タイムズ、自動運転タクシーの「待機需要」で急成長か

営業時間中の待機場所で莫大なニーズ



自動運転タクシー実用化に向けた取り組みが国内でも本格化し始めたが、フリートが拡大されればされるほど需要が増す場所がある。営業時間中の待機場所となる駐車場だ。


自動運転タクシーの本格実装が始まると、従来のタクシーでは必要なかった駐車場・待機場所が必要になるのだ。こうした将来、タイムズパーキングを運営するパーク24(タイムズ24)をはじめとするパーキング事業者には大きな商機となりそうだ。

自動運転ビジネスの専門家である下山哲平(自動運転ラボ主宰)は「今後のロボタクシーや無人バスの実用化によって生じる需要や商機のポテンシャルは、自動車を自動運転させる技術そのものよりもはるかに大きい」と指摘する。

この記事では、自動運転タクシーにおける待機場所の重要性について考察していく。

【参考】関連記事としては「自動運転ビジネス専門家・下山哲平が語る「桶屋を探せ」論  結局「自動運転」は儲かるのか」も参照。


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■自動運転タクシーと待機場所の関係

有人タクシーであれば柔軟に対応できるが……

自動運転タクシーと従来の人間が運転するタクシーの違いとして、有人か無人か、流し営業ができるかできないか――といった点が挙げられる。

人間が運転するタクシーであれば、客待ちの際は流し営業を行うか駅前などのタクシープールに停車するか、駐停車可能な場所で柔軟に様子見を行うことができる。ドライバーが常に乗車しているため、停車禁止場所でなければある程度待機可能だ。

地方のだだっ広いタクシープールでは、客待ちの間ドライバーが降車しておしゃべりしている姿を見ることも珍しくない。有人のタクシーであれば、居場所に困ることはないのだ。

無人タクシーは居場所がない?

日産が開発を進めている自動運転タクシー車両=出典:日産プレスリリース

一方、無人の自動運転タクシーの場合、流し営業はできず、タクシープールで客待ちすることもできない。ライドシェアのように、原則配車依頼に応じたサービスの提供に限定される見通しだ。


休む暇なく次から次へと配車依頼が入ってくるのであれば問題ないが、間が空くことの方が圧倒的に多いはずだ。その間が数分レベルであれば、流し営業ではないが車道を走行しているうちに次の依頼が入り駐停車する必要はないが、10分以上空く場合、どこか停車する場所が必要になる。

駐停車が禁止されていない場所が路肩にあればそれで事が済みそうだが、東京都内をはじめそのような場所は非常に少ない。駐車のみ禁止で停車OKな場合も、無人の自動運転車がどのように扱われるかはいまいち不明だ。

システム上、何かあればすぐに発車可能であるものの、その場をどかなければならないような周囲の変化をコンピュータ自らが検知できるとは限らない。遠隔オペレーターが対応するケースが多いものと思われるが、迅速な対応は難しいだろう。

つまり、自動運転タクシーは一時待機する場所が非常に限られているのだ。運行事業者は、待機場所をしっかりと確保する必要に迫られることになる。

待機場所は一カ所ではダメ!!

「待機場所くらいどこかの空き地をポーンと借りれば良いのでは?」――と思う方もいるだろうが、コトはそう簡単ではない。運行エリア内のどこか一カ所に待機場所を設ければ確かに待機場所に困ることはなくなるが、それは必要最小限の対策に過ぎない。

自動運転タクシーは、エリア内のどこから配車依頼があっても迅速に駆け付けられる体制が求められるためだ。どこか一カ所に集約してしまうと、依頼が入ったエリアによっては到着まで10分以上かかる可能性があり、サービスの質の低下に直結する。

サービス向上には、エリア内に分散する形で待機場所を設け、どこから配車依頼があってもすぐに駆け付けられる体制が望まれる。

数台規模で自動運転タクシーサービスを展開するサービス開始当初がそこまで考慮しなくても問題ないかもしれないが、フリートを拡大し、人間が運転するタクシーと対等の競争関係を築くには、こうした対応が不可欠となるはずだ。

出典:wikipedia commons(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E6%99%82%E9%96%93%E8%B2%B8%E3%81%97%E9%A7%90%E8%BB%8A%E5%A0%B4_Times_%E5%85%AB%E7%8E%8B%E5%AD%90%E5%8F%B0%E7%94%BA%E7%AC%AC4_-_panoramio.jpg)

既存駐車場に商機到来?

