新型コロナウイルスの流行により非接触が奨励され、自動運転技術を活用したコンタクトレス配送への注目が依然高まっている。米国を中心に実用化が広がるほか、日本でも公道実証に向けた動きが加速するなど世界各国で宅配ロボットの社会実装への期待が高まっているようだ。
この記事ではいま注目度が高まっている宅配ロボット(デリバリーロボット)を紹介する。
【サービス紹介】自動運転ラボを運営する株式会社ストロボは、EC・宅配領域での自動運転技術の活用を支援する「自動運転宅配導入支援・PoC・実証実験コンサルティングサービス」を展開している。詳しくは「ストロボ、小売・飲食業の「無人宅配」導入を支援!自動運転技術で人手不足問題など解消」を参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 14, 2020
記事の目次
- ■DeliRo(ZMP製):慶応大などに続き高輪でも屋外無人デリバリーを実証
- ■Hakobot(Hakobot製):アドバイザーに堀江貴文氏就任で注目を集める
- ■超影(京東集団製):楽天が取り組みを加速
- ■Starship Technologies:サービスエリア拡大中
- ■R2(Nuro製):コロナ対策に尽力 薬局チェーンとも提携
- ■Amazon Scout(Amazon製):試験走行範囲を拡大
- ■Kiwibot(Kiwibot製):B2B事業にも着手
- ■ROBOTIS:2022年の商用化目指す
- ■Geoffrey(TinyMile.ai製):フード配達プラットフォーマーと提携
- ■EffiBOT(エフィデンス製):2020年より丸紅傘下の丸紅情報システムズが代理店に
- ■Post BOT(Deutsche Post AG製):ドイツでは郵便配達支援を行う
- ■YAPE(e-Novia製): 最新の顔認証システムなどで利用者を識別
- ■【まとめ】公道実証環境が整えば、導入・実証が一気に加速!?
■DeliRo(ZMP製):慶応大などに続き高輪でも屋外無人デリバリーを実証
自動運転技術やロボット開発などを手掛けるZMPは、屋外無人デリバリーを可能にする宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」の実用化に向けた活動を加速している。
デリロは、自社開発の自動運転ソフトウェア「IZAC」をはじめ、カメラやレーザーセンサーで周囲環境を360度認識しながら走行する本格的な自動運転機能を備えた宅配ロボット。ボディはロッカーのような構造で、荷物の大きさなどに合わせて1ボックス、4ボックス、8ボックスを選択することができる。
コロナ禍で宅配ロボットの注目が高まり、国も本腰を上げる中、同社はデリロや無人警備ロボット「PATORO(パトロ)」の社会実装に向け、公道走行を実現する法規制の緩和に関する提案や、物流支援ロボット「CarriRo(キャリロ)」が備える自動追従機能の公道走行を可能にする提案など、国の取り組みを加速させる活動を行っている。
2020年8月には、JR東日本スタートアップとともに高輪ゲートウェイ駅で開催中のイベントにおいて無人デリバリーサービスの実証実験を行った。デリロを活用し、注文から決済、デリバリーに至るまで完全キャッシュレスかつ無人で実施したという。
■Hakobot(Hakobot製):アドバイザーに堀江貴文氏就任で注目を集める
2018年に宮崎県で設立されたHakobot社は、運送業界における人手不足や労働環境問題の解消を目的として、自動配送ロボットの開発を行っている。開発体制強化のため、愛知県のエンジニアリングメーカー・三笠製作所と業務提携を行っており、2018年11月に実証実験用端末初号機のお披露目を名古屋で行った。
2019年11月には、長崎県壱岐市で行われたSDGsがテーマのイベント会場で実証実験を行っている。このようなイベント会場での活用をはじめ、生活のあらゆる面で使い勝手の良いロボットを開発するため、実証実験を重ねて改良しているという。
ちなみに2019年4月、海外の自動運転ロボットを使った配達が5万回に達したというニュースに対し、同社アドバイザーの堀江貴文氏がニュースアプリ「NewsPicks」で、「我々のHokobotはこれに加えて移動パトカー的な動きをしようとおもってます」とコメントしたことで話題となった。ラストワンマイル向けロボットにどのような機能が加わるのか、関心が集まる。
