自動運転実証が国内外で活発化!データマネジメント上の課題は?(特集:自動運転車1台あたり2PBの衝撃 第1回)

データ量、テラバイトからペタバイトへ



Waymo(ウェイモ)による自動運転タクシーサービスの開始からまもなく2年が経過する。自動運転技術の開発は世界各地で盛んに進められており、ウェイモに次ぐ企業が続々と誕生する時期を迎えつつある。

サービス化・実用化を見据えた公道での実証実験もいっそう加速傾向にあり、自動運転の実証実験はもはや珍しいものではなく、日常的な活動となっている。

こうした実証で気になるのが収集データのマネジメントだ。自動運転車から生成される膨大なデータは、どのように蓄積され、活用されるのか。

今回は、国内外の自動運転実証の実態をはじめ、生成されるデータ量や活用目的などに焦点をあて、データマネジメントの必要性に触れていく。

■国内企業による実証

日本国内では、ロボット開発のZMPは早くから自動運転の開発に乗り出している。2008年に自動運転分野に進出し、2014年に日本初といわれる実証実験を開始した。2016年に公道実証、2018年に自動運転タクシーのサービス実証に着手している。

実証数の国内筆頭候補は、自動運転OS「Autoware(オートウェア)」の開発・普及を推進するティアフォーだ。国内ではこれまでに18都道府県の約50市区町村で公開型の実証実験を約70回実施している。

自動車メーカーの国内公道実証は、日産がDeNAと組んで開発を進める「Easy Ride(イージーライド)」や、メーカー各社が参加する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期における東京臨海部での実証実験が挙げられる。

そのほか、損害保険会社やタクシー会社なども積極的に実証実験に参加しており、国内においても各地で実証実験が盛んに実施されるようになってきている。

■海外企業による実証

海外企業では、自動運転タクシーで先行する米Waymo(ウェイモ)が圧倒的だ。同社はサービスを実施しているアリゾナ州フェニックスでの実用実証をはじめ、カリフォルニア州では2018年12月から2019年11月までの1年間で断トツの145万4137マイル(約234万キロ)という膨大な走行実証を行っている。

カリフォルニア州における同期間の2位は米GM系Cruise(約134万キロ)、3位は中国Pony.ai(約28万キロ)、4位中国Baidu(約17万キロ)となっている。

いずれも米国や中国で自動運転タクシーの早期実現を目指している企業だ。Cruiseは2020年1月にオリジナルの自動運転車「Origin(オリジン)」を発表し、量産化・実用化を見据えた動きを見せている。PonyやBaiduは中国内で実用実証を進めており、本格サービス展開まで秒読み段階に達している印象だ。

【参考】Waymoの取り組みについては「Google系自動運転タクシー、遂に「完全無人化」 ローンチ1年弱で」も参照。

■実証データの活用
自動運転車は膨大な量のデータを生成する

自動運転を開発する各企業が実証に力を入れる一番の目的は、自動運転システムの総合力向上だ。

自動運転システムは、LiDAR(ライダー)やカメラなどの外界センサーが取得したデータから障害物などを認識し、車両に旋回や停止といった制御命令を下す。また、事前に整備された高精度3次元地図と各種センサーのデータを照合させ、GPSなどと組み合わせて自車位置を正確に特定する。

走行中の自動運転車は、常にLiDARなどのセンサーで車両の周囲から進行方向の遠方までをセンシングし続ける。これらのデータをリアルタイムでAIが解析し、タイムラグなく車両を制御するのだ。また、収集されたデータを常時クラウドに送信し、クラウド側で解析した結果を受信したりビッグデータ化したりするのも一般的だ。

データ管理大手の米NetApp(ネットアップ)社は、自動運転車のセンシングによって1年間で生み出されるデータ量は2PB(ペタバイト)に及ぶと予想している。条件設定によりこうした予測数値は大きく変動するものと思われるが、自動運転システムの高度化や通信環境の整備により、将来的にその数値はさらに上がる可能性も高そうだ。

実証データが自動運転システムを向上させる

走行中に取得したLiDARやカメラのデータは、自動運転システムの精度向上に大きく寄与する。システムのAIは、各画像に映った歩行者や自転車、道路標識、さまざまな形状の車両などを正確に判断する必要があるが、その対象の色や形状などは千差万別であり、推定しなければならない。

