中国勢、日本でロボタクシー展開か?資金源にトヨタ

Pony.ai、日本のMKタクシーとタッグ



ビッグニュースが飛び出した。MKタクシーを展開するエムケイホールディングス(以下MK)が、自動運転開発を手掛ける中国Pony.aiと戦略的パートナーシップの覚書を交わしたと発表したのだ。日本における自動運転サービスの展開も視野に入れているものと思われる。


トヨタも出資する有力中国系開発企業の進出により、日本を舞台とした各社の競争はよりいっそう激しさを増すことになりそうだ。

もう一点、注目すべきなのが大手タクシー事業者×自動運転開発事業者の動向だ。現状、国内におけるロボタクシー事業にはタクシー事業者の協力が欠かせないが、MKがPony.aiと組んだことにより、今後進出を模索する開発事業者の選択肢が減ったと言える。テスラなどの動向も気になるところだ。

日本のタクシー業界とロボタクシーの最新動向に迫る。

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■MKとPony.aiのパートナーシップの概要

日本における安全性や運用上の課題を調査

MKは2026年10月、日本国内における自動運転技術の開発に向けた意見交換を行う戦略的パートナーとして、Pony.aiと協力する覚書を締結したと発表した。


日本における自動運転技術の開発動向や、安全性や運用上の課題、規制・許認可への対応、ロボタクシーサービスの導入可能性について、意見交換を行う。

協業を通じて、両社は日本の交通環境における自動運転技術の安全性や運用上の課題について知見を深める。その後の取り組みについては、関係法令に基づく許認可の取得を前提に、意見交換の結果を踏まえて各社で検討することとしている。

覚書を交わした会場となった京都スマートシティエキスポ2026では、ロボタクシー車両の展示も行われた。車両は、トヨタのbZ4Xではなく広州汽車集団(GAC)系ブランドAIONのモデルだった。

明確にロボタクシーの国内導入は謳わず、調査を主体とした提携内容になっているが、おそらく、特段のハードルがなければ前向きに導入に向け進んでいくものと思われる。調査が目的であれば、Pony.aiとしてはトヨタの手を借りれば済む話だからだ。


出典:MKグループプレスリリース

MKは国内9エリアでサービス展開

京都を拠点とするMKは、東京、名古屋、大阪、札幌、福岡、神戸、滋賀、沖縄と大都市圏を中心に国内9エリアでタクシーサービスを展開する業界大手の一角だ。ロボタクシー事業者としては、MKと組むことで国内各地の大都市を網羅できる。ロボタクシーサービスのパートナーとしては最上級の存在だ。

こうした最上級クラスのタクシー事業者は、それほど多くない。Waymoと手を組んだ日本交通グループは、東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、大阪、兵庫、京都を対象エリアに収める。Wayve×Uber Technologiesと手を組んだ日の丸交通は東京のみだ。

過去、GM・Cruise勢とロボタクシー計画を進めていたホンダは、帝都自動車交通(東京・神奈川)と国際自動車(東京)と2022年にパートナーシップに向け基本合意していた。

Waymoはまず東京都内でのサービス展開を予定しているが、日本交通と手を結んでいる限り、エリア拡大もスムーズにいきそうだ。

一方、Wayve・Uber Technologies勢は、都内以外でのサービス展開を目指す際、他のタクシー事業者と手を結ぶ必要がある。おそらく、配車サービスを手掛けるUberとしては、広くパートナーシップを結んでいく戦略と思われる。配車アプリで全国のタクシー事業者とつながりを持っている点がアドバンテージになるかもしれない。

このほか、大手では第一交通産業グループが34都府県、梅田交通グループが大阪を拠点に13都道府県でサービスを展開している。

出典:MKグループプレスリリース

タクシー事業者争奪戦が勃発?