■超影(京東集団製):楽天が取り組みを加速
楽天と東急リゾーツ&ステイは2020年8月から9月までの間、長野県茅野市の複合リゾート施設でデリバリーロボットを活用した商品配送サービスを提供している。中国の京東集団が開発した宅配ロボット「超影」シリーズが使用されるようだ。
リゾート内のテントスペースにバーベキュー用食材などを配送する試みで、非対面での受け渡しや配送時の省人化・効率化を図る。
楽天は国の動向を見定め、2020年内にも自動走行ロボットの公道走行による配送サービスの実証を行う予定としており、取り組みを加速させる可能性が高そうだ。
■Starship Technologies:サービスエリア拡大中
2018年4月に英国のミルトン・キーンズで宅配ロボットによる商品配送を開始して以来、米ジョージメイソン大学でもサービスを開始するなど先駆的な取り組みが評価され、2019年夏ごろには英米で累計10万回の配達を完了している。小型の宅配ロボット開発企業としては知名度も抜きんでている。
コロナ禍の2020年3月には、6つの新しい都市でサービスをスタートさせたと発表しており、テキサス州フリスコやバージニア州のフェアフェニックス、カリフォルニア州アーバイン、アリゾナ州テンペなど、サービスエリアをどんどん拡大しているようだ。
【参考】スターシップテクノロジーズの取り組みについては「米スターシップの無人配送が既に「普通のサービス」化してる!自動運転技術を活用」も参照。
■R2(Nuro製):コロナ対策に尽力 薬局チェーンとも提携
米スタートアップのNuroは、新型コロナウイルス対策に特に力を入れる1社だ。米連邦政府などと協議を進め、罹患者を収容するカリフォルニア州内のスタジアムやイベントセンターなどの代替医療施設に無人宅配ロボット「R2」を提供し、医薬品や食料品などの配送を実施した。
2020年5月には、薬局チェーン大手のCVS Pharmacyと提携し、テキサス州で処方箋などの配送を行うパイロットプログラムに着手することも発表している。
コロナ禍で公共交通サービスが削減され食料品配達サービスに注目が集まっているが、既存の配達サービスにかかるコストを自動運転車・宅配ロボットの導入によってどれだけ削減できるかなど考えているようだ。
【参考】Nuroの取り組みについては「自動運転、進む医療領域での活用!米Nuroが処方薬の配送開始」も参照。
■Amazon Scout(Amazon製):試験走行範囲を拡大
EC大手のアマゾンは2019年1月に自社開発した宅配ロボット「Amazon Scout」の宅配実証実験に着手し、ワシントン州や本社を構えるカリフォルニア州などで試験を行ってきた。
試験エリアは徐々に拡大しているようで、2020年7月には新たにやジョージア州アトランタやテネシー州フランクリンでもサービスを開始することが発表された。コロナ禍において自社ECの取扱量も増加しているものと思われるが、小売業者などとの提携を交わすことなくサービスエリアを拡大できるのはEC大手ならではの強みだろう。
【参考】アマゾンの取り組みについては「米Amazonの自動運転配達ロボ「Scout」、試験の場を拡大中」も参照。
■Kiwibot(Kiwibot製):B2B事業にも着手
2017年に米バークレーで設立されたKiwibotは、コロナ禍においてバークレーやデンバーのコミュニティーにマスクや抗菌ジェル、衛生用品を提供するなど取り組みを強化している。食料品の配達はすでに10万回を超えており、200台以上の宅配ロボットが稼働しているようだ。
2002年7月には、ECプラットフォームを手掛けるShopifyとOrdermarkとパートナーシップを結び、B2B事業にも本格着手している。Shopifyなどのプラットフォームを利用している企業は、Kiwibot APIを追加することで商品を消費者に直接配送することが可能になる。
■ROBOTIS:2022年の商用化目指す
