米EV(電気自動車)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は過去に「2020年中に自動運転タクシー100万台を稼働させる」と発言している。このタイムリミットが近づいているが、2020年11月26日現在、この種のサービスを開始したという発表はない。
テスラに関しては四半期ベースで黒字が続いており、通期決算で黒字となる可能性も出てきている。こうしたことを好感して株価も右肩上がりの状況が続いているが、「自動運転タクシー100万台」という計画が実現しなければ、今は絶好調な同社の株価にも失望の売りが一定程度出るのかもしれない。
一方で、テスラが有料オプションとして顧客提供している完全自動運転向けソフトウェア「FSD」についてはβ版がリリースされるなど、技術を進展させていることは確かだ。
■テスラを尻目に商用・実証で走行させる企業が増加
テスラを尻目に、自動運転タクシーを商用・実証で走行させる企業は増えている。
Google系Waymo(ウェイモ)は2018年12月に世界で初めて自動運転タクシーの商用サービスの提供をスタートした。同じアメリカではMotionalとLyftなどがラスベガスで実証実験に積極的に取り組んでいるほか、ベンチャーやスタートアップによる実証も数多く行われている。
中国でも同様の動きだ。例えば中国スタートアップのAutoXは中国国内の3都市でロボタクシーの実証実験を展開している。Didi Chuxing(滴滴出行)やPony.aiも自動運転タクシーの試験サービスをすでに開始している。
日本でも中国や米国に比べると散発的ではあるが、自動運転タクシーの営業走行に向けた取り組みが目立ち始めた。ティアフォーやMobility Technologiesによる西新宿での取り組みのほか、これまでに日産やDeNA、ZMPなどが実証実験を実施している。
■イーロン・マスク氏の独自のアプローチに注目
テスラは顧客に販売もしくはリースした車両を活用し、空き時間に自動運転タクシーとして運用させるという独自のアプローチを明らかにしている。
具体的には、FSDに自動運転タクシーとして活用するための機能を搭載し、FSD搭載車を増やすことで100万台ネットワークを作り上げる予定らしい。
2020年内の100万台ネットワークは難しいが、イーロン・マスク氏のこの独自の構想は非常に興味深いもので、今後も自動運転の関連トピックスとして注目し続けたいところだ。
【参考】関連記事としては「テスラ、年50万台販売突破!?黒字化で自動運転ソフト「FSD」の進化も加速へ」も参照。