自動運転と「日本初」(2022年最新版)

無人タクシー実証など8件をピックアップ

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出典:三菱重工業プレスリリース

米国、中国をはじめ、世界各地で自動運転の実証や実用化が盛んに進められている。日本も例外ではなく、この数年間で大きな前進を遂げてきた。

数々の最先端技術の開発・導入が進む自動運転。この記事では、自動運転分野における「日本初」の取り組みに迫る。

なお、どの取り組みが厳密に「日本初」かどうかを正確に書くのは非常に難しいこともあり、プレスリリースや報道発表などを参考にしつつ、どの取り組みが日本初かを探る形で記事を展開させていただく。

■国内初の自動運転タクシー実証は?

自動運転タクシーの実証において、国内で初めて乗客を乗せる形態で公道実証を行った取り組みは、おそらくDeNAとZMPの合弁会社「ロボットタクシー」にさかのぼるものと思われる。

無人運転交通サービスの実現を目指し設立された同社は2016年2月から3月にかけ、ZMP製の自動運転車両を使用し、神奈川県藤沢市の公道約2.4キロのルートでモニター乗車のもとサービス実証を行っている。セーフティドライバーやオペレーターが同乗するレベル3で走行したようだ。

その後、2018年3月には、日産とDeNAが自動運転移動サービス「Easy Ride」の実証を神奈川県横浜市内で実施した。また、ZMPと日の丸交通は2018年8月から9月にかけ、世界初と言われる自動運転タクシーによる公道営業サービス実証を行っている。

自動運転バスも国内初が目白押し
出典:ソフトバンク

自動運転バスに関する取り組みも、国内初が目白押しだ。国内初の実証がどの取り組みかは定かではないものの、国のラストマイル自動運転事業などを背景に2017年に各地で実証が本格化している。

相鉄バスは2019年4月、群馬大学と自動運転に関する共同研究契約を締結し、同年9~10月によこはま動物園ズーラシアと里山ガーデンを結ぶ約900メートルの区間で国内初の大型自動運転バスによる営業運行(レベル2)を実施した。2020年10月には、セーフティドライバー同乗のもと遠隔監視・操作による営業運行も実施している。

相鉄バスはバス事業者として初めて大型自動運転バスを所有し、レベル4実現に向け継続的に実証を進めていく構えだ。

【参考】相鉄バスの取り組みについては「日本初!大型バスの営業走行で自動運転 無人化の潮流、国内外で」も参照。

自治体の定路線バスを自動運転化する取り組みは、茨城県境町が国内初だ。マクニカとソフトバンク子会社のBOLDLYの協力のもと、仏Navya製の自動運転シャトル「ARMA」を導入し、町内路線バスとして2020年11月から継続運行している。実質レベル2での運行となるが、レベル4を見据えた継続的な取り組みだ。

このほか、WILLERや日本交通などが2022年2月、鳥取砂丘周辺の公道で国内初となる事業用の緑ナンバーを装着したARMAでサービス実証を行っている。

■ZMP:国内初の遠隔型自動運転の公道実証を実施

ZMPは2017年12月、遠隔型自動運転システムの公道実証を東京都内で実施した。同社によると、運転席無人の遠隔型自動運転の公道実証は国内初という。

遠隔型に関しては同年6月、警察庁が「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」を公表しており、これにいち早くのっとり実証を行った格好だ。

その後、2018年11月にはアイサンテクノロジーやティアフォーなどが愛知県内の豊橋総合動植物公園で遠隔監視・操作が可能な自動運転車2台を同時に走行させる実証を、同年12月には産業技術総合研究所などが福井県永平寺町で1人のドライバーが遠隔地から2台の自動運転車を走行させる実証をそれぞれ行っている。いずれも国内初の取り組みだ。

