関係者必読!「自動運転」関連、2023年度概算要求まとめ

国土交通省の各局の動きは?



国土交通省はこのほど、2023年度予算概算要求概要を公表した。自動運転レベル4サービス実現に向けた取り組みが大きく進展すると予想される2023年度に向け、同省はどのような事業を進めていくのか。


自動運転を中心にモビリティ関連の予算・事業について紹介していく。

■国土交通省の概算要求
次世代モビリティの普及に7億円要望

国土交通省は2023年度に向け、一般会計ベースで6兆9,280億円(前年予算比1.18倍)を要求している。このうち、「脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の推進」の中で「自動車の電動化等の促進=13億円(同3.19倍)」を要望しているほか、「デジタルの力も活用した分散型国づくりや持続可能な地域活性化」の中に「スマートシティの社会実装の加速=37億円(同2.48倍)」や「次世代モビリティの普及促進=7億円(同1.44倍)」、「地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備=4,998億円(同1.20倍)」などが盛り込まれている。

  • 自動車の電動化等の促進=13億円(3.19倍)
  • スマートシティの社会実装の加速=37億円(2.48倍)
  • 次世代モビリティの普及促進=7億円(1.44倍)
  • 地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備=4,998億円(1.20倍)

「次世代モビリティの普及促進」では、デジタル田園都市国家構想の実現に資するAI(人工知能)やIoTといった新技術を活用した次世代モビリティの普及促進を図っていくこととし、具体的には次の事業を掲げている。

  • MaaS連携高度化による移動のシームレス化の推進
  • 道路空間における新たなモビリティサービスの利用環境の整備
  • 自動運転時代のITSとして、車両内外のデータをセキュアに連携させる基盤の構築
  • 無人航空機(ドローン)の有人地帯での目視外飛行の活性化に向けた環境整備の推進
  • 新たなビジネスとしての「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた環境整備の推進
  • スタートアップ支援に向けた交通運輸分野の優れた技術開発・国際標準化の推進
  • 運輸分野における水素の利活用の拡大を目指した環境整備の推進

▼国土交通省 令和5年度概算要求概要
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498738.pdf


以下、同省各局の要求を個別に見ていく。

■国土交通省自動車局
自動運転専用道における技術要件を検討

自動車局は、「自動車の技術開発等の促進・適切な保守管理の徹底」の中で、以下をそれぞれ要望している。

  • ①先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進=1億5,800万円(1.33倍)
  • ②自動運転(レベル4)法規要件の策定=2億円(1.12倍)
  • ③自動車の技術・基準の国際標準化等の推進=8億100万円(1.29倍)

①では、2022年度に引き続きシステムが安全運転に積極的に関与する技術について検討を進めていく。ドライバーが明らかに誤った操作を行った場合などにおいても運転支援システムはドライバーの操作を優先して作動するが、自動制御システムが介入する方が明らかに安全である場合がある。こうしたケースに対し、システムが安全運転に積極的に関与する設計の在り方について実用化に向けた課題を整理・検討していく。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)

②では、社会受容性の観点から、自動運転システムによる判断の在り方に関する調査を行うとともに、自動運転専用道など特別な走行環境における関係者の役割と技術要件の在り方などの調査を進める。


具体的には、逆走者や飛び石、落石といった道路上で生じるさまざまな事象に対し、システムが安全を保証しなければならない範囲の検討を行う。また、トロッコ問題のようにどのような判断をしても被害が生じる場合などにおけるシステムの判断の在り方の検討も進めていく。

特別な走行環境では、一般道よりも理想的な走行条件を前提とした専用道における自動運転車の技術要件の検討を進めていく構えだ。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)
国際標準化議論を引き続き主導

③では、自動車の国際基準を策定する国連の会議体(WP29)において、官民一体となって日本の技術・基準の国際標準獲得を推進していく。

自動運転関連では、日本は自動運転分科会で副議長を務め、その下に設置されている自動ブレーキやサイバーセキュリティ、自動運転認証、EDR/データ記録装置の各専門家会議で共同議長を務め、国際議論をリードしている。

