モビリティサービスの事例・種類(2024年最新版)

MaaSのほか、サービス向けのサービスも

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移動や輸送の変革期を迎え、多様化が進むモビリティサービス。モビリティそのものの種類が増し、付随するサービスもIoTやAI(人工知能)技術の進化を背景に多様化が進んでいる。

この記事では最新情報をもとに、モビリティサービスをあらゆる観点から解説・紹介していく。

<記事の更新情報>
・2024年4月23日:関連記事を追加
・2023年6月23日:各モビリティサービスの主要企業などについて追記
・2022年10月22日:記事初稿を公開

■公共交通

大量輸送可能な大動脈「鉄道」

出典:東日本旅客鉄道プレスリリース

公共交通の代表格と言えば鉄道だ。国土交通省によると、2022年4月時点の事業者数は鉄道・軌道合わせ217事業者が認可を受けている。

▼鉄軌道事業者一覧|総務省
https://www.mlit.go.jp/statistics/details/content/001482051.pdf

明治時代以降の日本を支え続けてきた大量輸送手段で、全国に張り巡らされた鉄道網は大動脈と言える。地下鉄やモノレール、ライトレール、AGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)による新交通システムなど、派生タイプもさまざまだ。

国土交通省によると、2018年度における鉄道の輸送人員数はJR系が95億5,600万人、民営が157億1,400万人となっている。

バスは約10万台が走行

道路を走行する公共交通の代表格はバスだ。路線バスなどの乗合バスや高速バス、貸切バス、観光バスなど様々な運行形態で約10万台が国内を走行している。

国土交通省によると、2018年度の事業者数は乗合バスが2,321社、貸切バスが4,004社となっている。また、同年度の輸送人員は、乗合バスが43億4,800万人、貸切バスが2億9,800万人となっている。

タクシーは22万台超が走行

自由な移動を実現する公共交通の代表格はタクシーだ。国土交通省によると、2018年度におけるハイヤー・タクシー事業者数は法人事業者数が1万6,695、個人タクシーが3万2,315の計4万9,010事業者となっている。車両数は計22万7,451台に上る。輸送人員数は13億9,100万人となっている。

海や空の公共交通も

海上の旅客船や空の輸送を担う航空機なども公共交通の一員だ。国土交通省によると、2018年度の輸送人員は旅客船が8,800万人、国内航空が1億400万人となっている。

■新しめのサービス

シェアサービスの代表格カーシェア

モビリティサービスにおいては、登録会員らが特定のモビリティを共同で使用するシェアサービスが市場を拡大している。その代表格はカーシェアだ。

交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2021年3月時点における国内カーシェアのステーション数は1万9,346カ所、車両台数4万3,460台、会員数2,24万5,156人の状況で、依然右肩上がりを続けているという。

▼わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移|交通エコロジー・モビリティ財団
http://www.ecomo.or.jp/environment/carshare/carshare_graph2021.3.html

出典:交通エコロジー・モビリティ財団

借りたステーションにクルマを戻すラウンドトリップ方式が主流だが、借りた場所とは別のステーションに返却可能なワンウェイ方式も徐々に広がっており、サービスの利便性は高まっている。また、個人間カーシェアなどのサービスを展開する動きも出ている。

【参考】カーシェアについては「カーシェアで「乗り捨て」は可能? トヨタ自動車や日産も実証実験」も参照。

サイクルシェアも依然人気

シェアサイクルも市民権を得ている。国土交通省によると、2020年3月時点でシェアサイクルサービスが提供されている都市は164に上り、ポート数も2,425カ所まで増加しているという。

▼第2次自転車活用推進計画の取組について|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001485268.pdf

今後、電動キックボードなどの競合サービスが本格化する可能性が高く、動向を注視したい。

海外で人気のライドシェア

自家用車をシェアするライドシェアも近年急速にマーケットを拡大した。米国や中国など海外ではモビリティサービスの1つとして認知度を高める一方、日本では営利目的のライドシェアは依然禁止されている。

