
大阪府南部の南河内地域で計画されてきた自動運転バスの実証実験について、使う車両を電気自動車から国産のディーゼル車へ切り替え、2026年7月に始めることが分かった。自動運転タクシー市場やロボタクシー市場でも語られる「自動運転かつ電気自動車」という未来感のある組み合わせを見送り、安定した運行を優先した判断である。
当初は、2025年大阪・関西万博で運行した国内EVメーカー「EVモーターズ・ジャパン」製の小型電気自動車バスを再利用する計画だった。ところが不具合が相次いで使用継続を断念。代わりに、トラック大手の日野自動車が手がける小型ディーゼルバスを充てることになった。
加えて、車両を供給していたEVモーターズ・ジャパンは経営行き詰まり、民事再生の手続きに入っている。未来感のある技術が、現実の壁の前で地道な選択に落ち着いた事例と言える。
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■EV断念、万博バスの不具合が招いた車種変更
大阪メトロと大阪府は、南河内地域で予定する自動運転バスの実証実験について、使用車両を電気自動車から国産ディーゼル車に変更し、2026年7月に開始する。定員12人の小型ディーゼルバス2台を使う。当初はEVモーターズ・ジャパン製の小型電気自動車バスを充てる計画だった。2025年大阪・関西万博の会場で走った車両を再利用し、地域の交通を支える狙いだったが、不具合が相次いで使用の継続を断念した。
代替として選ばれたのが、日野自動車の小型ディーゼルバスである。電気自動車から内燃機関の車への切り替えは、環境や先進性の面では後退にも映る。それでも安定して走らせられることを最優先した、現実的な判断だと言える。「自動運転かつ電気自動車」という組み合わせが、車両トラブルという足元の課題によって「自動運転かつディーゼル」へと姿を変えた。華やかな未来像の裏で、車両の信頼性という基本がいかに重いかを示している。
未来感で先行した自動運転かつ電気自動車が、足元の品質でつまずいた。派手な技術より、まず安定して走る車両を選ぶ。地味だが、社会実装の本質を突いた判断と言える。
【参考】関連記事としては「フォルクスワーゲン 約2,700億円投じた自動運転提携が破綻へ」も参照。
■実証実験は約8キロ。2ルートで走らせる
実証実験は、富田林市、太子町、河南町、千早赤阪村の1市2町1村を中心に、約8キロメートルの2ルートで行う。まず5カ月間程度は乗客を乗せず、危機回避のための操作訓練などを重ねる。安全と安定を確かめてから次の段階へ進む段取りである。
この地域が自動運転バスに向かう背景には、深刻な交通の担い手不足がある。南河内では2023年12月、運転手不足などを理由に路線バス「金剛バス」が廃止された。鉄道駅のない町や村を抱え、住民の足をどう守るかが差し迫った課題になっている。人の運転に頼りきれない地域だからこそ、自動運転バスに寄せられる期待は大きい。ロボタクシー市場が都市部の話題として語られがちな一方で、南河内のような地域こそ、自動運転による移動の確保が切実に求められている。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマの求人、「年収1000万」到達」も参照。
■2030年度の路線バス運行へ
実証実験は段階を踏んで進む。2026年内にも乗客を乗せた走行に移り、安全性を確認する。実験そのものは2028年度末まで続け、2030年度中の路線バスとしての本格運行を目指す。持続可能な公共交通を確保するための取り組みである。
もっとも、ここに至る道のりは平坦ではなかった。当初は2025年11月に実証を始める予定だったが、車両を供給するEVモーターズ・ジャパンが国土交通省の立ち入り検査を受けた対応で延期となった。その後、2026年3月の開始を目指して車両の特別点検と試走を進めたところ、一部の車両で足回り部品の取り付け部が破断していることが判明し、再び延期を余儀なくされた。度重なる車両トラブルの末に、電気自動車そのものをあきらめる決断へとつながった。
なお、今回のテスト走行の段階は、必要に応じて運転手がハンドルやブレーキを操作する自動運転レベル2にあたる。将来は運行ルート内の全区間で、限られた条件下で運転手が不要になる自動運転レベル4を目指す。「自動運転バス」と一括りにされがちだが、現段階はまだ人の関与を前提とした水準である。
【参考】関連記事としては「イーロン・マスク、日本で「英語ペラペラ運転手」募集 テスラの自動運転試験で」も参照。
■190台・損失67億円、EVバス断念が残した代償
車種変更の裏には、大阪メトロが背負った巨額の損失がある。同社は2022年度から2024年度にかけて、EVモーターズ・ジャパンから電気自動車バスを購入した。同社が中国メーカーに製造を委託した車両で、うち150台を万博会場やその周辺で使い、閉幕後の路線転用を見込んでいた。ところが車両トラブルが続き、大阪メトロは保有する190台すべての使用を断念した。
この結果、大阪メトロは2026年3月期の決算に67億円の関連損失を計上した。内訳は、事業に使う見込みのない遊休資産として帳簿価値を引き下げる減損処理が37億円、国や大阪府、大阪市から受け取った補助金の返還に備える引当金が30億円である。万博で活躍したはずの電気自動車バスが、事実上の価値を失った。
さらに、車両を供給したEVモーターズ・ジャパンは2026年4月14日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、即日受理された。負債総額は約57億円にのぼる。相次ぐ不具合で資金繰りが悪化したためで、今後はスポンサーを募って事業の立て直しを図るという。供給元の経営破綻という事態が、大阪メトロに電気自動車以外の道を選ばせた大きな要因になった。
■自動運転バスがEV断念で選んだ「地味な現実解」
大阪メトロの自動運転バスがEVを断念し、ディーゼルへと切り替えた一連の経緯は、先進技術の社会実装が抱える難しさを映し出している。自動運転という新しさに、電気自動車という環境性能を重ねる。その理想は魅力的だが、実現には車両が安定して走り続けるという当たり前の土台が欠かせない。土台が崩れれば、未来像もろとも立ち行かなくなる。
今回の選択は、華やかさより確実さを取った現実解である。地味に映るディーゼルバスでの再出発は、後退ではなく、地に足のついた前進と見ることもできる。南河内の人々の足を守り、2030年度の本格運行という目標へ着実に近づくために、まずは安定して走らせる。自動運転バスがEV断念という回り道の末に選んだこの一歩が、地域交通の未来を切り開けるかどうかが問われている。













