自動運転AI、ついに「サンキューハザード」覚える

人間らしい挙動、自発的に学習?



Turingの自動運転モデルが、サンキューハザードを覚えたそうだ。ハザード(非常点滅表示灯)の利用に関する是非は置いておき、E2Eモデルがサンキューハザードを自発的に学習したとすれば、それは非常に画期的だ。


TuringのAIは、自律走行能力に留まらず人間らしい振る舞いも覚え始めたのだろうか。自動運転開発の最前線に迫る。

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■自動運転×サンキューハザード

山本CEO「チューリングの自動運転がサンキューハザードを覚えた!!」

Turing創業者兼CEOの山本一成氏は2026年9月26日、SNS「X」に「チューリングの自動運転は最近サンキューハザードを覚えました!!」と投稿した。

出典:X

同日、同社取締役COOの田中大介氏も山本氏の投稿をリポストし、「最近のチューリングの自動運転モデルはサンキューハザードも出せるようになりました。目的地を設定したら、右左折も路駐よけも歩行者待ちも対向車対応もETCゲートくぐるのも合流もサンキューハザードも全部勝手に、しかももはや僕より上手にやってくれるようになってて最近の進化、半端じゃないです」と投稿している。

出典:X

添付された動画には、Turingの自動運転実証車両がETCレーンを通って高速道路に進入し、混雑気味の合流部から本線に入った後、ハザードを点灯させる様子が収められている。


ハザードランプの正しい使用方法ではないが、日本においてサンキューハザードは、道を譲ってもらったときなどに後続車に感謝を伝える手法として一定の支持・理解を得ている。プチ迷惑をかけてしまった際に、謝罪の意を込めて使用されることもある(ソーリーハザード?)。

一昔前は、ハザードではなくクラクションを短く鳴らすものが多かったと記憶しているが、こちらは明らかに減少傾向にある。

SNSには称賛の声

山本氏のポストには、以下のコメントが寄せられている。

  • ルールにないマナーをどうやって覚えたの?
  • ウインカーもサンキューハザードも出せるなんて。一部の人間よりも賢くて上手でモラルがあるのね。
  • チューリングは他車からのサンキューハザードを実ハザードと認識しますか?
  • 車がお礼を言うなんて可愛いね。今度は、急ブレーキをかけたときに小さな謝罪もしてくれるのか知りたくなる。
  • あ、この間合流してくるウェイモの車に譲ったらやはりサンキューハザード頂きましたが、あれって奴がやってたんですね。
  • ちゃんとファスナー合流するので偉いです
  • 割と理想的な合流しててすごい

サンキューハザードに否定的な声もあったが、自動運転による合流技術やハザードによるマナーを称賛する声が多く寄せられているようだ。自動運転ラボとしても、気になる質問・意見が散見される。


「ルールにないマナーをどうやって覚えたの?」は非常に興味深い。一般的に考えれば、人間が意図的に学習させたのでは……となる。

なぜなら、道を譲られた車両のすべてがサンキューハザードを行うわけではないためだ。サンキューハザード自体が滅多に遭遇しないレアケースであり、かつ必ず行われるものではない。

それにもかかわらず、こうしたレアケースをAIが学習し、試行錯誤の一環で「混雑時に合流した際はハザードを付ける」――を実践してみたとすれば、素晴らしいことだ。法律上の扱いは別として、この学習を確認したエンジニアもAIを否定せず褒めてしまうことだろう。

なお、通常のアルゴリズムベースの手法であれば、道路交通法などに準拠したものとなる。意図的に学習させない限り自動運転車がサンキューハザードすることはない。Turingの自動運転AIは自ら学習したのか、意図的に覚えさせたのか……興味深いところだ。

「チューリングは他車からのサンキューハザードを実ハザードと認識しますか?」も気になるところだ。通常であれば、前走車両がハザードを付けた場合、「前方で何かがあった」「停車するのかもしれない」など推測し、有事に備えるべく自車両を慎重に制御する。

ただし、道を譲った直後などであれば、「ああ、サンキューハザードか」と理解に及ぶことも難しくない。自動運転車も、このようにハザードの理由を類推することができるのか。

もし、Turingの自動運転AIが自らサンキューハザードを学習したのであれば、こうした前走車両のハザードの理由を類推し、理解している可能性がある。「感謝」を理解しているかは不明だが、「道を譲られた車両は2~3回ハザードを付けることがある」と理解していれば、本来のハザードと区別することができる……と言えそうだ。

Waymoもサンキューハザードを実装?

