コンサル企業、「自動運転分野」で大儲け?

新たな商機に続々参入



本格的な社会実装期を迎えつつある自動運転業界。開発事業者や運行管理者などにとっては、新たな商機が目の前に大きく広がっていくような心境だろうか。


一方、この成長期に熱視線を送り続ける業界もいる。コンサルタント業界だ。自動運転黎明期から業界を支え続け、ビジネスの種をまき続けているのだ。

表立つことは少ないかもしれないが、国の事業の多くにコンサルが携わり、調査研究や橋渡し役、取りまとめ役などを務めてきた。今後、サービス実装期に突入し、コンサルの役目はどう変わっていくのか。業界の動向に迫る。

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■自動運転×コンサル企業

多岐に及ぶ知見で新規分野に道しるべを示す

コンサル企業は、非常に多岐に及ぶ分野に顔を出し、専門知見やネットワークを生かしてクライアントの要望に応える業種だ。国や自治体などが抱える課題解決に向けた事業・プロジェクトなどに統括管理役や事務局として参画し、行政や各企業、市民の橋渡し役から課題抽出、解決策の提示などを一手に引き受けることも珍しくない。

自治体などの依頼者がコンサルに事業を丸投げするケースが少なからず存在するなど、本質的な問題も内在しているが、高い事業遂行能力でやり遂げるところは見事だ。


新技術により交通課題解決を図る自動運転分野も例外ではない。国策のもと各自治体が導入を模索しているが、新規分野のため圧倒的に知見が足りていない。自動運転サービス導入に向けたノウハウが確立されていないため、右も左もわからずどこから着手しどのように遂行していけばよいのかわからないのだ。

そこで活躍するのがコンサルだ。実証事業の企画・戦略立案から関係事業者の調整、年度ごとのロードマップ策定などをサポートしながら事業を事実上統括する。国などに上げる報告書の作成などもお手のものだ。

国直轄の大規模プロジェクトや新規分野では、どうしても実施主体の知見や実行力が不足するため、コンサルが活躍するのだ。

調査や予測レポートで業界を後押し

大手コンサルは、研究・調査レポートの作成なども得意とする。独自調査・分析のもと、自社のPRを兼ねて業界の動向に関するレポートを公表する例も少なくない。さすがは大手コンサルといったところで、完成度が高く非常に参考になるレポートが多い。


自動運転のような新規分野では、調査研究そのものが事業化されることもある。コンサルは100ページ超に及ぶ資料作りもお手のもので、大規模プロジェクトの報告書などの取りまとめにコンサルが関わっていることは珍しくない。

こうして蓄積した知見を基に、自動運転サービス導入・商用化に向けた支援や、グローバル規制動向を踏まえた安全論証に関する方針策定など、さまざまな要素をサービス化・ビジネス化し各企業へ提供している。

また、業界の実態や市場予測などに関するレポートを作成・公表することで、課題を浮き彫りにしつつ市場の将来性を説き、関係者らの温度を高めていく役割も担っていると言える。

専門コンサルも今後躍進

一方、コンサルも自動運転技術の深い部分や実証現場に関する真の意味での知識・経験に欠ける面は当然ある。プロ集団としてどれだけ知見を蓄えようと、第三者であることに変わりないためだ。

そこで、近年は開発系事業者が事業領域を拡大し、自動運転実証・サービス化に向けた専門コンサルサービスを提供する例も出てきている。自社や関係者で一通りのタスクをワンストップで担うことができるため、新たな商機となっているようだ。

今後、サービス実装本格期の到来とともにこうした需要が急伸するものと思われる。

■自動運転×コンサル企業の実例

KPMG:スマモビチャレンジや愛知県のコンソーシアムに参加

KPMGジャパンは、十勝バスとKPMGモビリティ研究所を発起人とする十勝・帯広新モビリティ検討協議会に参画し、自動運転実証を行っている。

2021年度の経済産業省「スマートモビリティチャレンジにおける先進実証」に採択され、全国初の試みとして移動販売機能を持たせた路線バスの運行を行った。協議会は、AIオンデマンドバスを活用した実証や冬道における自動運転バスの実証、移動データとAIを活用した実証なども行うこととしている。

