自動車アフターマーケット業界、自動運転時代にどう適応すべき?下山哲平氏に聞く

メンテナンス時期は自動運転車自らが判断?



撮影:自動運転ラボ

にわかに活気づく自動運転市場。開発段階からサービス実装段階への移行が一部で進み始め、新たな局面を迎えつつあるようだ。

サービスの社会実装によってビジネス性が育まれ、市場は各方面に拡大していくことが予想される。普及段階に入れば、自動車アフターマーケット市場にも変化が起きるはずだ。







この記事では、自動運転時代に自動車アフターマーケット業界はどのように変わっていくのか、自動運転時代にどう適応すべきなのか、自動運転ラボを主宰するストロボ代表の下山哲平氏に話を聞いた。

■完全自動運転車が加速度的に普及する未来は、もう目前
Q はじめに、自動運転はどのようなスピード感で普及していく?

日本政府が示しているロードマップによると、2025年に高速道路におけるレベル4の実用化、物流での自動運転システムの導入と普及、限定地域での無人自動運転移動サービスの全国普及を実現するとしています。

あと数年もすれば、高速道路で自動運転車が走り、自動運転トラックが荷物を運び、全国40カ所以上の限定エリアで、無人のロボットタクシーやロボットバスが人を乗せて移動する近未来の世界を現実化する方向で動いているのです。

世界的にも自動運転車の普及は進展します。矢野経済研究所が2019年5月に発表した予測によると、2030年にはレベル3が373万台、レベル4以上が1,530万台、合計約1,900万台の自動運転車が世に出回るといいます。

2025~2030年にかけて公共交通、物流、自家用車、宅配ロボットカーなどが同時多発的に発展します。完全自動運転車が加速度的に普及する未来は、もう目前に迫っているのです。

【参考】関連記事としては「2030年、新車の2割が「自動運転車」に!」も参照。

■「通信」や「ソフトウェア」への対応力も必要に
Q 自動運転車はどのようにメンテナンス・整備されるようになるのか。

コンピューターやAIなどで制御されたあらゆる自動運転車は、センサーやモーターなどの電子部品やタイヤの交換時期になると、自動的に工場に来るようになると考えられます。自らの状態を把握・診断し、必要に応じて整備の判断を下すイメージです。

自動運転車をロボットタクシーやカーシェアリングで活用する場合、収益機会が毀損されないように稼働させることが重要になります。要は、自己診断に基づく整備タイミングが近づいた際、最も収益機会が毀損しないタイミングで整備工場に出向かせることがフリートマネジメント面でポイントとなります。F1において「いつピットインするか」が勝利のために重要になるのと、ある意味似ています。

こうした事情もあるため、整備工場側は自動運転車側の最適なタイミングに合わせて整備に対応できるよう、フリートマネジメントシステムと連携し、先手先手で受け入れ体制と整えておくようにしなければならなくなるはずです。

ロボットタクシーの場合、自動運転車が活用されるのは主に日中です。そのため、ロボットタクシーとして活用される自動運転車の場合、夜間の時間帯にまるでピットインするかのように整備工場の前に車列を作るのが日常となるかもしれません。そうして集まった自動運転車や宅配ロボットカーなどを効率的に整備し、必要に応じて修理していくのが工場の日課となる可能性があります。

現行の自家用車でも、ブレーキ警告や水温、充電、排気温、AT、タイヤの空気圧など、クルマの基本操作や状態に関するさまざまな警告がメーターパネルに表示され、把握可能となっています。コンピューター化が進んだ自動運転車は、より多くの車両情報を収集することが可能になります。

そしてこうした車両情報や整備情報をコネクテッド機能で整備工場と随時共有すれば、より整備がスムーズになるはずです。また開発メーカーとも情報を共有することで、安全性向上に役立てることも可能になるでしょう。

Q 自動運転車では、ソフトウェアの更新が安全走行やセキュリティの観点から重要になってくるが、更新はどのように行われるようになっていくのか。

自動運転ソフトウェアをはじめとする車載ソフトウェアは、OTA(Over The Air)、つまり無線通信によって更新する手法がスタンダードになります。

すでに米テスラなどが導入していますが、通信によってソフトウェアの修正やアップデートを行うことで、メーカーは全てのオーナー車両に対してスピーディーにサポートを行うことが可能になります。ディーラーなどに車を持ち込む手間を省くことができるのもメリットと言えるでしょう

