自動運転、2022年度の国の到達目標・取り組み内容は?

遠隔監視のみのレベル4サービス実証へ 法案提出の動きも



米国・中国を中心にレベル4移動サービスの実用実証が加速し、ドイツのようにレベル4を可能にする法改正を行う動きが出るなど、自動運転技術の社会実装を目指す取り組みは依然活発だ。


日本も道路交通の安全や効率化、国際競争力などの観点から取り組みを加速し、自動車大国から自動運転大国へステップアップを図りたいところだ。

2022年度は、どのような取り組みが行われる予定なのか。官民ITS構想・ロードマップや自動走行ビジネス検討会の議論などをもとに、2022年度の動向に迫ってみる。

■自動運転に関するロードマップ

はじめに、官民ITS構想・ロードマップに記載された各取り組みの目標年度などをおさらいしていこう。

▼自動走行ビジネス検討会「自動走行の実現及び普及に向けた取組報告と方針」Version 5.0
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jido_soko/pdf/20210430_02.pdf


出典:首相官邸、評価は2021年6月時点(※クリックorタップすると拡大できます)
各カテゴリーにおける取り組み・実現目標

自家用車においては、ADASの高度化・市場化を推し進めていくとともに、2020年度に実現したレベル3の市場拡大や機能高度化を図っていく。レベル4は技術開発や実証を進め、2025年度を目途に高速道路における技術の市場化を目指す。

モビリティサービス分野では、移動サービスにおいて高速道路におけるバスのレベル2以上の技術開発・実証を2022年度ごろまで進め、その後市場化・サービス展開を図っていく。次世代都市交通システム(ART)は2020年度までに市場化し、その後対象エリアの拡大を図っていく。

限定地域における無人自動運転サービスは、2022年度に遠隔監視のみの無人サービスを実現し、その後対象エリアの拡大や機能の高度化を図っていく。この遠隔監視のみの無人サービスが2022年度における主要な取り組みとなるため、後段で解説する。

物流サービスでは、高速道路におけるトラックの後続車有人隊列走行システムの導入型を2021年度までに商業化、その後発展型のシステムを2024年度ごろまでに商業化し、サービス展開を目指す。後続車有人隊列走行システムについては、2022年度までに走行距離・範囲を拡大し、2023年度ごろからの商業化を目指す。


高速道路におけるレベル4の自動運転トラックは、2025年度ごろまで開発や実証を進め、乗用車の技術を応用する形でその後の実用化を目指す。

限定地域における無人自動運転による配送サービスは、移動サービスの技術を応用しながら2021年度まで開発や実証を進め、2022年度から2025年度の間にサービス実現を目指す。

制度面では今後どのような動きが?

制度面では、レベル3に対応した道路交通法などが2020年度に施行されたが、引き続き必要な見直しを行っていく。

車両協調・支援インフラの構築関連では、磁気マーカーや電磁誘導線、合流支援施設の整備、自動運転に対応した走行環境の確保を2025年度まで継続して進めていく。

このほか、日本版MaaSの事業モデルの構築や基盤整備、データ連携などを2022年度まで推進する。新しいモビリティサービス実現のための交通関連データの利活用に関しては、モビリティアーキテクチャの検討を2021年度までに進め、その後データ整備・活用拡大を図っていく方針となっている。

■2022年度の取り組み
遠隔監視のみのレベル4サービスを実現

遠隔監視による自動運転サービスは、現在福井県永平寺町で提供されている。同町のシステムは、1人の遠隔監視者が3台の自動走行車両を運行するレベル3を実現しており、車両にドライバーは搭乗せず、保安員が同乗しているだけのようだ。

走行ルートは京福電気鉄道永平寺線の廃線跡地を活用しており、一般的な車道ではないため無人走行することができる。カメラやLiDARのほか、電磁誘導線とRFIDを活用することで自動運転精度を高めている。

2022年度は、こうした自動運転システムを一段階進化させ、永平寺町同様に廃線跡などの限定エリアにおいて遠隔監視のみのレベル4自動運転サービスの実現を目指す。技術の確立はもちろん、ビジネスとしての運用に向け、遠隔監視者の役割や走行以外のタスクなどのあり方についても検討を進めていく方針だ。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)

