アイサンテクノロジーの株価急騰!「自動運転銘柄」で注目度アップ

マッピング技術を核に事業領域を拡大



撮影:自動運転ラボ

自動運転関連企業の中で、2023年に入って大きく株価を伸ばしている企業がある。測量技術を武器に自動運転実証などで活躍しているアイサンテクノロジーだ。2023年の同社株価は、年初比ですでに1.6倍まで数字を伸ばしている。

自動運転分野で存在感を増す同社は、2023年に入ってからも各地の自動運転実証に引っ張りだこの様子だ。自動運転レベル4がまもなく解禁されるが、こうした動きと合わせて同社の自動運転関連事業はさらに伸びていくことが予想される。


この記事では、同社の株価急伸の背景に迫っていく。

■アイサンテクノロジーのこれまでの取り組み
年初1,500円台から3月には2400円台に
出典:Trading View

アイサンテクノロジーの株価は、2022年前半は1,800円前後で推移し、8~9月ごろに一時1,300円台まで値を下げたがその後持ち直し、1,500円台で始まった2023年に入ってからは上昇傾向が続いている。2月1日に1,900円台、3月1日には2,000円台となり、3月8日には2,400円台まで値を上げている。

年初から2カ月余りで約1.6倍となった形だ。

モビリティ領域の事業を徐々に強化

おおよそ10年前、2012年3月期決算を見ると、売上高は10億3,600万円で、事業を区分けするセグメントは「測量土木関連システム事業」と「不動産賃貸事業」となっている。モービルマッピングシステム(MMS)による三次元地図計測はすでに始まっているが、自動運転用途ではなく純粋な測量だ。


その後、自動運転実現に向けた研究開発の機運の高まりやITS(高度道路交通システム)実証などが始まり、高精度3次元地図作製に向けた国家的プロジェクトも始まったことなどを受け、モビリティ領域におけるMMSの活用が本格化し始めた。

2015年3月期にはMMS関連の売り上げが伸び、セグメント構成も「測地ソリューション事業」と「G空間ソリューション事業」に変更されている。自動運転への期待の高まりとともに同社の測量技術に注目が集まり、2015年末ごろには一時株価が9,000円台まで高騰した。

2020年3月期には、測地ソリューション事業とG空間ソリューション事業に加え、自動運転関連に関わるシステム受託販売や実証実験業務の請負などを「新規事業」としてセグメント化している。

【参考】モービルマッピングシステムについては「モービルマッピングシステム(MMS)とは?自動運転向け地図作成を下支え」も参照。


2022年3月期からは「モビリティセグメント」が登場

そして2022年3月期には、「公共セグメント」と「モビリティセグメント」、「その他」の3区分に変更された。名実ともにモビリティ関連事業が柱の1つに成長したと言えそうだ。売上高は、10年前の約4倍となる41億9,000万円に達している。

モビリティセグメントにおいては依然として国内企業や自治体などとの商談、打ち合わせが多く、ティアフォーや損害保険ジャパン、KDDIなどパートナー企業と連携しながら自動運転実用化を積極的に推進していくとしている。

中期経営計画でもモビリティ分野への研究開発を推進

2021年4月には、「Investment & Innovation」をスローガンに掲げた3カ年の中期経営計画を発表している。測位・測地演算や地図創造技術をプラットフォームに「測量システム」「高精度計測システム」「高精度三次元地図」を中核事業とし、測量・不動産登記業務の生産性向上と自動運転の社会実装の実現を推進していく。

前中期経営計画においても「自動運転が実現する社会において当社の強みの技術を活かすビジネスモデルを構築」を掲げており、引き続き自動運転関連事業の深化を図っていく構えだ。

モビリティセグメントでは、2025年に向け自動運転の実用化が進むことが想定される中、各方面における高精度三次元地図に係る市場や自動運転の実証実験の経験を生かしたスマートシティなどにおける実用化に向けた市場――を成長分野に位置づけている。

セグメント利益の増加や自動運転サービス実用化を目指し、自治体との連携による自動運転ビジネスの収益獲得や、自社製品・自社ソリューション確立による収益性の向上、地図作成の生産性向上による市場競争力の向上、三次元利活用プラットフォーマーとしての立場確立、モビリティ分野への研究開発の推進を図っていくこととしている。

■2023年の動向
千葉や岩手、茨城、愛知、三重…各地の自動運転実証に参画

2023年に入ってからも、アイサンテクノロジーが関わる自動運転実証が各地で行われている。1月には千葉市未来技術等社会実装促進事業のもと、京成バスや埼玉工業大学などとともに6社で幕張新都心地域において実証を実施した。

自動運転システムAutowareを搭載した中型自動運転バスを使用し、車両・自動運転技術の検証や道路環境・交通環境への適用検証、自動運転バスサービスの事業性の検証などを行った。

2月には、岩手県陸前高田市の委託のもと、ティアフォーなどと5社で高田松原津波復興祈念公園で東日本大震災伝承活動に貢献する自動運転サービスを開始した。

往復約7.5キロのルートを10人乗りの小型自動運転EVバスで巡る内容で、アイサンテクノロジーは自動運転の運営主体と高精度3次元地図の作製を担う。実証は約1カ月間で、2025年度の本格運行を目指す計画だ。

また、愛知県の事業のもとNTTコミュニケーションズなどと愛・地球博記念公園で大型バスによる自動運転実証も行っている。複数のカメラ映像から伝送された情報をもとに遠隔管制者がルート上の危険を検知し、遠隔管制室と車両間でコミュニケーションをとって事故を防ぐほか、AI(人工知能)映像解析技術によって園内の歩行者に対し音声による注意喚起なども行う。

同月には、茨城県つくば市でも実証を行っている。つくば医療MaaSの実現を目指し、ゴルフカートタイプの車両を用いた通院用の自動運転実証を実施した。

3月には桑名市や三重交通などとともに、オンデマンド運行管制システムを活用した自動運転サービス実証をナガシマスパーランド駐車場内で実施する。三菱電機のオンデマンド運行管制システムのもと、固定型の配車端末を設置して利用者の申込状況に応じてオンデマンド運行管制システムから自動運転車両へ自動で配車指示を出す取り組みだ。

自動運転サービス担う合弁を三菱商事と設立

アイサンテクノロジーと三菱商事は2月、自動運転ワンストップサービスの提供に向け合弁「A-Drive」を設立した。

アイサンテクノロジーの測量技術や自動運転車両の構築、実証ノウハウと、三菱商事の自動車販売ビジネスやモビリティサービスに関する知見を持ち寄り、自動運転の社会実装に必要なサービスをワンストップで提供する。

具体的には、自動運転車両を利用する上で必要となる各種機器やシステム、インフラ設備などの調達支援や、自動運転車を運行するためのコンサルティングサービスなどを提供する。

■【まとめ】マッピングにとどまらぬ事業展開に注目

高精度3次元地図の作製をはじめとした絶対的な武器である測量技術を土台に据え、各地の自動運転実証で蓄積してきたノウハウを生かし自動運転サービス全般に事業を広げつつあるようだ。

2023年4月に改正道路交通法が施行される見込みで、レベル4サービス実用化に向けた取り組みはいっそう加速することが予想される。各地における測量・マッピングにとどまらず、自動運転事業全般にどのように関わっていくのか。同社の動向に引き続き注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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