高市政権、国道を「自動運転車」で監視へ

直轄国道に導入か



出典:政府広報オンライン

国土交通省が所管する道路パトロールカーの自動運転化を推進していく方針であることが、国土交通省自動運転社会実現本部の議論から明らかとなった。

国が率先して自動運転車の導入・開発を後押ししていくとともに、道路維持管理のさらなる高度化・効率化を図っていく狙いだ。


高市政権下における国土交通省の新たな自動運転施策の一端に触れていこう。

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■国土交通省の取り組み概要

行政分野に自動運転車を積極導入

高市政権は、2026年1月、自動運転社会の早期実現に向けた取り組みを推進するとともに、自動運転の普及に伴う社会変容への対応について検討を行う組織として国土交通省に自動運転社会実現本部を設置した。

この会議の中で、金子恭之国土交通大臣が4つの指示を出した。一つ目は、自動運転の普及に伴う社会変容に的確に対応するため、中長期的な視点に立って必要な制度・環境整備の検討を進めることだ。

二つ目は、ドライバーの関与をほとんど必要としない「自動運転レベル2++」と呼ばれる高度な自動運転システムを搭載した自家用車について、優良車認定制度を具体化するとともに、車両の普及を強力に促すための施策について検討を進めることだ。


そして三つ目が、国土交通省が先頭に立って自動運転を普及させていくため、自らの行政分野に積極的に自動運転を取り入れていく観点だ。道路局から直轄国道のパトロールに自動運転を活用していく取り組みがこれまでに示されており、これを確実なものとするよう具体化を進めるとともに、航空・港湾などの分野においても自動運転の積極的な活用を検討するよう指示を出している。

▼第3回国土交通省自動運転社会実現本部 議事要旨
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/002005772.pdf
▼自動運転社会におけるより安全・円滑な移動の実現
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/002005398.pdf

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

四つ目は、予算をはじめとしたこの夏の各種要求に向け万全の準備を行い、各局の今後の取り組みについて、同本部で継続的にフォローアップを行うこととしている。

道路パトロールをはじめ除雪や清掃なども視野に

三つ目が、表題にある道路管理の自動運転化だ。国交省道路局によると、道路維持管理などのさらなる高度化・効率化を進めていくため、将来の無人化も見据え自動運転車の車両を導入していく方針という。


国が直接管理する直轄国道のパトロールから取り組みを開始し、導入に向けた実証を実施する。国道の総延長は約6万6,000キロで、このうち直轄国道は20%強に相当する1万5,000キロ超に及ぶ。

あわせて、自動運転の開発を後押しする観点から、道路巡回で走行した映像データなどを開発メーカーとともに共有する枠組みについても検討を進めていく。

自動運転車の活用シーンとしては、道路巡回(パトロール)や除雪・凍結防止剤散布、清掃・散水などの作業、規制作業を想定しているようだ。

道路パトロールは、 日常点検や災害時等の緊急点検、資機材輸送、現地での電源としての活用などを見込んでいる。規制作業は、標識車として活用や先頭固定車として活用、作業員の安全性向上などを見込んでいる。

AIカメラやセンサーを用いた異常検知を行うことで、ばらつきのある目視点検と比較し高精度の検知を行うことが可能になる。清掃や散水、除雪などは、各タスクの自動化も必須となるが、省人化・無人化の利点は非常に大きい。

こうした国交省関連の作業車の自動運転化を推進するとともに、自動運転車両の走行の継続、安全・円滑性向上のため、道路インフラ側の情報との連携・高度化も図っていくとしている。

既存の道路交通情報に加え、工事規制などの道路情報や車両側の走行や目的地などの情報を連携させることによる有効性の検証や、交通全体最適に資する道路情報や空間情報を連携した際の有効性の検証、AIを活用したシミュレーションによる経路選択変化や全体交通最適化の検証などを進めていく。

これまで、国内の自動運転開発は移動サービスと物流に重点が置かれていたが、今後はこうした特定作業車の自動運転化も大きく進展していくことになりそうだ。

■作業車×自動運転

道路パトロールカーの年間走行距離は数億キロ規模?