このほか、自動運転による地域公共交通実証事業について事項要求している。地方公共団体が行うレベル4バスサービスについて、持続可能性を検証するため1年程度の長期にわたる実証事業を支援していく予定だ。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)

▼自動車局関係
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498748.pdf

■国土交通省都市局
PLATEAUやスマートシティの実装などを推進

都市局は、「まちづくりのDX」の中で、デジタル・インフラとなる3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU/プラトー」やスマートシティの実装などを推進していく。

都市空間情報のデジタル化関連では、以下をそれぞれ要望している。

  • 都市空間情報デジタル基盤構築調査=15億円(3.00倍)
  • 都市空間情報デジタル基盤構築支援事業15.0億円(2.14倍)
  • スマートシティ実装化支援事業=4.0億円(1.51倍)

自動運転などの次世代交通サービスの実装を支える都市施設の構造などについて実証を進めていくほか、PLATEAUにおいても自動運転モビリティなどのユースケース開発を拡充していく方針だ。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)

▼都市局関係
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498743.pdf

■国土交通省道路局・国土交通省都市局
電動キックボードや自動配送ロボット実用化に向けた道路の在り方を検討

上記とは別に、道路局・都市局は「人流・物流を支えるネットワーク・拠点の整備」の中で、以下などを事業に掲げている。なお、個別の要求額は公表していない。

  • ①ICT交通マネジメントの展開
  • ②新たなモビリティやシェアリングの利用環境の整備
  • ③自動運転の普及・促進に向けた道路側からの支援

①では、ICTを活用した道路交通需要コントロール(TDM)の基盤となるデータ取得・活用の高度化を推進し、データ駆動型マネジメントによる課題解決を推進する。交通関連ビッグデータの形成・活用を目指す構えだ。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)

②では、電動キックボードや自動配送ロボットなどの利用ニーズの高まりを踏まえ、新たなモビリティサービスの利便性向上に資する道路整備を推進する。

2022年4月に可決された改正道路交通法では、電動キックボードを「特定小型原動機付自転車」、自動配送ロボットを「遠隔操作型小型車」とする新たな車両区分が設定された。2022~2023年度までそれぞれ施行される見込みで、こうした新しいモビリティが安全かつ効果的に運用される道路の在り方を検討していく。

また、自転車や軽自動車などのシェアリングを促進することとし、道路空間をカーシェアステーションとして活用する社会実験の結果などを踏まえ、全国展開に向けたガイドラインを策定する予定だ。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)
高速道路における自動運転や地域限定型の無人自動運転移動サービスに関する研究も深化

③では、高速道路などにおける自動運転の実現に向け、民間企業との共同研究を推進するとともに、自動運転を活用したまちづくり・地域づくりを目指す自治体の取り組みを重点的に支援する。

具体的には、高速道路などでの安全で円滑な自動運転を実現するため、区画線の管理目安や合流支援情報、工事規制情報といった先読み情報の提供手法などについて、官民連携による共同研究を推進する。効率的かつ効果的な情報生成に向けた次世代ITSの推進やプラットフォームの構築・連携も進めていく。

また、地域限定型の無人自動運転移動サービスを2025年めどに40カ所以上、2030年までに全国100カ所以上の地域で実現する目標達成に向け、自動運転を活用したまちづくり計画に基づく走行環境整備を重点的に支援するとともに、走行空間などの計画にあたり技術的支援を実施するほか、さらなる普及に向け、まちなかでの自動運転サービス導入における交通安全対策や道路側からの情報提供の在り方に関する調査検討を実施する。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)

▼道路局・都市局関係
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498745.pdf

xROADの構築・オープン化へ前進

一方、「道路システムのDX」として、新技術の導入やデータの利活用によって道路管理や行政手続きの高度化・効率化を図るDXの取組「xROAD(クロスロード)」を加速する方針だ。

道路システムのDX化については、AIやICTなどの新技術によって①道路の点検や維持・管理作業などの高度化・効率化②手続きや料金支払いのオンライン化、キャッシュレス化・タッチレス化③データ収集の高度化と蓄積したデータの利活用、オープン化――を進めていく。

