ウェイモ72日ぶりに北米で高速復帰 洪水・工事ゾーンに突っ込む事故は改善したのか

相次ぐ事故、ウェイモの改善策は



出典:Waymoプレスリリース

米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)は7月29日、米フェニックスで高速道路走行を72日ぶりに再開した。工事区域を認識する際の判断の優先順位付けを見直すソフトウェア更新を配信し、運行停止の原因になった不具合への対処を終えたとしている。

停止は5月中旬、工事区域のコーンをすり抜けたとする動画がSNS上で拡散したことをきっかけに始まった。ロサンゼルスやサンフランシスコ湾岸地域など他都市でも順次再開する方針だが、5月には洪水時の立ち往生、7月には花火の混雑時における車両群のフリーズも起きていた。


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■ウェイモ、運行停止から72日ぶりの高速復帰

ウェイモは2026年7月29日、フェニックスで高速道路走行を72日ぶりに再開した。停止は5月中旬に始まっており、再開までの日数は72日に上る。他都市についても、ロサンゼルスやサンフランシスコ湾岸地域など複数の都市で数日以内に順次再開する方針だ。

再開の前提となったのが、工事区域を認識する場面での判断の優先順位付けを見直すソフトウェア更新である。工事区域の境界を認識する処理と対向車両を回避する処理が同時に働いた際、車両が工事区域の中を通り抜けてしまう場合があったといい、行動決定の優先順位を調整する更新を2026年6月16日から29日にかけて、無線経由でソフトウェアを配信するいわゆるOTAアップデートとして展開した。

ウェイモは自動運転タクシー事業の柱となる高速道路サービスを2025年11月に始めたばかりで、今回の72日間の停止はその成長にとって大きな痛手だった。再開はロボタクシー事業の正常化に向けた一歩といえるが、後述の通り工事区域以外の課題も残っている。

【自動運転ラボの視点】
72日間という長い停止は、工事区域という限定的な場面での判断ミスがいかに事業運営全体に直結するかを示した。ロボタクシーの信頼回復には、再発防止に向けた技術的な検証を地道に積み重ねる姿勢が欠かせないだろう。

■そもそもの発端は工事区域のすり抜け

停止のきっかけは、2026年5月19日にX(旧Twitter)へ投稿された1本の動画だった。投稿者はウェイモの車両に乗車中、工事区域のコーンをすり抜けるように走行したと主張し、動画は交流サイト上で拡散した。


実際には、この投稿以前からフェニックスで2件、4月11日と19日に同様の事象が確認されており、5月18日にはサンフランシスコ湾岸地域でも同種の事象が発生していた。合わせて13件の事象が積み重なったことを受け、ウェイモは5月中旬から高速道路での運行を段階的に停止し、5月21日までにサンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックス、マイアミの4都市で完全に停止した。

米運輸省道路交通安全局NHTSAは2026年6月18日、この工事区域への進入に関する不具合を理由に約3,900台のロボタクシーのリコールを発表した。対象車両は工事区域の標識を見落とし、規制速度のまま走行を続けてしまう可能性があったという。

【参考】関連記事としては「Waymo 高速道路上のコーンを吹き飛ばして警察沙汰に」も参照。

■洪水でも立ち往生 相次ぐ別の課題

工事区域とは別に、ウェイモは洪水への対応でも課題を抱えていた。米運輸省道路交通安全局NHTSAは2026年5月12日、浸水した道路で減速はするものの完全には停止しないソフトウェアの不具合を理由に、約3,800台のリコールを発表した。発端は4月下旬にテキサス州サンアントニオで発生した事案で、無人のまま走行していた車両が洪水に流されたことだったという。


これとは別に、5月21日にはジョージア州アトランタで局地的な豪雨が発生し、ウェイモの車両が走行中に立ち往生する事案も起きた。

ある利用者は、浸水した教会の駐車場に車両が進入しようとして係員による遠隔操作で後退させられたほか、浸水した道路に通常の速度で進入して数分間停止するなど、1回の乗車で3度にわたって走行が滞ったという。通常20分ほどの道のりが2時間半に延び、ウェイモはこの事案を受けてアトランタでの運行を一時停止した。

工事区域の問題を解決したとする今回の再開が、こうした洪水時の対応まで含めた包括的な検証を経たものかどうかは明らかになっていない。

【参考】関連記事としては「Waymoの自動運転タクシー、NYから追放か」も参照。

Waymoの自動運転タクシー、NYから追放か

■花火の夜に一斉フリーズ 渋滞を招いた無人車列

7月4日の独立記念日には、サンフランシスコのプレシディオ地区で開かれた花火大会の帰路が混雑し、ウェイモの車両群が身動きを取れなくなる事案が起きた。

目撃者の1人は、約20台のウェイモが立ち往生するのを見たと証言している。別の報道では、午後8時20分ごろにリンカーン大通りで1台が停止したのをきっかけに、40分以内に10台以上の車両が後方に連なって渋滞したとも伝えられている。

立ち往生した車両の一部はバッテリーが切れ、レッカー車で移動させる必要があった。乗客を乗せたまま点火した花火の上を走行した車両や、無人のまま発火した車両があったことも報じられている。サンフランシスコ市議会はこの事案を受けて調査に乗り出した。ウェイモ側は、初期の評価としてプレシディオ地区の交通渋滞に自社車両が主要な要因として関与したとの見方を示している。

高速道路での工事区域対応を終えたとする発表の直後にも、市街地では車両群の管理という別の課題が残っていることを示す事案だといえる。

■72日の停止が残した工事ゾーンと洪水という宿題

72日間の停止からの復帰は、工事区域という1つの課題への対処を示すものではあった。しかし、洪水での立ち往生や花火時の車両フリーズのように、工事区域以外の場面でも運用上の課題が繰り返し表面化しているのが実情だ。自動運転タクシー市場の拡大を占う上で、ウェイモがこうした個別の事案にどう向き合い、データを積み重ねていくかが今後も問われ続けるだろう。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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