佐川・日本郵便・西濃が参画する「自動運転トラック商用運行」 1年で4倍超の規模に拡大

国内初の輸送事業化



出典:T2プレスリリース

佐川急便、日本郵便、西濃運輸といった大手物流が、自動運転トラックによる幹線輸送を日々の輸送に組み込んでいる。自動運転トラック開発の新興企業T2(ティーツー)が関東〜関西間で行う商用運行には、福山通運と三井倉庫ロジスティクスを含む大手物流5社が参画し、利用企業は1年で4倍の23社に広がった。

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■佐川・日本郵便・西濃が参画した「自動運転トラック」の商用運行

佐川急便、日本郵便、西濃運輸といった大手物流企業は、自動運転トラックによる幹線輸送を日々の輸送に組み込んでおり、この輸送事業化は、国内で初めての事例となっている。


仕組みはシンプルだ。一般貨物自動車運送事業の許可を持つT2が、自社のトラックとドライバーで各社の荷物を拠点間で運ぶ。拠点から高速道路までは手動で走り、東名高速道路の綾瀬スマートインターチェンジや厚木インターチェンジから、京滋バイパスや名神高速道路の関西側までの区間を自動運転で走行する。

使うのはレベル2のトラックだ。ドライバーが乗って監視し、特定の条件下ではハンドルから手を離して走れる。開始時は5台で月34便を運行する計画で、実証期間と比べて便数を4倍以上に増やし、運行頻度も週1回から週5回程度へ高めるとした。

今回は自動運転レベル2だが、2026年3月には関東と関西を結ぶ約500kmの高速道路本線をレベル4を達成した実績もある。

大手物流が「実証」の相手から「顧客」へ

5社は、T2の自動運転トラックが既存の運行と同じ水準の輸送品質と安全性を保てることを実証で確かめたうえで、商用運行の利用に合意した。試験の相手から、対価を払う顧客へと立場が変わったことになる。


その後も各社の関わりは深まっている。日本郵便は2025年から西濃運輸と荷物を混載する形で利用してきたが、2026年1月26日からは神奈川西郵便局と新大阪郵便局を結ぶ約460kmで単独便の定期運行を始めた。商用運行の成果をもとに、レベル4の自動運転トラックの導入も検討するという。

また2026年1月には、5社に鈴与とフジトランスポートを加えた7社の協力で、関東と関西を1日1往復する運行の実証が行われた。T2のトラック2台を同時に走らせ、約48時間で1台あたり2往復を達成している。

利用企業は1年で4倍超の23社に拡大

商用運行の利用企業は、物流会社から荷主のメーカーや小売へと広がった。東レは2026年6月4日から、千葉工場から大阪府茨木市の物流拠点までの約520kmで石油化学品の定期輸送を始めた。コーナン商事も7月14日から、川崎市と大阪府貝塚市の物流センターを結ぶ約520kmで、ホームセンター商品の輸送を始めている。

T2によると、商用運行のユーザーは2026年7月21日時点で23社に達した。開始時の5社から、この1年で4倍を超える規模になった計算だ。


【自動運転ラボの視点】
宅配や路線便で競い合う大手が、同じ自動運転トラックの基盤に荷物を預け始めた意味は大きい。日本では自動運転タクシーより先に、物流の幹線輸送で自動運転の商用化が進む。次の焦点は、ドライバーが乗らないレベル4への移行だ。

■三井不動産・住友倉庫も出資、シリーズBで約50億円

事業の広がりを受け、資金面の支援も厚みを増している。T2は2026年7月21日、資金調達ラウンドのシリーズBにおける1回目の締め切りとして、11社から約50億円を調達したと発表した。累計調達額は165億円を超える。

引受先は、商船三井の投資ファンド会社、住友倉庫、フジトランスコーポレーション、栗林商船、住友三井オートサービス、大和ハウスベンチャーズ、三井不動産の投資ファンド、吉田海運、関西電力の投資ファンド、イオンモールの投資ファンド、三菱倉庫グループの投資会社の11社だ。

集めた資金は、レベル4に向けた技術開発や人材採用、切り替え拠点などの設備投資に充てる。T2は2026年度中に、シリーズBの追加の締め切りも予定している。

三井不動産は物流施設での受け入れを検討

三井不動産は、物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク」を全国で88物件開発・運営してきた。今回の出資を通じ、T2の運行ノウハウと自社の施設開発の知見を組み合わせ、まず高速道路インターチェンジの近くにある物流施設で自動運転トラックに対応できるかを検討する。施設での車両の受け入れや、有人運転と無人運転の切り替えといった具体的な運用方法も詰めていく。

住友倉庫の永田昭仁社長も、サービスの実装に向けてT2と協力し、物流をともに支えていく考えを示した。

倉庫・不動産・海運・電力まで広がる出資者

顔ぶれで目立つのは業種の幅広さだ。フジトランスコーポレーションは、車両ごと積み込む大型貨物船による海上輸送とT2の陸上輸送を組み合わせ、中部地区を起点に国内物流を強化するとしている。商船三井の投資ファンド会社も、海と陸をまたぐ一貫輸送やコンテナ陸送での連携を掲げた。

T2の熊部雅友CEOは「倉庫、不動産、リース、海運や電力と、多種多様な業界から、日本を代表する企業の皆様をパートナーにお迎えでき、大変光栄に感じております」とコメントしている。

T2は2022年に三井物産とAI開発のPreferred Networks(プリファードネットワークス)が出資して設立された。創業から4年で、物流会社だけでなく不動産や海運、電力まで巻き込む存在になったと言える。

