「自動運転は環境に優しい」は陰謀論だった?

増えすぎる?電力消費は右肩上がり?



出典:首相官邸

「電気自動車(BEV)は環境にやさしい?実はやさしくない?」……といった論争を見かけることは珍しくない。排気ガスを排出しない一方、カーボンニュートラルの観点から、電力の発電方法やバッテリー製造なども含めたライフサイクル全体で見ると、環境負荷が現状大きいためだ。

では、自動運転車はどうなのか。岸田・石破・高市の各政権が推し進めている自動運転の実用化・普及施策。無人で効率よく運行する自動運転車は、渋滞抑制効果などを背景に「環境にやさしい」とする論がある一方、環境を悪化させる……とする論も見受けられる。


BEV化云々は別として、リアルな目線で自動運転車が環境に及ぼす影響について考察してみよう。

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■自動運転は実は環境に優しくない?

「自動運転は環境にやさしい」はただのポジティブ論?

自動運転車は、効率的なルート設定や無駄のないアクセル・ブレーキワークで燃費・電費の良い運転を実現する。赤信号も事前に察知してムラのない走行を行うため、後続車を巻き込む形で渋滞を抑制する効果に期待がもたれる。

また、自動運転バスが本格実用化されきめ細かな移動サービスが整えば、自家用車から需要がシフトし、道路交通総体として車両数が減少し、渋滞緩和や環境負荷低減に資することも期待されている。BEV比率が高いことも、環境負荷低減理由に挙げられることも多い。

しかし、これらは自動運転をポジティブに捉えることを前提とした論と言える。実際に、そこまで渋滞緩和効果を発揮できるのか。本当に車両数は減少するのか。


以下、自動運転車が環境に与えるネガティブな論をまとめてみた。

■懸念①:ぐるぐる回り続ける事象が発生

台数的に自動運転車の大半を占めることになるだろう自動運転タクシー。サービスが浸透し、量産効果などが本領発揮され低運賃が実現すれば、自家用車市場を食う形でその市場を拡大していくことが予想されている。膨大なフリートが街に放たれるのだ。

既存の有人タクシーや自家用車が自動運転タクシーに代わると考えれば、カーシェアのような感覚で社会全体の自動車台数は減少が見込まれるため、環境負荷面ではプラスに働きそうだ。

しかし、問題も内在している。駐車場問題だ。膨大なフリートとなった自動運転タクシーのすべてが、未稼働時にきちんと駐車場で待機するのか……という問題だ。


自動運転タクシーは現状、流し営業ができないため、配車依頼が入るまで待機するスポットが必要となる。また、依頼された場所にすぐに駆け付けられるよう、営業エリア内に複数の待機場所を設けることが望まれる。

それほど需要が多くなく、少ないフリートで済む地方都市であれば問題にならないが、膨大な需要を抱える大都市では、空き地や駐車場をかき集めなければこうした待機場所を確保できない。その待機場所を借りる賃料も相当な額となる。東京23区を想定すればイメージしやすいだろう。

米国では、アトランタで乗客待ちのWaymoの車両が何時間も袋小路を回り続けるケースなどもあるそうだ。おそらくこれはただのエラーと思われるが、駐車料金と燃料費(電費)を天秤にかけ、後者を採用する例が出てもおかしくないものと思われる。

そうすると、無駄に市街を走行することになり、結果として環境にやさしくないサービスとなり得る……ということも考えられるだろう。

■懸念②:渋滞を引き起こすこともある

効率性を重視した運行を心掛ける自動運転車は、本来渋滞を緩和する効果に期待される存在だ。無駄なアクセルやブレーキを踏まず、ルートプランニングも車線単位で最も効率的な道を導き出す。

ただし、実装初期から中期にかけては、トラブルメーカーにもなり得る。初期においては、路肩の駐車車両を避けられなかったり右折にもたついたり、周囲の一般車両に迷惑をかける場面も多い。ある程度場数をこなしても、サーバー側のシステムエラーや停電などで全車両がフリーズすることもある。

