MONET軍団、瞬く間に456社!自動運転やMaaS領域、異業種続々 トヨタとソフトバンクの仲間作り

コクヨや伊藤園、コナミ、TOTO、ファストリも



MONET Technologies設立の発表会で握手するソフトバンクの孫正義会長(左)とトヨタ自動車の豊田章男社長(右)=トヨタ自動車プレスリリース

ソフトバンクとトヨタ自動車が設立したMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)が展開する、モビリティ領域の革新を目指す企業間連携組織「MONETコンソーシアム」への異業種からの参加が相次いでいる。2019年3月末の設立時は88社だったが、年末の12月26日時点では加盟企業が456社まで増えている。

MaaS(Mobility as a Service)をはじめとした次世代モビリティや移動における新たな価値創造は、自動車関連企業やIT系企業の枠にとらわれず、さまざまな業種に波及しているようだ。


今回は、モネコンソーシアムに参加する企業のうち、異業種を中心に紹介し、どのような連携を模索しているのかを見ていこう。

■コクヨ:新たな働き方の形を模索

文房具やオフィス家具などを扱う同社のファニチャー事業本部ワークスタイル研究所がモネに参加している。

ワークスタイル研究所は、オフィスに限定しないさまざまな領域から幅広く研究のヒントを収集し、将来必要とされる「未発見のはたらき方」をいち早く試して具現化することで新しく楽しい「はたらく」を提案している。


昨今、Wi-Fiや電源完備のカフェやシェアオフィス・コワーキングスペースなど「ワークプレイス分散トレンド」が拡大しており、このトレンドの延長線上でMONETプラットフォームが働く場ともなり得ることを見据え、企業やワーカー個人にとっての未来のワークプレイス全体像はどのように再定義されるのか、他の多様なサービスとの連携も視野に入れながら参加企業と共に検討を進めていくとしている。

■フィリップス:ヘルスケア領域でMaaS参入へ

ヘルスケア製品や医療関連機器を中心に電気機器を開発するオランダ企業フィリップスの日本法人フィリップス・ジャパンは、ヘルスケア領域でのMaaS参入とモネへの参加を発表している。

従来のヘルスケア領域でのソリューションをモビリティと掛け合わせることで、健康な生活、予防、診断、治療、ホームケアという「一連のヘルスケアプロセス」におけるイノベーション実現を加速するとし、MONETが有するモビリティ分野における専門性や、車両データ、走行データ、車両・配車API、サービスAPIなどを備えたプラットフォームを活用していくことで、新たなヘルスケアサービスを信頼あるソリューションとして早期創出する構えだ。

■アステラス製薬:新たなヘルスケアソリューションの創出へ

フィリップス同様、健康の維持増進を理念に掲げる医療系や製薬系企業のモネ参加が相次いでおり、アステラス製薬もその中の一社だ。

同社は2018年にバンダイナムコエンターテインメントと運動支援アプリの共同開発契約を締結するなど、新たなヘルスケアソリューションの創出を進めている。

公式リリースは発表されていないが、モネへの参加を通して、異分野の技術・知見を融合したソリューション開発などを進めるものと思われる。

同様に、ウエルシア薬局株式会社や株式会社Welby、株式会社トモズ、サツドラホールディングス株式会社などヘルスケア系業種からの参加も散見されており、ヘルスケアと次世代モビリティの結びつきは今後強まっていきそうだ。

■市浦ハウジング&プランニング:ニュータウンにMaaS導入を検討

共同住宅の設計をはじめ、団地やニュータウンの計画、既成市街地のまちづくり支援といった建築設計や都市計画コンサルタントを手掛けている同社。同社が手掛けたニュータウンや新たな都市計画などでスマートシティの実現を模索しているようだ。

「モビリティなどによる団地再生・郊外住宅地再生」をテーマに、団地計画技術とモビリティ技術との融合を図るための検討チームをつくり、今後さらに高齢化が進み移動弱者が増加する郊外住宅地などにおける団地内や住棟内での移動や、公共機関などへのラストワンマイルへの対応について、MaaSやドローン、ロボットなどを活用した展開可能性を検討しており、その一環としてモネコンソーシアムに加入したようだ。

