
独自動車大手フォルクスワーゲン(Volkswagen)の中国法人が10月26日、安徽省合肥で自動運転レベル3の公道試験許可を取得したと発表した。すでに実際の道路での走行とデータ収集を始めている。
2027年にレベル3技術の準備完了を目指しており、搭載車の納車は早ければ2027年後半だ。ただし今回の許可は試験用で、顧客に車を売るための販売認可ではない。中国は7月に、自動運転レベル3・4搭載車向けの強制安全規格を公布済みで、施行は2027年7月1日となる。日本では国内自動車大手ホンダ(Honda)の高級セダン「レジェンド」が世界初のレベル3搭載車として発売されてから5年以上がたつが、日本勢の後続の市販車は出ていない。中国で量産化を目指すフォルクスワーゲンの動向が注目される。
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■フォルクスワーゲンが中国で始めた「自動運転レベル3の公道テスト」
今回取得したのは、実際の道路で自動運転レベル3の試験を行い、大規模にデータを集めるための許可だ。フォルクスワーゲンの中国法人が10月26日に発表し、現地での走行はすでに始まっている。対象の車種や試験ルート、試験車両の台数は公表されていない。
レベル3は条件付き運転自動化と呼ばれる。決められた条件の中ではシステムが運転を担い、ドライバーは常に周囲を監視しなくてよい。ただしシステムから運転の引き継ぎ要請があれば、すぐに運転へ戻る必要がある。
現地法人のラルフ・ブランドシュテッターCEOは、実際の交通の中で試験とデータ収集ができる点を挙げ、レベル3の準備完了に向けた次の一歩と位置づけた。自動運転では安全性と信頼性を最優先する姿勢も強調している。
試験の場に選ばれた合肥は、同社にとって中国開発の中核だ。欧州以外で最大の研究開発拠点があり、約3,000人の技術者が働く。同社がこれまでに合肥へ投じた資金は、35億ユーロを超える。
同社によると、今回の許可は合肥市が改定したレベル3の規制の枠組みに沿ったものだ。許可の中身は、試験とデータ収集に限られる。
試験許可は入り口にすぎない。販売には別の承認が要り、2027年7月に規格が施行されれば、安全要件への適合も問われる。中国で制度が整うほど、外資にも現地に合わせた開発の速さが求められる。
【参考】関連記事としては「VW(フォルクスワーゲン)の自動運転戦略とは? 開発の進捗やロードマップは?」も参照。
■2027年に準備完了、納車は早ければ同年後半。フォルクスワーゲンのレベル3計画
フォルクスワーゲンは段階的な目標を掲げている。
- 2026年4月:中国法人の副社長が北京のフォーラムで、2027年にレベル3、2029年にレベル4を実現すると表明
- 2026年7月22日:合弁会社を通じた開発をさらに深める計画を発表
- 2026年10月26日:合肥でレベル3の公道試験許可の取得を発表
- 2027年:レベル3技術の準備完了が目標(納車は早ければ同年後半)
その合弁会社がCARIZON(カリゾン)だ。フォルクスワーゲンのソフトウェア子会社CARIAD(カリアド)と、中国の半導体・AI企業Horizon Robotics(ホライゾン・ロボティクス)が、2023年12月に設立した。本社は北京にある。フォルクスワーゲンが約24億ユーロを投じ、60%を出資している。
7月の発表では、CARIZONがHorizon RoboticsのAI基盤モデルを使い、独自の自動運転ソフトを開発するとした。レベル3搭載車の納車は、早ければ2027年後半に始まる計画だ。自社開発を進める車載半導体C7Hは、レベル4まで対応できる設計とされる。
ただし、2027年の目標は、技術として量産できる状態にすることを指す。市場投入までを意味するものではない。10月26日の発表が述べたのも、2027年の準備完了までだ。顧客が実際にレベル3機能を使えるかどうかは、規制当局がどのような条件で商用利用を認めるかにも左右される。
【参考】関連記事としては「VWの命運握る「CARIAD」とは?自動運転ソフト開発などに注力」も参照。
■試験許可と販売認可は別物 中国のレベル3ルール整備の進捗
今回の許可と販売認可は、役割がまったく違う。試験許可は、メーカーが指定された区間で条件付きの自動運転を試すためのものだ。一方、製品承認を受けた車は、指定区間での公道使用の試行に参加できる。
