
ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が出資する英国の自動運転開発企業Wayve(ウェイブ)が、独高級車大手メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)と自動運転に関する量産契約を正式に結んだ。Wayveにとって自動車メーカーとの量産契約は日産自動車、欧米自動車大手ステランティス(Stellantis)に続く3社目。高級車ブランドでは初となる。
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■Wayve、メルセデス・ベンツの正式提携へ
WayveはWayve AI Driverを将来のメルセデス・ベンツ車に統合するための正式な量産契約を結んだ。市街地と高速道路の両方で、出発地から目的地まで運転を支援する機能を、今後2年以内に顧客へ届け始める。メルセデス・ベンツは世界の各市場で提供する方針だ。最初の搭載車種、投入する国、発売年は公表されていない。契約金額も非開示である。
今後2年以内に市街地と高速道路の運転支援を提供
準備はすでに進んでいる。Wayveによると、同社のAIはメルセデス・ベンツの量産向けシステムに組み込み済みだ。車両のハードウェア、車載基本ソフト「MB.OS」、地図との接続部分を使い、独シュトゥットガルト、英ロンドン、米サンフランシスコで検証した。走ったのは市街地、高速道路、郊外の道路である。メルセデス・ベンツは2026年2月にWayveへ出資しており、複数年にわたる技術協業が量産契約へ進んだ形だ。
自動運転レベル2、ドライバーの監視が前提
今回の機能は無人運転ではない。ブルツァー氏はビジネスSNSのLinkedIn(リンクトイン)への投稿で、レベル2の運転支援だと説明したと報じられている。運転の責任は常にドライバーにある。なお、発表文そのものにレベルの記載はないとの指摘もある。
Wayveの強みは学習の方法にある。人が書いたルールではなく走行データから運転を学ぶ手法で、同社はこれをAV2.0と呼ぶ。高精度地図を必要とせず、走行エリアの限定や都市ごとの再学習もいらない設計だという。学習には、米マイクロソフト(Microsoft)のクラウド基盤Azure上で動く米半導体大手エヌビディア(Nvidia)のAI基盤を使う。同じAIを運転支援から無人のロボタクシーまで広げられる、というのがWayveの説明である。
自動運転AIを自前で作らず外部から調達する流れが、日産、ステランティスに続きメルセデス・ベンツにも広がった。Wayveの存在感は一段と増すと言える。
【参考】関連記事としては「ソフトバンクG出資のWayve、世界の大手自動車と提携 世界制覇へ」も参照。
■日産、ステランティスに続く3社目 広がるWayveの量産契約
Wayveが自動車メーカーと結んだ量産に向けた契約は、これで3社になった。Wayveの量産契約はどんどん広がりつつある。
日産は運転支援技術プロパイロットにWayve技術を組み込む
日産は2025年12月に運転支援技術プロパイロット(ProPILOT)の次世代版にWayve AI Driverを組み込んでいる。最初の搭載車は2027年度に日本で発売する計画だ。日産は、WayveのAIを幅広い車種へ展開すると表明した最初の自動車メーカーでもある。
ステランティスは自社の自動運転基盤にWayve技術を組み込む
ステランティスは2026年5月に提携を発表し、自社の自動運転基盤「STLA AutoDrive」にWayveのAIを統合、2028年に北米で投入する。高速道路と市街地の両方で手放し運転ができる機能で、ドライバーの監視が必要な点は変わらない。同社はこれをレベル2++と呼ぶ。試作車は2カ月足らずで動いたという。
提携先は自動車メーカーにとどまらない。2026年3月には米半導体大手クアルコム(Qualcomm)と、同社の車載向け基盤でWayve AI Driverを提供することで合意したと報じられている。
■ロボタクシーにも広がる提携、東京でも試験運行を計画
量産車向けの契約は、ロボタクシー事業への足がかりにもなっている。Wayveと米配車大手Uber(ウーバー)は2026年9月3日、ロンドンで自動運転車による乗車サービスを始めた。英国で一般の利用者が自動運転の乗車を体験できるのは初めてだ。現段階ではロンドン交通局の免許を持つ運転手が同乗し、走行を監視する。