2022年度までに自動制御可能な除雪機械の実動配備開始や特車手続に用いる道路情報の電子化促進、占用物件位置情報のデジタル化といった道路維持・管理の高度化を図るほか、道路施設点検データベースの運用、公開やMMS3次元点群データの公開、「xROAD(試行版)」の構築などのデータ利活用・オープン化を図る。xROADは、デジタル道路地図などを基盤として各種データを紐付けるデータプラットフォームだ。

今後、2023年度に道路基盤地図情報の公開を目指し、2024年度以降をめどに道路異常の自動検知・早期処理体制構築や高速道路におけるETC専用化、リアルタイム交通量データの公開、道路管理の高度化や民間分野での利活用、次世代のITSの開発・運用開始などをそれぞれ実現する。

次世代ITS推進においては、自動運転時代を見据え安全性や利便性を飛躍的に向上させるため、車両内外のデータをセキュアに連携させる基盤を構築する。

具体的には、狭域通信を活用した高速道路ICにおける合流支援や広域通信を活用した官民データ連携による自動運転トラック運行管理など、次世代ITSによって実現を目指すサービスと、そのために求められるデータや機能要件について具体化し、車両内外のデータ連携基盤の開発を推進するとしている。

出典:国土交通省資料(※クリックorタップすると拡大できます)
■国土交通省航空局
空港内自動化や空飛ぶクルマ実現に向けた事業推進

航空局は、航空イノベーションの推進を図る中で、以下を要求している。

  • ①空飛ぶクルマ・ドローンの安全対策=1.3億円(1.44倍)
  • ②地上支援業務等への先端技術の導入促進=2億円(2倍)
  • ③航空機・次世代航空モビリティに対する確実な安全性審査・実用化の促進=1億円(1.25倍)

①では、空飛ぶクルマの社会実装に向けた環境整備に関する調査や低高度における安全・円滑な航空交通のための体制整備、ドローンレベル4飛行の活性化に向けた無人航空機の制度設計に向けた調査・検討などを進めていく。

②では、AI技術を活用して空港地上支援業務の効率化を図るとともに、2025年までに地上支援業務を自動化・省力化する無人車両技術を導入するため、ランプバスやトーイングトラクター、除雪車両などの自動化や運用ルールの策定などを行う。

③では、ドローンレベル4飛行の本格的な実施や、2025年度中の空飛ぶクルマの商用運航の実現に向け、確実かつ円滑な安全性審査・実用化を促進するため、実地審査や審査職員の飛行試験技能習得、海外関係機関などとの審査基準等の調整などを図っていく。

▼航空局関係
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498751.pdf

【参考】空港における自動運転については「自動運転と空港(2022年最新版)」も参照。空飛ぶクルマについては「空飛ぶクルマ(2022年最新版)」も参照。

■国土交通省総合政策局
次世代モビリティ・物流DXの推進に2億4,400万円要望

総合政策局は、次世代モビリティ・物流DXの推進に2億4,400万円(同1.72倍)を要望している。よりシームレスで快適性・利便性の高い交通サービス実現に向け、各地のMaaSの連携や、交通事業者のみならず他分野の事業者の連携促進などを図る。

また、物流DXやグリーン物流を推進するため、物流総合効率化法の枠組みのもと、物流の効率化を図る取り組みを支援するほか、物流の標準化に資する調査などを行う。

このほか、新たなイノベーション創出に資する先端科学技術などに関する技術開発・国際標準化を推進するため、交通運輸技術開発・国際標準化の推進に2億6,700万円(同1.13倍)を要望している。

▼総合政策局関係
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498740.pdf

■【まとめ】2023年度は新たなフェーズに突入

最終的に認められる予算額は未定だが、各事業が進められていくことはほぼ間違いない。道路交通のDX化に向けた取り組みも本格化し、自動運転をはじめさまざまな面で次世代交通の確立に向けた動きが進んでいくものと思われる。

また、2023年度までに改正道路交通法が施行され、レベル4サービスや自動走行ロボット実用化に向けた取り組みも間違いなく加速することになる。新たなフェーズに向けた施策に期待したい。

【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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