外資系ロボタクシーが「なぜか日本企業と組む」裏事情

単独での運行は不可?



Uber Japanは2026年8月、東京都内におけるロボタクシーサービス実現に向け、タクシー事業者の日の丸交通と運行パートナーシップを結んだと発表した。


Uber Technologiesはロボタクシー事業で英Wayveと組んでおり、日本展開に向け日産をパートナー企業に選んでいたが、これまでタクシー事業者は未定となっていた。

道路運送法上、タクシーの運行には一般乗用旅客自動車運送事業の許可を要するが、やはりロボタクシーも例外ではなく「営業権」が必要となるようだ。

Uber Technologiesの取り組みを交えつつ、ロボタクシーをめぐる「営業権」について解説していく。

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■Uber Technologiesの取り組み概要

ロボタクシーも旅客運送サービス認可が必要

出典:Uber Japanプレスリリース

Uber Technologiesと日の丸交通は、2026年後半にUber Technologiesが予定している東京都内でのロボタクシーの試験運行において、運行パートナーシップ契約を締結した。


ロボタクシーサービスはUber Technologiesのプラットフォームで提供されるが、日の丸交通が運行主体となり、ロボタクシーの運行管理や車両基地(デポ)におけるオペレーション、車両のメンテナンス、点検、清掃、充電、稼働状況の管理を担う。

Uber Japanによると、日本の法令では、ロボタクシーの運行は旅客運送サービスの認可を受けたタクシー事業者が行う必要があるという。このため、試験運行は国内の法規制や許認可要件に準拠して設計しており、Uberがマッチングプラットフォームや運行支援ツールを提供し、日の丸交通が認可を受けた運行主体として実際の運行管理を担当するという。

また、将来的な完全無人サービスの開始に向けた段階的導入の一環として、本運行の初期段階においては安全を最優先とし、プロドライバーである日の丸交通の乗務員がセーフティドライバーとして同乗するとしている。

日の丸交通が「営業権」を引っ提げて運行管理の担い手に

Uber Technologiesがロボタクシー事業の日本進出を正式発表したのは2026年3月だ。Uber TechnologiesとWayveは2024年、Uber Technologiesの配車サービス向けにWayveの組み込み型AIを統合するための複数年にわたる提携を発表しており、2025年には英ロンドンで公道実証を開始している。


一方、Wayveと日産は2025年にパートナーシップを結んでいる。次世代プロパイロットシリーズにWayve AI Driverを採用し、2027年にレベル2++相当の最新ADAS搭載車を販売する計画を発表している。

こうした縁で3社が結び付き、日本でのロボタクシー展開に向け協業していくことが2026年3月に発表されたのだ。

しかし、その協業の中にタクシー事業者の名はなく、3社のいずれかがタクシー事業許可を取得するのか、あるいはロボタクシー向けの新制度が創設されるのかなど、実施スキームに注目が集まっていた。

その結果が、今回の日の丸交通との提携だ。タクシー事業者を引き入れることで、タクシー事業を行う上での問題点を解決した格好だ。日の丸交通は過去、ZMP(現ROBO-HI)と自動運転タクシー実証を行っていた経験があり、自動運転に対する理解も高いものと思われる。

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■ロボタクシーにおける「営業権」

開発事業者自らが営業権を取得するのはハードルが高い?

ポイントは、「タクシー事業の許可」だ。ロボタクシーも特別扱いされることなく、従来の道路運送法で定められた通り、一般乗用旅客自動車運送事業の許可が必要――ということが明らかとなった点だ。この部分に規制のメスが入れられることはなかったようだ。

自動運転開発事業者や配車プラットフォーマーらが自らロボタクシー事業を営むには、一般乗用旅客自動車運送事業の許可を得なければならないのだ。

しかし、東京都内の特別区や武三交通圏、札幌交通圏、仙台市、秋田交通圏、富山交通圏……など、各地の都市圏137地域が準特定地域に指定されており、参入に制限が課される場合があるなど新規参入は容易ではない。

許可要件も既存タクシー事業をベースとしているため、ロボタクシー事業とはなじまない部分もいろいろと出てくるだろう。

あれこれ考えた結果、「タクシー事業者と一緒にやろう」……という結論に辿り着くのも自然な流れだろう。

良心的に捉えれば、既存タクシー事業者と自動運転開発事業者らの共存を図ることになり、諍いなくロボタクシーの実装を進めることができる。

一方、悪い捉え方をすれば、業界の圧力が……と感じなくもない。事業収益が分散されるため、また既存タクシーへの配慮が不可避となるため、低運賃化などは見込めないだろう。これが日本流だ。

GO&Googleの自動運転タクシー、「運行管理」は誰が?「主導権」を握るのは?

