テスラのロボタクシー ヒューストンで走行範囲「約10倍」に拡大 地図が「ロケット型」と話題に

推計約254平方マイル、同じ街で先行するウェイモの約5倍の広さに



出典:テスラ(Tesla Robotaxi公式Xアカウント)

米EV大手テスラ(Tesla)が10月26日、米テキサス州ヒューストンの自動運転タクシー、ロボタクシーのサービス範囲を拡大した。第三者の推計で約25平方マイルから約254平方マイルへ、約10倍に広がり、地図の形がロケットに似ていると話題になっている。同じ街で運行する米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)の範囲を大きく上回り、約5倍の広さとなる。

範囲は北西部のジャージー・ビレッジ周辺から、市中心部を囲む環状道路610ループの大部分へ広がった。モントローズやミッドタウンなども含む一方、ループ北東部は対象外だ。公式アカウントは「Houston, we have liftoff」と投稿し、テスラのイーロン・マスクCEOは「誓って偶然だ」と応じた。ただ、拡大直後から迂回や乗車地点の制限を訴える声も報じられている。


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■ヒューストンの自動運転ロボタクシー、範囲を「約10倍」に拡大

テスラのロボタクシー公式アカウントは10月26日、X(旧Twitter)で「Houston, we have liftoff」「Bigger service area now live」と投稿し、ヒューストンのサービス範囲の拡大を告げた。ヒューストンの宇宙開発の歴史を思わせる言葉に、新旧の範囲を比べる地図を添えている。

従来の範囲は、市中心部から約14マイル北西のジャージー・ビレッジ周辺が中心だった。今回は市中心部を囲む環状道路610ループの大部分と北西部をつなぐ形に広がり、市中心部のモントローズ、ミッドタウン、イースト・ダウンタウンも含む。ただしループ北東部は対象外のままだ。

面積は、ロボタクシーの動向を集計する民間サイトRobotaxi Tracker(ロボタクシー・トラッカー)の推計で約254平方マイルだ。平方キロに直すと約658平方キロに当たる。従来は約25平方マイルとされ、増えた分は約229平方マイル。約10倍、増加率にして916%になる。テスラは新しい範囲の面積を公表しておらず、数字はあくまで第三者の推計である。

地図の形はロケットに似ている。マスク氏はテスラの公式投稿の約7分後、地図を引用して「誓って偶然だ」と書き込んだ。マスク氏が率いるスペースX(SpaceX)のロケットを連想する声もあるが、テスラ側から意図の説明はない。


ヒューストンのロボタクシーは、4月18日にダラスと同時に始まった。前席に人が乗らない無人運行で、当初の範囲は約25平方マイルだった。今回が開始後初の拡大である。

同じ街では、米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)が2月から運行を始めている。テスラは先行する競合を追う形で範囲を広げた。

【自動運転ラボの視点】
テスラは自動運転タクシーの範囲を広げる速さで勝負している。ただ、事業の価値は地図の広さでなく、どこでも呼べて予定どおり着く運行品質で決まる。広さの数字だけで進捗は測れない。

■ウェイモの約5倍の広さ、でも車両は推計34台

広さではテスラがウェイモを大きく上回る。ウェイモのヒューストンの運行範囲は約49平方マイルとされ、テスラの新しい範囲は約5倍に当たる。ウェイモも5月に範囲をほぼ50平方マイルへ広げているが、今回の拡大でテスラの範囲はその大半を取り囲む形になった。ただし両社の測り方は異なり、数字は厳密な比較にはならない。


一方、走る車の数は追いついていない。Robotaxi Trackerは、ヒューストンの無人運行の電動SUV、モデルY(Model Y)を34台と数える。3か月前の22台からは増えたが、範囲の伸びには遠く及ばない。単純に割ると、1台で約7.5平方マイルを受け持つ計算だ。この台数は目撃情報を集めた推計で、テスラは台数を公表していない。

同様の状況は、テスラが最初にロボタクシーを始めた米テキサス州オースティンにもあった。6月に都市圏全域へ広げた時点で、トラッカーが数える無人車は約20台。現在は397台に増えている。ヒューストンでも台数が追いつけば、評価は変わる可能性がある。広がったのは地図の面積であり、すぐに使える車の数ではない。

