日本の自動運転と経済産業省(2022年最新版)

「RoAD to the L4」やIT人材戦略などの取り組み



自動運転技術の実用化に向け民間における開発が高まりを見せているが、早期社会実装には国の支援が欠かせない。







この記事では、国の機関として国土交通省とともに主翼を担う「経済産業省」に焦点を当て、その取り組みに迫っていく。

■実証関連
ラストマイル自動運転サービスや高速道路におけるトラック隊列走行

経済産業省が国土交通省とともに取り組んできた自動運転実証の代表例は、ラストマイル自動運転サービス実証と高速道路におけるトラック隊列走行実証だ。

ラストマイル自動運転サービスでは、2020年度までに限定地域における無人自動運転移動サービスの実現を目標に据え、自動運転カートを活用した実証や中型自動運転バスの実証などを進めてきた。

遠隔監視・操作型の自動運転カートは福井県永平寺町と沖縄県北谷町でサービス実装され、レベル3相当の技術で運行を開始している。中型自動運転バスは全国5カ所で実証を行い、限定空間から混在空間に至るさまざまな環境を走行した。

【参考】永平寺町の取り組みについては「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

トラック隊列走行は、2020年度までに高速道路における後続車無人隊列走行技術の実現を目指すこととしており、2021年2月に新東名の遠州森町PA~浜松SA間で後続車の運転席を無人にした実証を行い、3台の大型トラックが時速80キロで車間距離約9メートルの車群を組んで走行することに成功している。

双方とも限定条件のもと目標を達成した形だが、これらの技術やサービスを拡大していくため2021年度から新たに取り組んでいるのが、後述する「RoAD to the L4」だ。

【参考】トラックの隊列走行については「自動運転トラックの隊列走行、割り込み発生にどう対処?」も参照。

スマートモビリティチャレンジ
出典:スマートモビリティチャレンジ公式サイト

将来の自動運転社会を見据え、新たなモビリティサービスの実装を通じた移動課題の解決や地域活性化を目的に経済産業省と国土交通省が力を入れているのが、地域と企業協働による意欲的な挑戦を促す「スマートモビリティチャレンジ」だ。

2019年度は、公共交通統合・端末交通の拡充や人口低密度地域内交通の拡充、貨客混載による事業性向上、自動走行導入に向けた試行など13地域が選定された。自動運転関連では、福島県浪江町、福井県永平寺町、滋賀県大津市、大分県大分市が自動運転バスや自動運転タクシーの導入に向けた取り組みを進めた。

2020年度は16地域が先進パイロット地域に選定され、このうち福島県南相馬市・浪江町・双葉町と長野県塩尻市が横断的取り組みとして自動運転を活用したMaaSに取り組んだ。南相馬市などは自動運転サービスの検証や巡回シャトルによる貨客混載運行システムの検証、塩尻市は遠隔制御体制の実用性検証やITインフラとの連携・安全性の評価検証、AIオンデマンド交通でのDPの検証などについてそれぞれ実証を進めたようだ。

2021年度は14地域が先進パイロット地域に選定され、自動運転技術との連携のもと、愛知県春日井市はオンデマンド型自動運転サービスを活用した貨客混載サービスの検証、沖縄県北谷町がレンタカーや航空機の接続最適化の効果検証、福井県永平寺町が走行データを活用した自家用有償ドライバーの質担保に向けた検討などをそれぞれ実証している。

▼スマートモビリティチャレンジ
https://www.mobilitychallenge.go.jp/

【参考】スマートモビリティチャレンジについては「2021年度のスマートモビリティチャレンジ、得られた知見は?」も参照。

■研究・戦略関連
自動走行ビジネス検討会

日本の自動運転開発・社会実装において大きな役割を果たしているのが、経済産業省と国土交通省が所管する自動走行ビジネス検討会だ。2015年2月の設置以来、自動車メーカーやサプライヤー、有識者らの参加のもと毎年自動運転実現に向けた取組方針を策定している。

ラストマイル自動運転サービスなどの取り組みが2020年度に一区切りを迎え、2021年度からは①限定エリアにおける遠隔監視のみのレベル4自動運転サービスを2022年度目途に実現し、基本的な事業モデルや制度設計を確立する②2025年度までにレベル4自動運転サービスを40カ所以上で実現し、多様なサービスに展開できる事業モデルやインフラ・制度を構築する③2025年以降に高速道路でのレベル4自動運転トラックやそれを活用した隊列走行を実現する④2025年ごろまでに協調型システムによってさまざまな地域の混在交通下においてレベル4自動運転サービスを展開すること――を目標に掲げた。

