「アイズオフ」とは?自動運転レベル3の段階

ドライバーは何ができる?



出典:ホンダプレスリリース

自動車の安全性能が年々高まっている。衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストといった運転支援システムはほぼ標準化され、高度な運転支援システム「ハンズオフ」搭載車種も増えてきている。

ここまではあくまで先進運転支援システム(ADAS)だが、自動運転レベル3システムによる「アイズオフ」機能を備えた車種も徐々にではあるが社会実装され始めている。


自動運転の初歩と言える「アイズオフ」運転中、ドライバーは車内でどのような行為を行うことができるのか。アイズオフ(レベル3)に焦点を当て、その概要を解説していく。

■アイズオフとは?
ドライバーは普段、手や足、目、脳を使って自動車を制御

自動車を運転する際、ドライバーは手でハンドルを握って横方向の制御を行い、足でアクセル・ブレーキペダルを踏んで縦方向の制御を行う。

運転中は、歩行者や他の車両などの交通参加者に注意を払うため、進行方向の常時監視をはじめ適時周囲の状況を目で確認する。また、道路標識や周囲の建物などにも目を配り、交通環境や現在位置を把握しながら走行する。

脳は、こうして目や耳で得た情報などをリアルタイムで解析し、手や足を介して自動車を制御する命令を下すのだ。


アイズオフは「目を離す」

こうした一連の運転操作のうち、アイズオフは「手」「足」の操作をはじめ「目」の役割までをコンピュータが担う。「eyes off=目を離す」の意味の通り、ドライバーは進行方向から目を離すことができる。

走行中、よそ見をしたり目をつぶったりしても良いのだ。後述する「ブレインオフ」ではないため眠ることは許されないが、カーナビやスマートホンを操作するなど、一定のセカンダリアクティビティが許容される。セカンダリアクティビティとは、ドライバーに許される運転以外の行為を指す。

自動運転技術がよそ見を可能にする

こうしたよそ見を可能にするためには、ドライバーに代わって自動車の運転操作を安全に行う「何か」が必要となる。この何かが「自動運転技術」だ。

自動運転は、ドライバーの「目」の役割をカメラやLiDARなどのセンサーで補い、「脳」が担っていた機能をAI(人工知能)が代替することで、コンピュータが自動車の制御を行う。


この自動運転技術を活用することで、アイズオフ運転が可能になるのだ。後述するが、アイズオフ運転が可能な自動運転技術は自動運転レベル3に相当する。

アイズオフ運転が必ずしも自動運転レベル3となるわけではないが、自動運転開発を取り巻く現在の環境下では、便宜上ほぼイコールとして考えられているため、以下レベル3について解説していく。

■自動運転レベル3とは?
自動運転レベルとは?

自動運転レベルは0から5まで設定されている。レベル0は自動化なしで、レベル1は縦または横方向のいずれかの制御を「支援」、レベル2は縦及び横方向の制御を「支援」する技術を指す。アダプテッドクルーズコントロールやレーンキープアシストなどがこれらのレベルに相当する。

レベル2まではあくまで運転支援技術であり、自動運転ではない。この支援技術をADAS(先進運転支援システム)と呼ぶ。

なお、近年搭載車種が増えている「ハンズオフ」は、レベル2に相当する。走行環境など一定の条件を満たせば、ドライバーはハンドルから手を離して運転することが可能になる。ただし、あくまで運転支援機能のため、進行方向などを常時監視していなければならない。

レベル3から上が「自動運転」

レベル3から上が正真正銘の自動運転となる。レベル3は「条件付運転自動化」と呼ばれ、自動運転が可能な一定条件下(ODD/運行設計領域)において、システムが全ての運転操作を代替してくれる。

ODDは、走行する速度や道路の種別(高速道路など)、気象条件などをもとに定められるもので、個々の自動運転システムにより異なる。

ODDを満たす条件が整えば自動運転可能となり、ドライバーはアイズオフ運転を行うことができる。しかし、自動運転システムが何らかの理由で自律走行継続ができないと判断した場合、ドライバーに対し手動運転を要請する(テイクオーバーリクエスト)。

ドライバーは、この要請が発された際は直ちに応じ、手動運転を開始しなければならない。このため、アイズオフ運転中もすぐに手動運転に戻れる態勢でなければならず、複雑なセカンダリアクティビティは許容されない場合が多い。

「すぐに運転操作を行うことができる」ことがポイントとなるため、現状のレベル3では「よそ見」レベルが可能になる――と思っておいた方が良さそうだ。

なお、ドライバーがテイクオーバーリクエストに応じない場合、自動運転システムは比較的安全に車両を停止するよう自動制御する。あくまで緊急措置としての停止のため、完全に安全が確保されるわけではないことに注意だ。

【参考】ODDについては「自動運転とODD」も参照。

レベル3のODDは?