ニュータウンなどへの自動運転サービスやMaaSの導入は各地で検討されており、今後、デベロッパーなどの本格参戦が相次ぐ可能性もありそうだ。

【参考】ニュータウンにおける自動運転サービスの実装については「国交省、ニュータウンで自動運転サービスの社会実装実験 実施主体を公募」も参照。

■イノベント:MICEプレイヤーとして次世代モビリティ分野に参戦か

ラーメン産業展や全国都道府県特産物フェア、肉フェス、東京キャンピングカーショーなど、見本市・展示会の主催や企画、運営業務などを手掛ける同社。モネに関する公式リリースは発表されていないが、新たなモビリティ社会を見据えたイベントの企画や、観光産業に大きな影響を及ぼす可能性がある統合型リゾート(IR)に関する事業などにおいて、横の連携を図りながらMICE(Meeting、Incentive Tour、Convention/Conference、Exhibition/Event)事業を推進していくものと推測される。

■WeWork Japan:シェアオフィス事業の付加価値創出や新たな展開へ

ソフトバンクグループの出資のもと、日本国内でコミュニティ型ワークスペースを提供する不動産シェアビジネスを手掛ける同社も、モネに加入している。

公式リリースは発表されていないが、都市部を中心とした同社のシェアオフィスに、付加価値として新たな移動サービスを提供することや、利便性の高い移動サービスにより、郊外型シェアオフィスの新たな展開なども予測される。

【参考】WeWork型ビジネスと自動運転については「自動運転普及で「WeWork型」一等地不動産ビジネスは崩壊する」も参照。

■ウェザーニューズ:気象情報分野で連携か

気象情報を扱うウェザーニューズもモネに参加している。公式リリースは発表されていないが、自動運転をはじめとした次世代モビリティサービスにおいて、台風をはじめ降雪や降雨といった情報は必要不可欠となる。こうした気象情報を各社のコネクテッドサービスなどへ提供することや、MaaS車両から各地域の細やかな情報を収集することなども考えられそうだ。

■伊藤園:物流やヘルスケア分野を想定

「おーいお茶」でおなじみの伊藤園もモネに参加している。公式リリースは発表されていないが、商品を運ぶ物流や、自社製品を生かしたヘルスケア分野での連携などが想定される。

飲食料品製造関係ではこのほか、菓子製造販売を手掛ける江崎グリコ株式会社や株式会社ブルボン、キリンビバレッジ株式会社、コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社、サッポロホールディングス株式会社、サントリーホールディングス株式会社なども参加している。

■ゼンショーホールディングス:フードデリバリー事業参入か

すき家やなか卯、はま寿司、ココスなど、フードサービスチェーン事業を手掛ける同社もモネに参加している。

公式リリースは発表されていないが、次世代モビリティを活用し、Uber Eats(ウーバーイーツ)のようなデリバリーサービスに本格進出する可能性などもありそうだ。

なお、モネにはこのほか厳選したベーカリーのパンをオフィスまで届けるサービスを展開する株式会社パンフォーユーや、アイスクリームでおなじみのB-Rサーティワンアイスクリーム株式会社、株式会社吉野家ホールディングスなども名を連ねている。

■MRT:医療プラットフォームとMaaS融合か

医療人材紹介サービスをはじめ医療情報に関するプラットフォームサービスを手掛ける同社。公式リリースは発表されていないが、MaaSに医療サービスを組み込んだり、全国各地への円滑な医療従事者の派遣に次世代モビリティを活用するなど、医療にまつわるさまざまな観点から連携を進めそうだ。

医療関係ではこのほか、熊本赤十字病院やテルモ株式会社なども名を連ねている。

■オープンハウス:不動産の付加価値としてMaaS活用か

不動産事業を展開する同社もモネに参加している。公式リリースは発表されていないが、移動の発着地点である住宅にラストワンマイル系MaaSを導入することによって付加価値を生み出すことができるほか、移動の利便性向上は立地の良し悪しを左右する。

