自動運転技術、仮想世界で「リアル」に実証!ティアフォーに注目

Web.Autoにシミュレーション機能を追加



出典:ティアフォー・プレスリリース

自動運転開発を手掛けるティアフォーはこのほど、自動運転開発プラットフォーム「Web.Auto」にデジタルツイン指向の自動運転シミュレーター機能「AWSIM」を追加した。リアリティあふれる仮想環境で検証を進めることで、AI(人工知能)学習などの効率が飛躍的に増しそうだ。

自動運転開発においてWeb.AutoやAWSIMはどのような効用をもたらすのか。概要を解説していく。


■Pilot.Autoとは?

Pilot.Autoは、ティアフォーが開発を進める自動運転ソフトウェア「Autoware」をベースにした拡張可能なプラットフォームだ。ユーザーが指定した車両やコンピューターやセンサーを使用して、あらかじめ用意されたリファレンスデザインをベースに開発を進めることでスピーディーに自動運転システムを実現することができる。

リファレンスデザインは、シャトルバスやロボタクシー、パーソナルカー、デリバリーロボット、カーゴトランスポートが用意されており、大概のユースケースをカバーしている。

■Web.Autoとは?

一方のWeb.Autoは、Pilot.Autoのコンポーネントを効率的に開発し、そのエンドアプリケーションを運用するためのクラウドプラットフォームで、ソフトウェアツールやデータパイプラインをウェブサービスの形で提供している。

自動運転シミュレーションやCI・CDデータパイプラインといった開発基盤をはじめ、データ管理や運行管理、遠隔監視を可能にするエッジ集約型のDevOpsプラットフォームで、自動運転の開発・運用に向けたクラウドプラットフォーム・ツールチェーンとして活用できる。


ティアフォーはこの2つのプラットフォームを通じて、自動運転開発や運営に必要となるフルスタックのソリューションを提供し、本格的な自動運転実装を目指す事業者らの開発目的や仕様、要望などに柔軟に応えていく構えだ。

それぞれのプラットフォームが備える機能・サービスも、今後随時更新・拡充されていくものと思われる。

【参考】Pilot.Auto とWeb.Autoについては「バス自動運転化などの「起点」に!ティアフォーが新サービス」も参照。

■自動運転シミュレーター「AWSIM」を追加

Web.Autoがこれまで行ってきた自動運転ソフトウェアの検証は、シナリオベースの運転や交通環境シミュレーション、走行ログを用いた現実事象の再現テストが中心だったが、ここに自動運転シミュレーター機能「AWSIM」が加わることで、自動運転の目的に応じた効率的な検証が可能になる。

AWSIMでは、自動運転ソフトウェアの評価・検証に向け、3次元モデル地図をベースに仮想世界を構築する。リアルな物理モデルを用いたセンサーデータモデルと組み合わせることで、現実世界の運転や交通環境をシミュレーションすることができる。

この自動運転シミュレーターは、リアルタイム3Dプラットフォームを開発するUnityの技術を採用している。ティアフォーとUnityの日本法人ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは2022年11月にデジタルツイン指向の自動運転シミュレーターの開発に向け協業を発表しており、3Dシミュレーター開発を通じてLiDARやカメラセンサーモデルにおける自動運転向け詳細化・多様化・高速化に関する研究や、Unityを使った自動運転向けシミュレーターの課題抽出と改善を進めていくこととしている。

今後、機械学習向けに学習用合成データを自動生成することで、機械学習を活用した物体検出や環境認識の学習、検証コストを大幅に低減できるようになるという。

出典:ティアフォー・プレスリリース
■効果的な自動運転開発に必須のシミュレーション技術

自動運転の開発は、車載LiDARやカメラに映し出された歩行者や道路標識など、さまざまなオブジェクトを正確かつ瞬時に検出・認識し、それに基づいて車両を正確に制御する技術が求められる。道路の状況は場所や時間、季節などで刻一刻と変わり、同じ場面は二つと存在しない。

それゆえ、さまざまな場面に対応できるよう事前に道路を反復走行してデータを集め、分析能力を高める必要がある。この作業には、膨大な時間と労力を要する。

ここにシミュレーション技術を導入し、コンピュータ上で同様の作業を行うことで開発を効率化することができる。デジタルツイン技術で現実の世界と、うり二つの仮想空間をコンピューター上に作り出すことで、よりリアルで実のある実証を行うことが可能になるのだ。

【参考】デジタルツインについては「親和性抜群!自動運転×デジタルツイン、仮想の現実世界で自由に実証」も参照。

■自動運転の民主化を推進するティアフォー
出典:ティアフォー公式サイト

ティアフォーは、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発・普及を目的に2015年に設立されたスタートアップだ。Autowareの国際標準化を推進する業界団体「The Autoware Foundation(AWF)」を設立するなど、世界を視野に入れた事業展開を進めている。

台湾のFoxconnグループが展開するEV(電気自動車)プラットフォーム「MIH」でもAutowareが採用されている。MIHには2000社を超える企業が参画しており、EV製造における大きなムーブメントとなる可能性を秘めている。自動運転機能を搭載するフェーズに入った際、Autowareが大きな脚光を浴びることが考えられる。

国内でも、東京都や愛知県の実証など非常に多くの事業でAutowareが採用されるなど、高い実績を誇る。今後、改正道路交通法の施行によりレベル4サービス実装に向けた動きが各地で加速する可能性が高いが、ティアフォーのPilot.AutoとWeb.Autoはこうした動きを見据えたソリューションとも言える。

汎用性が高く効率的な開発を可能にするPilot.AutoとWeb.Autoは、自動運転技術を持たない地方自治体や交通事業者にとって魅力的なサービスとなる。Pilot.AutoとWeb.Autoは、ティアフォーが掲げる「自動運転の民主化」を推進する中心的なソリューションとなり得るのだ。

■【まとめ】今後の進化と普及に注目

記事内でも触れたが、今後レベル4サービスの導入を図る動きは大きく加速することが予想される。自動運転開発やサービスに関心を持つ層にアプローチする有効なソリューションであるPilot.AutoとWeb.Autoが、今後どのような進化と普及を遂げていくのか要注目だ。

また、ティアフォー自身も自動運転タクシーの実証など数々の事業を展開している。先行例・模範例として、こうした各取り組みにもしっかりと注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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