自動運転、河野大臣が「24時間自由化」示唆 米国に先越され危機感

ライドシェアとともに規制改革なるか



河野太郎大臣=出典:flickr / G20 Argentina (CC BY 2.0)

デジタル大臣を務める河野太郎氏がテレビ番組に出演し、ライドシェアや自動運転の導入に意欲を見せた。次世代モビリティの在り方について議論を進めるデジタル庁の旗振り役の発言として、大きな注目を集めている。

河野氏の発言をなぞりながら、海外と日本における自動運転の現状について解説していく。


■河野氏の発言
ライドシェアや自動運転実装に向けた独自案を提示

河野氏は2023年8月27日、フジテレビ系の報道番組「日曜報道 THE PRIME」に出演した。各種報道によると、河野氏は都市圏などを中心としたタクシーの需要過多を念頭に、利用者のタクシー待ち時間などに条件を設定し、サービスの品質を維持できない場合には地域ごとにライドシェアや自動運転サービスが自動で解禁されていく独自案などを示した。

自動運転に関しては、先行する米国を例に「サンフランシスコでは自動運転車を24時間走らせる許可が下りている」ことにも言及した。この発言は、日本でも24時間自由に自動運転車を走らせられるようにしたい、という河野氏の姿勢の表れかもしれない。

規制改革に躍起

これまでに行政改革担当や規制改革を担う内閣府特命担当大臣などを歴任し、さまざまな場面で自動運転の社会実装に向け積極的に活動してきた河野氏。

過去、自動運転が議題に上がった規制改革推進会議の第6回投資等ワーキング・グループ(2020年12月開催)では、「自動運転開発で世界の先頭を走らなければ、日本の自動車産業の未来はないと思う。そういう重要性が理解されず、つまらぬ規制が沢山あるというのが現実」とし、各省庁に対しスピード感ある対応やさらなる規制緩和に向けた取り組みを求めた。


【参考】投資等ワーキング・グループにおける河野氏の発言については「自動運転で河野大臣「つまらぬ規制が沢山」 警察庁に「頭切り換えて」」も参照。

最近では、2023年7月にデジタル先進国のエストニアやパレスチナなどを訪問し、SNSで「エストニアで見た自動運転の配達車」の動画を投稿した。

その後、ニッポン放送のラジオ番組に出演した際には、パレスチナで若い世代が自動運転のスタートアップを立ち上げていることなどに触れたうえで、「物流問題を抱える日本でこそ自動運転の技術を先に進めなければいけなかった。しかし、規制の問題をクリアできずに進められていないのは忸怩たる思いがある」と語っている。

【参考】ラジオ番組出演時の発言については「河野大臣、自動運転化の遅れに「忸怩たる思い」 海外視察後に発言」も参照。


新ロードマップにライドシェアが登場する可能性も?

次世代モビリティの分野においては、規制緩和と省庁の意識改革が欠かせないのは確かだ。岩盤規制という言葉が生み出されたように、日本では省庁や業界団体らによる強い反発で改革が進まない分野が以前から散見される。

河野氏は、自らの使命としてこうした面での改革を推進しているのだ。自動運転に関しては道路交通法などの改正により実装可能となったが、ライドシェアは依然としてふたが閉じられたままとなっている。

河野氏は、無条件でふたを開けることはないと思われるが、現在の需要に対応しきれないのであれば、自動運転やライドシェアをしっかりと導入し、利用者目線に立った移動サービスを実現していく構えなのだろう。

デジタル庁が所管する「『モビリティ・ロードマップ』のありかたに関する研究会」でも、有識者らがライドシェアに言及する場面が増えている。また、菅義偉前首相もライドシェア解禁に向けた議論の必要性を示すなど、機運は明らかに高まっている。

