自動車会社はコネクテッドカーで集めたデータを、どう活用している?(特集:自動運転車1台あたり2ペタバイトの衝撃 第2回)

膨大なデータがコネクテッド時代のビジネスを左右する



車載通信機(DCM)の搭載が進み、つながるクルマの市場化が急速に進展している。コネクテッドカー時代の幕開けだ。テレマティクス保険をはじめとした各種サービスの展開をはじめ、通信機能は自動運転の実現にも大いに貢献する技術となる。

こうした新たなサービスや技術の進展の裏側では、膨大なデータが生成・蓄積され、目的に応じた活用のほかさらなるサービス展開を目指すデータの有効活用を模索する動きが活発化している。

コネクテッドカーでは、どのようなサービスが提供され、どのようなデータが生成・収集されているのか。また、これらのデータはどのように活用されているのか。コネクテッドデータの今に迫ってみる。

■コネクテッドカーが提供するサービス
車両診断やテレマティクス保険が代表例

現在展開されているコネクテッドサービスは、車両の状態を遠隔診断するサービスや走行データをもとにしたテレマティクス保険、緊急通報システム、ドアロックなどの遠隔確認・操作などがスタンダードとなっている。

一部では、ゲーム配信などのエンターテインメント機能の拡充や、スマートフォンと連動した遠隔操作技術の応用サービスなども始まっている。

車両診断では、各種車載センサーのデータを通信することで車両の状況をリアルタイムに把握し、必要に応じて注意喚起や整備業者との仲介を行う。テレマティクス保険では、走行距離をはじめハンドリングやアクセルワークといった運転特性に関わるデータを収集し、保険料に反映させる。適切な運転を指導することも可能だ。

自動運転関連でもコネクテッド技術の活用が進む

スマートフォンとの連携活用では、自動運転分野への応用も期待される。現在、米テスラが駐車車両をオーナーがいる場所までスマホ操作で移動させる「Smart Summon(スマート・サモン)」機能の実装を始めたほか、駐車場内で無人走行を可能にする自動バレーパーキングにもコネクテッド技術が活用されている。

また、路車間通信(V2I)や車車間通信(V2V)といった自動運転に必須となるV2X技術は、車車間衝突防止システムや渋滞走行支援、狭路通過支援などADAS(先進運転支援システム)においても実用化が進んでいる。

自動車のコネクテッド化は、個々のオーナーへのサービスのみならず、将来の自動車社会を形成する上で必要不可欠な技術となり始めているのだ。

【参考】テスラのコネクテッドサービスについては「自動運転、テスラ(Tesla)の戦略まとめ スマート・サモン機能導入!ロボタクシー構想も」も参照。

■コネクテッドカーが収集するデータの活用

さまざまなデータを収集可能なコネクテッドカー。取り扱われるデータは、個々の車両を分類する属性情報をはじめ車両のメンテナンス情報や走行状態、位置情報、安全運転に関する情報、車内外の温度やワイパーセンサーから得られる気象関連情報、路面情報、乗員に関する情報など非常に多岐に渡る。

こうしたデータを個別のサービスに利用するほか、ビッグデータとして活用することでサービスの質・量は大幅に増加する。各コネクテッドカーから取得した走行データをプローブデータとして取りまとめれば、各地の道路を網羅した道路交通情報を生成することが可能になる。

また、つながるクルマが増加し、各車がV2IやV2Vによって道路交通情報を共有することで、交通全体のスマート化や事故抑制を図ることも可能になる。

このほか、車両の診断情報をメーカーはじめティア1、ティア2サプライヤーなどと共有することでメカニカルな部分で機能改善や品質向上をはかることもできる。タクシーやカーシェア車両などからは、より効率的な運行を実現する運行管理システムの構築なども可能になるだろう。

コネクテッドカーは、多くのビッグデータを生成するIoT機器にもなり得るのだ。

■コネクテッドデータ活用の具体例

コネクテッドサービス「T-Connect」を展開するトヨタは、車両データを活用したさまざまな機能を備えるモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)を構築し、自社をはじめモビリティサービス分野に関心のある各社がデータを有効活用できる基盤を整えている。

例えば、DCMを通じて取得した車両情報と個別のオーナー情報をもとに、オーナーとのコミュニケーションや愛車の状況に応じたサービス提供などを行っている。テレマティクス保険などもその一例だ。

また、車両に関するデータのみをビッグデータとして収集・分析することで、より良い車づくりをはじめ地域づくりや社会づくりに生かしていく取り組みも進めている。コネクテッドカーから得られた道路の路面情報を保守点検に活用する取り組みや、災害時の道路交通情報として有意義に活用されている「通れた道マップ」などのほか、観光振興など地域課題の解決に向けた活用にも期待が持たれている。

コネクテッド・シティ「Woven City(ウーブン・シティ)」はその最たるもので、各種モビリティや交通インフラ、生活空間をIoTでつなぎ、社会全体をスマート化していくプロジェクトだ。その過程で自動車から得られるさまざまなデータをはじめとした各種データがビッグデータ化され、社会全体の高効率化や利便性・安全性の向上などを図っていく方針だ。