米サンフランシスコのParkmerced 社が、賃貸住宅にMaaSのサブスクリプション機能を導入した「Car-Free Living」という取り組みを行っている例もある。不動産業においても新たな価値として移動の利便性を付加する事例が今後相次ぐ可能性もあるだろう。

■大分銀行:新たな価値創造で地域活性化へ

大分銀行は2019年6月、モネコンソーシアムへの参加を発表した。一次交通機関から二次交通機関への接続や交通弱者対策など地方都市の交通機関が抱える課題に対し、新たな価値創造を推進し、地域活性化に貢献するとしている。

地方の金融業にとって、地域経済の活性化は業績に直結する。また、次世代モビリティから派生するさまざまな事業にビジネスチャンスが眠っていることから、金融業界からの視線も熱いようだ。

銀行ではこのほか、株式会社大垣共立銀行、株式会社十六銀行、株式会社名古屋銀行、株式会社北洋銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行が参加している。

■共同印刷:交通ICカードや物流面で連携か

印刷業界からもモネへ参加する動きが見られる。公式リリースは発表されていないが、乗車券や交通ICカードといった媒体における連携や、物流などが想定される。

凸版印刷株式会社や大日本印刷株式会社も名を連ねており、印刷業界がどのような事業展開を構想しているのか気になるところだ。

■東京電力ホールディングス:EV社会見据え連携強化か

東京電力ホールディングス株式会社をはじめ、電力事業者からは関西電力株式会社、中部電力株式会社、東北電力株式会社の4社が名を連ねている。EV(電気自動車)化が進展する将来を見据えた動きとみられる。

東京電力と中部電力は2019年8月、次世代モビリティ社会を支える共同出資会社「株式会社e-Mobility Power(イーモビリティパワー)」の設立を発表しており、充電ネットワーク事業の拡大を図る構えだ。

■コナミデジタルエンタテインメント:エンタメサービス構想か

家庭用ゲームやアミューズメントでおなじみのコナミもモネに参加している。公式リリースは発表されていないが、コネクテッド技術などを生かしたエンターテインメントサービスの将来的な普及を見越している可能性がありそうだ。

エンタメ関連では、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントや株式会社第一興商なども名を連ねている。

■TOTO:次世代モビリティ向けのトイレやキッチンシステム開発か

システムトイレやユニットバスルーム、システムキッチンなど住宅設備機器の開発・製造などを手掛けるTOTOもモネに参加している。

公式リリースは発表されていないが、やはり次世代モビリティにトイレやキッチンシステムなどを組み込む方向で参加しているのだろうか。セラミックをはじめとした素材分野での連携の可能性も否定できないが、公式発表が将来出されることに期待したい。

同分野では、冷蔵ショーケースなどを取り扱う中野冷機株式会社なども名を連ねている。

■ファーストリテイリング:小売業の新たな形模索か

ユニクロを展開する同社をはじめ、インテリア小売りの株式会社ニトリホールディングスやイオングループのイオンリテール株式会社、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、株式会社ファミリーマート、株式会社ローソン、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社などもモネに名を連ねている。

流通・小売業と次世代モビリティは相性が良いとされており、同業界からの参入は今後も続きそうだ。

【参考】小売×自動運転については「【全3回特集・目次】自動運転が巻き起こす小売革命」も参照。

■【まとめ】移動が新たなビジネスの宝庫に 想像を超える新サービスの誕生に期待

一つ言えることは、明確なビジョンはまだなくとも、手探りの段階で参加するほど移動における新たな価値創造に興味や関心、魅力があるということだ。今後、想像も及ばない新サービスが続々と発表され、移動に対する概念が徐々に変わっていく可能性がある。

MONETコンソーシアムに関しては、地方自治体との連携を加速していることにも関心が集まる。2019年は中小自治体との連携協定を続々結び、後半には大阪府や愛知県などの国内有数の都市を有する自治体とのパートナーシップも結んだ。

「移動」に関するビジネスの主導権はMONETコンソーシアムが今後握っていくのかもしれない——。そんなことを考えさせる同コンソーシアムのこれからの動きや加盟企業の取り組みに引き続き注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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