また、KPMG FASは2017年設立のあいち自動運転推進コンソーシアムに参画している。企業・大学と市町村をマッチングするなどして県内各所における自動運転実証を推進し、自動運転に係るイノベーションを誘発して新たな事業創出を図っていく組織だ。愛知県内では、毎年度自動運転バスやタクシーなどの実証が盛んに行われている。

KPMGコンサルティングは、2021年度から京都府内の地域DX推進支援に関わっており、2023年度に始まったモビリティ関連プロジェクトにおいて自動運転路線バスの社会実装に向けた取り組みを進めている。

このほか、KPMGインターナショナルは自動運転車対応指数を3回にわたり発表していた。世界各国の自動運転技術やインフラ整備状況、法整備、社会受容性などを指数化・ランキング化したもので、非常に有用な資料だった。

2020年度発表版が最後となっているが、続編を期待したいところだ。

▼十勝・帯広新モビリティ検討協議会関連
https://kpmg.com/jp/ja/media/press-releases/2021/09/smart-mobility-challenge.html

デロイトトーマツ:セキュリティやMaaS関連の事業受託

デロイトトーマツリスクサービスは2018年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の依頼に基づき、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム/大規模実証実験/情報セキュリティ実証実験における STEP1実証前調査」を実施した。

自動運転におけるセキュリティ脅威の調査及び分析を行い、国際標準化も見据えて車両レベル・コンポーネントレベルでのセキュリティ評価手法・プロトコルを策定し、実証参加者の車両を用いて対ハッキング性能検証のためのブラックボックステストを行うことで、セキュリティ評価手法の確立やV2Xなど車外からの攻撃を含む脅威の整理、ノウハウ蓄積などを行った。

一方、有限責任監査法人トーマツは2024年、経済産業省が実施する「地域新MaaS創出推進事業」において内閣府沖縄総合事務局と委託契約を締結したと発表した。沖縄県久米島町で「久米島MaaS事業」を推進し、将来を見据えた調査として自動運転導入可能性調査を実施するとしている。

デロイトトーマツコンサルティング合同会社は2024年、千葉県千葉市の「デジタルツインを活用した自動運転車サービス実装支援等業務委託」を受託したことを発表した。

BIPROGYが受託した「デジタルツインを活用した自動運転実証環境構築・実証実験業務」を三菱プレシジョン、東京海上日動、IHI、先進モビリティが再委託し、デジタルツイン環境上への自動運転車両モデル導入やチューニングなどを進めている。

デロイトトーマツは実証監督者として、自動運転車の安全性検証やデジタルツインに係る知見に基づくアドバイザリー、事業進捗の監督を担うとしている。

同社は2018年、国土交通省の「自動運転等先進技術に係る制度整備に関する調査」、2020年にはNEDOの「規制の精緻化に向けたデジタル技術の開発におけるAIを活用した自動車の完成検査の精緻化・合理化に係る調査」をそれぞれ受託している。

合同会社デロイトトーマツは2026年、TRC東京流通センターを拠点とする「平和島自動運転協議会」に参画した。技術・政策・制度面での知見を蓄積し、社会実装に向けた取り組みを支援しながら物流と自動運転を掛け合わせた安全な交通社会の実現を目指すとしている。

【情報開示】デロイト、自動運転の制度調査を4999万円で受託 国土交通省が委託

PwCコンサルティング:自動運転トラック事業を受託

PwCコンサルティング合同会社は、国土交通省が実施する2026年度「自動運転トラック実装支援事業」の執行団体に選定されている。

自動運転トラック実装支援事業費補助金における間接補助事業者の公募を行っており、一次公募ではL4物流自動運転トレーラー推進協議会や豊田通商、高速自動運転トラック輸送オペレーション協議会、T2、三菱地所、鈴与、二次公募では大和ハウス工業がそれぞれ採択された。

また、国土交通省の2021年度以降の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」なども同様に引き受けている。国の事業を事務局として補佐する好例と言えるだろう。

このほか、平和島自動運転協議会にもデロイトトーマツとともに2026年に参画している。

PwC アドバイザリー合同会社は、経済産業省の2026年度「無人自動運転サービス実装推進事業(車内無人の遠隔監視型自動運転の手法の確立等)」において、採択事業者のNTT西日本の再委託先として事業に参画している。

