自動運転に欠かせないセンサーとして年々存在感を高めているLiDAR。開発においては自動運転システム同様スタートアップの活躍が著しいが、その代表格がLuminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)だ。同社は2020年末にいち早く株式上場を果たし、自動運転開発企業や自動車メーカーとのパートナーシップを着実に伸ばしている。
同社の足跡を時系列でたどり、今後の展望に触れていこう。
<記事の更新情報>
・2023年5月19日:2021年8月以降の最新情報を追記
・2021年7月19日:記事初稿を公開
記事の目次
- ■ルミナーの概要
- ■2023年5月:ラッセルCEOがフォーブス買収
- ■2023年4月:メキシコのLiDAR生産工場立ち上げ
- ■2023年2月:最新センサー「Iris+」を発表
- ■2023年2月:メルセデス・ベンツが次世代量産車ラインにわたる広範な契約を発表
- ■2022年11月:ボルボ・カーズEX90にLiDAR搭載
- ■2022年11月:SAICのEVブランドへの搭載開始
- ■2022年10月:Polestar新モデルにLiDAR搭載
- ■2021年11月:モービルアイと契約
- ■2021年5月:Pony.aiの次世代フリートにIrisを統合
- ■2021年4月:エアバス子会社とパートナーシップ
- ■2021年3月:2020年の受注額が10億ドルを突破
- ■2021年3月:上海汽車の新型EVで「Iris」が採用される
- ■2021年3月:ボルボ・カーズ傘下のZenseactとパートナーシップ
- ■2021年1月:ボルボ・カーズとLiDARデータセット公開
- ■2020年12月:米ナスダック市場にSPAC上場
- ■2020年11月:Mobileyeの自動運転車にLiDAR供給
- ■2020年10月:Daimler Trucksとパートナーシップ
- ■2020年1月:LiDARのサブスクサービスを発表
- ■2019年7月:資金調達2.5億ドル突破、量産車向け「Iris」発表
- ■2018年12月:フォルクスワーゲングループのAIDと提携
- ■2018年6月:ボルボ・カーズと提携、共同で自動運転開発
- ■2018年4月:最新のセンシングプラットフォームなど発表
- ■2017年9月:トヨタグループのTRIと提携
- ■2017年4月:LiDAR発表とともに表舞台へ
- ■【まとめ】量産車を対象に着実にシェア拡大
■ルミナーの概要
ルミナーの歴史を語る上で切り離せないのが、若き創業者Austin Russell(オースティン・ラッセル)氏だ。1995年生まれのラッセル氏は11、12歳の時に自宅ガレージを改造して光学・電気に関するラボを作るなど、早くから科学技術の領域に足を踏み入れていた。
14、15歳のときに光工学に興味を持ち、LiDARの実験を開始したという。以後、世界中の論文やインターネット活用のもと知識を蓄え研究を重ね、2012年、高校在学中の17歳でルミナーを設立する。卒業後はスタンフォード大学に進学するが、約半年で中退し事業に集中していく。その際、スタートアップ創出に向け学生向けに研究奨励金を出すThiel Fellowshipから10万ドル(約1,100万円)を受け取っている。
その後、コアテクノロジーの構築に向け5年間のステルスモードに突入する。2016年に光学製品開発企業Open Photonicsを買収するなど力を蓄え、2017年に表舞台へ。以後、資金調達や提携がとんとん拍子に進み、有力スタートアップとしてルミナーはその名を世界に広めることになる。
ラッセル氏が25歳となった2020年に米ナスダック市場への上場を果たした。
▼Luminar公式サイト
https://www.luminartech.com/
■2023年5月:ラッセルCEOがフォーブス買収
ルミナーと直接関係はないが、オースティン・ラッセルCEOが、米経済誌Forbes(フォーブス)の親会社を買収したことが各メディアで報じられた。フォーブス・グローバル・メディア・ホールディングスの株式82%を、香港企業Integrated Whale Media Investmentから取得したという。
ラッセルCEOがLuminarの株主や関連会社に宛てた公開書簡によると、買収に際しLuminar 株式が売却・活用されることはなく、起業家や投資家の支援のもと、個人のファミリーオフィスによって取得したと説明している。フォーブスでの運営上の役割も持たないという。
今回の買収によってルミナー社に直接影響を与えることはなく、引き続きルミナーの価値向上に努めていく方針を明示している。ルミナー社の自社メディア化といった戦略なども考えていないようだ。