2019年2月には、アイサンテクノロジーなどが愛知県一宮市の公道でも国内初となる5Gを活用した運転席無人の複数台遠隔監視型自動運転の実証が行われている。

2021年8月には、東急が静岡県の自動走行実証事業「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」のもと、1カ所の遠隔コントロールセンターから複数都市の車両を遠隔監視・操縦する国内初の取り組みを進めていくことを発表している。

自動運転移動サービスなどで必須となる遠隔監視・操作技術も、着々と進化している様子が見て取れる。

■遠隔型自動運転システムによるレベル3移動サービス開始
出典:国土交通省

福井県永平寺町で2021年3月、電磁誘導線を活用した遠隔型自動運転システムによるレベル3移動サービスが国内で初めて運行を開始した。

廃線跡地を活用したサービスで、ヤマハ発動機のカートをベースにした低速自動運転車両を使用している。運転席にドライバーを配置する必要がなく、有事の際は遠隔地のドライバー(オペレーター)が適時監視・操作を行う。

同様のシステムは沖縄県北谷町でも導入されている。

【参考】永平寺町の遠隔型自動運転システムについては「誘導線を使う自動運転レベル3で移動サービス!福井県永平寺町でスタート」も参照。

■自動配送ロボットに関する取り組みは?
ZMPの谷口恒社長=提供:ZMP

新規参入が相次ぐ自動配送ロボット(宅配ロボット)分野においては、ZMPがパイオニアとして知られる。同社は2017年、森ビルと共同で宅配ロボット「CarriRo Delivery(現DeliRo/デリロ)」の実証を六本木ヒルズで実施した。2018年からは、ローソンと慶應義塾大学SFC研究所とともにコンビニ商品の無人配送サービス実証実験も実施している。

2020年に公道実証環境が整備されてからは、国内初の取り組みが続々と顔を出し始める。ZMPは2020年9月、日本郵便とともに国内初の公道(歩道)における輸配送実証実験を行うことが発表された。

ZMPはこのほか、ENEOSホールディングスとエネキャリとともに、東京都中央区でパートナー企業10社・10店舗の商品をデリバリーするサービス実証を2021年2月に行っている。複数店舗の商品を宅配する取り組みは国内初という。

2021年8月には、京セラコミュニケーションシステムが中国Neolixのロボットを活用し、自動配送ロボットが車道を走行する国内初の取り組みを北海道石狩市内で実施した。2022年7月には、自動走行ロボットが商品を運び、公園などを周回しながら移動販売を行う国内初のサービス実証を千葉市美浜区の幕張新都心地区で開始している。

【参考】京セラコミュニケーションシステムの取り組みについては「京セラ子会社が「ミニ無人コンビニ」!自動運転技術を活用」も参照。

ティアフォーと川崎重工業、損害保険ジャパン、SOMPOケアの4社は、介護領域において自動配送ロボットの活用を目指す国内初の取り組みを2021年11月に開始した。複数種類の自動配送ロボットを同一の運行管理システム上で同時制御する取り組みとしても国内初という。

また、ティアフォーや川崎重工業など7つの企業・団体が、5Gを活用して自動配送ロボットが公道走行しラストワンマイル配送を行う国内初の実証にも2022年1月に着手している。

【参考】ティアフォーと川崎重工業の自動配送ロボットについては「川崎重工が「自動運転」に本気だ!無人で動く多用途車両や配送ロボ」も参照。

パナソニックホールディングスは2022年4月、自社開発した自動配送ロボットが国内で初めて完全遠隔監視・操作型(フルリモート型)の公道走行許可に関わる審査に合格し、道路使用許可を取得したと発表した。この許可により、近接監視を伴わない公道走行が可能になった。

2022年5~7月には、楽天グループ、西友とともに茨城県つくば市で注文から最短30分で配送する国内初のオンデマンド配送にも取り組んだ。

【参考】パナソニックの取り組みについては「国内初!自動配送ロボで遠隔監視型の公道走行許可 パナソニックが取得」も参照。

■空港に関する国内初は?
出典:WHILLプレスリリース

空港においても自動運転技術が多方面で導入・活用されている。自動運転技術を搭載した車いすの開発を手掛けるWHILLは、2020年6月に羽田空港第1ターミナルで世界で初めて自動運転パーソナルモビリティが実用化されたと発表した。