自家用車におけるレベル3は、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)が策定した国際基準に準拠する形でODDが設定されている。

詳細は後述するが、先行するホンダの「トラフィックジャムパイロット」やメルセデス・ベンツの「DRIVE PILOT」は、初期の「高速道路の同一車線において時速60キロ以下で走行」――といった基準を順守する形でODDを設定している。

その後、国際基準は改訂され、最高速度は130キロまで引き上げられ、車線変更も可能としている。

今後発売される車種は、どういったODDを設定するのか。また、「トラフィックジャムパイロット」や「DRIVE PILOT」などもどのタイミングでバージョンアップを図っていくのか、要注目だ。

【参考】レベル3の国際基準については「自動運転、国連が上限時速130キロに緩和!車線変更も容認」も参照。

レベル4は「ブレインオフ」

さらに高度なレベル4は、アイズオフにとどまらず「ブレインオフ」が可能になる。脳を休ませることが可能になるのだ。

自動運転中、ドライバーは一切運転操作に関知する必要がなく、車内で自由にくつろぐことができる。万が一自動運転が継続困難になった際も、原則として自動運転システムが安全に車両を停止させる。

バスやタクシーなどのサービス用途であれば、走行経路全てをODDに収めることで無人運転が可能になる。レベル4は無人運転を可能にする技術なのだ。レベル4開発の多くが移動サービスや物流サービス用途に向けられているのはこの「無人運転」の恩恵が大きいためだ。

自家用車におけるレベル4開発も一部で進められている。レベル3の延長線上でODDを設定した場合、高速道路における自動運転の実現が第一の焦点となる。ただし、万が一自動運転が継続困難になった際、車両を安全に停止させるのは困難が伴う。高速道路の路肩は原則駐停車禁止であり、追突される危険性も高いためだ。

理想は、万が一の際も次のサービスエリアなどまで車両を自律走行させられる技術の確立だが、現実問題としてどのような形で実装されていくか、こちらも要注目だ。

■アイズオフ運転が可能な車種(レベル3搭載車種)
ホンダとベンツが実用化、3番手争いは……?

アイズオフ可能な自家用車第一弾は、2021年3月にリース限定で発売されたホンダ「レジェンド」だ。高速道路渋滞時において最大時速50キロ以下の範囲で自動運転を可能としている。

100台限定のため現在は販売されておらず、早くも幻の車種となった感が強いが、今後ホンダがどのようなレベル3戦略を打ち立てていくのか、その動向に注目だ。

【参考】ホンダの取り組みについては「ホンダの自動運転戦略 レベル3市販車「新型レジェンド」発売」も参照。

2社目は、メルセデス・ベンツだ。「Sクラス」とSクラスのEV版「EQS」にオプション設定する形でレベル3を実現した。こちらも高速道路における渋滞時、時速60キロまでをODDとしている。

対象エリアはドイツだが、2023年中にも北米の一部の州への導入が始まる見通しだ。また、中国でも実証を開始したとの報道も出ている。

【参考】メルセデス・ベンツの取り組みについては「自動運転、2社目の「レベル3提供」はメルセデスベンツ」も参照。

現時点ではホンダとベンツの2社だが、韓国・起亜が2023年第3四半期に発売予定のEV「EV9」にレベル3運転が可能な「Highway Driving Pilot(HDP)」が搭載される予定だ。当初は韓国内での使用に限られ、北米ではレベル2+機能として提供する予定という。

また、現代自動車も、高級車ブランド・ジェネシスの「G90」に同システムを搭載する見込みのようだ。

このほか、ボルボ・カーズがレベル3システム「ライドパイロット」を北米展開する予定で、すでに実証に着手している。BMWも北米でレベル3搭載車種を展開する方針が一部メディアで報じられている。

【参考】起亜の取り組みについては「自動運転、市販車レベル3で「世界第3号」は韓国KIAか」も参照。

■【まとめ】アイズオフ機能の進化に期待

現行のレベル3システムはアイズオフが可能とは言え、高速道路渋滞時など使用環境がまだまだ実用域に達したとは言えない状況だ。

しかし、社会実装することでユーザーを交えながら技術を磨くことができ、さらなる高度化への道が開かれるのだ。近い将来、最高速度が実用域に達すれば利便性は飛躍的に増す。また、その上で完成度が高まればレベル4への道も開けてくる。

自動運転の初歩であるアイズオフ機能が今後どのように進化していくのか、各社の動向に引き続き注目したい。

【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでいる?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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