米国 ロボタクシーが救急車の邪魔をしたらテスラやWaymoに「罰金」の法律が施行

罰金は1台あたり最大1万ドル?



出典:Cerenceプレスリリース

米カリフォルニア州で、自動運転タクシーが警察や消防、救急の活動を妨げた場合に、運行する事業者側へ罰金を科す州法が成立した。額は1台あたり最大1万ドル。乗客でも車両でもなく、ロボタクシーを走らせる企業が金銭的な責任を負う。

米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)、Amazon傘下のZoox(ズークス)、米EV大手テスラ(Tesla)などが対象で、適用開始は2028年7月1日となる。


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■ロボタクシーが緊急対応を妨げたら「罰金」、テスラやウェイモが対象の新法とは

今回の新法は2つある。緊急対応を妨げた事業者への罰金と、現場に人を送る義務だ。

法案を提出したのはデイブ・コルテーゼ州上院議員。公共の安全を犠牲にした技術革新は受け入れられないと述べ、事故や立ち往生が起きたときの責任をはっきりさせる狙いを説明している。

要請から30分超で1台最大1万ドル

罰金の対象になるのは、商用で走る自動運転車が緊急の現場や警察の活動を妨げたケースだ。警察官や消防隊員らが事業者に現場要員の派遣を求め、そこから30分を過ぎても妨害が続くと、1台につき最大1万ドルが科される。3台が道を塞げば最大3万ドル。台数に比例する仕組みである。

これとは別に、現場要員をすぐに派遣しないなど義務に違反した場合は、1件につき最大5,000ドルとなる。


注意したいのは手続きだ。条文は違反を犯罪ではないと明記しており、刑事罰ではない。市や郡の法務担当が民事訴訟を起こし、裁判所が額を決める。裁判所は違反の重さや繰り返しの有無に加え、事業者の手に負えない事情も考慮できる。支払先は訴えた自治体だ。

対象はウェイモとZoox、テスラは無人運行に入れば

新法の義務がかかるのは、車内に人がいない状態で自動運転車を走らせる事業者である。対象はテスラ、ウェイモ、Zooxの3社が入る。

ただし、3社の立ち位置は異なる。ウェイモはサンフランシスコ湾岸地域やロサンゼルスで有料の自動運転タクシーを展開する最大手。Zooxはサンフランシスコで、登録者に限った無料乗車を提供している。

一方のテスラが同州で持つのは、運転席に安全監視員が乗る形の試験許可にとどまる。無人のロボタクシーを同州で走らせる段階に進めば、新法の対象に加わる。


【自動運転ラボの視点】
ロボタクシーは台数が増えるほど、止まった車両への対応力が問われる。新法は走行技術に加え、現場へ人を送る体制まで事業者の条件にした。自動運転タクシー市場の競争軸が一つ増えたと言える。

【参考】関連記事としては「アマゾンのロボタクシーZooxが有料化 初乗りはいくら?」も参照。

■現場要員の派遣を義務化

罰金と並ぶもう一つが、人による現場対応である。

条文は、事業者に代わって現場へ駆けつける担当者をlocal incident technician(現場対応要員)と定義した。事故や立ち往生の通知を受けたとき、あるいは警察や消防、緊急通報の指令センターから要請があったとき、事業者はこの現場対応要員を直ちに派遣しなければならない。要員は車両を手動で動かすか、レッカー移動する権限を持つ。

広い範囲でシステム障害が起きた場合の決まりもある。事業者は車両の位置と状態を地元自治体へすぐに知らせ、遠隔で復旧できない車両には現場対応要員を送る。

遠隔操作にも条件が付いた。離れた場所からハンドルやブレーキを直接操作する遠隔運転者は、米国内にいて、カリフォルニア州で有効な運転免許を持つ必要がある。

遠隔から直接運転できる体制を公表しているのはテスラのみ。ウェイモはフィリピンなどにも遠隔支援の担当者を置くが、こちらは車両に助言を送る役割で、運転そのものは自動運転システムが担う。

