自動車部品世界シェア第1位を誇る自動車部品メーカーの株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市/取締役社長:有馬浩二)。部品メーカーと聞くと、未だに工場でひたすら製品を製造している会社と思っている人も少なくないようだが、そのイメージはデンソーには当てはまらない。
次世代モビリティ社会の到来に向け、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとした自動運転やコネクテッド技術、電動化など、広範な分野で最先端の研究開発を行っているエンジニア集団が企業を支えているのだ。
近年は特に開発企業の色を強めており、研究開発拠点の開設や新会社の設立、自動運転分野への社内公募、提携や協業といった動きを加速化している。その動きは同社の求人にも如実に表れており、最先端分野のエンジニア募集案件は非常に多岐に及ぶ。
そこで今回は、デンソーの求人に焦点を当て、今後の自動車業界に求められる人材がどのようなものか、どういった研究開発を行うのかを紹介しよう。
記事の目次
■デンソーの自動運転戦略
2020年に向けて重点的に取り組む分野と課題を示した「長期方針」において、電動化、ADAS(先進運転支援システム)・自動運転、コネクテッド、FA(ファクトリー・オートメーション)事業を注力分野として定め、長年培ってきた研究開発やモノづくり、ヒトづくりという強みを生かして「第2の創業」を実現していくこととしている。
ADAS・自動運転では、すべての人が安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、自動運転技術のリーディングカンパニーとして開発を推進する。また、先端技術の開発やリソーセスの拡充を目的として、大手企業やベンチャー企業など、パートナーとの連携を強化していく。
自動運転分野においては、競争力向上に向け同分野へ100人規模の社内公募を実施する方針を打ち出すなど、開発体制の強化に本腰を入れているようだ。
【参考】関連記事としては「デンソー、 自動運転技術の開発人材100人を社内公募 過去最大規模」も参照。
デンソーが本気だ! 自動運転の開発人材100人を社内公募…自動車イノベーション期の生き残り欠け|自動運転ラボ https://t.co/cOgYv9ipAn @jidountenlab #デンソー #社内公募 #自動運転
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 29, 2018
■デンソーの採用ページの紹介
キャリア採用ページには、電動化エンジニア特集や各事業部トップからのメッセージをはじめ、キャリ入社したエンジニアらが入社前にデンソーに抱いていたイメージや入社後に実際に感じること、選考フローの中で感じたこと、現在取り組んでいることなど、参考になるさまざまな生の声を知ることができる。
また、人材育成方法として、階層別教育の導入やグローバル教育、自己啓発プログラム、育成ローテーション制度や社内公募制度、FAローテーション制度など、社内でどのようにスキルアップを図っていくかも紹介されている。
現在、キャリア採用は14ジャンル145職種に及ぶ募集が行われており、キーワード検索や製品別・技術別など絞り込んで検索することも可能なほか、キャリア採用ページと職種は重複するが「ADAS推進部 採用特設サイト」も設けられている。
■デンソーで募集しているキャリア採用職種
事務系その他(事務系職種):6種
自社メディアの根幹を支えるシステムをインフラ構築から API の設計・開発まで、幅広い領域でチャレンジできる「アプリケーションエンジニア」や「WEBエンジニア」などのほか、「女性オープンコース」などもある。
生産技術(技術系職種):12種
自動車用半導体新規ライン工程設計、固有技術の設計を行う「車載用センサ・半導体製造の生産技術」をはじめ、今後の自動運転社会に向けて画像センサーやミリ波レーダーなどのセンサー類の組付ライン・検査ラインの工程設計を行う「画像センサやミリ波レーダー等の先進安全製品の生産技術」、「自動車用制御コンピュータの生産ライン開発」などもある。
基礎研究/要素技術開発(技術系職種):20種
自動運転などの自動車のインテリジェンス化や電動化のキーとなる電子機器の小型・高信頼性化に対応するため、電子機器構造に関する次世代技術の開発を行う「次世代自動車における車載電子機器構造関する要素技術開発」や、管制型自動運転、リアルタイム遠隔監視、OTA、コンテンツ配信などの多様なサービスからの要求に応える通信プラットフォーム技術の研究開発を行う「コネクテッドカー向け通信プラットフォーム技術の研究開発」、自動運転アルゴリズムの研究開発やコネクテッドカーから集まってくるビックデータを活用して新しい価値を創造する技術開発を行う「自動運転の実現に向けたAIを活用したアルゴリズムの研究開発」など、自動運転に関する基礎的研究開発も豊富な分野だ。
回路設計(技術系職種):16種
「車載ネットワーク技術開発」や「車載カメラの開発・設計」などのほか、今後拡大が予想される自動運転車対応用電動パワーステアリング(EPS)ECUの開発・設計を行う「ADAS対応完全冗長対応の次期型EPS開発」などもある。
制御ソフト設計(技術系職種):11種
