
茨城県つくば市で、自動運転バスが実証の枠を超え、運賃を取る路線バスとして走り始める。通信大手KDDIなど5者は、茨城県を地盤とする交通事業者の関東鉄道が運行するバス路線「筑波大学循環」で、10月2日から自動運転バスの本格運行を始めると発表した。
運行は自動運転レベル2で、運賃は190〜310円。最高速度は時速40キロ、定員は15人となる。2027年度には特定の条件下で運転手を必要としない自動運転レベル4の実装を目指すとしている。
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■KDDI、つくばで自動運転バスの本格運行へ
KDDIを含む5者が関東鉄道のバス路線「筑波大学循環」で、10月2日から自動運転バスの本格運行を始めると発表した。彼らは「つくば自動運転社会実装推進事業コンソーシアム」を組み、自動運転の社会実装を共同で進めている。
背景にあるのは、全国的なバス運転手の不足だ。つくば市でも運転手の不足や高齢化によって路線の減便や廃止が迫られ、地域公共交通の維持が課題になっている。コンソーシアムは自動運転技術を活用し、地域の足を持続可能な形で守ることを目指す。
今回の最大のポイントは、実証ではなく「実際の路線バス」として走ることにある。2026年度は実装フェーズと位置づけ、あらかじめ設定した運行ダイヤに沿ってレベル2で運行する。そのうえで2027年度にはレベル4の実装を見据え、今後は路線の拡大や増便も進める方針だ。
つくば市によると、10月1日に大学構内で運行開始セレモニーを開き、翌2日から営業運行に入る。
国内の自動運転バスは実証の段階で足踏みする例が多い。つくばは既存の民間路線バスの定期便として、通常の運賃を取って走らせる点に意味がある。レベル2で運行の実績を積み、レベル4へつなぐ現実的な道筋と言えるだろう。
【参考】関連記事としては「小池都知事 都内の自動運転バス導入拡大に意欲」も参照。
■2025年度の実証走行から「実装フェーズ」へ
つくば市での自動運転バスの取り組みは、段階を踏んで進んできた。KDDIの発表によると、2023年度は10人乗りの低速EV車両を使い、筑波大学の構内約4キロに限って走行実証を行った。2024年度は16人乗りのEVバスで、既存の路線バスのルートであるつくば駅から筑波大学までの約10キロを走らせている。
本格運行の直接の土台となったのが、2025年度の実証走行だ。国土交通省の「自動運転社会実装推進事業」に採択された取り組みとして、2025年11月21日から2026年1月23日まで、今回と同じ筑波大学循環でレベル2の自動運転バスを走らせた。距離は約10キロで、1周40分ほど。1日4便を平日のみ運行し、全てのバス停に停車した。乗車は事前予約制で、運転士が同乗する形だった。
実証の段階から、コンソーシアムは「2026年度に自動運転バスの定常運行を始め、2027年度にレベル4を実現する」という計画を示していた。今回の本格運行は、この計画どおりの一歩と言える。予約制の試乗から、誰でも乗れる運賃制の路線バスへ。ここに今回の転換の核心がある。
【参考】関連記事としては「自動運転バスの車種・事故・実証実験状況【開発メーカーは?】」も参照。
■路線バスの運賃は190〜310円
運行の主体は関東鉄道だ。運賃は190〜310円で、小児や障害者などは半額となる。通常の路線バスと同じように、乗車区間に応じた運賃を払って利用する形だ。
車両の最高速度は時速40キロ、定員は15人。当面は立ち乗りを認めず、着席のみで運行する。
自動運転レベル2での運行
注意したいのは、今回の運行がレベル2である点だ。レベル2は運転士が乗車し、常に運転の責任を負う段階にあたる。無人で走るわけではない。運転士が乗らないレベル4へ進む前に、定期運行の中で安全性や運用面の経験を積む位置づけと言える。
平日のみの運行とラッピングデザイン
運行は平日のみで、土曜・日曜・祝日は運休する。年末年始の2026年12月28日から2027年1月3日までも運休となる。システム調整のため、長期間運休する可能性もあるという。
