自動運転業界では、単独の企業がバスやタクシー、無人配送ロボットというように、複数の製品を開発するケースが多く見られるが、ここに来て「選択と集中」、すなわち事業の一本化が進んでいる。Googleは無人タクシー、ルノーは公共交通向けのバス、といった具合だ。
■Googleは自動運転タクシーに集中
Google系の自動運転開発企業である米Waymoは、これまで進めてきた自動運転トラックの開発を一時停止し、自動運転タクシー(ロボタクシー)による配車サービス(ライドヘイリング)事業に注力することを2023年7月に突然発表した。
Waymoは自動運転タクシーやトラック輸送、デリバリーなど、さまざまな用途に向けての自動運転システム「Waymo Driver」を開発している。このシステムを活用した「Waymo One」と呼ばれるレベル4の自動運転タクシーサービスは、2018年12月に他社に先駆け世界で初めてアリゾナ州フェニックスで商用化を果たしている。
Waymoの自動運転タクシーサービスは、カリフォルニア州サンフランシスコやロサンゼルスにもサービスを拡大しており、ビジネスの著しい成長と需要、大きな商機を感じているという。そのため自動運転トラック事業を一時停止することで、自動運転タクシー事業の商業的成功を達成することに集中すると決めた。
【参考】関連記事としては「Waymo、自動運転化の対象から「トラック」除外!ロボタクシーの開発優先」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) July 31, 2023
■ルノーは公共バスの自動運転化に集中
フランスの多国籍自動車メーカーであるルノーグループは、乗用車と公共交通機関の自動運転戦略についての新しい見解を2024年5月に発表した。今後数年間は公共交通機関の自動化に注力し、個人向け乗用車については自動運転開発よりもADAS(先進運転支援システム)の技術力アップを優先し、安全性と快適性をさらに向上させていくといった内容になる。
その理由として、欧州での低炭素モビリティのニーズや市民の移動手段の確保を挙げている。すでに中国WeRideと共同でレベル4の自動運転シャトルを開発済みで近々お披露目予定だ。2026年からは、フランスの公共交通ネットワークに電動の自動運転ミニバスを導入する計画だ。
なお乗用車については、同社のほとんどのモデルで自動運転レベル2または2+のADASを実装済みであるが、現在の規制やニーズ、複雑な技術にかかるコストを考慮すると、さらに上の自動運転レベルを目指すことは当面ないという。
【参考】関連記事としては「仏ルノー、一般車の自動運転化「棚上げ」決定 無人バス開発に注力」も参照。
仏ルノー、一般車の自動運転化「棚上げ」決定 無人バス開発に注力 | 自動運転ラボ https://t.co/LCQmnBXPte @jidountenlab
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 22, 2024
■株主や投資家からのプレッシャーも
自動運転開発には莫大な研究・開発コストがかかる。資金力のある大企業ならまだしも、ベンチャー企業だと資金調達を何度も行う必要があり、サービスローンチやマネタイズ、またはバイアウトに失敗して資金が尽きれば、事業閉鎖や倒産などの可能性が高くなる。財務的に株主や投資家からのプレッシャーも強くなりがちだ。
【参考】関連記事としては「自動運転業界、誰も予想してなかった「Argo AI閉鎖」の背景」も参照。
また、技術面の向上はもちろんだが、ユーザーからのフィードバックを丁寧に技術開発・サービス開発に生かすことなど、クリアしなければならない課題が多数ある。そのため選択と集中をした方が、限られたヒューマンリソースの中で技術力の向上が加速すると考える企業も増えてきた印象だ。
ちなみに日本企業の場合は、ホンダと日産は一般車の自動運転化と自動運転タクシー、一方のトヨタはシャトル型に絞って自動運転開発を進めている印象だ。開発車種の一本化の流れは、今後本格化していくのだろうか。
【参考】関連記事としては「自動運転とは?(2024年版) レベル別の実用化・開発状況・業界動向まとめ」も参照。