自動運転関連の法改正・ガイドライン策定の年表

レベル3解禁、新たな法律改正も間近に?



出典:衆議院公式ウェブサイト

自家用車におけるレベル3が解禁され、限定地域においては自動運転移動サービスもスタートした。技術や実証の高度化に伴い、着々と自動運転の社会実装が進んでいる。

こうした社会実装に明確な根拠をもたらすものが法律だ。一定の規範のもと、新たな秩序を形成するには法律の定めが必要となる。現行法では、レベル3までが公道走行を認められている。







この記事では、公道実証に係るガイドラインなども含め、自動運転に関わる法律や指針がどのように策定・改正されてきたかを時系列で追っていく。

■2016年5月:自動走行システムの公道実証実験のためのガイドライン策定

警察庁は2016年5月、公道における自動運転の走行実証を安全かつ円滑なものとするため「自動走行システムの公道実証実験のためのガイドライン」を策定・発表した。

現行法においても、車両が道路運送車両の保安基準を満たし、ドライバーが運転席に乗車する実質レベル2の形式であれば公道実証は可能となっているが、各取り組みの安全性担保や支援増強に向け、実施主体が講じるべき安全確保措置やテストドライバーの要件、自動走行システムの要件、実験車両に係る各種データ等の記録・保存、交通事故の際の措置、賠償能力の確保、関係機関に対する事前連絡など留意すべき事項について取りまとめている。

▼自動走行システムの公道実証実験のためのガイドライン
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a02_traffic/archives/topics/documents/jidosokosystem_guideline.pdf

■2017年3月:農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン

農林水産省は2017年3月、農業分野への自動運転技術の導入促進と安全性向上を目的に「農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」を策定・発表した。

リスクアセスメントや保護方策、安全性確保に向けた関係者の取り組み、事故発生時の対応、トラクターなど農業機械の種別の注意事項などについて取りまとめられている。

2018年に茶の無人摘採機、2020年にロボット田植機やロボット草刈機、2021年にロボット小型汎用台車に対応した改正を行うなど、ロボット農機の開発状況に合わせ適時内容を更新している。

▼農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/gl210326.pdf

■2017年6月:遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準策定

警察庁は2017年6月、遠隔型自動運転システムによって公道で自動車を走行させる実証実験を道路使用許可の対象行為とし、安全性を確保しながら円滑に実施できるよう「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準」を策定し、関係各機関に通達した。

自動運転実証に係る道路使用許可においては、各都道府県警察で判断が分かれることも少なくなく、場所によって申請時の手続きが頻雑となったり、実証実施が困難になったりするケースもあったようだ。そこで、全国各地における実証の妨げにならないよう取り扱い基準の明確化を図った格好だ。

▼遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許可の申請に対する取扱いの基準
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kouki/290601koukih92.pdf

■2017年9月:自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準策定

警察庁は2017年9月、遠隔型自動運転システムの実証なども想定した自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準を策定した。実験の趣旨や場所・日時、安全確保措置、実験車両等の構造など許可に関わる審査基準を明確化している。

2019年9月には、従来のハンドルやブレーキと異なる特別な装置で操作する自動車を「特別装置自動車」と位置付け、これに関する取り扱いも新たに盛り込むなど適宜改訂しており、2020年9月に最新の改訂版を発表している。

▼自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準策定
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/202009jidouuntenkyokakijyun.pdf

■2018年4月:自動運転に係る制度整備大綱策定

内閣に設置されているIT総合戦略本部・官民データ活用推進戦略会議は2018年4月、自動運転の早期実現に向け道路交通関連の法制度の見直しに関し政府全体の方向性を取りまとめた「自動運転に係る制度整備大綱策定」を発表した。

自家用車におけるレベル3やトラックの隊列走行、限定地域における無人自動運転移動サービスなどを視野に、自動運転車が満たすべき安全性の要件や安全確保策など、道路運送車両法や道路法、道路交通法といった関連する各法の在り方について検討していく方針を示している。

▼自動運転に係る制度整備大綱
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20180413/auto_drive.pdf

■2018年9月:自動運転車の安全技術ガイドライン発表

国土交通省は2018年9月、導入初期段階における自動運転車両が満たすべき安全要件をまとめた「自動運転車の安全技術ガイドライン」を発表した。

ガイドラインでは、自動運転車が措置を講じべき事項として、以下の各項目が定められている。

  • 運行設計領域(ODD)の設定
  • 自動運転システムの安全性
  • 保安基準の遵守
  • ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)
  • データ記録装置の搭載
  • サイバーセキュリティ
  • 無人自動運転移動サービスに用いられる車両の安全性(追加要件)
  • 安全性評価
  • 使用過程における安全確保

今後の技術開発や国際基準の策定動向などを踏まえ、適宜見直すこととしている。

▼自動運転車の安全技術ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001253665.pdf

■2019年5月:道路運送車両法改正

道路運送車両法の改正案が2019年5月、参議院で可決され、保安基準対象装置に自動運行装置が追加されるなど自動運転車の安全性を確保する制度が整備された。

改正法では、自動車の装置に新たに「自動運行装置」が設けられた。自動運行装置は「プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な、自動車の運行時の状態及び周囲の状況を検知するためのセンサー並びに当該センサーから送信された情報を処理するための電子計算機及びプログラムを主たる構成要素とする装置」であり、「自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるもの」と定義されている。

このほか、自動運行装置などに組み込まれたプログラムの改変による改造などは国土交通大臣の許可を要する点や、分解整備の範囲を自動運行装置などの先進技術に関する整備まで拡大し、名称を特定整備に変更することなどが盛り込まれている。

