トヨタの自動運転タクシー、名称は「トヨタノマス・タクシー」?いずれサービス展開?

自動運転タクシーの共同開発やMSPFが大きな武器に



突然だが、もしトヨタが自動運転タクシーを手掛けるとしたら、その名称は何だろうか?「トヨタクシー」では自動運転の要素が感じられない。やはり横文字を使った造語で攻めてくるのだろうか?







Autonomous TaxiとToyotaを融合させた「トヨタノマス・タクシー」はどうか(Autonomousは「自動運転」の意味だ)。近々の取り組みから「ウーブン・タクシー(Woven Taxi)」なら格好良さそうだが、ウーブン・シティ限定となってしまうか。

名称はさておいて、閑話休題。近年、モビリティサービスに力を入れるトヨタは、カーシェアやサブスクリプションサービス、MaaSアプリの展開などを矢継ぎ早に進めている。モビリティカンパニーへの変革を図っているのだ。

近い将来、「e-Palette」に代表されるような自動運転機能を備えたモビリティサービスの登場も予想されるが、「自動運転×モビリティサービス」の象徴と言えば、自動運転タクシーだ。

今回は、トヨタのさまざまな取り組みを参照し、同社による自動運転タクシー開発の可能性を探ってみよう。

■トヨタのモビリティサービス推進に向けた取り組み

モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジを進めるトヨタは、愛車サブスクリプションサービス「KINTO ONE」やカーシェアリングサービス「TOYOTA SHARE」、トヨタレンタカーサービス「チョクノリ!」、マルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」など、さまざまなサービスを発表し、社会実装を進めている。

カーシェア関連では、短距離移動に適した超小型EVのワンウェイ・カーシェアリングシステム「Ha:mo」を愛知県豊田市をはじめ東京や沖縄、岡山、フランス、タイなどで実証している。国内ではパーク24と業務提携を交わし、パーソナルモビリティを活用したシェアサービス「Times Car PLUS TOYOTA i-ROAD Drive」や「Times Car PLUS × Ha:mo」といった実証実験を行うなど積極的だ。2019年10月からはカーシェアサービス「TOYOTA SHARE」の全国展開も開始している。

こうした積極展開の裏側には、シェアサービスに適したパーソナルモビリティなどの車体開発のみならず、モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の有効活用が根底にある。カーシェアやライドシェア、レンタカー、タクシー、テレマティクス保険など、モビリティに関わるさまざまなサービス事業者との連携に活用可能なプラットフォームだ。

最近では、米アマゾン傘下のAmazon Web Services(AWS)と業務提携し、MSPFの強化を図っていくことが発表されている。

■トヨタのタクシー関連の取り組み

タクシー関連では、2016年8月に全国ハイヤー・タクシー連合会と覚書を締結し、東京エリアで通信型ドライブレコーダーを活用した実証実験を開始するなど、タクシー業界の活性化・効率化を図る研究開発やサービス開発の模索を進めている。

2018年2月には、タクシー事業者向けサービスの共同開発を目的にタクシー配車アプリ国内最大手のJapanTaxi(現Mobility Technologies)と業務提携を交わした。同年3月には、JapanTaxi、KDDI、アクセンチュアと共同開発した、ビッグデータ活用によるタクシー需要予測機能を備えた配車支援システムの試験導入を開始している。

■トヨタのライドシェア関連の取り組み

ライドシェア関連では、米大手のUber Technologies、中国大手のDidi Chuxing、東南アジア大手のGrabとそれぞれ提携を交わし、DiDiとGrabにはライドシェア車両向けトータルケアサービスの提供、Uberとは自動運転ライドシェア車両の開発・実用化を共同で推進している。

■トヨタのアプリ開発の取り組み

トヨタはトヨタ販売店向けのカーシェア事業用アプリを開発しているほかMaaSアプリの開発にも意欲的で、2018年10月にはマルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」の実証を開始している。

福岡での実証を皮切りに提携事業者を増加し、北九州、横浜、水俣とエリア拡大を図っており、全国展開を進めている。ナビタイムジャパンと共同開発したマルチモーダルルート検索エンジンをはじめ、協力交通事業者の予約や決済機能、イベント情報の付加などにも対応した本格的な仕様だ。

■トヨタの自動運転タクシー関連の取り組み
UberやPony.aiとの協業で自動運転タクシー開発

Uberと共同開発を進める自動運転ライドシェア車両は、そのまま自動運転タクシーになり得る。仮に所有者が個人ドライバーであれば概念上ライドシェアとなるが、そこにドライバーは介在しない。また、所有者が事業者であればそのまま自動運転タクシーとなるからだ。

実用化においては、Uber運営のもと海外展開されるのが本筋となるが、将来的に当該自動運転車両が世界各地に実装される際、トヨタ直営となるエリアが出てきてもおかしくはないはずだ。