■鉄道×自動運転トラック、JR貨物との連携

T2の連携は、トラック輸送の中だけにとどまらない。貨物鉄道大手のJR貨物は2024年2月、T2の資金調達に加わり、約3億円を出資した。狙いは、鉄道とトラックを組み合わせて運ぶ輸送方式「モーダルコンビネーション」の実現だ。

鉄道は1編成で大量の貨物を運べる一方、自然災害に弱い面がある。両社はコンテナ規格の統一やシステムの連携を進め、互いの弱点を補い合う形を目指す。JR貨物の犬飼新社長は当時、災害などで鉄路が不通になった際の代替輸送の信頼性を高められると説明した。

北海道から九州まで、実際の荷物で検証が進む

取り組みは、すでに実際の荷物で動いている。2025年6月には日本通運、JR貨物、T2の3社が、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた国内初の実証を始めた。第1弾では雪印メグミルクの常温品を運び、札幌から東京の隅田川駅までを貨物列車で、そこから大阪の百済貨物ターミナル駅までを自動運転トラックでつないだ。T2とJR貨物が共同開発した31フィートの共用コンテナを使い、積み替えの手間を減らしている。

2026年7月には、アイリスオーヤマの佐賀県の鳥栖工場から川崎市の物流拠点まで、約1100kmの区間で実証を行った。積み替えは遅れなく進み、全体の運行日数も約2日と計画通りだった。関係各社は今後、定期的な運行も視野に入れる。

さらに9月には、エスビー食品とオタフクソースの商品を、関東と中国地方の間の約850kmで往復輸送する実証も始まった。往路と復路で別の会社の製品を運ぶ共同輸送で、物流業界で初めての試みだという。

■自動運転レベル4へ、料金所の通過と切り替え拠点の整備

商用運行を広げる一方で、T2はドライバーが乗らないレベル4に向けた準備を急いでいる。2026年3月には、関東と関西を結ぶ約500kmの高速道路本線を、ドライバーが一度もハンドル操作に介入することなく自動運転で完走した。国内で初めての成果だ。

5月には、東名高速道路の綾瀬スマートインターチェンジと中国自動車道の西宮北インターチェンジで、料金所を自動運転のまま通過する実験にも成功した。料金所の通過は、技術的な難易度が高いとされてきた部分である。

高速道路は無人、一般道は有人という運用モデル

T2が描くレベル4の運行は、高速道路をドライバーなしで走り、一般道ではドライバーが運転する形だ。そのための乗り降りの拠点として、2026年春に神奈川県綾瀬市と兵庫県神戸市、西宮市のインターチェンジ付近に、無人運転と有人運転の切り替え拠点「トランスゲート」を計3か所設けた。このうち西宮北の拠点は、一度に最大8台のトラックを受け入れられる。

7月には、国土交通省の「自動運転トラック実装支援事業」にも採択された。T2は補助を活用し、複数台の同時運行や、関東と関西のトランスゲートを実際に使う実証に取り組む。国も新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリアと浜松サービスエリアの間の約100kmで、2025年3月から平日夜間に自動運転トラックの優先レーンを設けており、T2もこの実証に協力している。

福山通運は中継輸送に組み込み、1日1往復を検証

参画5社の中で、一歩踏み込んだのが福山通運だ。同社は2026年8月から、関東と九州・中四国を結ぶ中継輸送の一部に、T2の自動運転トラックを組み込んだ。対象は神奈川県の藤沢支店と兵庫県の加西支店を結ぶ約510kmで、このうち約470kmを自動運転で走る。途中でトランスゲート綾瀬とトランスゲート西宮北に立ち寄り、将来のドライバー交代の手順も確かめる。

焦点は、関東と関西を1日1往復する運行が成り立つかどうかだ。今はドライバーの勤務時間の制約から、1人で走れるのは上りか下りの片道が限界とされる。ドライバーが乗らないレベル4が実現すれば1日1往復が可能になり、輸送能力は少なくとも2倍に高まると見込まれている。

自動運転トラック、関東〜関西を「日帰り」!人間では”不可能”

■自動運転トラックで日本の物流は変わるか

T2は2027年度からレベル4に順次移行し、輸送エリアも広げる計画だ。2032年には2,000台規模での輸送を行うとしており、関東と関西の間から中四国や九州へ事業エリアを広げる構想も示している。熊部CEOは日本経済新聞の取材に対し、荷主などの提携企業を100社に増やす考えを語ったほか、2032年度には運転手4000人分に相当する輸送が可能になるとの見通しも示した。

背景にあるのは、トラックドライバー不足の深刻化だ。2024年4月に始まった残業時間の上限規制、いわゆる物流2024年問題によって、長距離の幹線輸送を担う人手はさらに細っている。1人のドライバーでは片道が限界の区間を、自動運転トラックなら1日で往復できる。この差は、物流全体の輸送力を大きく左右する可能性がある。

もっとも、レベル4の実現にはまだ課題が残る。料金所や一般道を含めた運行全体の自動化、無人運転の許認可、複数台を同時に動かすオペレーションの確立などだ。T2の最新の発表でも、レベル4の開始時期は「2027年度以降」と幅を持たせた表現になっている。

米国では、自動運転トラック開発のAurora(オーロラ)がテキサス州で無人の商用輸送を始めており、海外では無人の幹線輸送が現実になりつつある。日本の特徴は、佐川急便、日本郵便、西濃運輸といった競合関係にある大手が、同じ自動運転トラックの基盤に荷物を預けている点だ。1社の取り組みではなく、業界全体で使う輸送インフラとして育つかどうか。それが、日本の物流が変わるかを左右するだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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