▼自動走行ビジネス検討会|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/index.html

【参考】自動走行ビジネス検討会の取り組みについては「【資料解説】自動走行ビジネス検討会「報告書案version 6.0」を読み解く」も参照。

RoAD to the L4

自動走行ビジネス検討会は、上述した目標達成に向け2025年度までの5年間に取り組むべき次期プロジェクト「RoAD to the L4」の立ち上げを2021年9月に発表した。

無人自動運転サービスの実現や普及、IoTやAIを活用した新しいモビリティサービスの普及、先進モビリティサービスに係る人材の確保・育成、先進モビリティサービスに係る社会受容性の醸成などについて計画的に進めていく構えだ。

▼「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」について|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/Automated-driving/RoADtotheL4.html

【参考】RoAD to the L4については「自動運転、「RoAD to the L4」とは?」も参照。

自動運転AIチャレンジ
出典:自動運転AIチャレンジ公式サイト

経済産業省は自動車技術会が主催する自動運転AIチャレンジを後援し、AIやIT技術者の育成・発掘に向けた活動を支援している。

今後の自動車業界を牽引する技術者の発掘・育成を目的に自動運転におけるAI技術を競う国際的な競技で、自動運転シミュレーターを活用したデータ収集からモデル構築、学習、データの強化とモデル改善をはじめ、自動走行モビリティを活用した走行競技などを行い、技術を競う。2018年度にスタートし、2022年4月に第4回大会が行われている。

▼自動運転AIチャレンジ|自動車技術会
https://www.jsae.or.jp/jaaic/

【参考】自動運転AIチャレンジについては「自動運転AIチャレンジ、第4回大会の参加者募集中!決勝は実車競技」も参照。

自動走行IT人材戦略

自動運転分野におけるIT人材不足を踏まえ、経済産業省は2019年4月、自動走行IT人材戦略を取りまとめた。

自動車工学とソフトウェアエンジニアリングを担えるIT人材の確保・育成・発掘に向け、同省のConnected Industries自動走行分科会が人材戦略ワーキンググループを立ち上げ、魅力ある人材育成・評価の仕組みづくりの在り方などを議論してきた。

戦略では、AIなどのトップ人材の引き込み・育成を進めるため、自動運転AIチャレンジのように情報系の学生や業界外のトップ人材を引き付けるイベントを拡大することや、自動車業界×ITの人材エコシステム構築を目指し、自動運転ソフト開発スキル標準に準拠した民間・大学講座・教材の開発を進めていくこととしている。

▼自動走行IT人材戦略
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/jinzai_senryaku/pdf/2018_001_00.pdf

自動車関連プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画

CASE関連では、グリーンイノベーション基金を用いて実施する予定の自動車関連プロジェクトの内容をまとめた研究開発・社会実装計画を2022年3月に発表している。主な内容は以下の2つで、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募を行う。

  • ①電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発プロジェクト
  • ②スマートモビリティ社会の構築プロジェクト

①では、膨大な電力を必要とする自動運転の車載コンピューティングは電動車の航続時間・距離に影響を与え、電動車普及の制約要因となる可能性があるため、徹底した車載コンピューティングの省エネ化に向け自動運転ソフトウェア・センサーシステム省エネ化の研究開発を実施する。

②では、バスやタクシー、トラックなどの業態別やEV・FCVなど動力別に異なるケースにおいて、エネルギーコスト・CO2排出量の最小化と運輸効率最大化に向けた運行管理のためのシミュレーションシステムの構築・検証などを進めていくこととしている。

■【まとめ】経済産業と国土交通省が両輪となって社会実装を加速させる

国土交通省は技術開発やインフラ整備などのハード面、経済産業省は事業継続性に目を向けたソフト面を中心に社会実装に向けたバックアップを行っている印象だ。

両省が両輪となって横断的に取り組むことで民間の開発が促進され、早期社会実装が実現する。引き続き両省、そして民間が一体となった取り組みに期待したい。

【参考】関連記事としては「日本の自動運転と国土交通省(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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