具体的には、遠隔監視のみのサービスにおけるポテンシャルの検討や事業性分析を進め、事業モデルの整理を行っていく。

運行条件関連では、遠隔監視者の役割や習熟度、対応能力といった各要件を整理するとともに、1人で監視可能な車両台数の拡大や、他のタスクを併用する場合の遠隔監視者の要件の整理、評価基準や評価手法の検討などを行っていく。

走行以外のタスクにおいても、乗客の乗降時など車内の安全確保や決済手法、緊急時・不具合時といった万が一の際の対応の整理、乗客への周知や関係機関との連携体制の構築、他の交通参加者への影響分析なども進めていく。

車両やシステム開発面では、遠隔システムが不良を起こした際のミニマル・リスク・マヌーバーなど車両制御技術の開発や車両台数の増加を想定したインターフェースの改善、遠隔監視者による支援の整理、通信におけるマルチキャリアの活用やキャリア間の共通化、通信システムのモジュール化、通信インターフェースの統一化などについて検討を進めていく。

こうした技術開発やユースケースの拡大を進め、さまざまな車両を用いた無人のレベル4自動運転サービスを2025年度までに40カ所以上で展開する目標に繋げていく方針だ。

混在空間におけるレベル4実現に向けた取り組み

上記のレベルサービスは、2025年ごろまでに混在交通下でも実現する目標が掲げられている。つまり、一般公道におけるレベル4の実現だ。この目標に向け、インフラ協調や車車間・歩車間の連携を図る協調システムの開発も進めていく方針のようだ。

2021年度に引き続き、2022年度は協調型のユースケース検討や事業モデルの検討、協調型システムの国際動向の分析・戦略策定、協調型システムの評価環境の構築などを進めていくほか、モデル地域を定め、協調型を導入した際の効果や社会受容性などの先導調査を行う。また、協調型システムの規格化・類型化や、データ連携の仕様なども策定していく。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)
安全性検証プラットフォーム「DIVP(R)」が事業化

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期関連では、このほか仮想空間における安全性検証プラットフォーム「DIVP(R)」の開発が進められている。

実現象と一致性の高いシミュレーションモデルに基づいてさまざまな条件での評価を可能とするもので、2022年春のプラットフォーム事業化を目指し研究開発が進められている。

高性能トラック実用化に向けた取り組み

高速道路における隊列走行関連では、レベル4を前提として事業モデルの検討やODD(運行設計領域)の設定、車内乗務員の役割、運行管理システムの検討、レベル4車両の開発などがすでに進められている。

2022年度は、大型車特有のケースの評価や安全性確保に係るシステム検証などODDコンセプトの実証や評価、確立を進め、2023年度に事業モデルの実証評価を行っていくほか、道路情報などを活用した運行管理システムの実証評価や検討などを進めていく計画だ。

出典:経済産業省(※クリックorタップすると拡大できます)
自動走行ロボットは法案提出へ

ラストワンマイルを担う自動走行ロボットも大きく進展する一年になりそうだ。岸田文雄首相が会見で自動配送サービスに関する法案を次期通常国会に提出すると明言したのだ。

低速小型の自動配送ロボットが道路運送車両に該当しないこととした上で、サービス実装に必要な届け出や義務などについて規定するものと思われる。

【参考】自動走行ロボットに関する動向については「自動運転配送、ついに岸田首相が解禁へ!次期国会で法案提出」も参照。

レベル4を可能にする法案提出も?

岸田首相は、現行法において制度化されていない自動運転移動サービスにも言及している。自動運転システムの性能や遠隔監視、緊急時の対応などを確認した上で、申請に基づきサービスを認める新たな制度を創設し、関連法案提出を検討するとしている。

あくまで検討ではあるものの、場合によっては公道におけるレベル4実現に大きく前進することとなる。こちらの動向も要注目だ。

■【まとめ】レベル4移動サービスの動向に要注目

2022年度は、レベル4移動サービスをめぐる動きに注目だ。専用道路などにおけるレベル4サービス実証をはじめ、場合によっては公道におけるレベル4の道も開かれる可能性がある。

自動走行ロボットも走行が認められる方向で審議が進められており、最終的にどういった形となるのか要注目だ。

実証関連では、ティアフォーやBOLDLYら常連に加え、ホンダも自動運転実証に本格着手する。トヨタe-Paletteを使った実証を本格化させる可能性があり、各社の動向から目が離せない1年になりそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事