今後、ルミナーの企業価値向上に伴い、若きCEOが手にする資産も爆発的に伸びていくことが予想される。テスラのイーロン・マスクCEOのように、多方面で活躍する実業家への道を歩み始めているのかもしれない。
■2023年4月:メキシコのLiDAR生産工場立ち上げ
ルミナーは2023年4月、新たな生産拠点となる大量生産施設がメキシコで立ち上がったと発表した。メキシコ工場は、米国、タイに次ぐ3拠点目となる。
施設面積11万8,000平方フィートで年間約50万個のLiDAR生産が可能という。生産パートナーのサプライチェーンソリューションリーダー・Celesticaと共同で建設を進め、Celesticaが運営を行う。Celesticaはさらに20万平方フィートの拡張施設を建設中で、将来的には数百万個規模の生産施設になる見込みという。
同月には、台湾TPKとのパートナーシップのもと、中国内にも工場を建設する計画も発表した。第一段階では、メルセデス・ベンツなどに供給するためまずは年間最大60万個の生産を目指す。その後、需要に合わせ拡張することも可能としている。
ルミナーは、現在受けている契約だけで今後10年間のうちにアジア市場で数百万台の車両に自社製品が搭載されると予想している。
レベル4の自動運転車をはじめ、レベル2ADASやレベル3を搭載した自家用車への採用も進んでおり、こうした予想が現実のものとなるか、注目したいところだ。
【参考】Luminar Technologiesの生産施設については「自動運転業界のジョブズ、超性能センサーを中国に「100万台以上」」も参照。
■2023年2月:最新センサー「Iris+」を発表
ルミナーは2023年2月に開催した技術説明会で、新しい長距離LiDAR「Iris+」を発表した。300メートルの測距能力を有するという。
Iris+は、アウトバーンレベルの速度でさらに優れたパフォーマンスと小さな物体の検知を可能にし、車両の安全性と自律機能を強化するとしている。また、市販モデルのルーフラインにシームレスに統合できるよう、さらにスリムなプロファイルも備えているという。
すでに主要顧客向けにサンプル出荷を開始しており、2025年以降の量産車をサポートしていく計画としている。
ルミナーはLiDAR開発を加速するため、2023年1月にSeagateのLiDAR開発プログラムを買収し、LiDAR関連IPを取得するなど取り組みを強化している。
高速走行における自動運転や高度なADASを実現するには、より長距離を検知可能なLiDARの開発が求められる。こうしたソリューションの進化にも要注目だ。
■2023年2月:メルセデス・ベンツが次世代量産車ラインにわたる広範な契約を発表
ルミナーは2023年2月、メルセデス・ベンツとのパートナーシップの大幅な拡大を発表した。幅広い次世代量産車両を対象に、自動運転機能やADASの強化を図っていく構えだ。
両社は2年前から提携しており、レベル3システム「DRIVE PILOT」をオプション化した「Sクラス」とSクラスのEV版「EQS」にルミナー製LiDARが採用されている。
これを皮切りに、幅広い次世代量産車両ラインに次世代のIris LiDARと関連ソフトウェア技術を統合していく計画としている。
【参考】メルセデス・ベンツのレベル3システムについては「自動運転、2社目の「レベル3提供」はメルセデスベンツ」も参照。
■2022年11月:ボルボ・カーズEX90にLiDAR搭載
ルミナー製LiDARを搭載したボルボ・カーズのフラッグシップBEV「EX90」が正式に発表された。
EX90には、ルミナーの長距離LiDARをはじめ、レーダー5台、カメラ8台、超音波センサー 16台が搭載され、全方位検知を実現する。また、NVIDIA DRIVEのAIプラットフォームXavierとOrin、Qualcomm TechnologiesのSnapdragon、そしてボルボ・カーズが自社開発したソフトウェアを搭載したコアシステムが高性能な動作を可能にしている。
ルミナーのLiDARにより、昼夜を問わず高速道路における速度でも前方の道路を感知でき、数百メートル先の小さな物体も検知できるという。
最新の発表では言及されていないが、同モデルには将来的にレベル3機能「ライドパイロット」が搭載される可能性が高い。同社は米カリフォルニア州でレベル3を先行して展開していく計画を明らかにしており、その第一弾にはフラッグシップモデルのEX90が有力視される。
米国ではすでに予約注文が始まっており、2024年初めに納車が開始される予定だ。OTAアップデートなどにより、どのタイミングでレベル3を実現するか注目だ。
【参考】ライドパイロットについては「ボルボ・カーズ、条件付自動運転機能「ライドパイロット」発表」も参照。
■2022年11月:SAICのEVブランドへの搭載開始
