ライドシェアとカーシェアの違いは? メリットとデメリットは?

自動運転技術の進化で将来は一つに



ICT技術などを駆使し、遊休資産の活用を図るシェアリング・エコノミー。自動車関連では、カーシェアとライドシェアがメジャーな存在だ。

同分野のシェアリングサービスだが、それぞれどのような特徴があり、どのような違いがあるのか。両者のメリットやデメリットなどを改めて見てみよう。


■ライドシェアとは?

ライドシェアは、直訳すると「ライド=乗る」を「シェア=共有」することで、一般的には「相乗り」や「配車サービス」を指す。

特に、事業主体自らは運送せず、スマホアプリなどを活用したプラットフォームにおいて一般ドライバーと乗客を仲介し、一般ドライバーが自家用車を用いて有償による運送サービスを提供するTNC(Transportation Network Company)サービスを指す場合が多い。

プラットフォームサービスを主体に事業が展開され、タクシー同様「乗車」を提供するサービスだ。


日本国内におけるTNCサービスは、災害のため緊急を要する場合と、市町村や特定非営利活動法人などが公共の福祉を確保するため区域内の住民の運送を行う場合などを除き、道路運送法第78条により禁止されている。しかし、徐々にではあるが規制は緩和される傾向にある。

政府は2013年、地域や分野を限定することで大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度「国家戦略特区」を制定。その後、2015年の諮問会議で「過疎地などでの観光客の交通手段として自家用車の活用を拡大する」方針を打ち出し、翌2016年に一部改正法が成立。自家用有償運送の主な運送対象として、特区においては訪日外国人をはじめとする観光客も追加された。

また、2019年3月に開催された未来投資会議において、安倍晋三首相はライドシェアの活用拡大に向け道路運送法の改正に取り組む方針を示したことが報じられている。全面解禁ではないが、公共交通が不足している地域などでライドシェアサービスが展開しやすくなるよう法律を見直すよう方針のようだ。

リサーチステーション合同会社が2019年1月に発表したレポートによると、ライドシェアの世界市場規模は、2018年時点で613億ドル(約7兆円)規模で、2025年には3倍以上に拡大する見込みという。


■ライドシェアのメリットとデメリット

メリット

ライドシェアの一番のメリットは、やはり低料金だろう。競合するタクシーに比べ低い金額設定で、基本的にアプリを介してキャッシュレス決済するため、料金トラブルも少ない。ドライバーにとっては、自身に都合の良い時間で働くことができ、自家用車の有効活用も図ることができる。

スマートフォンで気軽に利用できるオンデマンド配車システムの活用が前提となったサービスのため、プラットフォームの研究開発も促進されるだろう。また、蓄積したビッグデータに基づくダイナミックプラシング(需給に応じて価格を変動させる料金設定)などの実践のしやすさ、環境面では自家用車を共有使用することによる負荷軽減効果などもある。

ドライバー資格の条件次第だが、仮にタクシードライバーなどに比べ容易に取得可能であれば、企業として移動サービスが成立しにくい過疎地域などにおいても、特定のプラットフォームのもと個人参加可能な環境を構築することもできるだろう。

タクシー事業者との過当競争を問題視する向きもあるが、逆の見方をすればタクシー業界に市場原理を働かせ、消費者に利便性をもたらす存在ともいえるだろう。

デメリット

デメリットとしては、ドライバーの資質にばらつきがあるため、強盗や殺人といった事件も発生している。企業を背負って仕事をする責任感が乏しいのかもしれない。

また、法整備が整っていない段階で世界各国で実用化が進んだため、ライドシェア容認国でも今後一定の規制・ルールが整備・適用されるケースが多くなりそうだ。安全性の向上やタクシーなどの競合とのバランスを保つため、料金設定が上向きに改訂される可能性なども考えられる。

【参考】ライドシェアのデメリットについては「ライドシェアの主なトラブル事例・問題・事件まとめ」も参照。

■カーシェアとは?