【参考】関連記事としては「テスラ ロボタクシー増加へ 早くもWaymoの1/3規模まで急成長」も参照。

■地図は広がったが乗れない場所も、迂回と乗車地点の制限が表面化

拡大から2日後、課題が表に出た。10月28日の現地報道によると、Robotaxi Trackerを運営するEthan McKanna(イーサン・マッカナ)氏が拡大後の状況を検証した。同氏は元テスラ従業員で、拡大後にヒューストンのロボタクシーへ実際に乗っている。

検証では、公開された範囲の内側にあるダウンタウンで乗車地点を指定すると、アプリに「location not available(その場所は利用できません)」と表示された。2ブロックしか離れていない移動に、約40分の所要時間が表示された例もある。マッカナ氏は、ロボタクシーが鉄道の踏切を避けているのではないかとみる。ヒューストンについては、実際には使えない部分を含む「偽」のサービス範囲として、これまで見た中で最も極端な例だと評した。

利用者の声も出ている。米メディアBusiness Insider(ビジネスインサイダー)によると、テスラ愛好家のHy Luu氏は、自宅から職場まで約13マイルをロボタクシーで移動した。車が来るまでに約25分、乗車後は約80分かかり、自分のテスラ車で走ると普段は約45分という。同氏は、待ち時間と迂回のため、多くの人は今のままでは使わないだろうと話している。

一方でマッカナ氏は、待ち時間は妥当で、範囲の広さも評価している。経路の問題はテスラが直すとみる。サービス範囲の中に使えない場所が残るのはウェイモを含む各社に共通し、経路の問題もテスラだけの課題ではない。

ただし、これらは個別の報告で、利用者全体の調査ではない。テスラからの公式な説明は確認できていない。待ち時間の課題は以前からある。ロイター通信は5月、オースティンで4月に3週間、1日8回ほど配車待ちを調べた結果として、15分を超える回が約半数、25分以上の回が4分の1を超えたと報じた。

【参考】関連記事としては「テスラの自動運転タクシー、呼んでも全然来ないと話題に」も参照。

■東京の自動運転タクシーは段階的に開始、ウェイモなど3社の2027年計画

日本では、東京で自動運転タクシーの計画が進んでいる。9月15日、ウェイモとタクシーアプリ大手のGO、タクシー大手の日本交通の3社が、2027年中に東京で国内初となる完全無人の商用タクシー運行を目指すと発表した。

出典:日本交通プレスリリース

車両は自動運転レベル4で走る。レベル4は、特定の条件下でシステムが運転のすべてを担う段階だ。一般の利用者向けは初日から無人で運行する計画で、GOとウェイモの両方のアプリで呼べるようにする。日本交通は運行管理や営業所の運営を担う。

台数は最初から100台ではない。サービス開始時には一定数の車両を投入し、東京都内の主要エリアで段階的に約100台まで増やす方針だ。まず許認可を得てウェイモの社員向けに試験運用し、その後に一般の利用者へ広げる手順を示した。

開始日と運行エリアは未発表で、料金は今後詰める。GOの川鍋一朗会長は、国土交通省や警察庁、東京都、走行する区の同意が必要で、まだ決まったわけではないと強調した。3社は2025年から都内7区で公道の試験走行を続けており、現在は日本交通の乗務員が同乗している。

テスラは範囲を先に広げ、運行品質の改善を後から進める形となっている。一方、東京は許認可と検証を経て、台数を絞って段階的に広げる計画だ。どちらが適切かは現時点では判断できないが、範囲の広さが必ずしも使い勝手につながらないことは、ヒューストンの事例からうかがえる。

ウェイモ ロボタクシーを2027年末までに2万台へ急増 東京は100台規模

■自動運転ロボタクシーの約10倍拡大、運行品質の改善が焦点

テスラのヒューストンでのサービス範囲は、推計で約254平方マイルと約10倍に広がった。ただ、範囲内のどこでも配車でき、予定どおりに到着できるとは限らない。公開範囲の内側で乗車地点を指定できない例や、2ブロックの移動に約40分の所要時間が表示された例も報告されている。

今後は、乗車地点の制限や迂回の改善、範囲に見合う車両の増加、配車待ちの短縮が課題となる。テスラは年内にロボタクシーの24時間運行を目指すと決算説明会で述べたと報じられている。範囲の拡大と運行時間の延長が重なる中、運行品質を保てるかが注目される。

日本では、2027年中の開始を目指す東京の自動運転タクシーが、台数も範囲も段階的に増やす計画だ。テスラの自動運転ロボタクシーがヒューストンで運行品質をどこまで高められるか、今後の動向に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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