ハンドルのない車両にも備えを求める

ハンドルやペダルを持たない商用の自動運転車には、追加の要件がある。遠隔からギアをニュートラルに入れる。指示どおりに車両を動かす。電源を切る。この3つができなければならない。Zooxの専用車両や、テスラが開発する無人タクシー専用車サイバーキャブ(Cybercab)のような車両に関わる規定だ。

現場対応要員が何分以内に到着すべきかは、条文に書かれていない。カリフォルニア州車両管理局DMVが2028年7月1日までに指針を定める。事業者は対応にかかった時間を四半期ごとにDMVへ報告し、DMVが事業者別の統計を公表する。

■背景にウェイモ車両の立ち往生、停電時は1,500件超

新法の背景には、サンフランシスコで相次いだロボタクシーの立ち往生がある。

2025年12月20日、変電所の火災で市内の約13万戸が停電し、信号機が消えた。ウェイモの車両は暗い交差点で次々に止まり、立ち往生は1,500件を超えた。同社がスタッフやレッカー車を送って回収した車両は64台にのぼる。市議会の公聴会では、止まった車両が火元の変電所へ向かう緊急車両の妨げになったとの指摘も出た。

コルテーゼ議員の発表によると、当時、事業者に連絡を試みた警察や消防は最大53分も電話口で待たされたという。

2026年7月4日の独立記念日にも問題が起きた。花火大会の人出で市北部のプレシディオ地区が大渋滞となり、ウェイモの車両が道路を塞いだ。一部は待機中に電池が切れ、レッカー移動されている。

ウェイモの商用車両は全米で約4,000台、うち約1,200台がサンフランシスコ湾岸地域を走る。台数が増えれば、止まる車両も増える。ロボタクシー市場の拡大が、新しいルールを呼び込んだ形だ。

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■米当局NHTSAの要請から3カ月弱、州法で先行したカリフォルニア

連邦政府も同じ問題を注視している。米運輸省道路交通安全局NHTSAのジョナサン・モリソン局長は7月8日、自動運転の開発企業に書簡を送った。無人の車両が警察や消防の活動を妨げる明確なパターンがあると指摘し、月末までに解決策を示す要請内容だ。緊急の現場は珍しい例外ではない、とも書いている。

ただし、書簡は従わない場合の措置を示していない。要請にとどまる連邦に対し、カリフォルニア州は3カ月弱で罰金付きの州法を成立させた。

事業者側の反応は落ち着いている。ウェイモは、法案の修正によって事業者が引き続きサービスを提供できるようになったとして謝意を示した。Zooxも順守する意向だ。

背景には法案の緩和がある。当初案は、現場対応要員が10分以内に到着することや、遠隔の担当者1人が受け持つ車両を3台までとする規制を含んでいた。審議の過程でこれらは外れ、到着時間はDMVの指針に委ねられた。

■ロボタクシーに「罰金」の法律、テスラやウェイモは2028年までに何を備えるか

新法が動き出すのは2028年7月1日。それまでの約1年9カ月が、事業者にとっての準備期間となる。

求められるのは人の配置だ。現場対応要員を自社で雇うか、条件を満たす委託先と契約するか。走らせる地域ごとに、すぐ駆けつけられる体制を整える必要がある。

最大1万ドルという罰金の額そのものは、大手にとって大きな負担ではないだろう。重いのは、台数に応じて現場要員を配置し続けるコストと、対応時間が事業者別に公表されることだ。数字が並べば、事業者ごとの差が誰の目にも見える。

テスラにとっても無関係ではない。同州で無人のロボタクシーを始める時点で、この体制づくりが前提になる。ウェイモは先行する分、過去の立ち往生で失った信頼を対応の速さで取り戻せるかが問われる。

日本でも無人の自動運転タクシーが広がれば、止まった車両を誰がどれだけ早く動かすのかという同じ問いに向き合うことになる。ロボタクシーに「罰金」を科すカリフォルニアの新法は、その先行例と言える。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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