空飛ぶクルマ・eVTOL、欧米で100機以上の大量受注続々!

注文主は、大手航空会社や大手物流会社



近未来に移動や物流革命を起こすだろう「空飛ぶクルマ」の受発注が早くも始まっているようだ。

地上から空へ交通手段を拡大するeVTOL(電動垂直離着陸機)の開発は依然加速を続けており、開発企業の上場とともに大型受注案件が発表される例も続々と表に出てきている。







この記事では、eVTOL開発各社の受注案件をまとめてみた。

■空飛ぶクルマ開発企業の受注案件
Lilium:ブラジル航空会社から220機のeVTOL受注
出典:Lilium公式サイト

独Liliumは2021年8月、米ナスダック市場へのSPAC上場に合わせ、ブラジルの大手航空会社Azulと10億ドル(約1,100億円)の大型契約とともに戦略的提携を結ぶ計画を発表した。

両社はブラジルでの共同ブランドネットワークの確立を目指し、2025年までに220機のeVTOLを最大10億ドルで販売する計画としている。

Liliumは独自の電気ジェットエンジンを活用したeVTOL「Lilium Jet」の開発を進めており、2024年に商業運転を開始する予定としている。パイロット含め7人乗りで、時速280キロで250キロメートルを航行可能という。

▼Lilium公式サイト
https://lilium.com/

Archer Aviation:ユナイテッド航空から最大200機受注
出典:Archer Aviation公式サイト

米Archer Aviationは2021年2月、米ユナイテッド航空と提携を交わしたと発表した。ユナイテッド航空は米メサ航空と協力し、Archer のeVTOLを最大200機購入するとしている。価格は10億ドルで、さらに5億ドル分のeVTOLを追加するオプションも設定しているという。

Archerはまた、ステランティスとも製造・設計分野で提携を交わしており、量産化に向けた動きを加速しているようだ。生産開始は2023年を計画している。

なお、同社は2021年2月、ニューヨーク証券取引所へのSPAC上場を発表している。同社が開発を進める「Maker」は、時速150マイル(約240キロ)で60マイル(約100キロ)航行することが可能という。

▼Archer Aviation公式サイト
https://www.archer.com/

Vertical Aerospace:アメリカン航空など複数から最大1000機を受注
出典:Vertical Aerospaceプレスリリース

英スタートアップのVertical Aerospaceは2021年6月、ニューヨーク証券取引所へのSPAC上場を2021年後半にも実施することを発表し、この中で航空各社との主要取引の状況を公開している。

アメリカン航空は250機、追加で100機を注文するオプションを条件にeVTOLを発注し、米国内で運用する計画という。英ヴァージンアトランティック航空は50~150機、航空機リース事業を手掛けるアイルランドのAvolonは310機にオプションで追加190機をそれぞれ契約した。

最大1,000機を受注しており、契約額は最大40億ドル(約4,400億円)相当としている。同社が開発を進める「VA-X4」はパイロット含め5人乗りで、時速202マイル(約320キロ)で100マイル(約160キロ)飛行可能という。欧米を股に掛けた事業展開に注目が集まるところだ。

▼Vertical Aerospace公式サイト
https://vertical-aerospace.com/

Beta Technologies:UPSから最大150機受注
出典:UPSプレスリリース

米物流大手のUPSは2021年4月、子会社のUPS Flight Forwardとともに米Beta TechnologiesのeVTOLを購入し、中小規模の市場向け航空サービスを強化する計画を発表した。

Beta TechnologiesのeVTOL は1,400ポンド(約635キログラム)の貨物容量を備えており、物流用途での活用を図っていく計画のようだ。まず10機のeVTOL を購入し、2024年までに受け取る。最大150機を購入するオプションも設定している。

Beta Technologiesが開発を進めるeVTOLは乗客向けの「ALIA-250」と貨物向けの「ALIA-250c」があり、上極向けはパイロット含め6人が乗車可能、貨物向けは200立方フィート(約5,700リットル)収納可能という。

また、ニューヨークを拠点にエアモビリティサービス事業を手掛けるBlade Urban Air Mobilityも同月、eVTOL 20機を購入する契約を交わしたことが発表されている。

▼Beta Technologies公式サイト
https://www.beta.team/

Skyworks Aeronautics:韓国コンソーシアムから100機受注
出典:Skyworks Aeronauticsプレスリリース

米Skyworks Aeronauticsは2021年6月、航空機のグローバルリーズ事業などを手掛けるMintAirを中心としたコンソーシアムから自社開発したeVTOL「eGyro」100機の注文を受けたことを発表した。