ルミナーは第3四半期決算説明の中で、自社製品が搭載されたSAICのEVブランド「RISING AUTO」の「R7」が発売されたことに触れた。
同ブランドへのルミナー製品の搭載はこれが初めてで、RISING AUTOの高度なレベル2を実現するADAS「RISING PILOT」の安全機能向上に寄与するため、中国全土で40万キロ以上に及ぶ高速テストを行ったという。
ルミナーとSAICは2021年に戦略的パートナーシップを結んでおり、今後もルミナー製LiDARを搭載した車種が続く可能性が高そうだ。
■2022年10月:Polestar新モデルにLiDAR搭載
ボルボ・カーズ傘下のPolestar(ポールスター)が、ルミナー製LiDARを搭載した最新モデル「ポールスター3」を発表した。
初期発注モデルはLiDAR非搭載だが、2023年第1四半期にオプションで「Luminar Iris」を搭載した「Pilot パック」の予約販売も始まったようだ。暗闇やより劣悪な環境下でも強化されたADAS機能を利用できるようになるという。
2023年2月には、ルミナーとポールスターは複数の車両にルミナー製LiDARの搭載を拡大していくパートナーシップを結んだと発表した。2024年発売予定の電動4ドアGT「ポールスター5」にも搭載する計画としている。
■2021年11月:モービルアイと契約
ルミナーは、2021年11月、自動運転開発企業Mobileye(モービルアイ)の自動運転車に自社ソリューションを供給する契約を交わしたと発表した。
モービルアイはこれまで、マシンビジョン技術を武器にカメラによる自動運転開発を主体としてきたが、近年はLiDARを活用した自動運転技術も開発し、2種類の独立した自動運転システムを備えた「MobileyeDrive」の開発・実用化を進めている。
自動運転分野での活躍に大きな期待が寄せられるモービルアイとの契約は、ある意味特筆に値する。どのような成果が表れるのか、今後の動向に要注目だ。
【参考】モービルアイについては「Mobileye(モービルアイ)と自動運転(2023年最新版)」も参照。
■2021年5月:Pony.aiの次世代フリートにIrisを統合
自動運転タクシーの開発を進める中国Pony.aiは、ルミナーと共同で新しく設計したセンシングプラットフォームを発表した。
Pony.aiは2023年に自動運転タクシーのフリートをグローバル展開する予定で、次世代フリートにはIrisを統合する。同社は現在広州、上海、北京、カリフォルニア州アーバイン、フリーモントの5都市でサービス実証を進めており、200台を超える自動運転車両を保有しているという。
サービスが完全に実用化域に達し本格化されれば、フリートに導入される台数も飛躍的に増すことが予想される。
■2021年4月:エアバス子会社とパートナーシップ
ルミナーの技術は、空飛ぶクルマにも採用されたようだ。同社は2021年4月、航空機メーカーエアバス子会社Airbus UpNextとのパートナーシップを発表した。
3Dスキャン技術で障害物などのオブジェクトを正確に検出することで航空機の安全性を高め、さらには自動運転が可能なアーバンエアモビリティ(UAM)の実現を目指す構えだ。
【参考】ルミナー製LiDARの需要については「売れまくるLuminarのLiDAR!Volvo、テスラにも!?自動運転の目を製造」も参照。
■2021年3月:2020年の受注額が10億ドルを突破
ルミナーは2021年3月、2020年の財務結果と2021年の戦略を発表した。2020年は、ボルボ・カーズをはじめ第4四半期までにモービルアイやダイムラートラックスなどとのパートナーシップを獲得し、受注額は目標の10億ドル(約1,100億円)を超えたようだ。
2021年はIrisのサンプル生産を進め、少なくとも3つの商業プログラムを勝ち取り、受注額40%増を目指すとしている。
■2021年3月:上海汽車の新型EVで「Iris」が採用される
ルミナーは2021年3月、中国の上海汽車(SAIC)と戦略的パートナーシップを結び、同社のEV(電気自動車)ブランド「R」の車両にルミナーのIrisが採用されたことを発表した。
新モデルは「高速道路の自律性と予防安全機能を実現する」としており、高速道路におけるレベル3機能を備えるものと思われる。今後数年は、こうした量産車両への採用がLiDAR市場の拡大を強力に後押ししていくことになりそうだ。
■2021年3月:ボルボ・カーズ傘下のZenseactとパートナーシップ
ルミナーは2021年3月、ボルボ・カーズ傘下のソフトウェア開発企業Zenseactとパートナーシップを結び、フルスタックの自動運転システムを開発・提供すると発表した。