車体のラッピングデザインは、6月30日まで行ったインターネット投票で「見つける街並み」に決まった。総投票数365票のうち177票を集めた案で、つくばを思わせる建物や自然を小さな街並みの絵としてちりばめている。デザインコンセプトは「人と知の交わりが、まちを織る。」で、筑波大学芸術系の内山俊朗准教授と勝部里菜特任研究員が制作した。ラッピングを施した実車は、10月1日のセレモニー会場で披露される。
■5者の役割分担と大学構内の新営業所
5者の役割は明確に分かれている。つくば市は事業全体の企画や進捗管理、成果報告などを担う。筑波大学は社会実装に向けた官民学の連携を進め、実証の場を提供する。関東鉄道は自動運転車両の運行を担当する。
KDDIは遠隔監視と通信を担う
KDDIが受け持つのは、遠隔監視業務と通信の提供などだ。事業全体の企画や進捗管理、成果測定はKDDIスマートモビリティが担う。2025年度の実証ではKDDIが企画や進捗管理まで担当していたが、今回はその役割をグループの専門会社に移した形だ。
KDDIスマートモビリティは2026年7月1日に発足した。KDDIが高速バス大手WILLER(ウィラー)と共同で手がけてきたCommunity Mobility(コミュニティモビリティ)の全株式を取得して完全子会社化し、商号を変えた会社だ。KDDIの通信基盤や遠隔監視の力と、地域に合わせた移動サービスの運営ノウハウを組み合わせ、自動運転事業を進める。
KDDIはこれまで10年以上にわたり、累計50件を超える自動運転の実証実験に取り組んできた。2026年3月に政府が選んだ「自動運転社会実装先行的事業化地域」でも、13自治体のうち9自治体に参画している。つくばの本格運行は、KDDIの自動運転バス事業にとって重要な実績になるだろう。
全国初の特例で筑波大学構内に営業所
運行の拠点づくりでも、つくばならではの仕組みが生きた。つくば市は2022年に、規制改革と先端技術の実装を一体で進める「スーパーシティ型国家戦略特別区域」に指定されている。
この特区計画の中で、2025年11月28日に国立大学法人法の特例として、国立大学法人による土地などの貸付事業が全国で初めて認定された。関東鉄道はこの特例を使って筑波大学と土地の賃貸借契約を結び、大学構内にバス営業所「筑波大学車庫営業所」を新設した。この営業所を拠点に、自動運転プロジェクトの社会実装とつくば市内路線の運用を始める。
【参考】関連記事としては「大阪メトロ自動運転バスがEV断念へ 万博で不具合続出で」も参照。
■KDDIとつくばの本格運行が示す自動運転バスの未来
自動運転バスの定常運行そのものは、つくばが初めてではない。茨城県境町では2020年11月から、町が自動運転バスを公道で定時運行している。自治体による自動運転バスの定時運行としては、国内初の事例とされる。境町の運行もレベル2で、運賃は無料で始まった。
これに対し、つくばの本格運行の特徴は、既存の民間路線バスの定期路線で、通常の運賃を取って走らせる点にある。事業として成り立つ形を探りながら運行を重ね、そこからレベル4へ進む。実証を繰り返す段階から一歩抜け出した進め方と言える。
国の後押しもある。つくば市の取り組みは2026年3月6日、デジタル庁の「自動運転社会実装先行的事業化地域事業」に選ばれた。全国13地域が選定されたこの事業は、2027年度をめどに自動運転の事業化を先行して実現する地域を、関係府省庁がまとめて支援するものだ。
政府は「2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上で実現する」との目標を掲げ、さらに2030年度には自動運転サービス車両を1万台とする目標も設けた。KDDIらがつくばで始める自動運転バスの本格運行は、こうした目標に向けて、実証から実装へ移る具体的な道筋を示す一例となる。レベル2での運行実績を、2027年度のレベル4実装へどうつなげるか。路線拡大や増便の行方とあわせて注目したい。













