【資料解説】空飛ぶクルマ、国内の有力7社の取り組みまとめ

官民協議会でのプレゼン概要から



地上では自動運転技術の進化が進んでいるが、空では「空飛ぶクルマ」とも称される「エアモビリティ」の開発が進んでいる。


経済産業省と国土交通省が合同で実施している「空の移動革命に向けた官民協議会」では、エアモビリティの開発に取り組む各社の取り組みがこれまでにプレゼンされており、そのプレゼンの概要などがまとめられた資料がこのほど公表された。

この記事ではこの資料を基に、エアモビリティの開発を手掛ける国内7社の取り組みを解説していく。

▼空飛ぶクルマの社会実装に向けた論点整理(「第5回官民協議会におけるプレゼンテーション概要」がP2〜3で紹介されています)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/pdf/006_01_00.pdf

■川崎重工業:関連ビジネスの展開も検討

川崎重工業では機体製造のほか、関連ビジネスとして、スカイポート(離発着所)への移動手段の提供や上空画像の利用、都市開発などを展開することを検討しているようだ。並行して、ヘリコプターの高速化や自律化技術、電動化などの実証を検討中だという。


現在は、管制システムの整備や都市内の離着陸場の整備、機体の騒音低減などを、実用化に向けての課題として認識しているようだ。

川崎重工業は2020年5月、「空飛ぶトラック」と呼ばれる大型ハイブリッドドローン試験機の浮上実験に成功したことを発表し、話題になった。

■SkyDrive:大阪での2023年のサービス開始を目指す

SkyDriveは有志団体「CARTIVATOR」から派生する形で2018年に設立したベンチャー企業だ。地面から垂直に離着陸可能な「eVTOL」(電動垂直離着陸機)の開発を推進している。

2018年12月には日本初となる無人形態での屋外飛行を成功させ、2019年12月には有人飛行試験を開始している。大阪での2023年のサービス開始を目指し、関連事業者との提携などに取り組んでいる。


今後は、eVTOLの運用を想定したバーティポート(離発着ターミナル)や通信規格の整備などを進めていく方針のようだ。

2020年6月には協賛スポンサーが100社になったことを発表している。さまざまな業種の企業から支援を受けていることから、注目度の高さが見て取れる。

■テトラ・アビエーション:東大発のベンチャー企業

テトラ・アビエーションは、eVTOLを開発する東大発のベンチャー企業だ。

同社が開発するeVTOLは、2020年2月にアメリカで開催された個人用航空機開発コンペ「GoFly」で、最も革新的な機体を開発したチームに贈られる「プラット・アンド・ホイットニー・ディスラプター賞」を受賞した。

このコンペを通じ、実証用のプロトタイプ機のアメリカでの試験飛行許可を取得している。将来は量産機を開発することを視野に入れている。

■プロドローン:「空飛ぶ救急車」がコンセプト

産業用ドローンの製造・販売を手掛けるプロドローンは、「空飛ぶ救急車」をコンセプトに、救急救命士や傷病者を搬送するeVTOLを開発している。離着陸時は遠隔サポートが行われるが、飛行中はパイロットの搭乗を必要としない機体を開発しているようだ。

機体の提供先としては、自治体や病院、空港、テーマパーク、工場などを想定しているという。提供先によって異なる運航管理体制が必要となるが、今後は耐環境性などの機体要件やルールを設定することなどで、こうした課題の解決を目指していく方針のようだ。

■ANAホールディングス:2025年に「大阪万博」で移動サービス

ANAホールディングスは2025年に開催予定の「大阪万博」で、eVTOLによる旅客輸送サービスの提供を目指している。具体的には、交通拠点から万博会場への定期便型サービスや緊急輸送などを担う計画を検討しているようだ。

【参考】関連記事としては「ANA、大阪万博で「エアタクシー」提供へ 自律飛行を想定」も参照。

■AirX:移動網の拡大を計画

AirXは、ヘリコプターチャーターや遊覧サービスなどを提供するベンチャー企業だ。2019年1月に近鉄グループの旅行大手KNT-CTホールディングスと、エアモビリティ市場の構築を目指して業務提携することで合意したと発表している。

自社展開しているヘリの空便・空席マッチングサービスや手配サービスのデータベースを活用し、スカイポート増設や電動航空機の利用などを含む、移動網の拡大を計画している。サービス領域としては、空港や観光地への移動から物資輸送まで、幅広く想定しているようだ。

■日本航空(JAL):2段階の事業拡大フェーズ

JALは空飛ぶクルマの事業化に向け、「ドローン物流(モノ)から空飛ぶクルマ(ヒト)へ、地方都市から大都市圏へ」というシナリオを描き、取り組みを進めている。

事業拡大フェーズを2つに分け、導入期は「地方都市交通インフラ」向けに、拡大成長期は「大都市空港離発着の2次交通インフラ」向けに展開し、段階的に航続距離をのばしていく計画のようだ。

■【まとめ】サービスのアイデアも今後続々!?

空飛ぶクルマの開発が国内でも加速しており、国も実用化に向けたインフラ整備や安全基準の議論を進めている。

空飛ぶクルマは移動手段としてだけではなく、観光などでも活用でき、空飛ぶクルマの実用化を前にさまざなサービスのアイデアも今後登場していくことになりそうだ。

▼空飛ぶクルマの社会実装に向けた論点整理(「第5回官民協議会におけるプレゼンテーション概要」がP2〜3で紹介されています)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/pdf/006_01_00.pdf

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記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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