業績回復の見通しが立たず苦境が続く日産。2024年度上期決算では年度の業績見通しを下方修正したほか、グローバルで生産能力を20%削減し、9,000人の人員削減を実施すると発表した。
先行き不透明な状況が続きそうだが、明るい材料もある。日産が出資する中国WeRideが米ナスダック市場への上場を果たし、フォーチュン誌の「Future 50」にも選定されたのだ。今後の株価が高騰し、日産に巨額の利益をもたらす可能性がある。
WeRideは自動運転開発を手掛ける中国有数の新興勢。日産からWeRideへの投資としての側面にも注目だが、WeRideの存在がどのように日産の経営に貢献するのかについても、考察していこう。
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■日産の業績
2024年度上半期の当期純利益は前年同期比94%減
日産が2024年11月に発表した上期決算(2024年4月~9月)は、売上高5兆9,842億円(前年同期比1%減)、営業利益329億円(同90%減)、当期純利益192億円(同94%減)となった。
小売販売台数は159万6千台で同1.6%減に留まっているものの、中国では5.4%減となった。生産台数は155万8千台で同7.9%減となっている。在庫削減や販売競争に向けたコスト増、生産におけるコスト増などが積み重なっているようで、収益構造の改善が必須となっている感が強い。
こうした状況を踏まえ、日産は2024年度の業績見通しを売上高14兆円から12兆7,000億円に、営業利益を5,000億円から1,500億円にそれぞれ下方修正した。
また、人員9,000人削減やグローバル生産能力の20%削減、製造原価削減、会社資産の合理化などを通じ、2026年度までに年間350万台の販売でも持続可能な収益性とキャッシュを確保できる体制、収益構造への変革を図っていくこととした。
参考までに、ホンダの上期は営業収益10兆7,976億円(同12.4%増)、営業利益7,426億円(同6.6%増)となっている。自動車業界全体が悪いわけではなく、あくまで日産の業績が落ち込んでいるのだ。
経営改革待ったなしの状況
日産のグローバル販売台数は、2010年代は概ね500万台で推移していた。しかし、コロナ禍を迎えた2020年度に405万台に落ち込み、その後387万台、330万台、344万台と回復軌道に乗れない状況が続いている。2024年度見通しも365万台から340万台に下方修正された。
販売台数の落ち込みを前提に収益構造を改善していく方針が打ち出されているが、これは短期的であれ事業規模の縮小を容認したと言える。さまざまな要因があるだろうが、サプライヤー含めたグループ戦略がことごとく時代にマッチせず、この5年間不調が続いているのが紛れもない事実だ。中長期戦略の誤りが顕在化してきた感も強い。戦略の早期大幅見直しが求められる状況だ。
■日産とWeRideの関わり
出資先のWeRideが躍進
苦境に立たされている日産だが、自動運転関連では明るい話題があった。日産が投資・協業を進めている中国WeRideが、米ビジネス誌フォーチュンの「Future 50」に選定されたのだ。
Future 50は、長期的成長の可能性が最も高い企業上位50社を選定したもので、2024年のランキングには、WeRideのほかOpenAIやNVIDIAなども名を連ねている。WeRide は、自動運転企業として最高位にランク付けされたという。
2023年には、世界を変える企業「Change the World」でもトップ10にランク付けされており、2年連続で評価された格好だ。
アライアンスが出資、日産現地法人もロボタクシー実現に向け協業
日産は2018年、ルノー・日産・三菱アライアンスが設立した戦略的ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」を通じてWeRideの資金調達シリーズAを主導した。出資額は3000万ドル(当時のレートで約34億円)とされる。アライアンス・ベンチャーズは、2021年のシリーズCにも参加している。
その後、2022年には日産の中国現地子会社「日産(中国)投資有限公司」が設立した新会社とWeRideの具体的な提携も行われている。現地子会社は、モビリティサービスへの投資とロボットタクシー(自動運転タクシー)サービス展開に取り組む新会社「日産モビリティサービス有限公司」を蘇州市に立ち上げ、WeRideは同社のプロジェクトに技術的サポートを提供する。
新会社は2023年に一般市民を乗せるサービス実証を開始している。自動運転システムにおいてWeRideがどこまで関わっているのかは不明だが、両社の協業は着実に深まっているようだ。
【参考】WeRideへの出資については「ルノー・日産・三菱のVC、中国の自動運転スタートアップ「WeRide.ai」に34億円出資」も参照。
【参考】日産とWeRideの取り組みについては「日産の自動運転タクシー、商用化は中国から!?」も参照。
ロボタクシーやバス、配送車、清掃車などをラインアップ
WeRideは、中国テクノロジー企業の百度(バイドゥ)で自動運転開発に携わっていたトニー・ハン氏が2017年に立ち上げた新興企業で、タクシー(ロボタクシー)を中心にバス(ロボバス)や配送車(ロボバン)、清掃車(ロボスイーパー)などの自動運転モビリティを世に送り出している。
同社によると、中国、米国、アラブ首長国連邦、シンガポールで自動運転の公道走行許可を所持し、世界26超の都市で自動運転の研究開発やテスト、運用を行っている。
自動運転タクシーにおいては、広州で同国初という無人公道ライセンスを取得するなど精力的で、2023年11月には北京市でもドライバーレスの商用パイロット運行を可能にするライセンスを取得している。2024年10月には、最新世代の自動運転タクシー「GXR」を発表した。