日本も対象である。Wayve、Uber、日産の3社は2026年3月に基本合意書を結び、2026年後半に東京で試験運行を始める準備を進めている。日産リーフにWayve AI Driverを載せ、Uberのアプリで配車する。関係当局との協議が前提で、当初は安全要員が乗る。UberはWayveの技術を使った車両を世界12市場に広げる計画だ。
【参考】関連記事としては「日産セレナ「自動運転車」が東京で走行へ 9月からスタート」も参照。
■12億ドルを出資したソフトバンクG
Wayveの拡大を資金面で支えてきたのが、孫氏の率いるソフトバンクグループである。ただし、出資の主体は時期によって異なる。
1回目は2024年5月のシリーズCだ。Wayveが10億5000万ドルを集めたこの調達は、法人としてのソフトバンクグループが主導した。エヌビディアとマイクロソフトも参加し、ソフトバンクグループはWayveの取締役会に加わっている。
2回目は2026年2月のシリーズDである。Wayveは12億ドルを調達し、評価額は86億ドルに達した。このときの出資主体はソフトバンクグループ本体ではなく、傘下の投資ファンドであるソフトバンク・ビジョン・ファンド2だ。米ベンチャーキャピタルのEclipse(エクリプス)、英ベンチャーキャピタルのBalderton(バルダートン)と並ぶ3社での共同主導だった。法人と投資ファンドという違いはあるが、ソフトバンク陣営は2回続けて主導役に名を連ねたことになる。
注目すべきは出資者の顔ぶれだ。マイクロソフト、エヌビディア、Uberに加え、メルセデス・ベンツ、日産、ステランティスの自動車3社も資金を出した。出資した3社がそろって量産に向けた契約へ進んだ構図である。
Uberの追加出資枠を含めると、Wayveが確保した資金は総額15億ドルになる。4月には米半導体大手AMD、英半導体設計大手Arm(アーム)、クアルコムの3社も計6000万ドルを追加で出資した。自動運転AIを軸に、自動車、半導体、配車の各社が集まっている。
【参考】関連記事としては「ついに自動運転に「巨額の孫マネー」流入か!英Wayveに大興奮」も参照。
■メルセデス・ベンツは3社目のソフト提携先に
メルセデス・ベンツにとって、Wayveは自動運転ソフトで3社目の提携先となる。
1社目はエヌビディアだ。両社は運転支援システム「MB.DRIVE ASSIST PRO」を共同開発し、2026年1月に米国の技術見本市CESで新型車CLAとともに披露した。市街地でも使えるレベル2の機能で、カメラ10個、レーダー5個、超音波センサー12個を使う。エヌビディアはソフトウェアと車載コンピューターを供給している。
2社目は中国の自動運転開発企業Momenta(モメンタ)である。中国向けの運転支援を担うほか、アブダビでは最上級セダンのSクラスを使う自動運転レベル4のロボタクシーを共同で開発している。運行は現地の事業者Lumo(ルモ)が担う。
背景には方針の転換がある。メルセデス・ベンツは独メーカーとして初めて自動運転レベル3の機能「Drive Pilot」を市販したが、独経済紙Handelsblatt(ハンデルスブラット)は2026年1月、改良型のSクラスには設定しないと報じた。需要の伸び悩みとコストの高さが理由とされる。代わりに力を入れるのが、市街地でも使えるレベル2の運転支援だ。
■メルセデス・ベンツとの正式提携で何が変わるか
孫氏が出資するWayveは、メルセデス・ベンツとの正式提携によって、日産、ステランティスと合わせて3社の量産計画を手にした。大衆車から高級車まで、同じ自動運転AIが載る道筋が見えてきた。
ただし、今回の機能はレベル2であり、無人運転ではない。搭載車種も契約金額も非公表だ。メルセデス・ベンツはエヌビディア、Momentaとも組んでおり、Wayveが唯一の選択肢になったわけでもない。評価は実際の車が出てから定まるだろう。
それでも流れは明確である。自動車メーカーは自動運転AIを自前で抱え込まず、外部の専門企業から調達し始めた。パソコンの世界で基本ソフトと半導体が標準を握ったように、自動運転でも共通の頭脳を供給する企業が力を持つ可能性がある。Wayveはその有力候補と言える。
日本にとっても遠い話ではない。2027年度には日産の搭載車が国内で発売され、東京ではロボタクシーの試験運行が計画されている。孫氏が出資するWayveの自動運転技術は、日本の道路でも試されることになる。