なお、改正法は2020年4月に施行された。

▼道路運送車両法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000185

■2019年5月:道路交通法改正

改正道路運送車両法と同時期、改正道路交通法も国会で審議され、成立した。改正法では、主にレベル3車両が公道を走行するための規定が整備されている。

具体的には、道路運送車両法に規定された自動運行装置を使用して自動車を用いる行為も「運転」に含まれる旨規定したほか、自動運行装置を使用する運転者の義務として、作動条件外となった際直ちに適切に対処できる状態でいる場合に限り携帯電話使用等禁止規定の適用を除外することや、作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置(作動状態記録装置)による記録及び保存が義務付けられた。

なお、改正法は2020年4月に施行された。

▼道路交通法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105

【参考】関連記事としては「改正道路交通法が成立 自動運転レベル3解禁へ」も参照。

■2019年6月:限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン策定

限定地域におけるレベル4無人自動運転移動サービスの実現に向け、国土交通省は2019年6月、新たなガイドラインを策定・発表した。

旅客自動車運送事業者が自動運転サービスの安全性や利便性を確保するために対応すべき事項について取りまとめたもので、遠隔監視・操作者の監視などによる安全確保措置を前提とした限定地域における無人自動運転移動サービスや、レベル4に係る技術の確立・制度の整備後における限定地域での無人自動運転移動サービスを対象としている。

事業者が対応すべき事項としては、以下が盛り込まれている。

  • 交通ルールを遵守した運行の安全の確保
  • 旅客の安全の確保
  • 点検・整備等による車両の安全の確保
  • 運行前の点検の実施の確認
  • 非常時等の対応、連絡体制の整備
  • 事故の記録
  • 運行の記録
  • 事故やヒヤリハット事例を踏まえた対応
  • 運送実施のための体制整備
  • 旅客の利便性の確保

▼限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001295527.pdf

■2020年5月:道路法等の一部を改正する法律公布

自動運転による移動サービスへの対応などに向け、道路の効果的な利用を推進する改正道路法も2020年に成立し、11月に施行されている。

改正法では、自動運行装置を備えた自動車の自動的な運行を補助するための施設その他これに類するもので、道路上又は道路の路面下に設けられたものを「自動運行補助施設」と位置付け、道路管理者の許可のもと占用することができる旨定められた。自動運行補助施設には、磁気マーカーなどが該当する。

合わせて「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」においても、自動運行補助施設の整備に対し国と地方公共団体による無利子貸付けを可能とする規定が新たに設けられている。

▼道路法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000180
▼道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=333AC0000000034_20201125_502AC0000000031

■2020年7月:ラストマイル自動運転車両システム基本設計書策定

限定地域における無人自動運転移動サービスの開発促進・早期実用化を図るため、先進安全自動車推進検討会は2020年7月、自動運転車の安全基準への適合性確保にあたり設計時に留意すべきポイントをまとめた基本設計書を策定した。

ラストマイル自動運転において共通的に考慮しておくべき ODD(運行設計領域)として、対象道路や走行経路といった道路条件・地理条件、時間的制約や天候による制約といった環境条件、走行速度などの走行条件、機能的走行空間を挙げたほか、自動運行装置の作動状況を運転者が容易かつ確実に認知できる表示や、冗長性のある設計、作動状態記録装置に係る技術要件に適合すること、サイバーセキュリティシステムに係る技術要件やプログラム改変装置に係る技術要件に適合することなどを技術要件として示している。

▼ラストマイル自動運転車両システム基本設計書
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001354517.pdf

■2021年6月:特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準

警察庁は2021年6月、実用化に向けた取り組みが加速する自動配送ロボットの実証に係る道路使用許可基準を策定・発表した。

遠隔型で時速6キロ以下かつ120×70センチ以下の低速・小型、歩道など歩行者が通行すべき場所を走行するもの、類似環境で240時間以上の走行実績があるものを特定自動配送ロボットとし、道路使用許可を受けるための審査手続きの合理化を図っている。

▼特定自動配送ロボット等の公道実証実験に係る道路使用許可基準
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/robotkijun2.pdf

■【まとめ】レベル4対応の法改正は早ければ2022年度にも?

このほかの動きとして、自動走行ビジネス検討会が2022年度を目途に実証実験の安全対策の取り組みに係る評価(SA)に係るガイドライン作成を検討する方針を示している。

また、車載電子制御システムのソフトウェアやネットワークの標準化・共通利用を推進するJASPARは、車内外の通信量の増加に伴う車両内の通信ネットワークの高速化に向け、車載Ethernetの配線やハードウェア要件の業界ガイドラインの策定を進めているようだ。

一方、国土交通省は空飛ぶクルマの実用化に向け、2021年度中に「試験飛行のガイドライン」を策定し公表する予定としている。

着々と実証環境が整えられている印象だが、気になるのは自動運転技術の本格的な運用に向けたゴーサインとなるレベル4に対応した法律改正だ。歩道走行に特化した小型ロボットが道路交通法上どのような位置付けとなるのか、またドライバーレスの走行をどのように定義するのか。道路運送車両法上、レベル4を可能にする自動運行装置の保安基準をどのように見直すのか、といった観点だ。

レベル4に向けた論点整理はすでに水面下で進められており、早ければ2022年度までに改正に向けた動きが本格化する見込みだ。こうした法律の観点においても、今後の動向にしっかり注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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