トヨタに日産が宣戦布告、 SBG孫会長が惚れ込んだ自動運転技術を使って90%自動運転化

トヨタより一歩先の自動運転を狙う



日産トヨタへの「宣戦布告」とも取れる発表を行った。2026年4月14日、日産は長期ビジョン「Mobility Intelligence for Everyday Life」を発表し、全モデルの90%に自動運転技術を搭載するという野心的な計画を表明した。


使う技術はSBG(ソフトバンクグループ)の孫正義会長が出資する英国AIスタートアップ・Wayve(ウェイブ)のAIドライバーソフトウェアだ。5,500億円超の純損失を見込む赤字企業が、自動運転を「新たな収益の柱」に据えて大勝負に出た。

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■日産、全車種の90%を自動運転化へ

今回の発表で日産が掲げた最も大きな目標が「長期的に全モデルの90%にNissan AI Drive技術を展開する」という数字だ。CTO(最高技術責任者)の赤坂英一氏が直接発言したこの数字は、現時点の達成ではなく長期的な目標として示されたものだ。あわせて現在56車種のラインナップを45車種に絞り込む方針も発表しており、選択と集中でAI技術の搭載を加速させる戦略だ。

日産は今回の技術戦略を「Nissan AIDV(AI定義型車両)」と呼ぶ。Nissan AI Drive(自動運転技術)とNissan AI Partner(車内AI・音声アシスタント)の2本柱で構成されており、エスピノサCEOは「これは技術の進化であると同時にビジネスモデルの変革だ。新たな収益の柱を構築する」と強調した。「自動運転モード中はユーザーをキャプティブにできる」とも述べており、ソフトウェアとサブスクリプションによる収益モデルへの転換という意図も明確だ。


トヨタより一歩先の自動運転を狙う

トヨタのAdvanced Driveが高速道路でのハンズオフ(手は離せるが目は前に向けたまま)のレベル2+にとどまるのに対し、日産が目指すのは一般道でもハンズオフが可能な水準だ。次世代ProPILOTは11台のカメラ・1台の次世代LiDAR・5台のレーダーを搭載しており、銀座エリアでの試乗取材では東京タワー近くを出発し、歩行者・複雑な交差点・渋滞の中をエンジニアが足を組み手を膝に置いたまま走行した ADAS開発担当の飯島哲也執行役員は「人間と同等かそれ以上」と発言している。なお現時点でのWayve AIはカメラ映像のみを使って判断しており、LiDARとレーダーは付加的なセンサーとして機能する設計だ。

■ソフトバンクグループが出資するWayveの自動運転技術を活用

次世代ProPILOTの核となる AIを提供するのが、英国ロンドンに拠点を置くAIスタートアップ・Wayveだ。2017年にAlex Kendall(現CEO)とAmar Shahがケンブリッジ大学の研究をベースに共同創業し、現在はロンドンを拠点として活動している。ソフトバンクグループ(SBG)がシリーズCの主要投資家として出資しており、SBGの自動運転分野への関与を象徴する企業の一つだ。

Wayveの特徴は「エンボディドAI(具現化AI)」と呼ばれる基盤モデルのアプローチだ。センサーデータから直接操舵・加減速を出力するエンドツーエンドAIで、ルールベースの従来システムに比べて新しい状況への適応が速い。膨大なリアルワールドデータから人間の運転を学習することで、複雑な都市部の交通状況にも柔軟に対応できるとしている。日産との協力ではセンサーデータ処理と状況判断アルゴリズムの開発で連携している。


Wayveはロボットタクシーの文脈でも存在感を増している。2026年3月にはWayve・Uber・日産の三社が基本合意書(MOU)を締結し、2026年末を目標に東京でロボタクシーのパイロット展開を目指すと発表した。ロンドンではGoogleの親会社Alphabetが出資するWaymoのロボタクシーと競合する「英国発・世界展開」の筆頭格で、世界のロボットタクシー市場でシェア1位のWaymoを追う存在として注目を集めている。