2022年7月には、エレベーター連携のもと出発地点から目的の搭乗ゲートまで階をまたいで自動運転で移動する世界初の実証にも着手している。

【参考】WHILLの取り組みについては「空港で世界初!羽田に自動運転パーソナルモビリティ WHILLが開発」も参照。

日本航空は2021年3月、国内航空会社として初めて手荷物搬送用の自動運転トーイングトラクターを成田空港に導入することを発表した。セーフティドライバーが同乗するレベル3で運用し、将来的にレベル4を目指す方針だ。

【参考】日本航空の取り組みについては「手荷物搬送×自動運転、「日本初」はJAL!ANAも負けず劣らず取り組み加速」も参照。

三菱重工交通・建設エンジニアリングは2021年4月、世界初の完全無人自動運転による旅客搭乗橋実装に向けた共同開発契約を成田国際空港と締結した。空港では、旅客搭乗橋さえもモビリティとなるようだ。

【参考】自動運転旅客搭乗橋については「自動運転技術の「トリプル導入」で空港が近未来化!旅客搭乗橋も新たに」も参照。

2022年2月には、東日本電信電話、ティアフォー、KDDI、成田国際空港の4社が国内空港で初めてローカル5Gとキャリア通信を活用した空港制限区域内における遠隔監視型自動走行バスの実証を行っている。

■バスの自動運転・隊列走行技術確立へ

西日本旅客鉄道とソフトバンクは2021年10月、自動運転と隊列走行技術を用いたBRTの実証を専用テストコースで開始した。国内初となる連節バスの自動運転化と自動運転バス車両による隊列走行の実用化を目指す方針だ。

両社は「自動運転・隊列走行BRT」の開発プロジェクトを2020年3月に立ち上げ、専用テストコースの設置など準備を進めてきた。2022年春頃を目途に3種類の自動運転車両を用いた隊列走行の試験を開始し、同年夏頃には乗降場への正着制御や遠隔コントロールといった運用面の試験に着手する。その後、2023年に専用テストコースにおいて後続車無人の自動運転・隊列走行に関する技術確立を目指す計画だ。

【参考】JR西日本・ソフトバンクの取り組みについては「いつの間に!?線路に挟まれた空間に自動運転のテストコース出現」も参照。

■自動運転けん引式のバレーパーキング実現へ
出典:三菱重工業プレスリリース

三菱重工グループの三菱重工業と三菱重工機械システムは2021年10月、仏スタートアップのスタンレーロボティクスと自動バレーパーキングや完成車自動搬送サービスを実現する国内初の先進的自動搬送ロボット事業を共同展開していくことで合意したと発表した。

スタンレーは、フォークリフトのように自動車を持ち上げ、所定の位置に自動搬送することが可能なロボットを開発しており、このロボットと駐車状況管理ソフトウェア技術を組み合わせた自動バレーパーキングサービスを展開している。

車両側にセンサーなどを設置する必要がなく、駐車場に設置するインフラ要件のハードルも低いものと思われる。国内初の自動バレーパーキングとなるか注目だ。

【参考】三菱重工グループの取り組みについては「ロボットが車を引っ張る!三菱重工、自動バレーパーキング実現へ」も参照。

■【まとめ】「初」の取り組みが技術やサービスを進化させていく

この記事ではあえて触れなかったが、ホンダ「レジェンド」が搭載するレベル3のように「世界初」の取り組みももちろん存在する。

「初」の取り組みを積み重ねていくことで技術やサービスはどんどん進化を遂げ、社会にイノベーションや利便性をもたらす。「初」の取り組みはまだまだ尽きることなく、今後も続々と世に送り出されていく。引き続き各社の取り組みに注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転と「世界初」(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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