パシフィックコンサルタンツ:SIPや道の駅自動運転事業など早くから関わり

パシフィックコンサルタンツは、内閣府主導の2015年度・2016年度のSIP(自動走行システム):自動走行システムの実現に向けた諸課題とその解決の方向性に関する調査・検討をはじめ、2017年度の自動走行システムの実証実験環境に関する調査研究、大規模実証実験/次世代都市交通(高度化PTPSの活用によるART速達性向上の検証)などに携わってきた。

SIP第2期においても、地方部における自動運転による移動サービス実用化に向けた環境整備など4案件を2018~2019年度に受注している。

また、国土交通省関連においても、2018年度中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービスに関する検討業務や自動運転等の新たな技術を用いた今後の都市交通等に関する調査検討業務など、2019年度までに10案件超を受注している。

このほか、民間事業者からも自動運転バスや自動運転タクシー、自動運転低速モビリティの公道実験支援などを請け負っているようだ。

アクセンチュア:Project PLATEAUに構想初期から関係

アクセンチュアは、経済産業省の2021年度「高度な自動走行・MaaS等の社会実装に向けた研究開発・実証事業」において、CASE等による産業構造変化を見据えた国内技術動向調査を実施している。

また、国土交通省が推進する3D都市モデル「Project PLATEAU」にも構想初期からエコシステムの設計と運営面で関わっており、その基盤から生まれた株式会社スペースデータとの協業のもと、引き続きAIデジタルツインの社会実装を推進するとしている。

アーサー・ディ・リトル・ジャパン:経産省関連の事業を受託

アーサー・ディ・リトル・ジャパンは、経済産業省の2021年度「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業(自動走行分野の国際競争力強化のための産学官の協調領域の深化・拡大等に向けた調査検討)調査報告」や2022~2023年度「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(次世代自動車の普及拡大にむけた蓄電池のデューディリジェンス、リユース等調査・分析) リュース・リサイクルの検討」などの業務を委託されている。

同社が2019年に発行したレポート「モビリティサービスの事業性分析(詳細版)」も、経済産業省などで有効に活用されているようだ。

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山下PMC:地方創生プラン絡みで自動運転実証にも参加

プロジェクトマネジメントやコンストラクション・マネジメントに特化した事業を行う山下PMCも、北海道苫小牧市で2023年度に実施された自動運転バス実証に参画している。

地方創生プランの策定に強みを持っており、そこから派生する形で自動運転バスの実証運行が企画されたようだ。

アイサンテクノロジー:専門性生かしコンサル事業開始

位置情報に関する測量技術をきっかけに自動運転分野に深くかかわるアイサンテクノロジーは、自動運転サービスの実装コンサルティングサービスや技術コンサルティングサービス、データ活用コンサルティングサービスなども展開している。

ティアフォーとの数々の協業をはじめ、三菱商事との合弁A-Driveによる自動運転ワンストップサービス提供など、事業領域を徐々に拡大している同社。今後、自動運転専門コンサルとしての躍進に期待が持たれるところだ。

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■【まとめ】サービス実装に関連する事業が進展

国の研究・調査関連事業は減少していくかもしれないが、E2E自動運転の本格実装期を迎えるまでは需要は続くものと思われ、大手を中心とした争奪戦がまだまだ繰り広げられるものと思われる。

一方、今後本格化する自動運転バスやタクシーの実装に関連し、自治体や運行事業者らとの窓口・調整面などで商機が大きく膨らんでいく可能性が考えられる。

自動運転トラック関連は、荷主を含む物流業界を取りまとめる形での実装が望まれるため、エリア展開含めまだまだ大きな商機が眠っているかもしれない。

また、レベル4以降の技術が確立されれば、単純な移動・輸送以外のさまざまな需要・サービスを自動運転と結びつける新規事業化も熱を帯びてくることが想定される。こうした場面でもコンサルが暗躍するものと思われる。

研究・調査関連は減少しそうだが、サービス実装に関連する事業は大きく伸びていく。そこにどのように関わっていくかがコンサルの妙味と言えそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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