拡大を続けるNVIDIAの顧客網!自動車産業、物流・小売業も

AI技術で多彩な産業にアプローチ

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出典:NVIDIA公式ブログ

半導体技術やAI(人工知能)ソリューションを武器に自動運転業界における存在感を高め続ける米NVIDIA。パソコン・ゲーム市場の雄はすでに自動運転市場においても強固なネットワークを築いており、その勢いはとどまるところを知らない。

この記事では、NVIDIAが世界最大の技術見本市「CES 2022」で講演した内容をベースに、同社の2022年の動向に迫っていく。

■NVIDIAのビジネス領域

1993年設立のNVIDIAは、創業当初からグラフィックスチップの開発に主眼を置き、パソコン市場やゲーム市場をターゲットに業績を伸ばしてきた。1999年に販売を開始したGPU「GeForce」シリーズはブランド化され、今なお高い支持を集めている。

3次元グラフィックスや動画コンテンツの普及・高度化とともにパソコン・ゲーム市場で堅実に業績を伸ばしていたが、2010年代半ばにさらなる転機が訪れる。ディープラーニングの隆盛だ。

GPUの高い処理性能をグラフィックス以外にも活用できるようにするNVIDIAの技術「CUDA」が評価され、ディープラーニングをはじめとしたAI開発の領域でNVIDIA製品の注目が一段と高まった。これを機に大幅に業績を伸ばし、同社もAIソリューションやクラウドコンピューティング、エッジコンピューティングなどビジネス領域を拡大していく。

その中の目玉が自動運転領域だ。ディープラーニングの隆盛とともに自動運転開発も飛躍的に進展し、研究開発が世界的に加速し始めた。NVIDIAも2015年に自動車向けのコンピュータ「NVIDIA DRIVE」を発表し、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転領域への本格参入を果たした。

現在、NVIDIAはAI領域でデータサイエンスや機械学習、ディープラーニング、会話型AIなどのソリューションを展開するほか、データセンターやエッジコンピューティング、クラウドコンピューティング、仮想GPU向けのソリューション、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、レンダリングソリューションなどを提供している。

■CES2022におけるNVIDIA
最新の自動運転プラットフォーム「DRIVE Hyperion」

CES 2022では、オートモーティブ事業のバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのAli Kani氏が自動運転実用化に対応したプラットフォーム「DRIVE Hyperion」 の機能などについて説明した。

DRIVE Hyperionは自動運転システム用のコンピューターアーキテクチャ・センサーセットで、最新のDRIVE Hyperion8は独Continental、独Hella、米Luminar、仏Valeo、Sonyなど幅広い大手サプライヤーのセンサーでサポートされている。

DRIVE OrinベースのAIコンピューティングを12台の外向けカメラ、3台の車内カメラ、9台のレーダー、12台の超音波、1台のLiDARといったセンサースイートと統合している。開発メーカーやサービス事業者などは、それぞれの自動運転ソリューションに合わせてカスタマイズすることができる。

プラットフォームはオープンかつモジュール式で設計されており、コアコンピューティングやミドルウェアをはじめ、NCAP、レベル3自動運転、レベル4によるバレーパーキング、AIコックピット機能など、必要な機能を手軽に使用することができるという。

次世代プラットフォーム「DRIVE Atlan」との互換性も確保しており、将来的なアップグレードにも対応している。

EV企業も相次いで導入

こうした包括的なプラットフォームの普及にはサプライヤ―との連携が欠かせず、Desay、Flex、Quanta、Valeo、ZFの各社をスケーリングパートナーに迎え、機能面における最高レベルの安全性とセキュリティを備えた量産可能なデザインを製造しているという。

また、DRIVE Hyperionの導入は、自動運転開発企業のみならずEV(電気自動車)をはじめとする新エネルギー車(NEV)開発企業にも拡大している。その背景には、EV市場に続々と参入を果たすスタートアップの存在がある。これらの企業は、ソフトウェアデファインドのコンピューティングをベースにした新しい車両アーキテクチャにより従来の自動車とは異なるアプローチを採用しているためだ。

NVIDIAによると、EV関連ではボルボ・カーズグループ傘下のPolestarや、中国のIM Motors、Li Auto、NIO、Xpeng、上海汽車系列のR Auto などがDRIVE Hyperionを採用しているという。

出典:NVIDIA公式ブログ
物流分野にも注力

NVIDIAは物流関連にも力を入れている。米テクノロジー企業Pitney Bowesの調査によると、世界の小包の数は2019年に1,000億を超えたという。2020年から2024年のCAGR(複合年間成長率)は14.8%に上り、6年間で総個数は2,000億個から3,160億個に達する可能性があるとしている。