カメラ、LiDAR、V2X、AI、クラウド、RADARなどさまざまな技術、センサー、システムを活用して、高度運転支援システムを実現する「高度運転支援システムの開発設計」や「自動運転用制御システムの開発」、「センサー入力、ビックデータなどの入力情報から快適なキャビン空間を実現するAIを活用した空調制御アルゴリズムの設計・開発」など、多様な面から自動車を制御するシステム開発がメインとなっている。
ソフトウェア開発(技術系職種):19種
自動運転システム開発を支えるソフトウェアプラットフォームや開発環境の構築を行う「自動運転用基盤技術の開発」をはじめ、自動運転機能やコックピット機能、通信機能などさまざまな機能を統合するモビリティ・コンピュータ向けのプラットフォームソフトウェアを開発する「モビリティ・コンピュータ向けソフトウェアプラットフォーム開発」、「センタ連携型自動運転システムの運行管理システムの研究開発」、「高度運転支援システムの開発設計」、「自動運転向けコネクテッドシステムの研究開発」など、自動運転を見据えたプラットフォームづくりや各種ソフトウェアの開発を行う職種が満載だ。
機械・機構設計(技術系職種):10種
「自動車走行用モーターの研究開発」や「低電圧用電池パックの開発設計」など、電気・モーターを中心とした開発が多い職種となっている。
材料開発(技術系職種):1種
自動運転(ADAS)を支える高集積半導体パッケージおよび電子実装材料・技術の開発を担う「自動車用高集積半導体パッケージの実装材料・技術の開発」を行う。
半導体開発(技術系職種):3種
自動運転車対応用電動パワーステアリング(EPS)で使用する半導体部品の開発を担う「ADAS対応完全冗長対応EPSで使用する、半導体部品開発」や「車載用マイクロコントローラ・マイクロプロセッサの企画・開発」、「次世代パワーモジュールの開発」がある。
センサー開発(技術系職種):9種
LiDAR開発に関わる要素技術、センサ技術構築を行う「LiDARの開発設計」をはじめ、「車載センサのハードウェア開発」や「車載用センサの組み込みソフト開発」など、自動運転の実現に必要とされるセンシング技術に関連した開発を行う。
品質保証(技術系職種):4種
「デジタコ・ドラレコの品質保証」や「電子部品の品質保証」などを行う。
サービスエンジニア(技術系職種):3種
データ活用を中心とした新たなカーサービスが展開されていくコネクテッドカー時代を見据え、新たなアフターサービスを企画・構築する「自動車のサービスビジネスモデル企画」などがある。
技術系その他(技術系職種):27種
自動運転領域の戦略・企画の立案と推進を行う「自動運転戦略・技術企画」やMaaS (Mobility as a Service)事業領域において基盤開発を行う「MaaSに関する基盤技術開発、および実証評価(フィールド実験)」、コネクテッド時代に向けクルマや周辺のモノ、仕組みと連携して新たなビジネスを企画、仮説検証(PoC)を経た事業開発を行う「モビリティシステム・サービスの事業開発」など、技術者サイドからさまざまな企画を行う職種が多数ある。
商品企画/マーケティング(技術系職種):4種
「将来モビリティを想定した車両向け商品企画」や「電動モビリティシステムの企画、戦略立案」などの規格やマーケティングを担う。
■デンソーに就職した場合の年収や福利厚生
キャリア採用における待遇・福利厚生は、月給が20万6000円以上で、経験や年齢を考慮して決定される。例として、大卒入社18年目で扶養家族が2人の場合1150万円、同13年目で扶養家族が3人の場合700万円、同10年目で扶養家族が1人の場合600万円となっている(残業代は含まず)。
賞与は年2回で昇給は年1回、試用期間は3カ月で、試用期間中の勤務・賃金制度に変更はない。勤務時間は標準8時間で、フレックスタイム制をとっている。
休日休暇は、週休2日制(土日)のほかゴールデンウィークや夏季、年末年始に各10日程度あり、年間休日は2017年度実績で121日となっている。年次有給休暇、特別休暇もある。福利厚生として、住宅資金貸付や持ち株制度、独身寮や住宅、各種文化・体育施設なども完備している。
説明会や通常の選考に加えて、Skypeによる面談・面接も可能で、定期的にセミナーも開催している。
■自動運転関連で就職した場合の勤務先
自動運転関連の勤務先は、本社がある愛知県刈谷市と、高度運転支援や自動運転、コネクテッド分野の研究開発を行う拠点として2018年4月に開設した「Global R&D Tokyo」がある東京都港区が大半で、一部職種は製作所がある愛知県安城市、神奈川県横浜市などの場合もあるようだ。異動の可能性もあるため、職種ごとに確認した方が良い。
■イノベーションの最前線で働くというやりがい
自動車業界において自動運転やコネクテッド化は21世紀最大のイノベーションだ。そしてこれらの技術は社会に大きなインパクトももたらす。その最前線の現場で働けるということは、エンジニアにとっても大きなやりがいだろう。
時代の変化、技術の進化とともに募集するエンジニア職種なども変わっていく。デンソーへの転職を目指す人は是非定期的にデンソーの採用ページをチェックしてほしい。
【参考】関連記事としては「デンソーの自動運転・LiDAR戦略まとめ 開発・提携状況を解説」も参照。
自動運転時代のデンソー…「第二の創業」戦略と提携状況まとめ LiDAR開発から四半世紀、トヨタ自動車や世界のメーカーの革新下支え|自動運転ラボ https://t.co/96JVxnb8ME @jidountenlab #デンソー #まとめ #自動運転
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) October 3, 2018