同一方向に向かう人が相乗りするカープール型とアプリでマッチングを図るTNCサービス型などがあり、後者はタクシーのように利用されている。日本ではいわゆる「白タク」行為となるため、禁止されているのだ。

なお、公共交通や福祉用途で行われる有償ライドシェアについては、条件を満たせばサービス提供することは可能だ。

AIで進化を遂げたオンデマンド交通

スマートフォンの普及やAIによる運行最適化技術などを背景に、予約に応じて柔軟に運行するオンデマンド交通も近年需要を伸ばしている。定路線型や運行ルートが決まっていない自由経路型など、さまざまな運行形態がある。

タクシーサービスも進化

規制が多いタクシー業界も、ユーザビリティ向上に向け徐々にサービスが進化し始めている。乗車前に運賃が確定する事前確定運賃が2019年に認可されたほか、2021年には目的地の近い客同士をマッチングして運送する相乗りサービスが制度化された。背景には、配車アプリの浸透があるようだ。

▼タクシーの事前確定運賃サービスがスタートします|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000312.html

このほか、変動迎車料金などのダイナミックプライシングや、定額タクシー運賃導入に向けた実証なども行われている。

こうした新たなサービスもモビリティサービスの進化につながっていく。

【参考】タクシー業界の取り組みについては「日本のタクシー業界、改革へ11案策定 ダイナミックプライシングや相乗りサービス」も参照。

グリーンスローモビリティも普及加速

出典:シンクトゥギャザー公式YouTube動画

時速20キロ未満で公道走行可能な電動車を活用した小さな移動サービスを指す「グリーンスローモビリティ」も、近年普及が加速している新しいモビリティサービスの1つだ。

国土交通省によると、2022年3月末時点において国内119カ所で走行実績があり、このうち29カ所で継続的な運行が認められるという。

新たなモビリティサービスにおいては、こうした環境負荷への配慮も必要になってきているようだ。

【参考】関連記事としては「グリーンスローモビリティとは?」も参照。

■今後登場・普及する可能性が高いサービス

電動キックボードなどの新モビリティサービスが続々登場?

現在実証が進められている電動キックボードをはじめ、新たなモビリティを活用したサービスが今後続々と登場する可能性が高い。

道路交通法の改正により、電動キックボードは2023年度までに免許不要で公道利用が可能になる。細かなルール作りは必須となるが、シェアサービスが一気に普及する可能性が考えられる。

このほか、空港などで実用化されている電動車椅子なども、「座って移動できるパーソナルモビリティ」として普及が広がるかもしれない。

取り回しやすい超小型モビリティの開発なども進められており、今後続々と新たなモビリティを活用したサービスが登場することになりそうだ。

自動運転技術による無人サービス

出典:Waymo公式サイト

自動運転技術を搭載した車両で人の移動やモノの輸送を担う無人サービスが今後徐々にシェアを拡大していく見込みだ。多くの移動・輸送サービスにおいてドライバーの人件費が経営を圧迫しているが、このドライバーに掛かる支出をカットすることで経営改善やサービスの充実を図ることが可能になる。

自動運転技術は、バスやタクシー、トラックなどさまざまな商用車への搭載が始まっている。現在は社会実装の初期段階で本格的な普及期はまだ先となるが、モビリティサービスを一変する可能性を持つ技術だ。

自動運転タクシーに関しては、米Waymo(ウェイモ)が2018年12月に世界で初めて商用サービスをスタートさせたあと、GM傘下のCruseもアメリカで事業を開始した。すでに中国でもアメリカに負けじと自動運転タクシーサービスが実用化されつつあり、現在のところは米中の2強となっている。

【参考】自動運転については「自動運転とは?技術や開発企業、法律など徹底まとめ!」も参照。

空飛ぶクルマなどのエアモビリティ

出典:国土交通省

空におけるモビリティも大きな変革期を迎えようとしている。ドローンや空飛ぶクルマの実用化だ。ドローンによるモノの輸送や空飛ぶクルマによるエアタクシーサービスなど、さまざまなエアモビリティサービスが登場する見込みだ。