一方、輸送を担うトラックドライバーの不足も深刻で、米トラック協会によると、米国だけで2028年に16万人が不足するという。

こうした課題に対し、米国や中国などでは自動運転トラック開発企業の躍進が際立っており、TuSimple、Kodiak Robotics、Plus、Embark Trucks、Locomation、Einride、NuPort Robotics、などが成果を上げている。これらの企業がすべてNVIDIA製品を採用している。

さらに、NVIDIAの顧客網は小売りまで広がっている点も見逃せない。米小売り最大手のWalmartは、次世代AIやIoTを安全に提供できる高性能クラウドネイティブプラットフォーム「EGX Edge Supercomputing Platform」を採用している。

EGXの高度なAIエッジ機能を使用し、毎秒1.6テラバイト超のデータをリアルタイムで計算して商品の補充やレーン型チェックアウトの開放の自動化、ショッピングカート情報などを取得・解析するなど、店舗のスマート化を図っているという。

近い将来、NVIDIAの顧客網が小売りから物流、自動運転トラック開発企業まですべてを網羅する日が訪れる可能性も十分考えられそうだ。

【参考】自動運転トラック分野におけるNVIDIAの活躍については「世界で自動運転トラックの開発・実証加速!「黒子」はNVIDIA」も参照。

アシスタントソリューション「DRIVE Concierge」も

CES 2022ではこのほか、ドライバー向けのデジタルアシスタントソリューション「DRIVE Concierge」にも触れている。AIアバター・アシスタントの作製を可能にするNVIDIA Omniverse Avatarや、DRIVE IX、DRIVE AVによる4D認識、Riva音声 AI SDK、さまざまなディープニューラルネットワークを組み合わせることで、移動中の楽しさや快適さを向上させる。

NVIDIA Omniverse Avatarは、音声AIやコンピュータービジョン、自然言語理解、レコメンダーエンジン、シミュレーションといったテクノロジーを組み合わせたもので、このプラットフォームで作成されたレイトレース3Dグラフィックスによるインタラクティブなアバターは、多様な話題について意図を理解し、会話することができ、便利なエージェント機能を提供する。

■拡大を続けるNVIDIAのパートナー網

自動車関連業界におけるNVIDIAのパートナー企業は370社以上に上るという。自動車メーカーでは、トヨタやボルボ、Audi、Chery、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、テスラ、ヒュンダイなどと協力関係にある。

自動運転システム関連では、日本のティファーをはじめAurora InnovationCruise、DiDi Chuxing、Zoox、WeRide、Pony.ai、EasyMile、Navya、AutoX、Oxbotica、Optimus Ride、Momenta、2getthere、AImotive、Automotive Artificial、Baidu Apollo、robotTUNER、Torc Roboticsなどがパートナーに名を連ねている。

ティア1では、ボッシュやコンチネンタル、Magna、DESAY、ZF、Valeo、Quanta Computer、シミュレーション関連ではAnsysやAVL、dSPACE、MathWorks、ソフトウェア関連ではBlackBerry、Intempora、RTI、Vector、WITTENSTEIN、Xesol Innovation、マッピング関連では、ゼンリンやHERE Technologies、TomTom、NavInfo、DeepMap(2021年にNVIDIAが買収)、Kingwaytekなどが名を連ねる。

センサー関連では、ソニーをはじめAdasky、Ainstein、Arbe Robotics、AutonomouStuff、Baraja、Cepton、Desay、Echodyne、Entron、Ficosa、FLIR、Hesai、Ibeo Automotive、Infineon、Innoviz、LCE、Luminar、Macronix、Maxim、Metawave、OmniVision、OMRON 3D LiDar、ON Semiconductor、Ouster、Panasonic、Phantom Intelligence、Pioneer、Sekonix、Sunny Optical、Velodyne Lidar、Xsensなどが名を連ねている。

自動車業界に欠かせない大手から新興企業まで非常に幅が広い企業が出揃っている印象だが、CASEが本格化する今後、従来自動車業界とは結び付きが弱かった業種が自動運転やMaaSなどを機に新規参入することが予想されるため、NVIDIAのパートナーもまだまだ拡大していく可能性が強そうだ。

■【まとめ】AIソリューションでより多彩な産業にアプローチ

パソコン・ゲーム市場に始まったNVIDIAのビジネスは自動運転領域まで拡大しているが、今後はAIソリューションを機により多彩な産業分野にまで広がっていくことが予想される。

同社の顧客網はどこまで拡大していくのか。2022年も引き続き注目の年になりそうだ。

▼NVIDIA公式サイト
https://www.nvidia.com/en-us/

【参考】関連記事としては「NVIDIAと自動運転、マッピング技術でも台頭!DeepMapを買収」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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