カーシェアリングは、自動車を会員間で共有(シェア)して利用するサービス。レンタカーの一形態で、事業者らが車両そのものを提供・共有し、会員制のもと短時間から利用可能なサービスだ。

レンタカー事業者らが自ら所有するクルマをユーザーに貸し出すB2Cサービスが主流だが、近年は自家用車を使用しない時間を有効活用して貸し出すC2Cによる個人間のシェアをマッチングするプラットフォームサービスも次々と誕生している。

また、トヨタ自動車や日産自動車などもカーシェア事業に本格参入を果たした。最新のADAS(先進運転支援システム)搭載車に乗ることなども可能で、カーシェアの機能を果たしながら試乗車的な役割を担うサービスなど、新たな展開が生まれる可能性もありそうだ。

利用者はスマートフォンで借りたい車種を予約後、カーシェアステーションで乗車し、利用後にまた同じステーションに返すラウンドトリップ方式が基本だ。最近はワンウェイ(乗り捨て)方式の実証実験も進んでおり、借りたステーションと異なるステーションに返却するサービスなども将来本格化するものと思われる。

矢野経済研究所が2015年8月に発表した「レンタカー&カーシェアリング市場に関する調査結果 2015」によると、2014年の国内カーシェアリング市場規模はステーション数、及び車両数の拡充と法人利用の増加により前年比45.3%増の154億円となっており、2020年には295億円まで伸びると予測している。

また、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が発表した2018年3月における定期調査によると、国内のカーシェアステーション数は1万4941カ所(前年比16%増)で、車両台数は2万9208台(同19%増)、会員数は約132万人(同22%増)の状況だ。

【参考】カーシェアについては「カーシェアリングとは? メリットやデメリットは? MaaSの一端を担うサービス」も参照。ワンウェイ方式のカーシェアについては「カーシェアで「乗り捨て」は可能? トヨタ自動車や日産も実証実験」も参照。

■カーシェアのメリットとデメリット

メリット

競合するレンタカーと比較すると、借りる際の労力が圧倒的に少ない。スマートフォンで予約し、クルマの解錠・施錠も電子キーなどでスマート化されている場合が多く、店員などを介すことなく気軽に利用できる。また、自身で運転するため自由な移動が可能で、時間も10分、15分単位から借りることができるため、ちょっとした買い物などの移動にもってこいだ。

デメリット

一方、自身が運転できるというメリットは、人によっては運転しなければならないというデメリットにもなり得るほか、ステーションが近隣にない場合はかえって手間となるケースも多い。また、ラウンドトリップ方式が主流のため、乗車したまま戻ってくることが前提となる。

このほか、他の利用者の使い方によっては、車内が汚れていたりする場合もあるようだ。

■【まとめ】完全自動運転で将来的には統合も

乗車をシェアするライドシェアと、車両そのものをシェアするカーシェア。本質はタクシーとレンタカーの違いにあり、性質は全く異なるものだが、そこに大きな共通点が存在する。

ライドシェアはマッチングサービスを提供するプラットフォームサービスとして成長してきたが、一方のカーシェアもプラットフォームサービスの整備とともに近年急速に市場を伸ばしており、C2Cタイプのサービスなど新たな展開を見せている。

MaaS(移動のサービス化)を担うモビリティの進化はプラットフォームとともにあり、そのプラットフォームがさまざまな移動サービスと融合しながら進化していくことでMaaSレベルが上がっていくのだろう。

ライドシェアが解禁されていない日本においては、両者は現状それほど競合しない存在のように思えるが、将来的には大きく様相が変わるかもしれない。仮に、カーシェアステーションがまちのあちこちに設置され、どこでも乗り捨てできる環境が整った場合はどうだろうか。両者の違いは、自分で運転するか否かが大部分を占めることなる。

さらに、完全自動運転が実用化された将来を仮定すると、タクシー、ライドシェア、レンタカー、カーシェアはほぼ同一のサービスに統合され、MaaS(移動のサービス化)に組み込まれていくことも十分考えられる。

自動車業界におけるシェアリングサービスは、自動運転技術により一つの点に収束していくことになりそうだが、その過程において、プラットフォームサービスがどのように進化し、またどのような派生サービスが誕生するか。しばらくは進化の過程が楽しめそうだ。

【参考】MaaSレベルについては「MaaSレベルとは? 0〜4の5段階に分類」も参照。


関連記事