国内では、2025年開催予定の大阪・関西万博を旗印に、官民総出で社会実装に向けた取り組みを推進している。当面は手動運転や遠隔操作で制御を行い、2030年以降に自動飛行技術の導入を図っていく方針だ。

企業としては、日本のベンチャーではSkyDriveなどに注目だ。すでに個人向け・法人向けに予約販売を開始しており、すでに複数の受注を受けていることを発表している。

【参考】空飛ぶクルマについては「空飛ぶクルマの実用化時期(2022年最新版)」も参照。

サービスロボットも続々実用化

出典:Serve Robotics公式サイト

歩道を自律走行する自動配送ロボット(宅配ロボット)もまもなく本格実用化時期を迎えることになりそうだ。小型・低速で歩行者と協調しながら歩道を安全に走行する新たなモビリティだ。

自動運転機能を搭載したロボットは、モノの配送以外にも清掃や警備などさまざまな用途を担うモデルの開発・実用化が進められている。

人の移動やモノの輸送という枠を超え、新たなモビリティの概念が形成されていく可能性もありそうだ。

自動配送ロボットを開発している企業の中で有力なのが、アメリカではNuro、日本ではZMPやティアフォーなどが挙げられ、この数年で開発企業が一気に増えた印象だ。

■MaaS系

MaaSアプリの機能が徐々に充実

ここ数年で大きな進化を遂げたMaaS。以前から提供されている乗り換え案内サービスに加え、スマートフォン1つで各種モビリティの一括経路検索や予約、決済などを行うことができ、利便性が高まっている。

これまでは、ジョルダンの「ジョルダン」やナビタイムジャパンの「NAVITIME」といった乗り換え案内サービスが提供されていたが、こうした情報をベースに経路検索や予約・決済機能などが付いたMaaSアプリが勢力を拡大している。

同一アプリ上で複数のモビリティを交えた経路検索を行うことができ、さらに予約や決済機能を備えたMaaSが増えてきた。デジタルチケット化により、1日フリーパスやエリア内の飲食店や観光施設のクーポンなどを付加したチケットなど、メニューも充実し始めている。

【参考】MaaSについては「【最新版】MaaSとは?基礎知識まとめと完成像を解説」も参照。

乗り放題サービスが目玉の1つに

出典:Whim公式サイト

観光系MaaSなどを中心に1日から数日のフリーパスも数多く商品化されている。鉄道とバスなど複数のモビリティが乗り放題となるチケットも登場しており、利便性が高まっているようだ。

また、フィンランドのMaaS Globalによるアプリ「Whim」のように、エリア内の各種モビリティサービスを統合し、月定額のサブスクリプションサービス化を図るものもある。

同社と提携する三井不動産は、千葉県内などでWhimの導入を推進しており、国内でもサブスクMaaSが導入されている。通勤や通学、仕事などで頻繁に移動サービスを利用するのに便利で、需要が見込めるエリアを中心に今後広がっていく可能性が高そうだ。

【参考】Whimについては「三井不動産×Whim、日本における「定額MaaS」の先駆けに?」も参照。

■モビリティサービス向けサービス

MaaSプラットフォームの開発・提供も加速

MaaSをはじめとする各種モビリティサービスに欠かせないプラットフォームやクラウドサービスを提供する動きも高まっている。

MaaS関連では、MaaS Tech Japan やPAYCIERGE、J MaaS、MONET Technologies、TIS、NSW(旧:日本システムウエア)など各社が基盤となるプラットフォームサービスを提供している。

MaaS Tech Japanのプラットフォーム「SeeMaaS(シーマース)」は、あらゆる移動データを連携・分析し、地域における移動課題の解決や他業種との連携による価値創出に資する交通施策を導くことが可能という。