ルミナーが開発したIrisや知覚ソフトウェアなどをZenseactのOnePilot自動運転のソフトウェアソリューションに統合し、全ての自動車メーカーに対応可能なフルスタック自動運転ソリューション「Sentinel」として製品化していく。
長きに渡って継続しているボルボ・カーズとの提携関係は、いっそう深まっているようだ。
■2021年1月:ボルボ・カーズとLiDARデータセット公開
ルミナーとボルボ・カーズは2021年1月、自動運転開発者向けに厳選したLiDARデータセット「Cirrus」を公開すると発表した。長距離LiDARの検出や分類に向けたアルゴリズム開発を促進する狙いだ。
データセットは、ボルボ・カーズが開設した「Volvo Cars Innovation Portal(ボルボ・カーズ・イノベーション・ポータル)」において、APIやエミュレーターなどとともに公開している。
Cirrusでは、長距離に重点を置いたLiDARスキャンパターンの不均一な分布を提供する。対応するカメラ画像や均一なスキャンパターン、注釈なども含んでいる。
具体的には、6285ペアのRGB、LiDARガウス、LiDARユニフォームフレームを含む。250メートルのLiDAR有効範囲全体にわたり、車両、大型車両、歩行者、自転車、動物、車輪付き歩行者、オートバイ、トレーラーの計8つのオブジェクトカテゴリに対し注釈が付けられている。シナリオは、高速道路と都市道路の両方を含んでいる。
【参考】データセットの公開については「ボルボがCASE分野の独自ツールを「無償公開」する真の狙い」も参照。
■2020年12月:米ナスダック市場にSPAC上場
ルミナーは2020年12月、特別買収目的会社(SPAC)のGores Metropoulosと合併し、米ナスダック市場にSPAC上場した。Luminarのティッカーシンボルは「LAZR」。
これに先立ち、同社は7月にゴールドマンサックスの自動車部門で責任者を務めていた実績を持つトム・フェニモア氏をCFO(最高財務責任者)に任命するなど、経営体制の大幅強化を図っていた。
【参考】Luminarの上場については「LiDAR企業のLuminar上場!株価急上昇、自動運転の「目」を開発」も参照。
■2020年11月:Mobileyeの自動運転車にLiDAR供給
ルミナーは2020年11月、自動運転開発を手掛ける米インテル傘下のモービルアイと契約を交わしたことを発表した。イスラエルのテルアビブなど世界中の主要市場でレベル4サービスを展開するモービルアイのパイロットプログラム向けの第1世代の車両に、1,000ドル未満のコストでLiDARを供給する。
両社は約2年前から共同開発を進めていたとしており、モービルアイのアムノン・シャシュアCEO(最高経営責任者)は「高性能LiDARは自動運転ソリューションの重要な部分であり、無人運転車開発の次の段階でルミナーと緊密に協力してきた」と話している。
単眼カメラへのこだわりを持つモービルアイだが、認知システムの冗長性を高めるため、近年はカメラ主体のシステムとLiDAR主体のシステムの両方を備えた自動運転システムの開発を進めている。
LiDARの独自開発にも取り組んでいるが、ルミナー製品を使用する計画に変更はないという。
【参考】関連記事としては「Luminar、自動運転向けLiDAR供給で1300億円超の売上確定へ Mobileyeとサプライヤー契約」も参照。
■2020年10月:Daimler Trucksとパートナーシップ
ルミナーは2020年10月、商用車メーカーの独Daimler Trucksと戦略的パートナーシップを交わしたと発表した。Daimler Trucksの北米部門や自動運転開発部門と共同でレベル4の開発を進めていくとした。
パートナーシップに伴い、Daimler Trucksはルミナーの株式の一部を取得したようだ。
■2020年1月:LiDARのサブスクサービスを発表
ルミナーは2020年1月、LiDAR「Hydra」の出荷を開始し、サブスクリプション方式でリリースすると発表した。
Hydraのリリースによって、ルミナーはセンサーの販売から自動運転開発パートナー向けのサブスクリプションベースのサービスにコアビジネスを移行。これにより、開発サイクル全体の統合が深まり、開発速度が向上してより焦点を絞った機能開発が可能になるとしている。
Hydraについては、最新の知覚コンピューターやNVIDIA Xavier SoC上に構築されたリファレンスデザインを備えるほか、より高いフレームレートでも高解像度を実現する機能や500メートル先まで検知する認識技術、オブジェクトの速度測定など、多数の新しい機能を提供するとした。
■2019年7月:資金調達2.5億ドル突破、量産車向け「Iris」発表
