自動運転車、ホンダがレベル3発売へ!トヨタは商用車、日産はタクシーで勝負?

自動車メーカーごとに異なる戦略に?



ホンダが世界初の自動運転レベル3の市販化に大きく前進した。同社の自動運転システム「トラフィック・ジャム・パイロット(TJP)」が国土交通省の型式指定を取得したのだ。


TJPを搭載したフラッグシップモデル「LEGEND(レジェンド)」は2020年度中に発売予定で、世界初のレベル3実装量産車として注目が集まる。

また、ホンダの攻勢に対し、トヨタ日産はどのように動くのか。TJPの仕様とともに3大自動車メーカーの取り組みに触れ、各社の戦略に思いを巡らせてみよう。

■ホンダのレベル3自動運転システム

ホンダのTJPは、高速道路本線上での渋滞時において自動運転を行う。より厳密には、高速自動車国道や都市高速道路、及びそれに接続される自動車専用道路(一部区間を除く)が対象で、自車線と対向車線が中央分離帯等により構造上分離されていない区間や急カーブ、サービスエリア・パーキングエリア、料金所などは除外区間となる。

自車の速度がシステム作動開始前に時速30キロ未満、作動開始後は時速50キロ以下であることや、高精度地図や全球測位衛星システム(GNSS)による情報が正しく入手できること、走行中の車線が渋滞または渋滞に近い混雑状況であり、前走車と後続車が自車線中心付近を走行していること、強い雨や降雪による悪天候、視界が著しく悪い濃霧や強い逆光などにより自動運行装置が周辺の車両や走路を認識できない状況でないこと、ドライバーは正しい姿勢でシーベルトを装着することなどが走行環境条件として挙げられている。


国土交通省の参考資料によると、センサー類はカメラが前方監視向けに2基、LiDAR(ライダー)が前部フォグライト付近に2基、後部3基の計5基、レーダーが前部3基、後部2基の計5基で構成されている。外観を損なわないよう、各センサーとも車内やグリル内などに設置されているようだ。

このほか、サイバーセキュリティ対策やソフトウェアアップデート、作動状況記録装置、自動運転車であることを示す外向け表示のステッカー、ドライバーモニタリングシステムなどを搭載しており、自動運転に必要とされる保安基準をしっかりと満たしている。

■他社の状況
トヨタ、日産は今のところレベル3公式発表なし

トヨタは、2020年初冬発売予定のレクサスの新型LSにハンズフリー運転を可能とする高度な自動運転レベル2を搭載する予定だが、今のところレベル3に関する公式発表は行っていない。

一方、国内メーカーでいち早く高度なレベル2を実装した日産は、レベル3に対応したプロパイロットの進化版「プロパイロット3.0(仮)」の開発に期待がかかるが、こちらも発表は行われていない。


なお、日産は2020年5月発表の事業構造改革「Nissan NEXT」で2023年度までの4カ年計画を示しており、今後18カ月で12の新型車を市場投入する計画や電動化の推進、先進運転支援技術の拡大を掲げている。

レベル3はフラッグシップモデルに搭載される可能性が高いことから、両社とも今後の新車販売計画に注目したいところだ。

レベル4移動サービスが開発の軸に?

見方を変えると、トヨタや日産は移動サービスなどに適した自動運転レベル4の開発・実用化に力を入れている可能性も考えられる。

トヨタは、自動運転車を利用したモビリティサービス専用EV(電気自動車)「e-Palette(イー・パレット)」をはじめ、米配車サービス大手のUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)と自動運転技術を活用したライドシェアサービスの開発などを進めている。

e-Paletteは2020年代前半にサービス実証を進める予定で、東京オリンピック・パラリンピックでもお披露目される見通しだ。ウーバーとの協業では、トヨタのミニバン「シエナ」にウーバーの自動運転キットとトヨタのガーディアン(高度安全運転支援)システムを搭載し、2021年にもウーバーのライドシェアネットワークに導入して自動運転モビリティサービスを開始する予定としている。

予定通り進めば、2021年の五輪大会で改めてe-Paletteが活用されるほか、海外ではウーバーのサービスで実用実証が始まることになる。自家用車におけるレベル3も大事だが、モビリティカンパニーへのモデルチェンジを図るトヨタにとっては、こちらのほうが試金石となりそうだ。

一方、日産はDeNAと共同で新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の研究開発・実証を進めている。行きたい場所を直接指定する自動運転タクシーとしての活用や、やりたいことを音声などで入力することでおすすめの候補地を表示させるなど、移動サービスに付加価値を乗せたモビリティとなっている。2020年代早期に本格的なサービス提供を目指す方針だ。

また日産はルノーとともに、自動運転タクシーを世界で初めて商用化したグーグル系ウェイモと、ドライバーレス・モビリティサービスに関する独占契約を締結していることにも注目だ。今後、日本における乗客向けや配送向けのドライバーレス・モビリティサービス事業の実現をあらゆる側面から検討していくという。

自動運転タクシーに関しては、国内においては、ティアフォー勢とZMP勢も特に開発に力を注いでいる。自動車メーカーとしては唯一日産が直接関わっており、同社の本気度がうかがえる。

■【まとめ】2021年のビッグニュースに期待

レベル3で先行すると思われるホンダも、自動運転モビリティサービスやロボティクス・エネルギーなどを組み合わせた新しいサービスを企画・提供する事業会社ホンダモビリティソリューションズを2020年2月に設立しており、レベル4を見据えた開発も当然進めている。

各社とも自家用車におけるレベル3、移動サービス向けのレベル4の両方をしっかりと見据えているのだ。どちらも先行投資の意味合いが強く、新型コロナウイルスの影響で先行きが不透明な中どこまで開発と実装を進められるかは経営判断によるところだ。

いずれにしろ、2021年にはレベル3、レベル4双方でビッグニュースが飛び出す可能性が高い。各社の取り組みに引き続き期待したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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