ロボット開発を手掛ける韓国のROBOTISも、コロナ禍を機に宅配ロボットの開発を加速させている。同社は2019年12月にソウル市内で宅配ロボットの屋外配送実証を行い、2020年1月には韓国版規制のサンドボックス制度を活用し、2年間の公道実証が認められた。
コロナ禍で宅配ロボットの注目が一気に高まり、2020年度も同国の「2020年度ロボット産業核心技術開発事業」や「市場創出型ロボット実証事業」などに採択され、屋内配送サービスが可能なロボットシステムの商用化技術の開発やビジネスモデル実証、アプリと連動した屋外配送実証などに取り組んでいるようだ。
8月には、通信事業大手のSKテレコムと協力し、5Gモバイルエッジ・コンピューティング(MEC)を活用した自律走行ロボットを開発すると発表した。大容量の映像とセンサー情報を効果的に転送し、自律走行性能を向上させる計画という。
■Geoffrey(TinyMile.ai製):フード配達プラットフォーマーと提携
超小型の宅配ロボット「Geoffrey」を開発するカナダのTinyMile.aiは2020年3月、フード配達サービスを手掛けるfoodoraとパートナーシップを結んだと発表した。
公式サイトに詳細は掲載されていないが、Geoffreyの重量は5キロ未満で、大人の膝より低い小型ボディが特徴的だ。公開されている動画では雪の上もすいすい走行しており、走破性は高そうだ。
TinyMileは、この提携によりフードデリバリー向けに50台のロボットを導入する予定としている。
■EffiBOT(エフィデンス製):2020年より丸紅傘下の丸紅情報システムズが代理店に
フランスのロボットメーカーであるエフィデンス社の「EffiBOT」は、追従運転や自律走行が可能な台車に似たタイプの配送ロボットだ。
2018年9月、三菱地所が横浜ランドマークタワーで行なった「警備・清掃・運搬ロボットを活用した実証実験」で日本初上陸を果たした。同年の11月には北海道・札幌市内で実施された「日本初の人追従・自走式の配送ロボットの公道実証実験」で使用され、観光客の荷物を運ぶ想定の実験が成功した。
2020年7月には、丸紅傘下である丸紅情報システムズがエフィデンス社と代理店契約を締結し、同社が国内総販売代理店となった。すでに物流倉庫や工場、商業施設などにも導入されており、今後も拡大が予想される、
■Post BOT(Deutsche Post AG製):ドイツでは郵便配達支援を行う
ドイツで郵便・物流を担う企業ドイツポストが開発した「Post BOT」は、最大150キロの荷物を運ぶことができる自律走行型の配送ロボットで、高さ150×幅70×長さ120センチの全天候下で稼働可能なボックスタイプだ。ドイツでは、郵便配達員を支援するロボットとして2017年に導入されており、センサーで配達員の足を探知し、荷物を載せて追従するという。
2018年9月には横浜ランドマークタワーで、同年10月には札幌市で行われた実証実験で使用された実績がある。
■YAPE(e-Novia製): 最新の顔認証システムなどで利用者を識別
コンパクトな2輪タイプの宅配ロボット「YAPE」は、イタリア・ミラノに本社を構えるe-Novia社製で最新の顔認証システムなどで利用者を識別できるという。
日本ではスタートアップ企業であるDrone Future Aviation社が独占取扱権を有しており、2019年1月に福島県南相馬市で日本郵便が行なった実証実験で使用されている。
■【まとめ】公道実証環境が整えば、導入・実証が一気に加速!?
宅配ロボットの実証環境が日本ではまだ整っていないが、公道実証環境が整えば、国産ZMPをはじめ海外製品などの導入・実証が一気に加速する可能性が高い。1日も早く宅配ロボットやデリバリーロボットが市民権を得られるよう、引き続き各社の取り組みに期待したい。
ちなみに自動配送ロボットに関しては、警察庁が技術レベルや監視の有無などによって、7つの区分に分類している。以下のリンクから詳しい内容が説明されているので、ぜひ参考にしてほしい。
▼警察庁「特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/robotkijun2.pdf
(初稿:2020年8月25日/最終更新:2021年8月12日)
【参考】関連記事としては「自動運転デリバリー、新型コロナが規制緩和の引き金に?」も参照。