ホンダは2020年2月21日までに、日本でのモビリティサービス事業の企画立案や運営を担う「ホンダモビリティソリューションズ株式会社」を2月18日に設立したと発表した。代表取締役社長は高見聡(たかみ・さとし)氏、資本金は1億円で、本田技研工業株式会社の100%出資会社だ。
ホンダモビリティソリューションズ社は、自動運転モビリティサービスやロボティクス・エネルギーなどを組み合わせた新しいサービスを提供するという。また、交通弱者への対応や渋滞、排ガス、交通事故などの社会問題の解決や移動の利便性向上を目指すとしている。
CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)が進展する今後の時代を見据え、自動車メーカーは車の作り手としてだけではなく、モビリティサービスの提供までを手掛けるという潮流はホンダだけではない。国内外の他の自動車製造メーカーの動きも紹介しよう。
■日本の他の自動車メーカーの動きは?
トヨタは2020年1月、MaaSアプリとして福岡市と北九州市で展開するマルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」について発表しており、2020年春頃には全国展開する方向で本格的に進めている。
また、自動運転EV(電気自動車)として開発している「e-Pallete」が、ライドシェアリング仕様やホテル仕様、リテールショップ仕様などにするための設備を搭載することを前提として開発されていることにも注目しておきたい。
日産は「NISSAN e-シェアモビ」と名付けられたカーシェアリングサービスを2019年3月から開始している。福島県の元避難指示地域に拠点を続々と開設し、この試みで福島の復興を支援している。
また、日産がDeNAと組んで実証実験に臨んでいる「Easy Ride(イージーライド)」にも注目だ。将来的には自動運転タクシーとして商用化されることが期待されている。
そのほか、いすゞとスズキ、SUBARU、ダイハツ、マツダの5社は2019年6月、オンデマンドモビリティサービスやデータ解析サービスなどを主な事業の柱とするモネ・テクノロジーズ(MONET Technologies)社との資本・業務提携を発表している。
■国外メーカーもモビリティサービスに注力
欧州自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)グループも、モビリティサービスの事業開発に力を入れている。2019年6月にカーシェアリング事業に本格参入したほか、さまざまなモバイルオンラインサービスを取りまとめるデジタルプラットフォーム「Volkswagen We」を展開するなど、MaaS構築を見据えた動きが顕著だ。
2019年2月には独BMWグループと独Daimler(ダイムラー)がモビリティサービスの領域で事業を統合し、5つの合弁会社の設立を発表している。具体的には「カーシェア」「ライドヘイリング」「パーキング」「チャージング(充電)」「マルチモダリティ」の各領域で両社が展開するサービスを連携させ、革新的なモビリティサービスのリーディングプロバイダーとなることを目指している。
モビリティサービスとしての自動運転タクシーでは、米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のクルーズの動きにも注目だ。これまでに、手動操作用のスイッチ類を備えない自動運転レベル4(高度運転自動化)相当の無人自動運転車「クルーズAV」を発表しており、2019年内の商用サービス開始は見送ったが、アメリカの国内メーカーの中では既にサービス提供を開始しているGoogle系ウェイモに続く存在となるかもしれない。
■【まとめ】車の作り手が今後はサービサーとしても活躍?
ホンダは2020年1月末に、中古車サブスクリプションである「Monthly Owner」の提供も開始している。
自動車業界を取り巻く環境が変化している時代を生き抜くため、自動車メーカー各社はさまざまな事業に取り組み、切磋琢磨している。これまで「車の作り手」だった自動車メーカーがどのように進化していくのか、今後の動向も気になるところだ。
【参考】関連記事としては「車の生産・販売・アフターケア企業のCASE対応に向けた教科書 コネクテッド化・自動運転化見据え」も参照。