MintAirは韓国でアドバンスドエアモビリティサービスを展開する新興企業で、コンソーシアムは韓国でのeVTOLサービス運用を予定している。eGyroの公開デモを行った後、アーバンエアモビリティプラットフォームを立ち上げる方針だ。コンソーシアムには、バッテリーモジュールアーキテクチャの開発を進めるMobius.energyなども参画している。

eGyroはパイロットと乗客2~4人乗りで、時速100~150マイル(約160~240キロ)、航続距離30~100マイル(約50~160キロ)のスペックを誇る。

▼Skyworks Aeronautics公式サイト
https://www.skyworks-aero.com/

Eve:英国企業やブラジル企業から計250機受注
出典:Eveプレスリリース

ブラジルの航空機メーカーEmbraer傘下のEveは2021年6月、英Haloとパートナーシップを結び、米国と英国の都市部向けにアーバンエアモビリティ製品やサービスの開発を進めていくと発表した。契約にはeVTOL200機の注文が含まれており、2026年に機体を受け渡す予定としている。

また同月、ブラジルのヘリコプターオペレーター・Helisul Aviationとのパートナーシップも発表している。両社は既存のエアタクシーインフラストラクチャを活用しアーバンエアモビリティのソリューション開発を進めており、ブラジルでのサービス開始に向け本格着手したようだ。

契約には最大50機のeVTOL注文が含まれており、こちらも2026年に機体を受け渡す予定としている。

▼Eve公式サイト
https://eveairmobility.com/

EHang:すでに販売開始 受注台数は数百台規模か

実用実証で先行する中国のEHangは、2019年に61機、2020年に70機のeVTOL「EH216」をすでに販売している。世界各地で進める実用化に向けた取り組みが小口の注文を獲得しているようだ。大型受注案件は見当たらないが、予約・受注台数も数百機規模と見られており、今後の動向に要注目だ。

なお、EH216は最大時速150キロで航続距離は70キロメートル、機体価格は2020年時点で33万6,000ドル(約3,700万円)となっているようだ。

▼EHang公式サイト
https://www.ehang.com/index.html

■受注販売を開始する動き

スロベニアの軽飛行機メーカーPipistrelは2020年9月、貨物輸送向けのeVTOL「NuuvaV300」の注文受け付けを開始すると発表した。

3立方メートルの貨物室に最大460キロ積載可能で、300キロの荷物ならば300キロメートル以上、50キロならば2,500キロメートル以上運搬できるとしている。2023年後半にも引き渡しを開始する予定という。また、運用コストは従来のヘリコプターの10分の1ほどとしている。

予約販売を開始する動きは国内でも始まっている。2018年設立の東京大学発スタートアップであるテトラ・アビエーションは2021年7月、新機種「Mk-5(マークファイブ)」を一般初公開し、予約販売を開始したと発表した。

Mk-5は1人乗りのeVTOLで価格は約4,000万円という。巡航速度は144キロ(SN3モデル)から160キロ(SN4モデル)、航続距離は151キロ(SN3)~160キロ(SN4)など。2022年にも機体の引き渡しを開始する予定で、モデルも徐々に更新されていくようだ。

▼Pipistrel公式サイト
https://www.pipistrel-aircraft.com/
▼テトラ・アビエーション公式サイト
https://www.tetra-aviation.com/

■空飛ぶクルマの市場規模

経済産業省の「内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業」向けに三菱総合研究所が作製した調査報告書(2020年3月)の中で各調査機関が発表した空飛ぶクルマの市場規模がまとめられている。

これによると、Porsche consultingは2035年に世界市場規模320億ドル(約3兆5,000億円)、機体数2万3,000台と予測している。Morgan Stanleyは2040年の世界市場規模1兆2,640億ドル(約139兆円)と見込んでいるようだ。

Markets and Marketsは2030年の世界市場規模を152億ドル(約1兆7,000億円)と推定している。Deloitteは2040年における米国市場規模として177億ドル(約1兆9,000億円)と試算している。

■【まとめ】受注案件は本格稼働に向けた動きの表れ

「空飛ぶクルマ」と聞くと近未来感が漂うが、ドローン技術を駆使したeVTOLとして、同様に垂直離着陸を可能とするヘリコプターと比較すると、現実味を感じられるのではないだろうか。

ヘリコプターは動力にエンジンを使用し、最大数十人を乗せて数百キロ飛行することができる。一方、eVTOLはモーター駆動で、多くは数人を乗せて数十~300キロを飛行できるレベルだ。eVTOLの方がコンパクトかつ低騒音で運用コストも低く、エアタクシーなどパーソナル用途にも柔軟に活用できる点などがメリットに挙げられる。

中国などではすでにサービス実証が始まっている。また、受注案件が示すように、数年以内に本格稼働させる動きも世界で活発化し始めている。

航空法などの規制関係のクリアや運用ルールの策定、万が一機器やシステムに故障が発生しても安全に飛行・着陸可能な冗長システムの開発などが必須となるが、日本もこの波に乗り遅れないよう、開発と実証にいっそう力を入れてほしいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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