中国で製品承認が出たのは、2025年12月が初めてだった。中国の工業情報化部が15日、中国自動車大手の長安汽車が開発したDeepal(ディーパル)SL03と、北京汽車集団(BAIC)傘下のArcfox(アークフォックス)のAlpha Sに、条件付きで承認を出した。
使える範囲は厳しく絞られている。Deepal SL03は重慶の指定区間で、渋滞時に同じ車線を走る場合に限り、最高時速50キロまで。Alpha Sは北京の指定区間で、最高時速80キロまでだ。
10月下旬には、工業情報化部の幹部が業界会議で、第2陣の承認作業が進んでいると明らかにした。対象のメーカーや車種、時期は示していない。
ルール面では、強制安全規格の施行が控えている。レベル3とレベル4の自動運転システムが満たすべき安全要件を定めたもので、国の標準化当局が7月30日に承認した。施行は2027年7月1日。乗用車や貨物車などが対象で、自動駐車システムは含まない。
規格はレベル3について、運転の引き継ぎの安全を重視する。システムはドライバーが運転に戻れる状態かどうかを監視し、熟練したドライバーと同等以上の安全性を満たす必要がある。
フォルクスワーゲンが納車を目指す2027年後半は、この規格の施行直後にあたる。現地報道によると、今回の許可は中国の現行の規制枠組みと、安全設計に関する最新の強制要件のもとで出されたという。
【参考】関連記事としては「中国でついに「自動運転車」がナンバープレート取得」も参照。
■日本の「世界初」レジェンドと、中国で量産へ向かうレベル3
日本のレベル3は、ホンダの高級セダン「レジェンド」が先陣を切った。国土交通省は2020年11月11日、レベル3の自動運転車として世界で初めて型式指定を出した。発売は2021年3月5日だった。

ただし販売は限定100台のリースで、価格は1,100万円。通常モデルの724万9,000円を大きく上回る。作動するのは高速道路などの渋滞時で、作動を始める時点で時速約30キロ以下、作動中は約50キロ以下という条件がついた。
100台に絞った理由について、日本本部長を務めるホンダの寺谷執行職は、100人の顧客に丁寧なアフターサービスをするためだと説明した。
そのレジェンドは、すでに販売を終えている。ホンダは2021年6月、狭山工場の閉鎖に合わせて同年いっぱいでレジェンドの生産を終えると発表した。自動運転ラボの解説記事も、レベル3搭載車は現在、市場に出回っていないと伝えている。レジェンド以降、日本勢から自家用の自動運転車が市販化されることはなかった。
一方、中国では量産に向けた制度が動く。2025年12月の製品承認、2027年7月施行の強制安全規格と、段階を踏んでルールを固めている。フォルクスワーゲンの試験許可も、こうした制度整備のもとで出された。日本が先に市販しながら後続が出ていないレベル3で、中国は制度整備を先行させている。
【参考】関連記事としては「国産の自動運転車、5年間「発売ゼロ」に」も参照。
■フォルクスワーゲンの自動運転レベル3、2027年の量産化の行方
2027年は、フォルクスワーゲンにとって準備完了の年であり、中国にとって強制安全規格が動き出す年でもある。今回の自動運転レベル3の公道テストは、その第一歩となる。今後は、規格に適合する車両を完成させ、販売認可を得て顧客に届けることが求められる。
10月28日、同社は合肥で初のTechnology Day(技術発表会)を開いた。中国で開発した技術を、中国の外にも広げる方針を打ち出している。同社の発表によると、中国で開発した技術を現地生産車に使う最初の地域は南米で、2030年より前になる見通しだ。
海外では、レベル3の普及に課題も見えている。独高級車大手メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)は2026年1月、レベル3機能Drive Pilot(ドライブパイロット)の展開を一時停止すると報じられた。新型Sクラスへの搭載は見送られる。需要の低さと、高い開発・製造費用が理由とされる。
海外の報道によると、業界にはレベル3を飛ばして無人運転のレベル4へ進むべきだという主張もある。一方で、フォルクスワーゲンは個人が車を所有したい需要を見込んでレベル3を選んだとの見方も出ている。
中国で規格と承認の整備が進む中、レベル3の量産が本格化するのか。2027年に向けたフォルクスワーゲンの動向に注目したい。













