2025年開催予定の日本国際博覧会「大阪・関西万博」は、自動運転をはじめとしたモビリティイノベーションのお披露目の場となりそうだ。
大阪・関西万博の準備や開催運営を行う公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以下、万博協会)は2021年5月、万博開催の機運醸成とイノベーション創出に向け公募した「夢洲における実証実験」の採択結果を公表した。
この中には、自動運転技術を活用した陸・海・空の新たなモビリティサービスの実用化を目指す案がそれぞれ含まれており、2021年度中にも実証に着手する。この記事では、採択案の中からモビリティ関連の3件をピックアップし、紹介していく。
▼夢洲における実証実験の公募 実験実施候補者一覧と各案件の概要について|大阪商工会議所
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記事の目次
■夢洲における実証実験の概要
夢洲における実証実験は、万博協会と大阪商工会議所が万博開催に向けた機運醸成の一環として公募したもの。39件の提案が寄せられ、最終選考に残った10件のうち9件が採択された。
モビリティ関連では、大阪市高速電気軌道などによる「自動運転を活用した未来社会の実装検討」と、社竹中工務店などの「都市型自動運転船『海床ロボット』による都市の水辺のイノベーション実証実験」、LIFT AIRCRAFTなどの「空飛ぶクルマによる飛行体験 “Experience the Sky”」が採択された。
以下、各実証の内容を紹介していく。
■自動運転を活用した未来社会の実装検討
大阪市高速電気軌道を代表に、あいおいニッセイ同和損害保険、NTTドコモ、大林組、関西電力、ダイヘン、ティアフォー、凸版印刷、日本信号、パナソニック、パナソニック システムソリューションズ ジャパン、BOLDLYが実証メンバーに名を連ねている。
万博開催時における会場内外の輸送に資する自動運転車両の提供を目標に、模擬テストコースを構築して自動運転車両の実用化に向けた技術と安全を含めたサービスの検証を行う。
具体的には、レベル4を見据えた自動運転車両の走行実証や遠隔監視システムの構築、5Gネットワーク、信号などのインフラ協調、エネルギーマネジメントの技術検証を実施し、複数台の車両を走らせ群管理の課題抽出を行う。
車両を運行管理する手法・システムを企画し、マネジメントする高度な専門人材の育成を進めるほか、車両乗降における顔認証決済、パーソナルモビリティのシェアリングシステムや車両エネルギーマネジメント、車内の映像コンテンツ、道路の非接触充電・発電・自然循環配慮型舗装といった将来の自動運転化によるさまざまな技術・サービスについても活用可能性を検証していくこととしている。
■都市型自動運転船「海床ロボット」による都市の水辺のイノベーション実証実験
竹中工務店を代表に、東京海洋大学海洋工学部清水研究室、IHI、炎重工、水辺総研、新木場海床プロジェクト、ウォーター・スマート・レジリエンス研究協会が実証に参加する。
都市型自動運転船「海床ロボット」が都市内水域を運航し、水辺の交通・物流・防災・防犯などの都市問題解決や水辺の変革につなげていく。
具体的には、水面に浮き自動で動くことが可能な3メートル四方の床「海床ロボット」を開発し、「渡し船モデル」「レストランモデル」といった応用展開や、「運搬ドローン連動機能」「自動離着岸機能」「複数連結機能」などの段階開発について実証実験を通じて技術開発を進めていく。
水に浮く床型の自動運転ロボットという斬新な発想で、炎重工が開発した自動運転船舶ロボット「Marine Drone」がベースとなるようだ。さまざまな用途に利用可能で、レストランモデルでは、海床ロボット上の座席にドローンで料理を運ぶ取り組みを想定しているほか、自動着岸するための専用桟橋の開発や、連結して非常用橋を成す実証なども視野に入れているようだ。
■空飛ぶクルマによる飛行体験 “Experience the Sky”
米スタートアップのLIFT AIRCRAFTを代表に、丸紅エアロスペースが協力する。LIFT AIRCRAFT社製の1人乗り電動垂直離着陸機(eVTOL)「HEXA」を使った実証を進める。
2021年後半から一般希望者を対象に、操縦免許を持たない人が地上での簡易なオリエンテーションを受けた後に地上からの遠隔操作のもと10分程度の飛行を行う体験飛行を全米各地で計画しており、同様の運用が日本の環境や法規制下で成立するかを検証する。
実証実験は、幾つかの飛行パターンから体験飛行での最適な高度やスピード、騒音・振動など環境への影響や操縦者の乗り心地などの確認を行うとともに、冗長性に優れた安全設計の確認を行うことを主目的とする。また、簡易なオリエンテーションについても確認を行い、日本の法規制下での実用性について検証を進めていく計画だ。
■大阪・関西万博に向けたこのほかの動き
大阪・関西万博に向けては、大阪市高速電気軌道がすでにレベル4自動運転バスの導入を目指し取り組みを進めているほか、同社と近畿日本鉄道、京阪ホールディングス、南海電気鉄道、西日本旅客鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の7社が関西MaaS検討会を組織し、MaaS導入に向け検討を進めている。
【参考】大阪市高速電気軌道の取り組みについては「大阪メトロ、地下鉄やバスで自動運転技術の実証実験 万博控え」も参照。
都市型自走式ロープウェイの開発を進めるZip Infrastructureは2025年の営業開始を目指しており、報道によれば万博での採用を目標の1つにしているようだ。
【参考】Zip Infrastructureの取り組みについては「自動運転の都市型ロープウェイ「Zippar」を開発!大阪万博での導入目指す」も参照。
近畿経済産業局も、万博で水素エネルギーを動力とした空飛ぶクルマのデモフライトを目指すプロジェクトを立ち上げている。
【参考】近畿経済産業局の取り組みについては「近畿経済産業局、2025年の大阪万博に向け「空飛ぶクルマ」プロジェクト」も参照。
■【まとめ】モビリティイノベーションの場として注目
夢洲ではIR(統合型リゾート施設)誘致の動きもあり、万博と合わせて道路インフラを自動運転対応に整備していくとする案(提言)なども出ている。インフラ整備を伴う一大開発は、新たなモビリティの実証・実装の場としても有用だ。
今後もさまざまな自動運転関連の計画が具体化されていく可能性が高く、モビリティイノベーションの場として要注目だ。
【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマ「ぜひ大阪で実現」と吉村知事 ラウンドテーブル設立を発表」も参照。