一方、ホンダはビッグデータを活用したサービス「Honda Drive Data Service」を提供している。車載センサーから取得したさまざまなデータをもとにした道路の通行頻度や車両の挙動データなどのリアルタイム情報を得ることができ、道路整備などの都市計画や交通安全対策、渋滞対策といった公的利用をはじめ、店舗開発や観光、イベント運営など多方面で活用できるようだ。

【参考】コネクテッドカーの機能としては「車内アシスタント機能」も一例として挙げられ、ドライバーの質問に対して、車内の温度や車外の気温データ、渋滞情報のデータ、ガソリン残量のデータなどを音声化して伝える役割などを担う。この車内アシスタント機能ではAIによる音声認識・分岐技術が不可欠であると言える。こうした点についてはNetApp社のホワイトペーパー「自動車業界のAI」が参考になる。

■データマネジメントの重要性、NetApp社がソリューション提供

多くのデータを取り扱うことになるコネクテッドカーだが、データは有効活用されて初めて価値を持つ。データマネジメントの観点が重要となるのだ。

車両のメンテナンス情報を有効活用するには、各種データを適切に業務プロセスへ組み込むことが求められる。また、データ収集・蓄積の段階においても、種別の異なる膨大な量のデータをどのように分類・標準化し、統合していくかも問われる。

データには一部個人情報も含まれるため、トータルセキュリティの向上は当然、どういったデータを他社に提供可能か、プライバシーに配慮したデータ種別や加工なども求められることになり、厳正な運営指針も必要となってくる。

ちなみに個人情報の観点を加味したデータの取り扱いについては、データ管理大手の米NetApp社がソリューションを提供していることで知られる。膨大なデータの中で保護されるべきデータをAI(人工知能)に自動で判別させるフローを採用し、取り扱うデータが大量になっても対応が可能になっている。

またコネクテッドカーで収集されたデータは、クラウド側やエッジ側(車両側)、または自社サーバー(オンプレミス)などで保存されることとなるが、データを有効活用する際にはこれらの別々の場所にあるデータをシームレスに利用できるようでなければならない。

NetApp社はこうした点でも強みがあり、さまざまな場所に保存されたデータ全体を1つの集合体ととらえることで、効率・スピード・コストを最適化できるようになっている。NetApp社の担当者は「マルチベンダーを含むオンプレミスやクラウド、エッジのどこであっても、データを適切に管理し、移動し、保管するソリューションで即応性の向上を提供します」とした上で、「パブリッククラウド各社とも密に連携し、あらゆるクラウドでのデータ主体のイノベーション促進を展開している点が最大の強みです」と述べている。

■データの品質にも注意が必要

データの取り扱いのほか、データの品質にも注意が必要だ。国際データマネジメント協会の資料によると、データの品質には以下の6点の主要基準があるという。

  • Completeness(網羅性):潜在的全データに占める保存データの割合を問う
  • Uniqueness(唯一性):データの重複の有無を問う
  • Timeliness(適時性):要求する時点において適切なデータとなっているかを問う
  • Validity(正当性):定義されたフォーマットに準拠しているかを問う
  • Accuracy(正確性):対象やイベントを正確に表しているかを問う
  • Consistency(一貫性):データセット内やデータセット間同一定義を用いているかを問う

データの品質が悪ければ利用できなかったり誤った分析結果が得られたりするため、信頼性の低下や社会損失に直結する事態になりかねない。データは適切な管理のもと正しい形式・手法で活用されなければ、有効なビジネス・サービスの展開につながらないのだ。

■【まとめ】IoT時代はデータの時代 膨大なデータがビジネスを左右する

コネクテッドカーは今後右肩上がりに増加し、MaaS(Mobility as a Service)関連の車両も含め生成されるデータも飛躍的に増大していくことになる。

それに相まって展開されるデータ関連ビジネスやサービスも加速していくことが予想される。クルマに限らず、さまざまなモノやサービスがネットワーク化されるIoT時代は、データの時代とも言えるのだ。

データマネジメントは、データ収集側のみならずデータ利用側にも求められていくことになる。自社が生成・収集可能なデータは何か、また自社で有効活用可能なデータは何かをしっかりと見極め、コネクテッド社会に対応したビジネスを展開していこう。

ちなみに前述のNetApp社は、「ウェビナー」でデータマネジメントの重要性などに関する内容が分かりやすく紹介している。興味がある人は閲覧してみてはいかがだろうか。

>>特集目次

>>特集第1回:自動運転実証が国内外で活発化!データマネジメント上の課題は?

>>特集第2回:自動車会社はコネクテッドカーで集めたデータを、どう活用している?

>>特集第3回:自動運転AIとデータの関係性は?データマネジメントの重要性

>>特集第4回:【インタビュー】自動運転実証、NetAppがデータマネジメントを下支え

>>特集第5回:「自動車×AI」をEブックで一挙解説!

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