日本で広域展開を考えている自動運転開発事業者は、こういった事業者と手を組むことが最善策となるわけだが、残された大手事業者はそう多くない。

テスラなど日本(世界)進出の可能性がある開発事業者からすれば、今回のMKとPony.aiのパートナーシップによって選択肢が一つ減ったような感じではないだろうか。

もちろん、各社の契約が独占的か否かで状況は大きく変わるが、配車アプリ系のUberのような立ち位置でない限り、当面は同一エリアにおいては一社:一社が基本となるのではないだろうか。

こうした動向を見極め、開発事業者、タクシー事業者双方ともしっかり戦略を練ったうえで迅速に手を打たなければならないのかもしれない。

外資系ロボタクシーが「なぜか日本企業と組む」裏事情

中国勢初の本格進出なるか

もう一点注目すべきポイントは、中国開発勢の日本本格進出となるかもしれない点だ。冷え込み続ける日中関係のせいか、中国系企業の日本進出は慎重だ。中国政府はことあるごとに日本との貿易に水を差す。中国製品に対する日本人の評価も高いとは言えず、特に安全性を危惧する声は大きい。

人の命に直結する自動運転車であればなおさらだろう。「中国の自動運転技術を日本で実用化」と耳にした途端、脊髄反射で非難する層が一定数存在することは間違いない。ともすれば、関係する企業や自治体などにも飛び火することになる。日本企業としても、積極的に招き入れるのに躊躇してしまうところではないだろうか。

しかし、中国自動運転開発の先頭勢の技術が、Waymoに匹敵するのも事実だ。同条件で正確に比較することは困難だが、Baidu(百度)、WeRide、Pony.aiのロボタクシーの実績はWaymoに劣らず、中国内外で商用化されている。

事故事案もたまに公となるが、それはWaymoも同様だ。中国の場合、マイナス事案は言論封殺・情報統制されているのでは……?と勘繰りたくなる面も否めないところだが、今のご時世、情報を完全に封じることは困難で、あまりにひどければその実態は必ず表沙汰となる。基本的に安全運行を実現しているからこそ、中東や欧州など世界進出への道が開かれているとみるべきだ。

トヨタとも親密、一部エリアでは黒字化達成

Pony.aiは、中国の北京、上海、広州、深センやクロアチアの首都ザグレブで商用サービスを提供しており、累計走行距離は1億キロ超に達しているという。ルクセンブルクや中東、韓国、シンガポールなどでも実用化に向けた取り組みを進めている。

中国での登録ユーザー数は150万人に達し、本拠を構える広州市では黒字化を達成したという。深センでも損益分岐点に達したとしている。深セン湾港では、2026年初めに1日の旅客数が過去最高の21万5000人に達したと発表している。

ロボタクシー台数は2026年6月末時点で2,000台弱となっており、2026年末までに世界20都市以上で事業を展開し、3,500台以上のロボタクシーを保有するグローバルフリートを目指すとしている。

トヨタとの関係もポイントだ。Pony.aiは2019年、トヨタ自動車との提携を発表し、翌2020年には4億ドル(約460億円/当時)の出資を受けたことも発表した。

2023年には、トヨタの中国統括企業と広汽トヨタとともに、自動運転タクシー量産化を推進する合弁設立を発表した。最新の第7世代自動運転システムを搭載したトヨタ「bZ4X」の量産化に着手しており、2026年中に1,000台以上を生産するとしている。

仮に日本進出が決まった場合、車両は右ハンドルのbZ4Xが有力視されるが、あえてAIONなどを持ち込み、中国系最新EVが日本市場になじむかどうかを試すのも戦略上面白そうだ。

ロボタクシー欧州市場を奪う中国 Pony.aiが2,000台のロボタクシーを展開へ

■【まとめ】日本のタクシー業界は激変する

日本市場をめぐっては、WeRideも進出の可能性を示唆したとする報道もある。Cybercabをお披露目したテスラも、遅かれ早かれ進出するものと思われる。

中国はMomentaやBaiduなど有力開発勢を多く抱えている。こうした勢力が日本に本格進出すれば、タクシー営業権の争奪戦が激化するのは必至だ。

また、テクノロジー系企業を中心に、タクシーに関わる規制緩和を求める声も主大きくなっていくかもしれない。

激変が予想される日本のタクシー業界。今後の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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