■エルグランドが第一弾、その背景

今回の発表で第一弾として選ばれたのは、日本市場向けの大型ミニバン「エルグランド」だ。新型エルグランドは2026年夏の発売が予定されており、次世代ProPILOT(Wayve AIドライバーソフト搭載)は2027年度末、すなわち2028年3月末までに採用される計画だ。なお発売時点と次世代ProPILOT搭載のタイミングに差があることについて、日産の公式発表では「2026年 summer発売のエルグランドに、FY2027末までに次世代ProPILOTを採用する」とのみ記載されており、発売時の仕様や後日ソフトウェアアップデートでの追加の有無については明示されていない。

エルグランドを第一弾に選んだ背景には、複数人が長時間乗車するミニバンこそ自動運転の価値が最大化されるユースケースという判断がある。エスピノサCEOは「自動運転のミッションは手頃な価格で、非常に安全で、超スムーズであること」と述べており、プレミアム車種に限定せず広く普及させる方針を示した。実際、米国でのNissan Rogueにはすでに高速道路ハンズオフが搭載されており、次世代システムが高価格帯に限定されない可能性を示唆している。

■5,500億円の赤字で「なぜ今」。日産の現状と大勝負の背景

今回の発表は2026年3月期に5,500億円超の純損失を見込む厳しい経営環境の中でのものだ。日産は当初6,500億円の純損失を予想していたが、2026年4月27日の業績修正で5,500億円に縮小した。それでも依然として大きな赤字であり、復興日産プランを推進しながらの長期ビジョン発表という異例の状況だ。

エスピノサCEOは「Recovery(復興)プランを超えて先を見据えるための長期ビジョンだ。今が転換点だと判断した」と述べた。中国市場でのBYDなど中国勢の台頭、EV化での出遅れという逆風の中で、自動運転というソフトウェアとサービスの収益モデルへの転換を活路として打ち出した形だ。日本のアナリストは「明確な技術ロードマップを示した点は評価できる。ただし一般道でのハンズオフは技術・規制の両面でハードルが高く、2027年度末の実現が最大の焦点になる」とコメントしている。

■トヨタ・ホンダと何が違うのか。国内3社の自動運転戦略を比較

日産の今回の発表をより鮮明に理解するために、トヨタとホンダの現状と比較してみよう。トヨタの市販車での自動運転最高水準は高速道路でのハンズオフ可能なAdvanced Drive(レベル2+)にとどまっており、自動運転レベル4はサービス車両のe-Paletteで2027年度目標という別路線だ。ホンダはHonda 0 SALOONの北米向け開発を2026年3月に中止しており、インド・日本向けのHonda 0 αは2027年継続予定だが、レベル3の市販車搭載という意味では2021年のLEGEND以来の実績に留まっている。

日産の差別化ポイントは「一般道でのハンズオフ」と「90%という全車種への拡大目標」の組み合わせだ。Wayveという外部AIとの連携については、かつてホンダがGMのCruiseとの提携失敗を経験した記憶を呼び起こす向きもある。ただしWayveは自動運転技術開発に特化したスタートアップであり、GMのCruiseとは事業構造が異なる。Wayveと日産の連携はすでに2025年4月から公式発表されており、2026年末の東京ロボタクシーパイロットという具体的な計画も動いている。

■「逆襲」は成功するか。2027年度末が最初の答え合わせ

5,500億円超の赤字の中でのビジョン発表は、日産の覚悟の表れと見ることができる。ProPILOTの25年の実績とWayveのAI技術が掛け合わされれば、一般道でのアイズオフという未踏の領域に国内メーカーとして最初に踏み込める可能性がある。90%という目標の達成が長期的なものであることは日産自身も認めており、まずは2027年度末のエルグランドへの搭載成功が第一の関門となる。

SBGが出資するWayveと連携し、Uber・日産・Wayveのロボタクシー計画も並走する。自動運転という大きな賭けに出た日産の掛け算戦略が実を結ぶか、期待を持って注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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