トヨタが「車両連動型の信号機」開発!通信で「青」を強制

信号制御手法の新たな試みに着手



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

2025年秋に始動予定のWoven City。その全貌が徐々に明らかになってきた。公開された情報はこれまで俯瞰図や広場の様子が中心だったが、ついにシティ内の車道の様子がトヨタイムズで公開された。

その内容は、e-Palette(イー・パレット)と信号機の連携だ。e-Paletteの接近に合わせて信号灯が青色に変わるシステムにより、車両も歩行者も快適かつ安全に移動ができるよう実証を進めているようだ。


Woven Cityにおける取り組みをベースに、自動運転と信号情報の連携、ひいてはV2Xに関する動向に迫る。

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■Woven Cityにおける取り組み

e-Paletteが青信号をリクエスト

トヨタイムズの記事には、Woven City内における車道の様子を収めた13秒間のショート動画が掲載されている。

動画には、横断歩道付きの信号が手前側に映し出されており、クルマ側が赤信号となっている。そこに画面奥からe-Paletteが左折してくると、歩行者側の信号が青点滅し、e-Paletteが信号付近に到達する前に歩行者側が赤、クルマ側が青へと変わる。e-Paletteは特に減速・停止することなく、スムーズに信号を通過する。


特段の説明がなければ、ただ単にe-Paletteが走行しているだけにしか見えない動画だ。信号もたまたまe-Paletteが近づいたタイミングで変わったと感じられる。しかし、実際はV2I(路車間通信)により信号が制御されているという。

信号連携にはいくつかのパターンがあるが、Woven City内ではe-Paletteが走行中常に位置情報と速度の情報を発信し、これをウーブン・バイ・トヨタがクラウド上に開発した「青信号要求サーバー」が受信して制御する仕組みを採用している。

青信号要求サーバーは、e-Paletteから発された情報をもとに車両が信号機に近づくタイミングを計算し、信号制御機へ青に切り替えるようリクエストを送信する仕組みだ。悪天候時も想定しており、視認性が悪い時の補助として車両側にも信号情報を配信している。


既存の信号機の手前に設置されたセンサーで車両を検知する車両感応式信号の場合、車両が該当箇所に到達してから信号が制御されるため停車時間が生じるが、Woven Cityでは事前にリクエストが送信されるため車両は信号機の手前で停車する必要がないという。

新たな交通ルールの設定・実証を進めていく

フェーズ1エリア内では、全7カ所の信号機に同システムが導入されている。4月時点で、Woven City内の4つの交差点にある信号は、基本的に歩行者側がいつも青に設定されており、車両が通行する時にだけ赤に変わる仕様になっているという。e-Paletteに乗車している人も歩行者も、双方が安全に移動できる仕様だ。

トヨタイムズによると、こうした取り組みは「道」から安全を確保するためのアプローチの一つで、テストコースの街だからこそ交差点や信号を使った実証を繰り返し試すことができ、自動運転もそれに合わせた信号システムも同所の道で鍛えられていくとしている。

今後、インベンターとも意見を交わし、同システムに即した交通ルールの設定・実証も進めていくという。

▼実証サポートしつつ実証? ウーブン・シティのエンジニアが語るシステム開発|トヨタイムズ
https://toyotatimes.jp/series/welcome_to_woven_city/005.html

自動運転車主体の信号制御は非現実的?

自動運転車に合わせて信号を制御する――という手法は、これまでの路車連携手法においてあまり議論されてこなかった考え方だ。

自動運転車と信号の連携は、自動運転車にいかに迅速かつ的確に信号情報を知らせるか――ということが主要論点であったため、通信方法や通信する情報などに関する議論が多くを占めている。

今回のウーブン方式を一般道路に当てはめた場合、自動運転車のみを優遇する形で信号連携するのかなど、新たな論点がいろいろと生まれることになりそうだ。自動運転専用道であればこうした手法の導入も可能かもしれないが、一般道路の場合、基本的に歩行者側を原則青信号にするならば、一般車両も対応しなければならない。

すべての一般車両が同システムに対応するのは無理があるため、自動運転車のみを優遇する形で信号を制御する仕組みとなりそうだが、そのシステムを導入するだけのメリットがどれほどあるか――となる。

そう考えると、ウーブン方式は現状の一般交通にはなじみにくいと言える。では、無駄な取り組みなのか?と言えば、そんなことはない。自動運転車が主流となる遠い将来まで見据えれば、こうした知見も有用となる。

また、こうした取り組みから新たな発想や技術が派生する可能性も十分考えられる。現実社会で考えれば、自動運転車ではなく緊急車両に導入すれば有用なものとなる。

一般道では実施しにくい取り組みも、ウーブンであれば実施できる。有効性がすぐ目の前に見えずとも、取り組む意義を見出すことが出来さえすれば実行に移せるのがウーブンの強みだろう。

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■自動運転×信号連携に関する動向

V2IとV2N方式が主流

自動運転×信号連携に関する議論・取り組みは早くから進められている。自動運転に必ずしも必要な要素ではないものの、自動運転車は事前に信号情報を受けることで早めに減速したりルートを変更したりするなどスムーズで効率的な運行を行うことができる。

また、車載カメラなどで万が一信号の灯火を正しく認識できなかった場合なども、データで送信されることで的確に信号の状態を把握することができる。安全性を高めることができるのだ。