本社を置く広州では、自動運転タクシーのほかロボバスやロボスイーパー、ロボバンの商用運航を開始している。
海外展開も積極的で、内モンゴル・オルドス市やシンガポールなどで商用運行がすでに行われている。2024年9月には、配車サービス大手Uber Technologiesとの提携を発表した。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビを皮切りに、米国・中国を除く世界各地でUberの配車プラットフォームでWeRideの自動運転車を利用できるようパートナーシップを深めていく計画だ。
2024年10月には、米ナスダックへの上場を果たした。公開価格は15.5ドルに設定され、計890万3,760株を発行する。株式公開による総収益は4億5,850万ドル(約700億円)に達すると予想されている。
12月5日時点の株価は17ドル台となっており、時価総額約7,000億円と評価されている。
【参考】WeRideの上場については「自動運転業界のIPO、日本は「ゼロ状態」。中国では上場ラッシュ始まる」も参照。
海外展開にも積極的
中国では、WeRideのほか百度やAutoX、Pony.ai、Momentaなどが自動運分野でしのぎを削っている。中国のグーグルと言われる百度は同国内で圧倒的勢力を誇っているが、世界展開の点ではWeRideが優勢だ。
グーグル系Waymoなどの米国勢を含め、明確に世界展開を実現している自動運転タクシー開発企業はWeRideが唯一と言ってよい。今後のさらなる飛躍に大きな期待が寄せられる一社だ。
投資・協業効果は中長期目線で発揮
このWeRideへの出資・協業が、今後日産にどのようなプラスの効果をもたらすのか。純粋な投資効果としては、現状はまだ小さなものでしかないかもしれないが、将来大化けする可能性は十分考えられる。
自動運転技術の実用化が始まったとは言え、それはまだ限定的に過ぎず、特に株式市場での評価はまだまだ低い。開発企業の赤字も今しばらく続くだろう。
しかし、遅くとも10年後には自動運転サービスは珍しいものではなくなり、世界各地でスタンダード化が進むものと思われる。無人サービスの本格化に事業の黒字化が結び付くようになれば、その加速は大きく増し、人やモノの「移動」の概念を大きく変えていくことになる。将来的なポテンシャルは計り知れないのだ。
このポテンシャルへの先行投資は、将来、莫大な利益となって返ってくる可能性がある。そのためには中長期的視点が必要となるが、その過程においてもWeRideとの協業が生きてくる。
それは、自動運転開発・サービスに関する知見の共有だ。現状、自動運転技術やサービスノウハウに関しては、自動車メーカーよりも尖った開発体制を敷くことができる新興開発勢の方が圧倒的に高い。こうした新興勢の技術やノウハウを吸収することができれば、自家用車の自動運転か含め効果的に自動運転戦略を展開することが可能になる。
自動運転開発には多額の資金が必要となり、体力勝負が求められる。かと言って、勝負を避けると近未来の自家用車市場から置いてけぼりを食らうことになる。
現在、多くの自動車メーカーが直面している課題でもある。新興勢にイニシアチブを取られ過ぎることなく上手に付き合い、ライバル各社との競争を勝ち抜かなければならないのだ。こうした観点から見ると、パートナーとしてのWeRideの重要性は今後ますます大きくなっていくことになりそうだ。
日産は2027年度に自動運転サービスローンチ目指す
日産はもともと自動運転開発に積極的で、自家用車市場においては先進運転支援システム「ProPILOT」を猛プッシュしてきた。ProPILOT2.0では、国内メーカー初のハンズオフ運転も実現している。
自動運転関連では、ディー・エヌ・エー(DeNA)とともに新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」に取り組むなど、自動車メーカーとしてはいち早く自動運転サービス実証に着手していた。
Easy Rideは、自動運転タクシーに近い自由度高めのオンデマンド自動運転シャトルのようなサービスで、日産が本拠を構える神奈川県横浜市で2018年から実証を行っている。
2024年2月には、ドライバーレス自動運転モビリティサービスの事業化に向けた最新ロードマップを発表した。
2024年度にみなとみらい地区でセレナベースの自動運転車両で走行実証に着手し、2025~2026年度にかけ横浜エリアでセーフティドライバー同乗のもと20台規模のサービス実証を開始する。
そして2027年度には地方を含む3~4市町村で車両数十台規模のサービス提供開始を目指すという。
ベースは自社開発した自動運転システムになるものと思われるが、その開発過程でWeRideの技術が貢献しているかもしれない。今後の動向に注目したい。
■【まとめ】自動運転開発企業と自動車メーカーのパートナーシップがスタンダード化?
現状の日産がどうであれ、将来の自家用車市場を生き抜くためには自動運転開発が必須で、その際、WeRideへの出資・協業が生きてくるはずだ。同様のことは多くの他メーカーにもあてはまると言っても過言ではないほど、開発力に差が出ている。
トヨタはPony.aiやMay Mobility、GMはCruise……といったように、どの開発専業企業と手を結ぶかで、将来の立ち位置が大きく変わることも考えられる。自動運転開発企業と自動車メーカーのパワーバランスは、10年後にどのように変わっているのか。各社の動向に引き続き注目だ。
【参考】日産の自動運転分野の取り組みについては「日産の自動運転戦略(2024年最新版) プロパイロット2.0の搭載車種は?」も参照。