Waymoやティアフォーは日本交通、過去にはホンダも

いずれにしろ、自動運転開発事業者がロボタクシーを展開するためには、タクシー事業者と手を組まなければならない……ということだ。

実際、2024年末に日本進出を表明した米Waymoは、日本交通・GOとパートナーシップを結んでいる。Waymoが車両を提供し、GOのプラットフォームで配車し、日本交通が運行管理を担う……といった形だ。

すでに東京都内でデータ収集を進めており、日本の道路交通への対応について学習を進めている。早ければ2027年中にもサービス実証が始まりそうだ。

ティアフォーも、実証やデータ集などで日本交通と手を組んでいる。ロボタクシー開発プロジェクトを立ち上げた際、GOの前身であるMobility Technologiesも名を連ねていた。また、経済産業省による2023年度補正予算「モビリティDX促進のための無人自動運転開発・実証支援補助金」事業において、日本交通と都内複数地域でロボタクシーのサービス実証を行うこととしていた。

2025年には、日本交通の営業車両に高性能センサーを搭載し、走行データ収集を開始したことも発表している。都内においては、まず間違いなく日本交通がパートナーとなるだろう。

GM・Cruise陣営と手を組んでいたホンダも当時、自動運転モビリティサービスの展開に向け帝都自動車交通、国際自動車と基本合意書を締結していた。

ホンダの子会社ホンダモビリティソリューションズは2024年、上記2社と関連法令やサービス設計、事業者間の役割・責任分担の在り方などについて検討するための基本合意書を締結したと発表している。

残念ながらGM勢との取り組みはとん挫することとなったが、ホンダ単独によるロボタクシー事業の火は消えていない。改めて注目したいところだ。

経営権そのものを取得する動きも

この話題で最も面白い存在となるのは、newmoだろう。最新テクノロジーを活用した新進気鋭のタクシー事業者で、老舗タクシー事業者の買収や資本参加などを通じて国内各地のタクシー事業に参入するスタイルで勢力を拡大している。

当初は日本版ライドシェアの展開などを視野に収めていたが、現在はロボタクシー事業に注力しており、2025年にティアフォーとの協業を開始している。大阪府内において、新たな移動の足としてロボタクシーの展開・事業化を目指す方針としている。

2026年には、東京都内の開発拠点「Autonomy Garage Tokyo」、大阪府内の自動運転拠点「JOTO Base(城東ベース)」を相次いで開設し、自社開発を大きく前進させている。

大阪市や堺市とロボタクシー実用化に向け提携を交わしており、大阪市との取り組みでは新規設立した夢洲交通、堺市との取り組みでは傘下に収めた堺相互タクシーや未来都が実証に加わっている。

テクノロジーを駆使した効果的な経営体制でタクシー事業そのものを効率化し、経営権の譲渡を受けた上でロボタクシー事業を目指す。こうした手法も今後拡大していくのかもしれない。

約200億集めた「newmo」がライドシェア撤退か 自動運転一本化へ

大手グループを狙う動きも活発化?

広域展開を視野に収めているのであれば、大手タクシーグループと手を結ぶのが最善となる。すでに事業参加している日本交通グループをはじめ、国際自動車グループ、大和自動車交通グループ、帝都自動車交通グループの都内大手4社は引く手あまただろう。また、第一交通産業を筆頭に、梅田交通グループやMKタクシーなど、大きな基盤を持つ企業群も多い。

日本での本格展開を目指す外資にとっては、こうしたグループに近づくのが良策となる。近い将来、各グループ×自動運転開発事業者で陣営が分かれ、新たな競争が生まれるのかもしれない。

■【まとめ】営業権巡り名義貸しや買収も?

自動運転開発事業者がロボタクシー事業を展開するためには、現状多くの場合において既存タクシー事業者の協力が欠かせない。Waymoなどの外資にとっては必須の状況とも言える。

日本市場への参入を目指す海外有力勢はおそらく今後も出てくるものと思われるが、Uber Technologiesのように運行に関わる庶務をソリューション化している企業もいる。自ら運行管理を行う能力を備えているものの、営業権がないパターンだ。

そのうち、名義貸しとも言えるような提携パターンも登場するかもしれない。また、newmoのように買収する形で正式に営業権を手に入れるケースも出てくるかもしれない。

規制と変革のはざまで各社はどのように動くのか。その動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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