こうした際、真っ先に目を向けられるのが既存の駐車場だ。駐車施設として整備されているため、余計な手を加える必要がない。

中でも望ましいのが、EV充電設備を整備可能な駐車場だ。待機場所兼充電基地として活用できれば、メンテナンス時以外の常駐拠点として活用することができる。すべてではないが、Waymoをはじめとする自動運転タクシーの多くはBEVモデルとなっており、この傾向は今後強まっていくことが想定される。

こうした未来を想像すると、駐車場事業を広域展開するパーク24やユアーズ・コーポレーションなどの事業者には大きな商機となりそうだ。タイムズの駐車場は47都道府県で2万5,000件、74万台分の規模を誇る。都内だけでも膨大な数だ。

時間貸し、月極ともに自動運転タクシー需要がありそうだが、先手を打って運行事業者と提携し、柔軟な駐車場サービスを提供できればビッグビジネスになるかもしれない。

例えば、駐車場の空き情報システムと自動運転車を連携させることで、自動運転車はリアルタイムで空いている駐車場に効率的に向かうことができる。また、駐車中において、その駐車場が満車になりそうな場合、場所を譲る形で別の駐車場に移動する――といったこともできるかもしれない。互いにメリットのある活用方法を模索できそうだ。

カーシェア事業も手掛けるパーク24の場合、将来的に自動運転カーシェアサービスの導入などにも結び付く可能性が考えられる。開発事業者との縁を結んでおくことは、モビリティ関連事業者にとってプラスに働く要素がいろいろとありそうだ。

■米国における自動運転タクシーの駐車事情

Waymoはサンフランシスコで無作為的に待機場所を確保

自動運転タクシーで大きく先行する米国では、すでに待機場所をめぐる問題が発生しているようだ。

グーグル系Waymoがサービス展開する大都市サンフランシスコでは、市内の住宅建設計画地に次々とWaymoの充電ステーションが設置されているという。

サンフランシスコでは住宅需要が次々と押し寄せ、住宅取得に億単位、賃貸アパートで月数十万円というのも当たり前の水準という。東京中心部以上だ。

一方、新たな住宅建設計画が盛んではあるものの、不動産開発・建設における許可申請などに結構な時間を要するため、更地状態が続いていることも珍しくないようだ。一定規模の面積が整うまで時間を要すこともあるだろう。

こういった隙間を狙うかのように、予定地を含む空き地に次々とWaymoの駐車場・充電ステーションが建設されているという。おそらく建設予定の建物が着工するまでの時限的土地賃貸と思われるが、地主にとってはおいしい臨時収入であり、安定した収益を得る選択肢の一つになっているようだ。

やはりWaymoも、運行エリア内に細かく待機場所・充電拠点を設け、サービスの質の向上を図っているものと思われる。

Waymoはサンフランシスコだけで300台超のフリートを抱えている。常に全台数が稼働しているわけではないが、この規模に達すると必然的に待機場所は不足し、稼働中にもかかわらず自動運転タクシーは行き場を失ってしまうのだろう。

グーグルがバックに控えるWaymoだからこそ高額賃貸が可能であり、同社のケースは極端な例と言えるが、自動運転タクシー運行事業者が待機場所・充電拠点を必要とする点は日本も同じだ。近い将来、東京都心部においてもあちこちに自動運転タクシー用の拠点が整備されるかもしれない。

【参考】サンフランシスコにおけるWaymoの取り組みについては「自動運転車向け「充電基地」、サンフランシスコの土地運用で人気化」も参照。

自動運転車向け「充電基地」、サンフランシスコの土地運用で人気化

駐車違反問題も……

駐車関連のトピックとしては、自動運転車による駐車違反の問題もサンフランシスコで取り上げられている。同市交通局によると、2024年にWaymoの自動運転タクシーは589件の駐車違反切符を切られたという。