特に、走行のための自動運転ソフトウェアに比べ、セキュリティのためのソフトウェアの方が更新頻度が高くなることが予想され、OTA技術が大きく役に立ちそうです。

こうしたソフトウェアの更新では、整備工場などが果たせる役割はあまりないように感じるかもしれませんが、OTAの機能自体に問題が生じたり、ソフトウェアがうまく作動しなくなったりした場合は、整備工場側で対応が必要なケースも出てきます。つまり従来の整備工場にも、少なからず通信やソフトウェアへの対応力が求められることになりそうです。

また、重要アップデートや大型アップデートなどにおいては、自動運転車側が取り込まなければならないデータ量も多くなるはずですが、場所によってOTAにおける通信速度は当然変わります。そのため、特定の重要なアップデートについては、事前認証を受けた整備工場やサービス拠点での対応が求められるようになる……といったこともあるかもしれません。

■「サービス分野」への事業シフトも視野に入れる必要性
Q 自動車アフターマーケット市場には、中古車販売業やレンタカー、カーシェアなども含まれるが、こうした業種への影響は?

自動運転技術の普及によりモビリティサービスの利便性が向上すれば、自家用車の需要は次第に低下していくことが予想されるため、中古車販売業においてはサービス分野への事業シフトが求められるかもしれません。

高度な自動運転技術が必要となりますが、将来レンタカーやカーシェアなどにも自動運転車が導入された場合、運転免許が不要となるためターゲットが大きく拡大し、またどこでも乗り捨て可能となるなど利便性も大きく向上するものと思われます。

例えば、整備工場が宅配・タクシー用途のロボットカーを数台、数十台所有し、地元の住民向けにサービスを展開することも有効でしょう。自動運転のため、車両を移動させるドライバーが不要となるため、自社で車両のメンテナンスをしながら運用するビジネスモデルなども成り立ちます。モビリティサービスの実施主体も多様化する可能性が考えられます。

いずれにしても、MaaSの浸透に伴って自家用車からモビリティサービスへのシフトが進む見込みで、自動運転の実用化がこの流れを大きく加速させます。タクシーやカーシェア、ライドシェアといった各種サービスの区別は徐々に小さくなり、新たなモビリティサービスの潮流を生む可能性もありそうです。

【参考】自動運転時代のモビリティサービスについては「実はライドシェアが「オワコン予備軍」の理由 AI自動運転タクシーの普及で」も参照。

■自動運転時代に向け、今から知見やノウハウの蓄積を
Q 自動運転時代に向け、自動車アフターマーケット業界に属する企業は、今から何に取り組めば良いか。

本格的な自動運転社会の到来は、数十年先か、あるいはそれ以上かかるかもしれません。未来のことなので、予想とは異なる筋書きになることもあるでしょう。目の前の業務で手一杯の中、今から何かを備えていくのは難しい点もあるでしょうが、いざ自動運転社会が到来した時に、会社の事業を急に変えるのが困難なことも事実です。

大切なのは、将来につながる現時点の最新のビジネスモデルに取り組み、知見やノウハウを蓄積し、変化が起こっても柔軟に対応する力を身に付けていくことです。

例えば、CASEの一つである「シェアリング」であれば、すでに登場しているさまざまなCtoC(個人間)のカーシェアサービスに、自社の保有車を試しに登録してみることはすぐにでもできます。カーシェアサービスを活用することで、シェアリングというビジネスがどういうものかを実体験するわけです。

あるいは、自社で中古車を販売しているのであれば、そのうちの複数の車両を活用して、地域住民向けに独自のシェアリングサービスを展開してみる手もあります。いずれ訪れる自動運転社会に向け、今できることに着手し、ビジネスのヒントや方向性を掴むことこそが重要な一歩と言えるでしょう。

■【インタビューを終えて】MaaSや自動運転の波及効果は未知数、ゆえに柔軟な対応力を

社会に大きなイノベーションを起こす自動運転技術の実用化はまだ始まったばかりで、将来、社会に対してどれほどの影響を及ぼすかは正直なところ未知数だ。

だからと言って様子見を決め込んでいては、来るべき時に乗り遅れることになる。下山氏が言うように、現時点でできることを模索し、取り組む姿勢が肝要なのだ。

MaaSや自動運転はどこまで波及するか分からない。「自分の現在の業種とは畑違い」……と決め込むことなく、将来身近で起こるであろうイノベーションに対応できる体制を今からしっかりと構築していくことが重要だと感じた。

下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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