もう一点、「あ、この間合流してくるウェイモの車に譲ったらやはりサンキューハザード頂きましたが、あれって奴がやってたんですね。」というコメントも気になる。

東京都内で実証中のWaymoの車両もサンキューハザードを行ったというものだ。米国ではサンキューハザード文化がないため、事前にアルゴリズムとして組み込まれていた可能性は低い。

日本における実証の過程で追加した可能性も考えられるが、同乗しているセーフティドライバーが手動でハザードボタンを操作した可能性も拭えない。ただ、その場合も「手動介入」として記録に残りそうな気がするため、真相は不明だ。

人間らしい挙動が大事?

いずれにしろ、こうした話題が大きく取り上げられれば、日本国内における自動運転サービスにおいてサンキューハザードがスタンダードな要素となることも考えられる。

TuringもWaymoも人間顔負けの自動運転技術を開発しているが、一般論として自動運転技術はまだベテランドライバーの域に達しておらず、周囲の車両に迷惑をかけることも少なくない。周囲の車両の配慮があってこそ成り立つ面もある……と考えれば、自動運転車がサンキューハザードを用いる機会は相対的に多くなる。

ややぎこちない挙動の自動運転車がいたとしても、サンキューハザードにより周囲の車両の不満は解消され、「自動運転車なのにサンキューハザード」と好感を持たれることもあるだろう。

つまり、こうした人間らしい振る舞いは、自動運転に対する社会受容性向上にも資する可能性が高いのだ。自動運転車は、一部の人間のような自己中運転は行わない。技術水準が低過ぎるとモタモタして反感を買うこともあるだろうが、一定水準に達すれば機械的に一律の安全運転を行う。

その上で、言葉を交わさずとも周囲のドライバーと意思を疎通するような行動ができれば、より人間らしい運転が実現する。人間同士でも、譲り合う場面などで阿吽の呼吸のような形でスムーズに意思疎通できた際は清々しい気持ちになる。これは自動運転車にも通じることだろう。

サンキューハザードの使用が直ちに違法扱いされるわけではなく、かつ容認派が否定派を大きく上回るのであれば、実装する意義がある……と判断する自動運転開発事業者がいてもおかしくはない。

コミュニケーション手段もAIで進化

類似した行動としては、「どうぞお先に」を示すパッシングなどもある。高速道路渋滞時の最後尾でハザードを使うのも安全確保に向けたマナーとされる。

使い方を誤れば相手を不快にしたり誤解を招いたりすることもあるが、意思疎通がうまくいけばスムーズな道路交通に資する面もある。

自動運転車においても、周囲の交通参加者向けに自車両の挙動を示すなど意思疎通を図るシステムの開発が早くから進められてきた。

ただ、その多くはディスプレイなどを活用して物理的にコミュニケーションを図るものだ。ヘッドライトなどを目に見立て、合図を送るアイデアも散見される。

こうした独自のコミュニケーションシステムとともに、AIが人間のドライバーの思考を真に理解し、人間同様に振る舞う……というアプローチを組み合わせれば、人間を超えたコミュニケーション能力を有する車両が誕生するのかもしれない。

自動運転レベル4の車、歩行者にどう「意思」を伝達する?

■【まとめ】人間らしい挙動は自動運転車が市民権を得るためのカギに

人間のような柔軟な思考や振る舞いが苦手とされる自動運転車だが、こうした課題をAIが解決する未来は思いのほか近づいているのかもしれない。

外向けのHMI(ヒューマンマシンインタフェース)に加え、AIが人間らしい挙動を行うことで他の交通参加者に安心感や親近感を生み出すことができるかもしれない。こうした部分に、自動運転車が市民権を得るためのカギが隠されているのではないだろうか。

【参考】関連記事としては「自動運転技術、大田区の企業が「テスラ級」目前」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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