また、中国で自動運転開発を手掛けるPony.aiの存在も気になるところだ。同社は2019年8月、自動運転技術の開発などでトヨタと協業することを発表した。2020年2月には、トヨタから4億ドル(約440億円)の出資を受けたことも発表している。

純粋に自動運転技術の高度化を図っていくのか、自動運転タクシー向け車両の生産受注を見越しているのか、あるいは中国内におけるサービス展開を視野に入れているのか。トヨタの思惑は定かではないものの、将来的に何かしらの動きはあるはずだ。

【参考】トヨタとUberの関係については「トヨタやソフトバンク、米ウーバーの自動運転部門に1120億円出資」も参照。トヨタとPonyの関係については「トヨタ、自動運転スタートアップの中国Pony.aiに4億ドル出資 その狙いは?」も参照。

ティアフォーらの自動運転タクシー開発プロジェクトにも関わりが?

もう1つ興味深い話題がある。ティアフォーやMobility Technologies、KDDI、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパン日本興亜の5社は2019年11月、自動運転タクシーの社会実装に向け協業を開始しているが、トヨタと関係の深い企業が多いのだ。

ティアフォーはトヨタが参加する未来創生ファンドから出資を受けており、Mobility Technologiesも2018年に関係強化に向け75億円の出資を受けている。KDDIの主要株主はトヨタだ。アイサンテクノロジーと損保ジャパンは直接的な関係にないようだが、互いの事業を通じた関係はあるだろう。

また、5社が使用する車種は、ユニバーサルデザイン仕様のトヨタ製「JPN TAXI」だ。事業が本格化した際、トヨタはおのずと自動運転タクシー車両の生産を手掛けることになる。自動運転化しやすいよう車体プラットフォームを一新する可能性もあるだろうし、5社の枠組みの中に参加することも想定される。こちらの動向も要注目だ。

【参考】ティアフォーら5社の取り組みについては「トヨタ製「JPN TAXI」を自動運転化!ティアフォーやJapanTaxi、無人タクシー実証を実施へ」も参照。

■トヨタによる自動運転タクシーの可能性
現実路線はサービスプロバイダーとのタッグか

前述した要素を総合的に勘案すると、自動運転タクシーの開発からプラットフォーム・アプリの開発、サービス提供に至るまで、すべてを実現する基盤が着々と積み上がりつつある。

ただし、現実問題としてトヨタは関係事業者との調和を重視する面が強いため、特に国内においては自動運転タクシーを自ら運営することは容易ではなさそうだ。サービスプロバイダーとなる事業者と手を組み、全国展開を目指す方向が現実的かもしれない。

海外においてはどうだろうか。UberやDiDiといった確固たるプロバイダーがすでに存在する地域では協業の道を歩み、その他の地域では直営する――という可能性もある。こうした展開をにらみ、有力プロバイダーを傘下に収めることも考えられそうだ。

自動車メーカーの動向

自動運転タクシーをめぐっては、米Waymoを筆頭に中国百度やAutoX、WeRideといった新興勢力が幅を利かせつつあり、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)のようにいち早く自動運転タクシー向けの車両生産に乗り出す例もある。

一方、米GMと傘下のCruiseのように、自動運転タクシーの実用化に前向きな自動車メーカーも多い。GM勢は2020年1月、ハンドルのない自動運転車両「Origin(オリジン)」を発表している。独フォルクスワーゲンやダイムラーも他社との協業のもと実用化を見据えた実証を進めている。

自動車メーカーによる自動運転タクシーも2021年を目途に実用実証段階に入る見込みが強く、新興勢力VS自動車メーカーといった競合の構図が米国などであらわになるかもしれない。

■【まとめ】自動車メーカー各社のCASE戦略が動き出す

自動運転タクシーの実用化においては、自動運転システムと車両、地図情報やルーティングシステム、配車プラットフォームなどが必要で、他社との協業が必須となる。スタートアップ勢らがこの分野で先行するのは、協業前提で事業化をスピーディに進めているのも一因だろう。

トヨタによる自動運転タクシーも他社との協業のもと実現することは十分あり得る話だが、そこでトヨタが主導権を握るのかどうかもポイントだ。トヨタ主導であれば「トヨタノマス・タクシー(仮)」の誕生につながり、他社主導であれば車両の供給やMSPFの提供などが役割となるだろう。

いずれにしろ、自動車メーカーによる自動運転サービスもまもなく実用実証段階を迎える。CASEを念頭に据えた各社の戦略が大きく動き出すことになりそうだ。

【参考】関連記事としては「【保存版】トヨタ×自動運転の全てが分かる4万字解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
登壇情報









関連記事