道路清掃のため駐車禁止となる時間帯に該当箇所に停めたことによる違反が138件で最も多く、次いで交通妨害134件、駐車禁止区域における駐車違反77件、二重駐車違反74件となっている。罰金総額は6万5,065ドル(約967万円)に上るという。同様にロサンゼルスでも75件の罰金が科されているという。

自動運転システムとして未熟な部分や設定が甘い部分などその要因はいろいろありそうだが、自動運転タクシーだからと言って甘やかされることはないのだ。むやみに駐停車違反を重ねれば、それなりの罰を受けることになる。

この問題からは、既存の有人タクシーと共通する問題も垣間見える。乗客の無理解だ。

乗客の中には、乗り降りしやすそうな交差点でタクシーを停めるよう指示する人がいる。乗り降りしたい地点が法律上停車不可能な場所でもごり押ししてくる人もいる。場所をずらそうものなら烈火のごとく怒り始めるのだ。カスハラの一種だが、乗客との無用なトラブルを避けるため仕方なく従うドライバーも少なくない。

こうした問題は、自動運転タクシーも例外ではない。Waymoは基本的に停車禁止場所での乗降はできないようシステムが組まれており、乗客が乗降場所まで歩かなければならないケースも多い。

しかし、二重駐車違反が74件もあるということは、違反であることを認識したうえで意図的に停まったものと思われる。

憶測だが、乗降予定場所に別の駐車車両がいたため、やむなく二重駐車して乗降させたのではないだろうか。乗客が待つ予定場所に到着したものの停まることができないケースは実際ありそうだ。ただ、こうした際、目の前の乗客を再び別な場所まで歩かせることはさすがに忍びない。

自動運転タクシーには、待機場所のほか安心して利用できる乗降場所も必須となりそうだ。そう考えると、都などの道路管理者が、カーブサイド(歩道の端)を改修して有料で事業者向けに貸し出すのも手かもしれない。そうすれば安定した乗降場所を確保できるほか、配車依頼待ちの待機場所にもなり得る。

その場合、既存のタクシー業界も手を上げ、カーブサイド争奪戦が始まるかもしれないが、つまりはそれだけ乗降場所や待機場所の確保が重要――ということだ。

【参考】Waymoによる駐車違反については「Googleの自動運転タクシー、年間589回の駐車違反 サンフランシスコ交通局」も参照。

Googleの自動運転タクシー、年間589回の駐車違反 サンフランシスコ交通局

ひと思いに走行し続けた方がお得?

全く別の観点では、高額な駐車料金を払って待機場所を確保するより、無駄でも走行し続けていた方がコストを抑えられるかも?……といったものもある。

過去、自動運転ラボでは、「ガソリン車で1時間走行」「EV(電気自動車)で1時間走行」「東京都心で1時間駐車」の3パターンの費用を試算・比較したことがある(2019年6月)。

その時点におけるガソリン代や電気料金などをもとに試算した結果、ガソリン車は1時間約307円、EV車は1時間約235円だったのに対し、東京都中央区の駐車料金は1時間1,000円以上が相場となっている。

単純計算ではあるものの、コスト的には走行し続けた方が安上がりなのだ。もちろん、燃料や電力には限りがあるため、無駄に走り続ければ燃料補給や充電のためサービス提供時間が短くなる。機器も消耗する。

流し営業もできないため、割に合わない面もありそうだが、少しの間であれば邪魔になりにくそうな車道を走行し続けるのも一つの選択肢になるのかもしれない。

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■【まとめ】Waymoと手を組む日本交通はどうする?

自動運転タクシーには、車両を管理するための所定の駐車場のほか、待機場所も必要となりそうだ。既存の一般向け駐車場以外にも、商業施設やホテルなど、常に一定の空きがある場所であれば運行事業者が飛びつくかもしれない。

日本でもWaymoが走行実証を開始しており、場合によっては数年以内に数百台規模のフリートが構成される可能性も否定できない。パートナーを組む日本交通は、こうした点にどのように対応していくのか。要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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