
米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)が、ドイツのミュンヘンに現地法人Waymo Germany GmbHを設立した。ミュンヘンはBMWの本拠地であり、欧州自動車産業の中心地である。Googleのロボタクシーが、自動車王国ドイツの中枢に足場を築く動きと言える。
法人は5月に設立され、6月にミュンヘンの商業登記所へ正式登録された。登記上の事業所はGoogleのミュンヘンオフィスに置かれ、ベルリンやミュンヘンではテストドライバーや車両トレーナーの採用求人も浮上している。今回のドイツ進出は、ロンドンや東京に続く国際展開の一手である。ただし現時点はあくまで法人登記の段階であり、商用サービスの開始ではない。
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■Googleロボタクシーがドイツ上陸
Waymoがドイツに現地法人Waymo Germany GmbHを設立した。法人は5月13日に設立され、6月15日にミュンヘンの商業登記所へ正式登録されている。登記上の事業目的には、自動運転車によるライドヘイリングサービスの提供と、第三者事業者による同種サービスの商業展開への支援が含まれる。
登記上の事業所は、Googleのミュンヘンオフィスに置かれた。ミュンヘンはBMWの本拠地であり、メルセデス・ベンツの拠点があるシュトゥットガルトからも1時間圏内、フォルクスワーゲンのソフトウェア部門Cariad(カリアド)の拠点にも近い。ドイツ自動車産業の中枢と言ってよい土地である。そこにGoogle系の自動運転企業が乗り込む構図は、象徴的な意味を帯びる。
もっとも、Waymo自身は公式にドイツ参入を発表しておらず、登記についてのコメントも避けている。現段階は法人登記であって、ロボタクシーの商用サービスが始まったわけではない。
登記は進出の号砲ではなく準備の第一歩である。自動車王国への静かな挑戦状であり、欧州の勢力図を塗り替える起点になりうると言える。
【参考】関連記事としては「Googleロボタクシー、金持ち優遇の「優先パス」を発表」も参照。
■ベルリン・ミュンヘンではドライバーやトレーナーの採用求人も
法人登記とあわせて、ベルリンとミュンヘンではテストドライバーや車両トレーナーの求人が出ている。いずれも自動運転車を公道で監視し、走行データを集める役割である。Waymoの動きは、いきなりの商用展開ではなく、現地での体制づくりという準備フェーズに位置づけられる。
Waymoが海外市場へ入る際の標準的な手順は、法人設立、高精度地図の作成、現地事業者との提携、規制当局との対話、監視付きのテスト走行という流れをたどる。公開乗車が始まるまでには、数か月から数年かかるのが通例だ。ドイツでもこの順を踏むとみられる。求人がテストドライバー中心である点も、販売攻勢ではなく地道なデータ収集の段階であることを物語る。
ベルリンやミュンヘンの道路は、自転車やトラム、狭い街路、独特の優先ルールが入り混じる。米国フェニックスやマウンテンビューの環境とは大きく異なり、現地で走り込んで学ぶしかない。求人による人材確保は、その学習を支える布石と言える。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマの求人、「年収1000万」到達」も参照。
■ロンドン・東京に続く第3弾、Waymoの国際展開
今回のドイツ進出は、Waymoの国際展開の流れの中にある。先行するのがロンドンと東京だ。
ロンドンでは現在、人間が運転する車両による地図作成とデータ収集の段階にある。Waymoは規制枠組みが整うことを前提に、2026年内の商用ライドヘイリングサービス開始を目指している。実現すれば、米国外で初めての営業都市となる。ただし時期は規制当局の承認次第であり、確定したものではない。
東京では、国内最大手のタクシー配車アプリGOと日本交通が提携し、データ収集を進めている。日本交通の乗務員が運転席に座る形で、港区や渋谷区など7つの区を走行し、日本の道路環境への適応を図っている段階だ。こちらも商用サービスにはまだ至っていない。
ドイツはこのロンドン、東京に続く国際展開の一手である。各都市はそれぞれ到達フェーズが異なり、ロンドンが最も先行し、東京がテスト中、ドイツは登記の段階にある。Waymoが都市ごとに着実に布石を打っている様子がうかがえる。
【参考】関連記事としては「【レビュー】テスラ・Waymo・日産の自動運転車に乗った人の感想 快適、怖い、それとも?」も参照。
■欧州ロボタクシー争奪戦、Baidu・Momenta・Wayveも参戦
Waymoが乗り込むドイツの自動運転タクシー市場は、すでに競争が激しい。複数の有力企業が、それぞれの形で欧州での足場づくりを進めている。
中国IT大手のBaidu(バイドゥ)は、ロボタクシー車両RT6を2026年にドイツと英国でLyft(リフト)アプリ上に投入する計画を表明している。こちらも規制当局の承認待ちだ。配車大手のUber(ウーバー)は、イスラエルのAI企業Autobrains(オートブレインズ)と組み、ミュンヘンでのロボタクシー投入を狙う。中国の自動運転企業Momenta(モメンタ)は欧州でテストを進め、英国の自動運転企業Wayve(ウェイブ)はUberとともにロンドンの立ち上げを準備しながら、ドイツの公道でもテスト走行を行ってきたとされる。
つまりドイツは、米国勢、中国勢、欧州・イスラエル勢が入り乱れる激戦区になりつつある。ロボタクシー市場の主導権を握ろうとする各社にとって、自動車王国ドイツは避けて通れない要衝だ。Waymoの登記は、この争奪戦に正式に名乗りを上げた合図と読める。
【参考】関連記事としては「トヨタ出資のロボタクシー「May Mobility」 中国で10万台規模で展開へ」も参照。
■まとめ:欧州自動車王国に上陸したGoogleのロボタクシー戦略
Waymoのドイツ進出は、単なる法人登記という事務手続きにとどまらない。BMWやメルセデス、フォルクスワーゲンが本拠を構える自動車王国の中枢に、Googleのロボタクシーが足場を築いたという象徴的な出来事である。
背景には潤沢な資金がある。Waymoは2026年2月にAlphabetと外部投資家から160億ドルを調達し、企業価値は1260億ドルと評価された。米国では11都市で週50万回を超える自動運転走行を提供し、国内外でさらに21都市への展開を計画している。ドイツの小さな登記は、この巨大な世界戦略の一部に位置づけられる。
ただし欧州の規制は国ごとに分かれており、ハードルは高い。ドイツは6月にフランスやイタリアらと自動運転テスト基準の協調に向けた宣言に加わったが、運用上の承認経路はまだ整っていない。商用化までの道のりは平坦ではない。それでも、ロボタクシー争奪戦の主戦場が欧州自動車王国へと移りつつあることは間違いない。Googleの自動運転車がドイツ進出に踏み出したこの一手は、欧州の勢力図を占ううえで見逃せない一歩だ。