合わせて、交差点における周囲の車両や歩行者などの情報も送信することができれば、自動運転走行の安全性を大きく高めることができる。

通信方式としては、信号機に接続した ITS 無線路側機で車両とデータをやり取りするV2I方式と、携帯電話通信網などの広域公共ネットワーク通信を利用するV2N方式が有力視されている。前者は各通信機が近距離で直接車両とデータのやり取りを行うため、通信遅延が小さいことがメリットだが、各交差点に設置するには整備費用が膨大となる。周波数割り当ての問題もあるかもしれない。

後者はネットワークを経由して間接的に車両と通信するため、V2I 方式に比べて通信遅延は大きくなるが、各交差点に通信機を設置する必要がないため、低コストで実現可能とされている。ただし、過密エリアなどでは著しい遅延が生じる恐れがあるほか、セキュリティ面の強化や、交通管制センターのシステムや信号制御機の改修が必要となる。

自動運転車は、信号連携の有無にかかわらず各種データの通信を行っている。移動が前提のためモバイル通信だ。途切れることのない通信環境が条件となるが、こうした点と、将来広範に自動運転が拡大していくこと、またコネクテッド化が進む一般車両においても信号情報が有効であることなどを見越せば、V2N方式が有力かもしれない。

当面は両者が混在する形で実証・実用化が進められる可能性も高い。自動運転サービスが拡大期を迎えたとはいえ、今しばらくは自動運転車が走行するルートは限られるため、民間事業者自らがV2I方式で整備し、情報提供のビジネス化を図る動きが出てくることも想定される。

今後の動向に注目が集まるところだ。

大規模整備や交通規制情報の常時正確な発信は現実的ではない?

なお、警察庁所管の「協調型自動運転システムへの情報提供等の在り方に関する検討会」が2023年3月に取りまとめた報告書によると、警察が大規模に信号情報提供に係る施設を整備したり、全国の交通規制情報を常に正確性を保ちながら提供したりすることは現実的でないとし、2025 年ないし 2030 年頃までの間は、自動運転移動サービスの提供事業者などが受益者負担により当該サービスの用に供する信号情報及び交通規制情報を自動運転車両に提供することが合理的としている。

警察庁としては当面、V2I 方式について民間事業者による ITS 用電波(760MHz 帯)の利用拡大について検討するほか、V2N 方式における技術的な課題について引き続き研究開発を推進するとしている。

また、実際に情報提供を行う場合を見据え、既存交通情報提供の実務を担う JARTIC や VICS センターの運営の枠組みを参考に、信号情報の提供に係る費用負担の在り方等の実現スキームを検討するとしている。

【参考】信号情報に関する取り組みについては「自動運転、信号に革新は必要?警察庁、トヨタらにヒアリング」も参照。

自動運転、信号に革新は必要?警察庁、トヨタらにヒアリング

■自動運転×V2Xの動向

V2Xの在り方に関する議論は継続議論中

リアルタイムな国の動きとしては、総務省所管のもと自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備に関し議論を進めている「自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会」と、国土交通省・警察庁が中心となる「自動運転インフラ検討会」でV2Xに関する議論が進められている。

自動運転時代の“次世代のITS通信”研究会は、世界的に主流となりつつある 5.9GHz 帯の V2X 通信への追加割当てに向け2023年に立ち上げられた。

同年8月に策定した中間とりまとめでは、国際的な周波数調和や既存無線局との干渉などを勘案し、5,895~5,925MHz の最大 30MHz 幅を目途に V2X 通信向けの割当を検討する」旨発表している。

2024年9月の第二期中間取りまとめでは、新東名高速道路をはじめとする実証などの実施に向け、5.9GHz帯V2X通信システムに係る実験試験局の免許交付までの手続きの迅速化・円滑化を図る点や、全国的な周波数移行による5.9GHz帯V2X通信の実用化に向け新たな周波数移行・再編スキームを検討すべき点、レベル4トラック実証に向けV2X/V2N通信の両面について取り組みを推進すべき点、ITS情報通信システム推進会議と連携したV2X通信の特性評価や既存ネットワークを活用したV2N通信の実証・評価なども検討に含めるべきことなどを指摘している。

自動運転インフラ検討会は、自動運転の実現を支援するため、自動運転に資する道路構造や路車協調システム、道路交通情報の収集・提供に関する体制やルール、情報通信インフラなど、インフラの在り方を検討する組織として2024年に立ち上げられた。

V2N・V2Iによる信号情報提供の実現スキームとして、 提供体制や費用負担の在り方などについて議論するほか、自動運転車へ交通情報を提供する事業者の役割や責任の在り方などについて議論を進めている。

■【まとめ】新たな未来の常識はWoven Cityから誕生する

Woven Cityでは、オープンに先立ってトヨタグループ自ら自動運転実証に着手し、論点を模索している印象だ。その一つが今回の信号連携の在り方なのだろう。

既成概念にとらわれることなくさまざまな取り組みを行うことができるのがWoven Cityの強みだ。交通ルールに変革をもたらすような新たな未来の常識が、将来Woven Cityから生まれるかもしれない。

今後、どのようなインベスターを交え、取り組みを具体化していくのか。引き続きWoven Cityの動向に注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転はいつ実用化される?レベル・モビリティ別に解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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