例えば「人」の場合、子どもと大人でサイズが異なり、服装によって色も異なる。歩行している場合もあればしゃがみこんでいることもあり、大きな手荷物を所持していることもある。また、映す角度によって形状なども随時変化する。

こうした「人」を特定するには、あらゆる状況における多くの人のデータを収集し、AIに学習させる必要がある。自動車や自転車、道路標識なども同様で、データは多いに越したことはないのだ。また、発展系としてその対象物がどういった動きをするか予測する技術も必要になってくるだろう。

また、道路の車線や標識をはじめ、道路の構造や街路樹、周辺の建造物までをマッピングしていく作業においてもこれらのデータが兼用されることもある。高精度3次元地図の作成においては専用の機器を用いてデータ収集する手法がスタンダードだが、一般車両に搭載されたカメラなどからデータを収集して地図の作成や補完、更新を行うシステムの開発も進められている。

一定の解析能力を有したAIは、実証を通じてさらなる精度向上を繰り返す。新たな公道実証において検出漏れや誤検出などがわずかでもあれば、それを一つ一つ修正・解決し、限りなく100%に近いシステムを構築していくのだ。

【参考】自動車業界ではさまざまなAIのユースケースが考えられるが、それぞれのユースケースを成功させるためには「データ」の取り扱いがまさに鍵となる。こうした点についてはNetApp社のホワイトペーパー「自動車業界のAI」が参考になる。

データ処理の課題

AIの学習に用いられる画像データは何百何千のレベルではなく、何百万を軽く超える量に及ぶ。実証走行が進めば進むほど収集されるデータも膨大な量となっていく。

今後、業界を取り巻く課題としては、通信環境の整備やデータ処理の手法、データ収集・蓄積の在り方などが挙げられる。

自動運転車が生成するデータをリアルタイムでやり取りするには、膨大な量のデータを遅滞なく通信できる環境が必要になる。現在移動通信システム5Gの実用化が始まったが、V2I(路車間通信)などさまざまな通信を組み合わせる必要もありそうだ。

データ処理では、車両側のエッジとクラウドの双方で効果的にデータ処理を分担する手法の実用化などに注目が集まっている。リアルタイム性が求められるデータはエッジに近い側で瞬時に処理し、それ以外はクラウドに任せるといったイメージだ。

クラウドなどにおけるデータの蓄積も、今後どういった形で蓄積していくのかなど、個々の開発企業はもちろん、業界全体としてデータをどのようにマネジメントしていくかが問われる。

現状は個々の開発企業が各々データ収集を行っている段階だが、自動運転サービスが本格化すればデータ量はテラバイトからペタバイト、エクサバイト……と飛躍的に増すことになる。早い段階でデータを効率的に管理・マネジメントするためのプラットフォームを構築していくことが求められることになりそうだ。

■【まとめ】重要度が増すデータマネジメント能力

自動運転に関するデータは、このほかにもセキュリティ関連やエンターテインメント関連、移動サービスに関するデータ、乗員に関するデータなど多岐に渡る。自動運転車はデータの固まりなのだ。

自動運転システムの開発企業はもちろん、コネクテッドサービス提供企業や移動サービス企業なども膨大なデータを扱うことになり、収集したデータをいかに効果的に管理し事業に生かしていくかが問われる。今後、データマネジメントの観点が重要性を増していくことは間違いない。

米NetApp(ネットアップ)社は、こうしたデータマネジメントを円滑化し、データを最大限活用するためのソリューションを各種提供している。同社の「ウェビナー」ではデータマネジメントに関する内容が分かりやすく紹介されているので、興味がある人は確認してみると良さそうだ。

>>特集目次

>>特集第1回:自動運転実証が国内外で活発化!データマネジメント上の課題は?

>>特集第2回:自動車会社はコネクテッドカーで集めたデータを、どう活用している?

>>特集第3回:自動運転AIとデータの関係性は?データマネジメントの重要性

>>特集第4回:【インタビュー】自動運転実証、NetAppがデータマネジメントを下支え

>>特集第5回:「自動車×AI」をEブックで一挙解説!

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