特に、フリート単位で数十台が同時に停止した際などはリカバリーがおぼつかないことも多い。何らかの理由により車道上で停止して動かなくなった際、その対応に手間取ることがあるのだ。こうした事例は、Waymoや百度Cruiseなど先行する各企業で共通している。

また、郊外など見通しがよく交通量が比較的少ない場所では、実勢速度が制限速度を上回っている例も少なくないが、こうした場所でも自動運転車は絶対に制限速度を守る。

道路交通法的に正しいのは自動運転車であり、文句を言われる筋合いは一つもないが、事実だけを見れば、その道路は実勢速度が落ち、自動運転車のはるか後方では渋滞が発生する可能性もあるだろう。

【参考】関連記事「イーロン「自動運転車で渋滞悪化する」」も参照。

■懸念③:電車・バスが「自動車」に置き換わる

タクシーや自家用車が自動運転車に置き換わる分には道路上の総車両数は大きく変動せず、むしろ減少する可能性が高いが、自動運転サービスが本格化した際、電車やバスのシェアを自動運転タクシーが奪っていくことも考えられる。

無人化によるコスト削減効果が運賃に反映され、従来の数分の1程度の運賃で自動運転タクシーに乗車可能となった場合、価格競争力が一気に増し、バスや鉄道などの大量輸送サービスと価格面で競争可能になる。

集団でバス停や駅などを移動するバス・鉄道と、柔軟なポイント間をパーソナルに移動できる自動運転タクシーの運賃がほぼ同程度ならば、どちらを利用するか……答えは見えているはずだ。

バスも自動運転化され、無料で乗車可能であれば対抗できるかもしれないが、パーソナルな移動が低価格で利用できるのであれば多くの客が自動運転タクシーを選ぶはずだ。

つまり、今まで効率よく一台で多数のヒトを運んでいたものが、10数台、もしくは数十台の自動運転タクシーに分散して移動することになるのだ。この流れは、明らかに環境面に負の影響をもたらす。道路は混雑し、より多くのエネルギーを消費することになりそうだ。

また、自動運転タクシーが自家用車市場を食ってシェアサービス化することで総台数が減少したとしても、稼働率・総走行距離を考慮すると、実質的に減少しない……という見方もできる。自家用車の大半は、多くの時間を駐車場で過ごしているが、自動運転タクシーは昼夜問わず稼働するためだ。

■懸念④:実は膨大な電力を消費する?

自動運転タクシーやバスは、BEV比率が高い。それは、車両がコンピュータ化されているためだ。自動運転車には、超が付くハイスペックのコンピュータやセンサー類が搭載されており、走行中は常にフル稼働している。これらコンピュータを動かす電力だけでも半端なく、それゆえBEVが適しているのだ。

しかし、自動運転における電力消費はこれだけで済まない。常時通信を行うためのサーバー・クラウドやAI開発・稼働のためのデータセンターなど、莫大な電力を消費しているのだ。

自動運転車のハイスペック化はまだまだ終わらない。省エネ系高性能SoCなどの開発も進められているが、相対としての消費電力量はしばらくの間右肩上がりとなりそうだ。

■【まとめ】自動運転にはデメリットを上回る大きなメリット

自動運転技術が真の意味で確立されれば、ビジネス性を踏まえバス系よりもパーソナルな移動を可能にするタクシー系が幅を利かせる未来が想定される。そう考えると、将来無秩序的に自動運転車が増加していくことも想定しておかなければならないだろう。

とは言え、自動運転車が増えれば増えるほど移動の利便性は増し、交通事故も減少していくことは間違いない。技術の向上でトラブルは減り、電力消費を抑える技術革新に着目する動きもより大きくなるものと思われる。

デメリットを上回る大きなメリットを社会に提供するだろう自動運転車は、やはり普及すべきなのだ。デメリット部分をしっかりと見つめつつ、その課題解決とメリットの最大化を図るべく戦略をしっかりと練り上げたいところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転のリスク・デメリット・弱点は?事故率は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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