TISのプラットフォームも、行動データを分析したクーポン配信などによる囲い込みマーケティングや、商業施設への送客プロモーションなどと連携することで、移動と消費をシームレスにつなぐことができる。

NSWのプラットフォームは、スマートフォンやハンディーターミナル、ヘッドマウントディスプレイ、ドライブレコーダー、ロボット、建機や農機といった機械など、車両に限らず移動を伴うモビリティ機器や利用者の動態情報もリアルタイムに地図上で管理することが可能で、移動系MaaSをはじめ、物流MaaSや働き方MaaS、ロボット・農業MaaSなど多方面で活用可能としている。

日本版MaaSにおける独自の進化はまだまだ続きそうだ。

【参考】MaaSプラットフォームについては「MaaSプラットフォーム、国内で開発競争激化 NSWも参入」も参照。

カーシェアプラットフォームも続々登場

シェアサービス関連では、カーシェアプラットフォーム事業が伸びているようだ。アースカーやスマートバリュー、Will Smart、ユビテック、シー・ティ・マシンなど新規参入が相次いでいる。

自らカーシェア事業を展開するアースカーは、複数のパートナーやオーナー、ステーションを管理でき、異なる事業者のカーシェアリング車両をシームレスに予約可能な「earthcar」を提供している。特許取得済みの予約管理システムが特徴だ。

カーシェアは利用用途によって1台から導入可能なため、個人間カーシェアのような形で近所の人と1台のクルマを共有するなど、さらなる発展を遂げる可能性もありそうだ。

ルート最適化技術もモビリティサービスに貢献

効率的な運行経路や配送経路を導き出すルート最適化システムも市場を拡大している。オンデマンド移動サービスや宅配サービスなどで導入する動きが広がっている。

佐川急便は2021年、オプティマインドが開発したラストワンマイルに特化したルート最適化サービス「Loogia(ルージア)」の導入を発表した。ルージアは集配先の位置確認やルート決めなどを自動で行い、配達の進捗や再配達などの状況に応じてルートを再計算することができる。これまでアナログで行っていた集配順序の決定をシステム化し、ドライバー業務の効率化を図る構えだ。

このほかにも、パスコの「LogiSTAR配車管理簿」やライナロジクスの「LYNA」、日商エレクトロニクスの「AI最適配車サービス」など、各社がサービスを提供している。

今後社会実装が進む自動宅配ロボット分野などでも導入が進みそうだ。

【参考】ルート最適化システムについては「ルート最適化システム、市場拡大の予兆 日本郵便でも試行導入拡大」も参照。

車両からデータを収集・分析するクラウドサービスも充実

さまざまな車載デバイスやセンサーからデータを収集・分析するクラウドサービスも活躍の場を広げている。運転特性の把握・スコア化や車両の状態・稼働状況の確認などさまざまな機能を有し、自家用車から商用車まで幅広い需要が見込める。

スマートバリューの「クルマツナグプラットフォーム」やGMOモビリティクラウドの「LINKDrive」、MODEの「MODE Mobility Cloud」などが代表的だ。

収集蓄積したビッグデータを活用した新たなモビリティサービスなども今後誕生しそうだ。

■【まとめ】進化・変革期を迎えるモビリティサービス

鉄道やバスといった既存サービスに、さまざまな新モビリティサービスが競合していく時代が到来した。また、自動運転技術によってバスやタクシーも新たなモビリティサービスへと進化していく可能性が高い。

各種モビリティサービスを支えるクラウドサービスやプラットフォームサービスなども充実の一途をたどっており、モビリティサービス全体が進化・変革期を迎えつつあるようだ。

今後、単体のモビリティサービスが今後どのように進化し、またMaaSなどの概念によって他のモビリティと密接に結びついていくのか。要注目だ。

■関連FAQ

(初稿公開日:2022年10月22日/最終更新日:2024年4月23日)

【参考】関連記事としては「モビリティとは?意味や定義は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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