黄色をベースとした車体に黄色い回転灯を搭載した道路パトロールカーは、誰もが目にしたことがあるだろう。その国内総数は定かではないが、軽く1,000台を超えることは間違いない。

その走行距離もすごい。NEXCO東日本によると、同社が管轄するすべての道路パトロールカーの年間走行距離は、計約2,400万キロに及ぶという。そこから推定すると、全国では年間数億キロの走行が行われていることになる。NEXCOが管理する高速道路は直轄国道外となるが、高速道路全般のパトロールカーの自動運転化も早期に進められる可能性が高い。

▼いつでも安全・安心な高速道路を 「黄パト」こと道路巡回車のお仕事とは?|動かすために。 E-NEXCO|NEXCO東日本>
https://www.e-nexco.co.jp/ugokasutameni/articles/1.html

道路の保守点検や維持管理は、落下物の発見・撤去をはじめ、路面のひび割れやわだち掘れ、平坦性の調査、道路インフラとなる道路照明灯やガードレールの点検など、非常に広範に及ぶ。

国土交通省によると、国道におけるパトロールで路面の異常や障害を発見・処理した件数は、年間70万~80万件で推移しているという。相当な数だ。

この推定数億キロに及ぶ道路パトロール業務を無人化できれば、非常に大きな省人効果を得ることができる。交通事故や故障車、落下物のいち早い発見や、道路の陥没などの異変を精密に把握し、道路交通の安全性を高めることにも期待される。

さらには、数億キロの走行データを自動運転開発に有効活用することもできる。自動運転開発事業者にとっては、一定台数の注文を受けながら開発をさらに前進させる好機となり得る。道路管理に特化した新たな業態が誕生する可能性もありそうだ。

もちろん、無人ゆえ、落下物を発見した際などに即時対応することは難しくなる――といったデメリットも出てくるが、それを大きく上回るメリットが出ることは間違いなさそうだ。

出典:国土交通省公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

除雪車の自動運転化は開発が先行

道路パトロールのほか、名前が挙がった除雪作業に関しては、先行する形で開発が進んでいる。道路除雪の多くは降り積もった雪を寄せる作業となるが、国道などでは路肩の縁石や道路標識などを破損しないよう、センチメートル級の精度が求められる。

熟練ドライバー・オペレーターの数は少なく、降雪状況によって昼夜問わず出動することも少なくない。国や自治体が毎年支出する除排雪予算も膨大だ。除排雪が追いつかずに路肩に雪が貯まり、片側2車線の国道が片側1.5車線、1車線となっていることも珍しくない。

排雪作業も含めた除排雪作業を自動運転技術により無人化できれば、その社会的効用は非常に大きなものとなる。自動運転バスなど一般的な自動運転車も積雪状態の道路走行や雪山で道路スペースが埋まったような状況は自律走行しにくい。雪国における自動運転サービスには、除排雪の自動運転化も合わせて実現を図っていきたいところだ。

現在、高速道路や空港敷地内などを中心に実証が進められており、梯団走行や遠隔運転などの取り組みをはじめ、ロータリー除雪車の投雪作業自動化といった要素技術の開発も進められている。

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自動運転清掃車は中国勢が先行

清掃車に関しては、中国勢が大きく先行している。WeRideが「ROBOSWEEPER S1」を北京や広州、シンガポールなど20都市超で実用化・実証しているほか、PIX Moving、Kusa Tech、Yunchuang Zhixingなど開発の裾野も広がっているようだ。

日本では、三菱ふそうトラック・バスがレベル2機能を搭載した自動追尾型のごみ収集車のコンセプトモデル「eCanter SensorCollect」を発表しているが、無人の自動運転車を開発する動きは特にみられない。

散水車然り、規制作業然りで、こうした専用車両・専門分野に進出することで、競争が激しい自動運転バスやタクシーなどとは一線を引いたビジネス展開を生み出すこともできそうだ。

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■【まとめ】道路パトロールカー×自動運転は相性が良い?

作業車の自動運転化は、専門作業の自動化・無人化を要するためハードルが上がりがちだが、道路パトロールカーの自動運転化は検知そのものが要素技術となるため、ハードルを抑えつつ実用化しやすいものと思われる。

各自治体が管理する市道などを含めれば、道路パトロールカーの台数は相当な規模となる。将来的に警察のパトロールカーなど警備関連への応用も見据えれば、大きな商機が眠っている。国交省の新たな取り組みの動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転AIの実力、国が採点 レベル2++で「優良認定制度」」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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