ルミナーは2019年7月、最新の企業動向を発表した。2022年発売予定のIrisで消費者向けの乗用車や商用トラック市場にも参入する戦略のほか、これまでに調達した資金が累計2億5,000万ドル(約270億円)を突破したことなども発表した。
資本増強によって量産車両市場への進出を加速するとし、その際の主力となる製品がIrisだとした。レベル3から4の自動運転を実現する基本的な性能をはじめ、安全性やコスト面でも優れたパフォーマンスを発揮するセンシングプラットフォームで、1000ドル(約11万円)未満の価格を目標とした。
なお、この時点で世界の上位15社の自動車メーカーのうち12社が、自動運転開発プログラムの一環としてルミナーのセンシングプラットフォームを利用していると明らかにされた。
■2018年12月:フォルクスワーゲングループのAIDと提携
ルミナーは2018年12月、アウディ子会社で自動運転開発を手掛けるフォルクスワーゲングループの「Autonomous Intelligent Driving(AID)」との提携を発表した。AIDのパートナーシッププログラムにおいてルミナーが選ばれ、専門知識を組み合わせ2021年までに自動運転技術の確立を目指す方針としている。
なお、AIDは2020年、米フォードとフォルクスワーゲンと提携する有力自動運転スタートアップArgo AIに買収され、Argoの欧州開発拠点となっている。
■2018年6月:ボルボ・カーズと提携、共同で自動運転開発
ルミナーは2018年6月、スウェーデンのボルボ・カーズとの提携を発表した。ボルボ・カーズの試験車両に最新のLiDARセンシングプラットフォームを提供し、共同で自動運転開発を進める内容だ。
また、スタートアップの支援に向けボルボ・カーズが立ち上げたばかりの投資ファンド「ボルボカーズ・テックファンド」が第1弾の投資先にルミナーを選定したこともあわせて発表されている。
このほか、ボルボ・カーズとの提携においては2020年にルミナー製LiDARをシームレスに統合したモジュラー車両アーキテクチャが発表されており、2022年に生産開始する予定としている。
【参考】関連記事としては「続・神童CEOの快挙 LiDAR企業ルミナー、トヨタに続きボルボと取引」も参照。
■2018年4月:最新のセンシングプラットフォームなど発表
ルミナーは2018年4月、全ての試験車両に搭載可能な最新のセンシングプラットフォームとともに、新たな企業買収や製造施設の拡大などを発表した。
チップ開発を手掛けるBlack Forest Engineeringを買収し、開発体制を350人以上の規模に拡大するとともに製造施設も拡大し、四半期ごとに5,000台以上を生産できる体制を構築した。
■2017年9月:トヨタグループのTRIと提携
最先端技術の開発を手掛けるトヨタグループのTRI(トヨタリサーチインスティチュート)は2017年9月、ルミナーのLiDARセンシング技術を搭載した最新の自動運転テスト車両となるプラットフォーム2.1を発表した。
ルミナーは「TRIは新しいセンシングプラットフォームを最初に深く統合した企業」とし、TRIのジェームス・カフナーCTO(最高技術責任者)は「データの忠実度と範囲のレベルはこれまでに見たものとは異なる」と同社製LiDARを評価した。
■2017年4月:LiDAR発表とともに表舞台へ
ルミナーは2017年4月、独自開発したLiDARで自動運転車市場に参入することを表明した。200メートル先の黒い車やタイヤといった低反射率の物体を検出でき、かつ時速75マイルで7秒間の反応時間を提供する低コストLiDARで、まもなく本格化する自動運転時代の需要を取り込もうとした格好だ。
すでに戦略的パートナーと4つの自動運転プログラムに向け限定生産を進めていることのほか、チーム拡大に向け2つの買収を行い、シードキャピタルのCanvas VenturesやGVA Capital、1517Fundなどから計3600万ドル(約40億円)を調達したこともあわせて発表した。
なお公式発表されていないが、ルミナーは2018年初頭にもベンチャーラウンドで1億ドル(約110億円)超の資金調達を行っているようだ。
■【まとめ】量産車を対象に着実にシェア拡大
LiDARの量産化も本格化し、特に2022年以降は着々と量産車両向けの採用を伸ばしている印象だ。レベル4車両と比較すると搭載車両数は膨大な数に上る点がポイントだ。
また、北米よりも欧州やアジア系メーカーとのつながりが先行している点も興味深い。着実にシェアを拡大しているLuminar Technologiesの今後の動向に引き続き注目したい。
(初稿公開日:2021年7月29日/最終更新日:2023年5月19日)
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)