまざまな車両プラットフォームや事業に柔軟に対応できる自動運転システムを開発しており、今回の戦略的パートナーシップを通じて、市販車両向けの技術の一部を導入していく予定という。

Waymoの共同CEOであるテケドラ・マワカナ氏は「この戦略的パートナーシップを通じて、トヨタの車両を当社の配車サービスに導入し、Waymoの自動運転技術でトヨタのお客様に感動を届けることを楽しみにしている」と述べている。

このコメントからは、ジャガーなどと同様Waymoの自動運転システムを統合したトヨタ車をロボタクシーフリートに加える――といった内容がうかがえるが、これと並行して市販車両の自動運転技術向上を検討していくということだろう。

流動的ではあるものの、Waymoはすでに自動車メーカーとの本格的な協業を進める段階に至っている――ということだ。これまでは、特定車両に自動運転システムを統合し、ロボタクシー向けに供給する――というものに留まっていたが、ロボタクシーを前提とせず共同開発を進めていくものと思われる。

E2Eの登場で自家用車の自動運転化に弾み

自家用車市場では、これまでルールベースに基づくレベル2+やレベル3開発が進められ、実装されてきた経緯がある。いずれも自動車メーカー自前の技術によるものだが、スピード感が乏しく、イノベーションを起こす規模には発展していない。

一方、自動運転分野ではE2E開発が主流となり、テスラ中国新興勢がレベル2++の実装を開始するなど、新たな道を切り拓き始めた。Waymoをはじめとする自動運転開発先行勢もルールベースからE2Eへのシフトを進めており、ルールベース×E2Eのハイブリッド化が始まっている。

高精度3次元地図の整備などが不要なE2Eは、どこでも走行可能であるべき自家用車との相性が高い。英Wayveと手を組んだ日産のように、自動運転開発企業と密接に手を組み、高度なADAS実装を進める動きも出てきた。今までもこうした提携はあったが、多くはルールベースを前提としたレベル4を見据えていたためハードルが高く、明確な成果は上がっていなかった。

自動運転開発における「ルールベース」「E2Eモデル」を解説!開発事業者の動向やトレンドも

E2Eを契機に自動運転開発企業と自動車メーカーの距離が縮まる?

しかし、E2Eの登場でゲームチェンジが起き始めており、レベル2(++)の実装から順を追ってレベル4実装に向かう道筋が明確に開かれた印象が強い。

自動車メーカー各社としては、自前でE2E開発を行うには時間が足りない。かと言って、独自技術で先行するテスラをはじめ、日産や中国勢のように開発企業と手を組み高性能ADASを実装する動きに対し、手をこまねいて指をくわえ続けるわけにはいかない。

Waymoのような開発企業も同様だ。ライバル他社が自動車メーカーと密接なパートナーシップを結ぶ動きを静観していては、いざ自家用車市場に進出しようと画策した際、手が空いているメーカーがいなくなってしまう。

E2Eを契機に、自動運転開発企業と自動車メーカーの距離が縮まり、自家用車市場でも鎬を削る――。そんな未来が近づいているようだ。

■【まとめ】ロボタクシーと自家用自動運転車は共存するのか

E2E技術が進化してレベル5に近づいた際、ロボタクシーと自家用車は融合していく可能性が高い。サービス前提の共用車か、独占使用できる個人所有車か……といった違いがあるが、車内の設え以外基本性能は同一化していくためだ。

社会的効率性を踏まえれば、共用サービスのレベル5が有利となるが、運賃の大幅低下が見込めなければ、レベル5自家用車の需要も依然として続いていくものと思われる。

自動車メーカーや自動運転開発企業が利潤を最大化する上で、どのような戦略を採用するのか。その戦略に自動車市場の未来は左右される。メーカー×開発企業の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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