今後、どういった場でどういった議論が展開されるのか、要注目だ。

【参考】菅前首相の発言については「どうせ無くなるライドシェア、菅氏の「解禁論」は遅すぎた?」も参照。

■海外の情勢
カリフォルニア州では24時間商用運行が可能

河野氏は、米サンフランシスコで無人自動運転車の24時間走行が許可されたことに言及した。

カリフォルニア州では、同州車両管理局(DMV)のもと早くに公道実証ルールが策定され、世界各国の開発企業が鎬を削る一大実証地となっている。

2018年にはドライバー不在の無人公道実証プログラムも用意され、2021年11月時点でApollo Autonomous Driving(百度)、AutoX、CruiseNuroWaymo、WeRide、Zooxの7社が同ライセンスを取得している。

このDMVの許可により、無人の自動運転車に乗客を乗せてサービス実証を行うことができるが、有償サービスを実施するには別途同州公益事業委員会(CPUC)による許可が必要となる。

WaymoとCruiseは2022年2月、CPUCから有償サービス許可を取得し、無人自動運転車による有償サービスを可能にした。Waymoは無料サービスを続けているが、Cruiseは同年6月に有償サービスを開始している。

【参考】カリフォルニア州の取り組みについては「世界で実用化進む自動運転タクシー、米加州も「運賃取ってOK」」も参照。

そして2023年8月、ODD(運行設計領域)拡大を目指す両社の要望を受けたCPUCは、24時間無人の自動運転タクシーで有償サービスを提供できる許可を付与すると発表した。

サンフランシスコ当局などは現時点におけるサービス拡大への懸念を示しているが、州当局の判断によってスピード感ある社会実装が推し進められている印象だ。

【参考】24時間営業許可については「Googleの自動運転タクシー、「24時間営業」解禁でマネタイズに道筋」も参照。

■日本の情勢
レベル4解禁も、現状は1路線の許可にとどまる

日本では、2023年4月施行の改正道路交通法により、自動運転レベル4の無人走行が「特定自動運行」と位置付けられ、都道府県公安委員会による許可制のもと社会実装可能となっている。制度面では米国に勝っているとも言える。

【参考】道交法改正については「ついに4月「自動運転レベル4」解禁!進化した道交法、要点は?」も参照。

しかし、実装面がなかなか追いつかないようだ。福井県永平寺町でレベル3運行を行っていた車両が2023年3月30日付で道路運送車両法に基づくレベル4の自動運行装置として許可され、同年5月11日付で永平寺町におけるサービス実証が道路交通法に基づく特定自動運行の許可を取得した。いずれも国内初だ。

ただ、これに続く許可は8月現在行われていない。永平寺町の取り組みも、一般車道外をルートに電磁誘導線を活用したシステムであり、混在空間への汎用性は低いと言える。自動運転タクシーと自動運転シャトルの違いも大きい。

今後の有力組筆頭は、羽田イノベーションシティや茨城県境町などでBOLDLYらが取り組む自動運転サービスだろう。

早期社会実装につなげるには、前段階として公道実証を容易に行うことができる環境と、実証に用いる車両数の増加、フリート化が欠かせない。

1台の車両で地道に実証を行うより、複数台の車両で実証を行うほうが当然短期間で多くの成果を得ることができるが、この点で海外勢と国内勢で大きな差があるように思える。意欲の高い開発勢が容易にフリートを構築できるような環境面・金銭面での官民交えた社会的支援がまだまだ必要なのかもしれない。

【参考】永平寺町の取り組みについては「自動運転、日本でのレベル4初認可は「誘導型」 米中勢に遅れ」も参照。

■【まとめ】公道実証を加速する施策を

現状、日本に足りていないのは一にも二にも公道実証だ。カリフォルニア州のように、連日数十台、数百台規模の自動運転車両が走行実証を行う規模にもっていかないと、米国や中国勢に追い付くことは難しい。

そのためには、社会受容性をはじめとした環境面と金銭面での協力が欠かせない。未来に向けた投資と社会変革への意識が求められるところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、どこまで進んでいる?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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