Googleロボタクシーのウェイモが約4,000台リコール 2年間で台数が約9倍に

自動運転に共通する弱点とは



米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)が、約4,000台のロボタクシーをリコールした。高速道路の工事ゾーンに進入し、速度を落とさず走り抜けてしまう恐れがあるためだ。2026年6月、米運輸省道路交通安全局NHTSAに届け出た。


対象は第5世代の自動運転システムを積むJaguar I-Pace(ジャガーIペース)。NHTSAは対象車の全てに欠陥があると推定している。Waymoの安全関連のリコールは2024年2月に444台で始まったが、台数はその後右肩上がりに増え、今回はおよそ9倍の規模に達した。

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■ウェイモが約4,000台をリコール、工事ゾーンへの進入が原因

Waymoが3,871台のロボタクシーをリコールした。米運輸省道路交通安全局NHTSAへの届け出は2026年6月17日、NHTSAが書類を公表したのは翌18日である。リコールの管理番号は26E035000だ。

原因は自動運転ソフトの判断にある。高速道路の工事ゾーンを認識できなかったり、他の危険を避けることを優先しすぎたりして、閉鎖された工事区間に進入し、そのまま速度を維持して走り抜けてしまう恐れがあるという。物理的な部品の不具合ではなく、走行を司るソフトウェアの問題だ。

対象は第5世代の自動運転システムを搭載したJaguar I-Pace。NHTSAは対象車の全てがこの欠陥を抱えていると推定している。一方、Waymoが今年初めに展開を始めた第6世代の自動運転システムは、今回のリコール対象には含まれていない。修正用のソフトウェアは開発中で、完成の時期は示されていない。それまでの暫定措置として、高速道路での走行は制限されている。一般道でのサービスは各都市で通常どおり続いている。


【自動運転ラボの視点】
ソフト更新で全車を一斉に直せるのがロボタクシーの強みだ。だが対象が常に保有全車に及ぶため、台数は実態以上に大きく見える。数字の膨張だけで安全性を断じるのは早計と言える。

【参考】関連記事としては「Apple Carの開発施設、Googleが「300億円買収」 自動運転試験用」も参照。

■リコールの引き金となった13件の事案

リコールの引き金となったのは、計13件の事案である。フェニックスでは4月11日に1回、4月19日に5回、ランプ閉鎖の標識を通り過ぎて工事ゾーンに進入した。サンフランシスコ湾岸では5月18日、7台が閉鎖レーンを示すコーンの間を走り抜けた。

湾岸の事案では、乗客が肝を冷やす体験を語っている。サンフランシスコ在住のElliot Slade(エリオット・スレイド)氏は、車線が合流する地点で車が混乱し、コーンの並ぶ工事レーンへ加速して進入したと証言した。車は時速70マイル近くまで速度を上げ、最後は警察に追跡されたという。同氏は、初めて全く無力だと感じたと振り返っている。この様子はSNSにも動画として投稿され、注目を集めた。

Waymo 高速道路上のコーンを吹き飛ばして警察沙汰に


Waymoの社内対応も時系列で明らかになっている。4月20日に社内のField Safety Committeeが調査を始め、6月1日に安全委員会が問題を検討、6月8日にリコールを決定した。高速道路での走行はWaymoにとって2025年後半に解禁されたばかりの新しい機能であり、その初期に弱点が露呈した形だ。

【参考】関連記事としては「Googleのロボタクシー、赤信号を無視」も参照。

Googleのロボタクシー、赤信号を無視

■相次ぐリコール、2年で9倍に増加

今回のリコールは、Waymoにとって2024年2月以降の一連の安全関連リコールの中で、最も大きな規模となった。台数だけを並べると、その膨らみ方がよく分かる。

出発点は2024年2月の444台だった。牽引中の車両の動きを誤って予測し、フェニックスで2件の軽い衝突を起こしたことが理由だった。同年6月には、電柱への衝突を受けて672台をリコールしている。2025年5月には、チェーンやゲートなど静止した障害物との衝突をめぐり1,212台を対象とした。さらに2025年12月には、オースティンで停止中のスクールバスを違法に追い越した事案を受けたリコールも報じられている。

2026年に入ると規模は一段と大きくなる。5月には、サンアントニオで冠水した走行不能の路面に進入した事案を受け、3,791台をリコールした。これは第5世代と第6世代の両方の自動運転システムを対象とし、欠陥率は100%とされた。そして今回6月の3,871台へと続く。

ここで注意したいのは、これらが同じ不具合の拡大ではないという点だ。牽引車の誤予測、電柱衝突、冠水路面、工事ゾーンと、原因も対象世代もそれぞれ別の事案である。台数が増えている背景には、走行範囲の拡大と対象車両そのものの増加もある。それでも、444台から3,871台へというおよそ9倍の伸びは、Waymoの安全対応が問われる場面が確実に増えていることを示している。

■自動運転に共通する弱点

一連のリコールには、共通する弱点が透けて見える。工事ゾーン、冠水路面、停止中のスクールバス。いずれも、突発的かつ一時的に姿を変える道路状況だ。あらかじめ地図に載っていない変化に、自動運転ソフトがうまく対応しきれていない。

自動運転の研究者からも警鐘が鳴る。サウスカロライナ大学のBryant Walker Smith(ブライアント・ウォーカー・スミス)教授は、これらは全てが順調ではないことを示す早期の警告だと指摘した。安全性のデータが良好でも、変化する現場への弱さが繰り返し露呈すれば、利用者の信頼は揺らぎかねない。

もっとも、Waymoの足元が崩れているわけではない。直近の資金調達では1100億ドルという高い企業価値の評価を受けており、自動運転タクシー市場の先頭を走る立場は揺らいていない。一方で競合の動きも速い。ライドシェア大手Uber Technologies(ウーバー)は、米EVメーカーLucid(ルシッド)や自動運転開発企業Nuro(ヌーロ)と組み、来年のヒューストンでのロボタクシーサービスを計画する。Mobileye(モービルアイ)も2027年の展開を視野に入れる。ロボタクシー市場の競争が激しさを増すなか、変わり続ける道路への対応力こそが、勝負を分ける土台になりつつある。

■リコールはWaymoを進化させるのか

444台で始まったWaymoのリコールは、2年あまりで3,871台へと膨らんだ。約9倍というこの伸びは、単純な安全性の悪化を意味するわけではない。ソフト更新で保有全車を一度に直せる仕組みゆえに、対象台数は常に膨らみやすい。走行範囲の拡大も台数を押し上げている。

Waymoは年内に20都市超への拡大を計画し、東京やロンドンなど初の米国外展開も見据える。規模を広げるほど、想定外の道路状況に出くわす機会も増える。リコールの増殖は、その対応力がロボタクシー普及の試金石であることを、改めて突きつけていると言える。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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